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完全試合
相手チームの打者を一度も出塁させずに勝利する、野球及びソフトボールの記録 ウィキペディアから
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完全試合(かんぜんじあい、かんぜんしあい)とは、野球やソフトボールの試合における記録のひとつで、相手チームの打者を一度も出塁させずに勝利することである[† 1]。パーフェクトゲーム(英: perfect game[† 2])やパーフェクト(西: perfecto[2][3][† 3][† 4])とも呼ばれる。

野球(高校生以上)では少なくとも9イニング27人、ソフトボールでは少なくとも7イニング21人の打者を全て凡退させて、その時点で勝利する必要がある。安打はもちろんのこと、四死球や失策なども許されない。延長戦[† 5]に突入した場合は、試合に勝つまで継続して走者を出さないことが達成条件となる。ただし延長タイブレークに突入した場合は、完全試合は認められなくなる[† 6]。
9イニング制の場合、完全試合を達成するための最少投球数は27球で、これは全ての打者が初球を凡打した場合に達成される。
完全を継続したまま引き分けた場合や、コールドゲームによる勝利、没収試合の宣告による勝ち、または負けの場合は公式の記録とは認められず、参考記録として扱われる。四死球や失策などで出塁を許しながらも無安打無失点に抑えた場合はノーヒットノーラン、安打で出塁を許しても一人も生還させなかった場合は完封となる。
「完全試合」という用語は単に本項目で説明する野球の記録の名称であり、最高得点が決まっている記録での百点満点などという意味はない。本項目では、野球用語としての「完全試合」を述べる。野球以外は「他競技での用法」を参照のこと。
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メジャーリーグベースボール
要約
視点
→詳細は「メジャーリーグベースボールの完全試合一覧」および「メジャーリーグベースボールのノーヒットノーラン一覧」を参照
メジャーリーグベースボール(MLB)は、完全試合を以下のように定義している。
An official perfect game occurs when a pitcher (or pitchers) retires each batter on the opposing team during the entire course of a game, which consists of at least nine innings. In a perfect game, no batter reaches any base during the course of the game.
(公式な完全試合は、9イニング以上の試合を通して一人(あるいは複数)の投手が、相手チームの打者を凡退させ続けることで認められる。完全試合においては、試合の開始から終了まで打者は一人も出塁できない。) — MLB Miscellany: Rules, regulations and statistics, MLB.com
この条件を満たした完全試合は19世紀に2度、20世紀に14度、21世紀に8度の計24度が記録されている。1876年に最初のメジャーリーグとしてナショナルリーグが創設されて以来147シーズンで24度ということは、単純計算では6年ほどに一度の割合ということになる。ただし1980年代に入ってからは、それ以前より達成頻度が上がっている[4]。1922年にチャーリー・ロバートソンが達成してから30年以上完全試合が出なかった時期がある一方で、2009年から2012年にかけての4年間で6度も達成されたこともある。特に2012年には1年で3度の完全試合があり、これは史上最多である。完全試合数が達成されやすくなってきている原因としては、三振数が増加傾向にあるため打球がインプレイになりにくくなり、守備のミスによる出塁の機会が減っていることや、1961年以降のエクスパンションによって球団数が16から30まで増えたことで試合数も増加する一方、優れた実力を持つ選手が1球団に集中しにくくなったことなどが挙げられる[5]。
