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武蔵 MUSASHI

2003年のNHK大河ドラマ第42作 ウィキペディアから

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武蔵 MUSASHI』(むさし)は、NHK2003年1月5日から12月7日にかけて放送された大河ドラマ第42作。大河ドラマシリーズ初の地上デジタル放送[注釈 1][1]

NHKテレビ放送開始50周年、大河ドラマ40周年記念作品でもあった。

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概要

要約
視点

原作は吉川英治の『宮本武蔵』。吉川の小説の大河ドラマ化は1991年の『太平記』以来で、4作目であった。主演の七代目市川新之助は、1994年の『花の乱』出演以来。武蔵の幼馴染・本位田又八には堤真一、幼馴染で恋人のお通役には米倉涼子、宿敵・佐々木小次郎にはTOKIOメンバーの松岡昌宏、小次郎の恋人・琴役は仲間由紀恵が序盤で同じく恋人であった八重役と兼ねて二役を演じ、琴の死後に小次郎の恋人となるお篠は宮沢りえが演じた。後半の宿敵・柳生宗矩は中井貴一が演じた。また脚本には鎌田敏夫が起用され、音楽にエンニオ・モリコーネを迎えた。大河ドラマ初出演になるビートたけしの演技が話題を呼んだが、一方で視聴率は前半以降は低迷した。平均視聴率16.7%、最高視聴率24.6%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)[2]

史実に基いているとはいえ、女性がレイプされるシーン[注釈 2] や濡れ場が露骨に描かれたり、虐殺シーンがあったりと、大河ドラマとしては異色の演出が見られた。

第14話において、上半身裸(映されたのは背中のみ)の吉野太夫が武蔵に対して「抱いてください」と言うシーンが放送されたが、これらの性的な表現を問題視した吉野太夫ゆかりの京都・嶋原の財団法人「角屋保存会」が「文化人であった太夫への誤解を生む」としてNHKに対し抗議を行った[3]。それ以前にはNHKはしばしば嶋原を番組で取り上げることがあったが、この一件以降は無くなっている。

原作は巌流島の決闘で終結しているが、本作では巌流島以降の武蔵が描かれ、キリシタンの村を作り武蔵を敵視する柳生宗矩から守り抜こうとするエピソードもある。

中盤の山場となる巌流島の回では、ラジコンのヘリコプターによる空撮に加え、映画『マトリックス』で注目された視覚効果「バレットタイムデジタルスチルカメラを30台使用)」で撮影されたシーンもあった。しかし巌流島の決闘以降、一度放映された場面を回想シーンとして構成された回も数回分あった。

また、武蔵とは何の絡みもない淀殿を中心とした豊臣家を描いた場面が挿入されたり、大坂城が落城する際には柳生宗矩との対戦以外、戦場で何もしない武蔵が描かれた。なお、総集編では「宮本武蔵」の定番エピソードである宍戸梅軒との対決が収録されておらず、お通の行動も大幅に変更されている。また、藤田まことが演じる柳生石舟斎の登場シーンがカットされている(その正確な理由は不明だが、製作スタッフと藤田との間にトラブルが起こっていたことが藤田の著書によって公表されており、以後2010年に亡くなるまで、藤田はNHKのドラマに出演しなかった)。

本作の放映に先駆けて、前年2002年の『NHK紅白歌合戦』では市川新之助が審査員として参加した。そのほかにも松岡、胤舜役の浜田学、阿厳役の武藤敬司がそれぞれの役の衣装で登場した。

