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仏塔の形式の一つで層塔と呼ばれる楼閣形式の仏塔のうち、五重の屋根を持つもの ウィキペディアから
五重塔(ごじゅうのとう)は、仏塔の形式の一つ。層塔と呼ばれる楼閣形式の仏塔のうち、五重の屋根を持つものを指す。下から地(基礎)、水(塔身)、火(笠)、風(請花)、空(宝珠)からなるもので、それぞれが5つの世界(五大思想)を示し、仏教的な宇宙観を表している。
仏塔は、古代インドにおいて仏舎利(釈迦の遺骨)を祀るために紀元前3世紀頃から造られ始めたストゥーパに起源をもっている。古代インドのストゥーパは饅頭形(半球形)のものであったが、この形式が中国に伝えられると楼閣建築の形式を取り入れて高層化するようになった。こうした楼閣形の層塔は、朝鮮半島を経て日本へ伝えられた。木造の層塔は日本に多く残っており、中国・朝鮮半島における遺例は極めて少ない。
日本では各地の仏教寺院や神社などに木造の五重塔や三重塔があり、地区のランドマークとなっているものも多い。木造塔のほか石・瓦・鉄製の塔もあり、近代以降は鉄筋コンクリート造の塔もある。多層塔としては他に七重塔、九重塔、十三重塔などがあるが(層の数は奇数にほぼ限定されている)近世以前の木造七重塔・木造九重塔の現存するものはない。奈良県の談山神社には木造十三重塔があるが、これは楼閣形の層塔ではなく、二重から十三重までの屋根は密に重なっていて、屋根と屋根の間にはほとんど空間がない簷塔(えんとう)である。
中国の層塔は最上階まで登れるものが多いのに対し、日本の木造五重塔は現代の感覚で言う五階建ではなく、二重目以上の塔内部は軒を支えるために複雑に木組みがなされており、一般参詣者は上層に登ることはできないのが普通である。現在では宗教と関係なく建てられた観光用のものもある。
(※石造五重塔は割愛)
五重塔の耐震構造である「柔構造」は近年、日本はもちろん世界の超高層建築に採用されている。しかし、日本古来の五重塔が耐震性が高いとする根拠は歴史上地震により倒壊した例がこれまでなかったためで、現状では結果論の域を出ておらず、建設時に意図的に柔構造に設計されたかも定かではない。むしろ、仏舎利塔という五重塔の役割を考えればその構造は宗教的な意味合いが第一に意図され柔構造は副次的な産物である可能性が高いと思われる。実際、法隆寺等の古い五重塔では腐食が確実であるにもかかわらず心柱のみ地面に埋没させる掘立柱としたり、城郭建築等と異なり貫柱等を一切通さないなど、建築構造としては合理性を欠いている。
五重塔の耐震性においてキーワードとなっているのが「心柱」であるが、五重塔は建築構造としては心柱に全く依存していない。また、内部空間の利用が考慮されていないため、構造材の密度が高く一般的な建築と比べて強固な建築となっている。実際、現在の法隆寺五重塔は心柱が腐食して地面に接していないことからもわかるように、建築構造としては心柱が存在しなくても問題なく成立する。なお、耐震性が高い理由は以下のような説がある。
耐震性に関しては、未だ解明されていない部分が多いが、近年には工学的に解明するため、建築構造研究者のグループ「五重塔を揺らす会」を中心にして5分の1模型による振動実験が行われ、2006年には心柱の有無による比較実験が行われた。その結果、阪神・淡路大震災クラスの揺れでは心柱は塔の変形や揺れを抑制する効果が見られるものの、閂効果は現れず、心柱の有無にかかわらず耐震性は極めて高いことが明らかとなった[3]。ただし、阪神・淡路大震災を超える地震で心柱が閂効果を発揮するかは不明である。また、五重塔の耐震性が高い最大の理由は「高層」であることで、固有の周期が長くゆっくりと揺れるため、地震の周期と合致しにくいことがわかった。
なお、東京スカイツリーを設計した日建設計はこの制震システムの形や構成が「五重塔心柱」に似ているので五重塔になぞらえて、「心柱制振」と呼んだが、マスコミにより五重塔の技術が応用されたかのように報道された。しかし、上述の通り、五重塔の耐震性は未解明の部分が多く、技術的に利用することはできず、実際には「質量付加機構」という現代の制振技術を応用したものである。
五重塔の心柱構造は時代により変遷があり、概ね以下のように分類される。
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