上記の定義のとおり継投による完全試合も認められるが、これまでMLBで達成されたものはいずれも一人の投手によるものであり、継投によるものはない。達成者の顔ぶれを見ても、アメリカ野球殿堂入りした投手もいれば、通算勝利数が50に満たないうえに負け越している投手もいて、彼らの実績は一定していない[4]。2010年にはニュージャージー工科大学准教授のBruce Bukietが数理モデルを用いた分析をしており、その結果によれば通算311勝で殿堂入りのトム・シーバーは完全試合達成の可能性が史上7番目に高かったというが、シーバーも彼より上の6投手も実際には達成できていない[5]。史上唯一となるポストシーズンでの完全試合を1956年のワールドシリーズ第5戦で成し遂げたドン・ラーセンも、殿堂入りはおろかオールスター選出経験すら一度もない投手である[6]。また、同じ投手が複数回達成したこともない。審判員ではテッド・バレットが、完全試合での球審を2度(1999年のデビッド・コーンによるものと、2012年のマット・ケインによるもの)務めたことがある[7]。捕手ではロン・ハシーが、1981年にインディアンズでレン・バーカーの完全試合[8]、1991年にエクスポズでデニス・マルティネスの完全試合[9]の双方に先発捕手として立ち会っており、2度の完全試合達成に関わった唯一の捕手となっている。
2010年に完全試合を成し遂げたダラス・ブレイデンは、自分の前に達成したマーク・バーリーから「これがしきたりかどうかは分からないんだけど、ようこそ(完全試合)クラブへ」と祝福の電話をもらったという[10]。
参考
さまざまな理由で完全試合を逃した例がある。
- 一度は完全試合として認定されながら後に取り消された例

以前は完全試合として認められていながら、条件を満たしていなかったとして後に認定取り消しになった事例が2つある。
- 1917年6月23日のボストン・レッドソックスとワシントン・セネターズとの試合で、レッドソックスの先発投手ベーブ・ルースがセネターズの先頭打者レイ・モーガンを与四球で出塁させたあと、判定への不満から球審に抗議して退場処分となった。その後、2番手として登板したアーニー・ショアが、モーガンの盗塁死のあと試合終了まで26打者を全て凡退させた。これは当初はショアによる完全試合と認定されていたが、1991年にルースとショアの継投によるノーヒットノーランに訂正された[11]。
- 1959年5月26日のピッツバーグ・パイレーツとミルウォーキー・ブレーブスとの試合で、パイレーツの先発投手ハービー・ハディックスはブレーブス打線を9回終了まで完全に抑えたものの、味方打線も無得点だったためそのまま延長戦に入った。ハディックスはその後も後続を完全に抑え続け、延長12回終了まで36打者を連続して凡退させたが、延長13回に先頭打者フェリックス・マンティーヤを三塁手 ドン・ホークの送球エラーで出塁させ、この回でサヨナラ負けを喫した。この試合は当初、最初の9イニングを完全に抑えたため完全試合と認定されていたが、完全試合の要件が変更された1991年に取り消された[12]。
- 9回終了まで完全に抑えながら延長で完全試合を逃した例
- 9回2死まで完全に抑えながら完全試合を逃した例
- 無安打無四死球無失策を達成しながら振り逃げで完全試合を逃した例
- 短縮試合[† 7]により参考記録とされている例
学生野球での事例
アメリカの学生野球では次のような記録が残されている。
- 2006年5月19日 - ハイランド・パーク高等学校対ノース・ウェスト高等学校戦 - ハイランド・パーク高校のクレイトン・カーショウが、ノース・ウェスト高校の先頭打者から15人を連続三振に討ち取り、5回終了時点で13-0であった為、マーシー・ルール(日本でいうコールドゲーム)の適用で5回コールドとなった。マーシー・ルールの下での完全試合は参考記録となるが、カーショウの記録は全米史上初の全打者を三振とする形での完全試合であった事が特筆される[17]。
- 2016年5月12日 - セント・エドワード高等学校対ジョン・マーシャル高等学校戦 - セント・エドワード高校のジャレット・エドワーズがジョン・マーシャル高校の先頭打者から15人を連続三振に討ち取り、5回終了時点で10-0であった為、マーシー・ルールの適用で5回コールドとなった[18]。マーシー・ルールの下での記録の為公式には参考記録となるが、オハイオ州はエドワーズの事績を公式記録として認定した[19]。
- 2017年4月11日 - チャタヌーガ・クリスチャン・スクール対ノートルダム高等学校戦 - チャタヌーガ・クリスチャン校のマシュー・マーサーにより達成。10-0でマーシー・ルールの適用で5回コールドとなる。なお、マーサーは同年4月4日のブレッドソー郡立高校戦でも14-0のスコアで5回コールドでの完全試合を達成しており、2試合連続でマーシー・ルール下の完全試合を達成するという偉業を成し遂げた[20]。
- 1957年8月23日 - 1957年のリトルリーグ・ワールドシリーズ決勝戦 ヌエボ・レオン州モンテレイ(メキシコ)対カリフォルニア州ラ・メサ戦 - モンテレイの両投げ投手であるエンジェル・マシアス[21]が、ラ・メサの全18人の打者の内11人を三振に打ち取り達成[22]。リトルリーグ・ワールドシリーズで唯一の完全試合となっている[23][22]。モンテレイの勝利はリトルリーグ・ワールドシリーズで米国外のチームが優勝した初の事例であり、脚本家のW・ウィリアム・ウィノカーは「この事績の衝撃は、1980年レークプラシッドオリンピックのアイスホッケー競技にて米国チームがソ連チームを打ち破った事績(氷上の奇跡)を上回っていた」として、2008年の映画『ザ・パーフェクトゲーム』の脚本を執筆した[23]。マシアスはその後野手に転向し、1962年から1974年に掛けてカリフォルニアリーグやリーガ・メヒカーナ・デ・ベイスボル等でプロ選手として活動[21]。1969年にはレイノサ・ブロンコスの優勝に貢献[24]し、引退後はメキシコのアマチュア野球で指導者として活動した[22]。