なお、紀行のコーナーのタイトルは『〜紀行』というタイトルでなく、『武蔵伝説の旅』である。

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登場人物

武蔵及び武蔵関係

  • 新免武蔵→宮本武蔵 - 増田貴久七代目市川新之助
    元の名は新免武蔵しんめんたけぞう)。生来気が荒いところがあり、村の人々からは煙たがれながら育つ。青年期に父・新免無二斎から「お前は弱い」と繰り返し言われたことが悔しく、「強くなる」ために武者修行の旅に出る。その途中で柳生石舟斎をはじめとする多くの人たちと出会うことにより成長してゆく。
  • 本位田又八 - 内山眞人堤真一
    武蔵の親友。武蔵と比べるとどこか頼りないところがあり、様々な失敗を繰り返す。そのことから本作でのコメディリリーフの役割を果たしている。武蔵からは「又やん」と呼ばれている。
    武士としては成功できず、武蔵に対しコンプレックスに近い感情を抱いていたが、その後は商売を始め、それに生きがいを感じるなど、人間的に成長していく。また、商人としてやっていく中でようやく武蔵の心情が理解できるようになった。
  • お杉 - 中村玉緒
    又八の母。お通の育ての母。又八を溺愛しており、それゆえに武蔵に対して冷たい態度をとることが多かった。又八を追って江戸まで行くこともあった。しかし巌流島の戦いの後、備前に戻った武蔵・お通に誘われ、武蔵たちと共に開墾を始め村づくりに参加する。
  • 権六 - 谷啓
    お杉の弟。又八の叔父。お杉の旅に付き合わされるが、武蔵とお通に敵対感情は持っておらず、時折暴走するお杉の制止役でもある。
  • お通 - 桜井真琴→米倉涼子(一部吹き替え:高橋ユミ
    又八の許婚で、武蔵の幼馴染み。村を出奔した武蔵を追いかける旅に出るがすれ違いが続き、諸国をさまよう。旅の道中では何度も大きな危険に遭っており、浪人たちに捕らわれかけたり、あかねや絃三に催眠術をかけられて気を失って倒れたり、祇園藤次の一味に捕らわれて身も心も弄れたりしている。紆余曲折の末、彼女は大坂の陣後、武蔵と生きていくことになる。晩年の武蔵が「五輪書」を執筆している頃には亡くなっており、仏壇にお通の位牌が置かれている。
  • ルシア - 高橋惠子
    お通の母。敬虔なキリシタン。
  • 朱実 - 内山理名
    母・お甲の手により遊女にさせられたりするが、次第に又八に惹かれるようになり母の手から離れ江戸へ向かう又八についていく。次々と新しい商売に手を出そうとする又八に振り回されながらも又八に対する愛情を深め、彼の子供を宿すことになる。
  • お甲 - かたせ梨乃
    朱実の母。生きるためなら朱美を道具にすることもあるが、娘のことは愛している。
  • 新免無二斎 - ビートたけし
    武蔵の父。又八の叔父にあたる本位田家の当主を殺したことで村人たちから白眼視され、村を追われた。元々人間不信気味なところがあり、自分の妻子に対しても愛情を注ぐことはなかった。武蔵の記憶では父は自分を圧倒する強さと怖さを持った人物だったが、細川家の使者として現れた父はまるで別人のような哀れな姿に成り果てており、武蔵は強い衝撃を受けた。
  • お吟 - 菊池麻衣子
    武蔵の姉。
  • 本位田外記之助 - 伊藤紘
    又八の叔父。本位田家の当主。
  • 城太郎 - 三浦春馬
    武蔵の最初の弟子。
  • 青木丹左衛門 - 伊藤敏八
    城太郎の父。
  • たみ - 洞口依子
    城太郎の母。
  • 三之助 - 小池城太朗
    実は児島備前の孫。のちに武蔵に付いていくことなる。
  • 沢庵 - 渡瀬恒彦
    禅僧。武蔵の心の師。

小次郎関係

  • 佐々木小次郎 - 大高力也松岡昌宏
    武蔵同様、諸国を回り剣術修行をする旅を続けていて、ついに自分の技・燕返しを完成。のちに豊前小倉藩細川家の剣術師範役として召し抱えられる。武蔵とともに、お互いの実力を認め合っている。巌流島で武蔵と闘い、壮絶な死を遂げた。
  • お篠 - 宮沢りえ
    小次郎の恋人。奇妙な縁で小次郎と運命を共にする。
  • 八重 - 仲間由紀恵
    小次郎の許嫁だったが、師の命で父親を小次郎に討たれ、小次郎の目の前で自害する。
  • 琴 - 仲間由紀恵
    八重に瓜二つの容姿を持つ。小次郎に唇を奪われ、恋に落ちる。小次郎と共に旅に出るが、小次郎の雇い主に犯されてしまい、心をとざしてしまう。のちには小次郎と浪人の戦いで顔に刀の傷を受けてしまう。
  • 原田休雪 - 遠藤憲一
    仙台藩配下の黒脛巾組としてお篠を追っていたが、やがてお篠と相思相愛の関係になる。役目を放棄し、組からも逃れたために伊達側の人間に殺害される。
  • 鐘巻自斎 - 津嘉山正種
    佐々木小次郎の師。
  • 茨木屋又右衛門 - 磯部勉
    琴の元夫。商人だが元は忍びだったようである。

