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幼保一元化
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幼保一元化(ようほいちげんか)は、少子化の進行、育児サービスの多様化に伴って生じている幼稚園と保育所の抱える問題点を解決するべく、幼稚園と保育所のみの一元化を図ろうとする政策である[1]。
幼稚園と保育所は異なる歴史的経緯により設立されたため、運営基準・職員の資格(幼稚園は幼稚園教諭、保育所は保育士)・所管庁(幼稚園は文部科学省初等中等教育局の幼児教育課、保育所と認定こども園はこども家庭庁)が異なっている。これを一元化し、教育水準の均等化とサービスの効率化を目指す政策である。
民主党政権下では「幼保一体化」という言葉を使用していた[2]。
歴史
- 1996年12月20日 地方分権推進委員会第一次勧告で地域の実情に応じた幼稚園・保育所の施設の共用化等の弾力的な運用の確立を求めた。
- 1997年1月24日 教育改革プログラムで、国民のニーズに的確に応えるための幼稚園と保育所の在り方について、地方分権推進委員会の勧告等をも踏まえ、厚生省と共同で検討する。当面は、地域の実情に応じた幼稚園と保育所の施設の共用化について弾力的な運営が図られるよう検討を進め、平成9年度中に具体的な方針をまとめる事が定められた。
- 1997年4月 幼稚園と保育所の在り方に関する検討会で、幼稚園と保育所の在り方について、1997年度に両施設の共用化等に関する具体的方針をまとめることを中心に検討。
- 1998年3月10日 幼稚園と保育所の施設の共用化等に関する指針が通知され、施設共用が開始された。
- 2003年4月21日 構造改革特別区域法に基づく構造改革特別区域計画の第1回認定で幼保合築施設での幼稚園児・保育所児等の合同活動が初めて容認された。
- 2004年3月29日 構造改革特別区域における『公立保育所における給食の外部搬入方式の容認事業』についてが通知され、公立保育所での給食の外部搬入が容認された。
- 2004年3月31日 保育所の調理室と学校の給食施設の共用化についてが通知され、学校と敷地や建物を共用する場合等での学校と保育所の給食施設の共用が認められた。
- 2004年12月24日 中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会議にて「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設について」の骨子が取りまとめられた[3]。
- 2005年4月6日 「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設について」に基づく総合施設のモデル事業が採択された[4]。
- 2006年3月31日 総合施設モデル事業評価委員会により総合施設のモデル事業の最終まとめが行われた[5]。
- 2006年6月15日 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律が公布される。
- 2010年3月11日 幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築について検討を行うため、「子ども・子育て新システム検討会議」を開催[6]。
- 2010年6月1日 児童福祉施設最低基準が改正され、3歳以上児の給食は特区申請を要せずに外部搬入が認められた。
- 2023年4月1日 こども家庭庁の発足に伴い、保育所及び認定こども園を管掌する省庁をこども家庭庁に移管。
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認定こども園
→詳細は「認定こども園」を参照
2006年に「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」 が制定され、幼保一体化施設として認定こども園制度が開始された。認定こども園は、保育に欠けない幼児を4時間程度教育する幼稚園的機能と保育に欠ける乳幼児を長時間保育する保育所的機能を一体化している。
日本政府の動き
幼保一体化とは、自民党政権下での幼保一元化と同じ構想のことであり、民主党政権では幼保一体化という言葉を使用していた。
2010年1月27日の参議院予算委員会の林久美子委員の質問に対し、鳩山由紀夫内閣総理大臣は、幼保一体化を進めるためにできる限り役所の一体化を行う方向で進めると答弁した。
また、仙谷由人内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)は、幼保一体化を含め新たな次世代支援のために包括的・一元的な制度の構築を進めるために、2011年の通常国会までに所要の法案を提出し、利用者本位の保育制度に向けた抜本的な改革、イコールフッティングによる株式会社・NPOの参入促進、そして幼保一体化の推進を図る方針を明確にした[7][8]。
民主党は、2009年に出されたマニフェストの中で、政策目的として「縦割り行政になっている子どもに関する施策を一本化し、質の高い保育の環境を整備する。」とし、具体策の一つで「子ども家庭省(仮称)」の設置を検討する事を掲げた[9]。
自民党ではこども家庭庁に幼稚園、保育園、認定こども園を一元化する方向で調整している[1]が、文部科学省や内閣府による縄張り争いにより踏み込めず、器作りが先行する形となっている[10]。
課題
要約
視点
設立思想の違い