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日本野球
要約
視点
プロ野球
日本プロ野球 (NPB) では、これまで16度16人によって記録されている[25]。参考記録としてコールドゲームによるものが1度記録されている[26]。 上述のMLBにおける定義と異なりNPBでは継投での完全試合達成は記録されない(参考記録かつチームの記録となる。当該項も参照)。
なお、2025年時点で延長で完全試合を達成したものは一人もいない[27]。
チーム名・球場名は達成当時のもの。
- 備考
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ファウルフライ落球による失策を含む試合を完全試合とするかどうかについて、日本において完全試合はチームの記録ではなく「投手の記録」であると考えている面もあり、日本プロ野球のルール上では曖昧になっているが、1981年のセ・パ記録部申し合わせ事項でファウルフライの失策があっても完全試合は成立することが確認されている。メジャーリーグでは「チームの記録」との側面もあり、失策が記録されれば完全試合とは見なされなかったが、1991年以降は定義が緩和されて完全試合として認められている。
独立リーグ
独立リーグでは、リーグ準加盟球団を対戦相手とした公式戦での達成が1例ある[29][30][31]。
これとは別にリーグ側で公式戦の一環として実施されるNPB3軍との交流戦で、NPB選手による達成の例がある[32]。
このほか、参考記録として以下がある[33]。
社会人野球
社会人野球の全国大会では都市対抗野球大会で2度、社会人野球日本選手権大会で1度記録されている[34][35]。
都市対抗野球
日本選手権
大学野球
全日本大学野球選手権
全日本大学野球選手権大会では、これまで4度記録されている[36]。
東京六大学野球
東都大学野球
東都大学野球では、1部リーグ・2部リーグ・3部リーグでそれぞれ2回ずつ記録されている[37]。
1部リーグ戦
2部リーグ戦
3部リーグ戦
首都大学野球
首都大学野球リーグ戦では、これまで2度記録されている。
関甲新学生野球連盟
関甲新学生野球連盟のリーグ戦では、これまで1度だけ記録されている[42]。
関西学生野球連盟
関西学生野球連盟のリーグ戦では、2度記録されている[43]。
北東北大学野球連盟
北東北大学野球連盟のリーグ戦では、2度記録されている[44]。
高校野球
甲子園球場で行われる高校野球(硬式)の全国大会では選抜高等学校野球大会(春のセンバツ)で2度記録されているが、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)ではいまだ達成者がいない[46]。明治神宮野球大会(秋季高校野球)でも本大会では達成者がおらず、ノーヒットノーランが一度記録されたのみとなっている[47]。
なお、春・夏・秋のいずれも地方大会では完全試合が複数回記録されているが、特筆に値する事績としては江川卓(作新学院)による1971年・1972年夏の栃木県予選での2年連続2回の達成、岡崎淳二(川越商高)による1989年・1990年夏の埼玉県予選での2年連続2回の達成、参考記録では1993年夏の北北海道大会釧根地区予選で根室高の橘啓介が記録した5回コールド・15連続奪三振による達成[48]などが挙げられる[49]。
選抜高等学校野球大会
全国高等学校軟式野球選手権大会
リトルリーグ
6回制で行われるリトルリーグでは、ザバスカップ第46回全日本リトルリーグ野球選手権大会で1度記録されているのが確認できる[52][53]。ただし、これ以外にも達成者がいる可能性はある。
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韓国野球
韓国野球委員会では、現在のところ達成事例が一度もない。
- 参考記録
- 2022年4月2日の対NCダイノス1回戦(昌原NCパーク)において、SSGランダースの先発ウィルマー・フォントは9回を投げて打者27人に対し完全投球を達成したが、ランダース打線も得点できず0-0のまま延長戦に突入し、フォントも9回無失点で降板したため完全試合とはならなかった。試合は延長10回表にランダースが4点を勝ち越し、10回裏は2番手の金擇亨が1四球を出したのみの無失点で抑えたため、非公式ながら継投によるノーヒットノーランが記録された[54]。
台湾野球
中華職業棒球大聯盟では、ライアン・ベルドゥーゴが唯一の完全試合を達成している。
キューバの野球
