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特別高度救助隊
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特別高度救助隊(とくべつこうどきゅうじょたい)とは、高度な救出救助能力と機材を有する消防の救助専門部隊のことを示す。
特別高度救助隊は、全国の政令指定都市を管轄する消防局と特別区が連合する消防(東京消防庁が該当)に設置が義務付けられている。高度救助隊は、全国各地の中核市等を管轄する消防本部に設置が義務付けられている。また、いずれ部隊も設置基準を満たしていない自治体でも自主設置可能とされている。
概要
要約
視点

スーパーレンジャー(SR)
横浜市消防局

消防庁は、新潟県中越地震やJR福知山線脱線事故等の教訓や、新潟県中越地震での東京消防庁の消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)の活躍(長岡市の土砂崩れ現場からの男児救出)から[1]、2006年4月1日に「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」の一部改正を行い、第6条の規定により「特別高度救助隊」を特別区が連合する消防(東京都)及び政令指定都市に、第5条の規定により「高度救助隊」を中核市と消防庁長官が指定するそれと同等規模もしくは中核市を有しない県の代表都市を管轄する消防本部等に整備をするよう定めた[2]。さらに消防庁は消防大学校に特別高度救助隊・高度救助隊の養成講座を創設した[3]。
これに伴い多くの本部は特別救助隊のうち1隊以上を特別高度救助隊又は高度救助隊へ昇格させる形で配備された[4]。また、新たに中核市から政令指定都市へと移行する都市でも高度救助隊から特別高度救助隊へ昇格させる形で配備された[5]。 なお、改正された第6条の規定では、「高度救助隊の数のうち、特別区が連合して維持する消防及び指定都市にあつては1以上の高度救助隊を特別高度救助隊とする。」とされている。 そのために政令指定都市の中で札幌市消防局・相模原市消防局・浜松市消防局・堺市消防局・静岡市消防局・京都市消防局・神戸市消防局・福岡市消防局では高度救助隊と特別高度救助隊の両方を配備している。
現在では特別高度救助隊は選抜された高度救助隊在籍者から知識、体力、技能が優秀で各種資格と免許を持つ者から、選抜するパターン[6]と、消防本部内の経験豊富なベテラン救助隊員の中から知識、体力、技能が優秀で各種資格と免許を持つ者を選抜するパターンとなっている。どちらのパターンでも選抜試験合格後に必ず、消防大学校で特別高度救助コースなどの専門教育を受けてから隊に配置される。
近年は南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの発生が危惧されている事から、設置基準でない消防本部でも自主的に高度救助隊を編成する本部も増えている[7]。2019年につくば市消防本部が、2020年に川口市消防局、2025年に宇都宮市消防局が政令指定都市以外で特別高度救助隊を設置した。
高度救助隊は主に大規模震災に対応するための部隊で、通常の救助資機材の他に高度救助資機材を積載しており、CBRNE災害にも対応出来るようになっているが、特別高度救助隊と高度救助隊は省令により所有する装備品の種類と運用する車両が異なっている。いずれの隊も、隊内に複数の救急救命士を配置していることが多く、救急救命処置を施しながら社会復帰を考慮した救助活動を行うことが可能である[8][9]。
2008年に横浜市消防局の特別高度救助部隊スーパーレンジャー(SR)がTBS系列ドラマ「RESCUE〜特別高度救助隊」で取り上げられ特別高度救助隊の存在が一般に知られるようになった。
緊急消防援助隊の救助部隊や国際消防救助隊登録隊員も特別高度救助隊・高度救助隊が中心となる。実際に2014年の広島土砂災害[10]や御嶽山噴火災害[11]では高度救助隊を中心とする人選の緊急消防援助隊が派遣された。
また、同部隊は大規模災害のみに出動するわけではなく通常は他の救助隊と同様に一般災害にも出動する。さらに特別高度救助隊や高度救助隊に化学救助隊や水難救助隊、航空救助隊などの指定部隊とする消防や各部隊ごとに特定任務がある消防も存在する[12]。
なお、鈴鹿市消防本部では常時体制ではないが高度救助隊と同等の救助技術を有する高度救急救助隊(Hyper Ambulance Rescue Team=通称HART)を設置している。
大阪市消防局も特別高度救助隊を創設する前は特別救助隊(AR・BR・CR)が災害規模に応じて特殊災害機動部隊(スーパーレスキュー)を編成し特別高度救助隊としていた。現在は正式に本部特別高度救助隊(ASR)を設置しているが、BRが高度救助資機材を有するために単独で高度救助隊としての活動も可能である。
消防救助隊の設置基準
現在、日本の消防救助隊は次の四段階構成になっており、その中で特別高度救助隊が最上位に位置する。なお、いずれの部隊も配置の基準を満たしていない自治体でも自主設置可能とされている。
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装備
要約
視点
特別高度救助隊と高度救助隊は、救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令により、下記の高度救助資機材の装備が定められている[13]。
- 二酸化炭素探査装置
- 画像探索機(ビデオスコープ)