保育所は社会保障のセーフティネットとしての役割を持ち平等な保育(教育)が原則であるのに対し、幼稚園は入園の応諾義務と授業料の公定が教育になじまないとして反対している[11][12]。
根拠法の違い
保育所は保育に欠ける児童を収容する児童福祉施設であり、幼稚園は就学前に通わせる教育施設である。その目的にあわせて、施設整備や人員配置、カリキュラム作成が行われている。
保護者の違い
保育所児の保護者は原則として、共働き又は一人親家庭であり、幼稚園の保護者は片働きである事が多い。幼稚園の保護者会は専業主婦の都合に合わせ昼間の時間帯に行われることが多いが、保育園では保護者会は就労事情を考慮し就労時間外に行なうことが多い。
設備
保育所は0歳から就学前までの乳幼児、幼稚園は3歳から就学前までの幼児を扱う。乳児を扱うには、専用のトイレ設備、沐浴設備、調乳・離乳食・アレルギーに対応した給食設備などが必要。幼稚園が乳児を扱うには経験のない分野での多大な設備投資と人材確保が必要になる(保育に欠けない0歳から2歳までについては根拠となる法律がなく、どちらの園でも収容することができない)。逆に、園庭の面積や職員の免許・資格など、保育所が幼稚園並みの教育環境を整える場合も大幅な設備投資と人材確保を要する。
労働組合の違い
幼稚園教職員は日本教職員組合や全日本教職員組合などの教職員組合に加入することになるが、保育所職員は公立では全日本自治団体労働組合や日本自治体労働組合総連合など各自治体の労働組合、私立は全国福祉保育労働組合などの独自の労働組合に加入することになる。
業界団体の違い
ぞれ全国規模の業界団体が異なる議員を支援しているため、族議員である橋本龍太郎(厚生族)と森喜朗(文教族)により一本化が実現しなかった[1]。
社会保険の違い
公立幼稚園教職員は公立学校共済組合、私立幼稚園教職員は日本私立学校振興・共済事業団の組合員となる。公立保育所職員は各自治体が加入している共済組合の組合員、私立保育所職員は全国健康保険協会の被保険者または健康保険組合の組合員となる。そのため、保険者選択の必要が生じる場合や、保険料の按分負担が生じる場合が想定される。
資格
幼稚園教員は幼稚園教諭(専修、一種又は二種)免許状が必要[13]、保育所は保育士資格を有する職員を置かなければならない[注 1][注 2]。
大学・短大・専修学校等の養成課程では認定こども園制度の発足に伴い、幼稚園教諭・保育士を両方取得できるようにカリキュラムを改定している。
- 幼稚園教諭免許状を有する者が保育士試験を受験する場合は、発達心理学・教育原理・実技試験の免除に加えて、平成22年度より養成課程で履修した教科目に対応する試験科目が免除される事に制度が改められた。
- 一定の学歴を有する保育士資格を有し、児童福祉施設・へき地保育所・認定こども園で3年以上の実務経験を有する者は幼稚園教員資格認定試験の受験資格を得る。合格者は教育職員免許法第16条の規定により、幼稚園教諭二種免許状の授与申請ができる。
平成27年度より、一方の免許状ないしは資格を有するもので、3年以上(かつ4320時間)の実務経験がある場合、特例科目8単位以上の履修でもう一方の資格ないし免許状を申請できる特例が設けられた(平成31年度までの5年間限りの時限措置であったが、後に令和6年度までの10年間に延長され、その後、さらに令和11年度までの15年間に延長されている)。
- 令和5年度からは、これまでの実務経験に上乗せして、さらに認定こども園での実務勤務が2年以上(かつ2880時間以上)有する場合は、2単位減免の措置が取られる(期限は、令和7年3月末までであったが、こちらも令和12年3月末までに延長)。
- 保育士資格を有する者が幼稚園教諭免許状を授与されるには、特例科目を修得の上、教育職員検定により、教育職員免許法施行規則附則第18項(平成30年までは附則第19項)を根拠に都道府県教育委員会に授与申請を行う。学士の学位を有する者は一種免許状、それ以外は二種免許状が授与される(修士の学位もしくは専門職学位を有していても、この特例では専修免許状の授与申請はできない)。
- 幼稚園教諭免許状を有する者が保育士資格を得るためには、特例科目を修得の上、保育士試験に出願すれば、全試験免除で合格となり、都道府県の管轄部署に登録すれば、保育士が得られる。
→詳細は「保育士 § 幼保一元化に対応した保育士資格取得の特例」を参照
入所選考について
幼保連携型認定こども園の保育所部分の入所選考は、当該自治体の保育所の選考基準に準じて認定こども園が定めた基準により行なわれる。
給食について
保育所は児童福祉施設最低基準により給食が義務付けられ、3歳未満児に対しては所内調理が必要である(3歳以上児は2010年6月1日以降、外部搬入が認められた)。そのため、3歳未満児を収容する保育所は、他の社会福祉施設と併設される場合を除き調理室の設置が必要である。
管轄省庁の違い
幼稚園は文部科学省初等中等教育局・幼児教育課、保育所および認定こども園はこども家庭庁(こども家庭庁発足前は、保育所が厚生労働省児童家庭局・保育課管轄、認定こども園が内閣府管轄であった)が所管していることから、省庁の縄張り争いがある[1]。
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関係する構造改革特別区域
要約
視点
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脚注
関連項目
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