国内リーグ"セリエ・ナシオナル・デ・ベイスボル"では、マエルス・ロドリゲスが唯一の完全試合を達成している。
国際試合
- 2023年3月13日 - 第5回 ワールド・ベースボール・クラシックの1次ラウンド・プールD、プエルトリコ対イスラエル戦で、プエルトリコ代表のホセ・デレオン、ヤックセル・リオス、エドウィン・ディアス、デュアン・アンダーウッド・ジュニアの4投手による継投で8回を完全投球した。味方打線も10得点でコールド勝ちとなり、8回参考記録ながら継投による完全試合を達成した[57][58]。
- 2024年3月7日 - 侍ジャパンシリーズ2024の日本対欧州代表の第2戦で、日本代表が金丸夢斗、中村優斗、松山晋也、渡辺翔太、隅田知一郎、種市篤暉の6投手による継投で完全試合を達成した[59]。
準完全試合
要約
視点
「準完全試合」は以下の2通りがある。メディアでは本来前者を指すことが多かったが、最近(2020年前後)は後者も含む[要出典]ことが多い。ただしいずれもNPB非公認の記録であることには注意。
- 安打・四死球・失策で走者を1人出したのみ、かつ完封試合[60]。
このパターンは2022年8月末現在、日本プロ野球の公式戦では完投によるものが47人によって52回[61]、継投によるものが3回記録されている。そのうち、ノーヒットノーランは16回(うち無四球で1失策の試合が2回)である。 - 四死球・失策で出した走者を刺すか併殺打に打ち取ったことで、打者27人残塁0でノーヒットノーラン。このパターンは4例が記録されている。
日本プロ野球
選抜高校野球
全国高等学校野球選手権
社会人野球日本選手権大会
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他競技での用法
要約
視点
本来は野球用語であるが、「完全なる勝利」という意味合いで他のスポーツでも使用されることがある。最高得点が決まっている競技では百点満点のようにその得点を得た試合のことを示す。
最高得点が決まっている競技
ボクシング
プロボクシングにおいても、3人のジャッジがいずれもフルマーク(全ラウンド10点。12回戦なら120点)の判定勝利だった場合に、完全試合と表現することもある[62]。
ボウリング
ボウリングにおける完全試合(パーフェクトゲーム)とは、12回の投球全てがストライクで、300点を記録した試合のことである。
最高得点では無い別の定義
サッカー
サッカーにおいて相手にシュートを1本も撃たせず勝利した試合を完全試合と呼ぶ場合もある。Jリーグ公式戦においては2023年9月までに例存在する[63]。
- 2009年11月8日にカシマスタジアムで行われたJ1リーグ第31節鹿島アントラーズVSモンテディオ山形戦で鹿島がJリーグ史上初となる被シュートゼロで2-0勝利を挙げた試合を日刊スポーツが「完全試合」と表現した[64]。
- 2019年3月30日に町田市立陸上競技場で行われたJ2リーグ第6節FC町田ゼルビアVS愛媛FC戦で町田が1-0でJリーグ2例目、J2では初の完全試合を達成[65]。
- 2019年10月14日にNDソフトスタジアム山形で行われたJ2リーグ第36節モンテディオ山形VSFC岐阜戦で山形が2-0でJ2では2度目の完全試合を達成[66]。
- 2020年9月13日に長野Uスタジアムで行われたJ3リーグ第15節AC長野パルセイロVSセレッソ大阪U-23戦で長野が2-0でJ3では初の完全試合を達成。
- 2021年5月12日に豊田スタジアムで行われたJ1リーグ第21節名古屋グランパスVS鹿島アントラーズ戦で鹿島が2-0でJ1では2度目の完全試合を達成[67]。
- 2023年9月23日にケーズデンキスタジアム水戸で行われたJ2第36節水戸ホーリーホック対大分トリニータで大分が1-0でJ2では3例目の完全試合を達成[68][† 9]。
高校サッカーにおいては、青森山田が、2021年8月21日に日東シンコースタジアム丸岡サッカー場で行われた全国高校総体準決勝で静岡学園を、2022年1月11日に国立競技場で行われた全国高校選手権決勝で大津を、いずれも4-0で降す完全試合を達成している[69]。
FIFAワールドカップにおいては、スペインが、2022年11月23日にアル・トゥマーマ・スタジアムで行われたカタールW杯1次リーグE組でコスタリカを7-0で降す完全試合を達成している[70]。
卓球
卓球の団体戦において、全マッチをストレートで勝利することを完全試合と呼ぶ[71]。日本のTリーグにおいてはこれまでに男女それぞれ1度達成している。
- 2020年11月17日、木下マイスター東京が琉球アスティーダ相手に達成。
- 2022年9月23日、日本生命レッドエルフが京都カグヤライズ相手に達成。
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脚注
関連項目
外部リンク
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