- 高感度ビデオカメラで瓦礫の中の内部状況をモニターで確認することができる。隊員1人で操作が可能。
- 画像探索機I型(ファイバースコープ)
- チューブにビデオカメラが付いておりマイク、スピーカー、センサーなどを取り付けることができ遠隔操作が可能。チューブから生存者に空気を送ることやガスや温度測定などができるが瓦礫に挿入する隊員とモニターを確認する隊員が必要。
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- 地中音響探知機
- 電子装置と振動センサーと音響センサーで瓦礫などの中の振動や音をキャッチする事ができ生存者の有無や位置を探す事ができる。また、マイクで生存者と対話することも可能。
- 熱画像直視装置
- 赤外線により対象物の温度を計測することができる。瓦礫の中などに取り残された生存者の体温で居場所を特定することが可能。火災現場で火や熱が残っている場所の特定にも使われる。
- 地震警報器
- 地震の初期微動を感知して警報を発する機械。救助活動を行う隊員の安全確保に使われる。
- 電磁波人命探査装置(シリウス、レスキューレーダー等)
- 電磁波で瓦礫などの中の生存者の心肺活動を検知して生存者の有無や位置を探査する。
- 水中探査装置
- リモートコントロールで操作できカメラで水中の様子を映し出すことができる。
- 携帯用化学剤検知器(高度救助隊・特別高度救助隊)
- CBRNE災害のC: 化学 (Chemical)災害で使用される携帯用化学剤検知器。化学剤テロの現場や化学工場事故現場で漏洩物簡易特定の為使用される。
- 化学剤検知器(特別高度救助隊)
- CBRNE災害のC: 化学 (Chemical)災害で使用される化学剤検知器。化学剤テロの現場や化学工場事故現場で漏洩物高精度特定の為使用される。
- 携帯用生物剤検知器(高度救助隊・特別高度救助隊)
- 生物剤検知器(特別高度救助隊)
- 検知型遠隔探査装置(特別高度救助隊)
- クローラー型ラジコン探査装置。人が近づけない危険な現場に接近し、探査することが可能。
これらの装備の内、二酸化炭素探査装置や電磁波人命探査装置、水中探査装置、携帯用化学剤検知器、携帯用生物剤検知器など一部の救助資機材は、高度救助隊の場合、地域の実情に応じて備えることと定めている。
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車両
要約
視点
- 救助工作車III型
- 特殊災害対応車
- CBRNE災害に対応する車両。搭載された分析装置により危険物質の特定を行う。また、車内の圧力を車外の大気圧よりも高くする陽圧機能を有し、危険物で汚染されたレッドゾーンに進入して状況確認や救助活動を行うことができる。
さいたま市消防局や神戸市消防局などでは、特別高度救助隊ではなくCBRNE災害対応部隊が運用している。
- ウォーターカッター車
- ガソリン等、危険物が漏えいしたJR福知山線脱線事故の現場では従来のバーナーやエンジンカッターを使用した救助活動ができず、救助活動が難航したことを教訓に配備が決定した車両で、引火・爆発の危険性がない研磨剤を含んだ水を高圧で噴射し、鉄板やコンクリート等を切断することが出来る。水だけを噴射し、消火活動[14]も行える。
2007年に総務省消防庁供与の形で東京消防庁、札幌市消防局、名古屋市消防局、大阪市消防局、福岡市消防局に配備されている。
- 大型ブロアー車
- 建物・トンネル内に充満した煙や可燃性ガスなどを車両後部大型ブロアーの風圧で排除することができる。噴霧放水しながらの消火・排煙活動も可能。
2005年に豊田市消防本部が独自購入した大型ブロアー車が高発泡などの機能を有する兼用車両として日本で初めて導入された[15]。その後、JR福知山線脱線事故を教訓に、2007年に総務省消防庁供与の形で東京消防庁、札幌市消防局、名古屋市消防局、大阪市消防局、福岡市消防局に配備された。藤沢市消防局も独自購入した大型ブロアー車が空気ボンベ充填機能を有する兼用車両として2016年に高度救助隊へ配備された。
- 特別高度工作車
- 上記のウォーターカッター車と大型ブロアー車の機能を1台に統合した車両[16]。2009年にさいたま市消防局、横浜市消防局、新潟市消防局、広島市消防局、仙台市消防局の5消防局に総務省消防庁からの供与の形で配備された。2010年には神戸市消防局、京都市消防局、堺市消防局、千葉市消防局、岡山市消防局、川崎市消防局、静岡市消防局、浜松市消防局、北九州市消防局にも供与の形で配備されている。さらに新たに政令指定都市となった相模原市消防局と熊本市消防局にも追加配備された。
これらの装備の内、ウォーターカッターと大型ブロアーは地域の実情に応じて備えることと定めているが、現在では総務省消防庁からの無償貸与により政令指定都市のすべてにウォーターカッター車と大型ブロアー車のセットまたは特別高度工作車と、瓦礫などを排除しながら同時に消火活動も行える油圧ミニショベル[17][18]の配備が完了している。
さらに、東京消防庁消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)や横浜市消防局特別高度救助部隊(スーパーレンジャー)などでは瓦礫などの排除を行うため建設機械(重機)やクレーン車、けん引車(レッカー車)などを独自に配備している。
全国の特別高度救助隊
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脚注
関連項目
外部リンク
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