柳生一族

宝蔵院一門

吉岡一門

  • 吉岡清十郎 - 榎木孝明
    武蔵が初めて戦った剣豪。名門吉岡を率いる人物であるためプライドの高さが強調された。武蔵に敗れた後は剣術を捨て出家し、後に武蔵と再会している。
  • 吉岡伝七郎 - 光石研
    清十郎の弟。
  • 壬生源左衛門 - 狭間鉄
    清十郎の叔父。
  • 壬生源次郎 - 中野勇士
    源左衛門の子。幼いながらも、祇園藤次らによって担がれて一乗寺の決闘の名目上のリーダーとなる。
  • 祇園藤次 - 阿部寛
    吉岡道場の剣術指南役。
  • 植田良平 - 甲本雅裕

大山軍学所

  • 大山勘兵衛 - 大山克巳
    軍学者。将軍家剣術師範役として台頭していた柳生宗矩に敵対心を抱いている。
  • 大山余五郎 - 宮内敦士
  • 北見新蔵 - 草野康太
    偶然出会った小次郎に軍学を馬鹿にされたことに腹を立て復讐の時を狙う。

その他武蔵のライバル

  • 宍戸梅軒 - 吉田栄作
    武蔵が倒した盗賊・辻風典馬の兄。ひょんなことで鎖鎌の術を教わろうとかつに近づいてきた男が、弟を殺した仇である上に吉岡一門を倒した武芸者とわかり対決を挑む。武芸者としての野心に燃えていたが、妻子持ちの生活になったことでその気持ちが揺らぎ始めていた。
  • かつ - 水野美紀
    梅軒の妻。とても美しいため、浪人に襲われたが、夫に教わった鎖鎌で圧倒したという。夫の遺言によって、夫を殺した武蔵に伴われ息子と共に生まれ故郷に戻ることになったが、途中で祇園藤次の襲撃を受けることになり、武蔵と共闘する。その中でお互い愛にも似た感情を抱くようになるが、最後は武蔵と別れた。
  • 夢想権之助 - 大柴邦彦
    農民の出身であるが息子の出世を望む母に押され、不本意ながら数々の武芸者たちと勝負をさせられ続けた。母を喜ばせたい一心で武蔵に対決を挑み、自身の立場を明かした上でわざと負けてくれるよう頼む。あえて権之助の攻撃をうけて倒れた(と本人は思ったが、実際には母親の気迫ある一言に圧倒された武蔵に隙ができたからであった)武蔵に対する申し訳なさから、自分は仕官はせず百姓の仕事を続けたいと母に懇願する。武蔵の人柄に感銘を受けた権之助は後に、備前で村を作っている武蔵の噂を聞きつけ、開墾の手助けをするために武蔵の元へ駆けつける。柳生一門との戦いで負傷し、故郷に帰った。
  • たか - 左時枝
    権之助の母。
  • 辻風典馬 - 永澤俊矢
  • 小野忠明 - 林邦史朗
    小次郎と対決し、敗北する。

豊臣家関係

徳川家関係

真田家関係

細川家関係

その他の大名・武将

本阿弥光悦関係

豪商

その他

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スタッフ

  • 脚本:鎌田敏夫
  • 原作:吉川英治(『宮本武蔵』より)
  • 音楽・サウンドトラック指揮:エンニオ・モリコーネ
  • テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
  • テーマ音楽指揮:服部克久
  • 演奏:ローマ交響楽団
  • トランペット演奏:関山幸弘(NHK交響楽団首席トランペット奏者)
  • フルート演奏:藤井香織
  • ソプラノ独唱:増田いずみ
  • 語り:橋爪功政宗一成(第1回予告)、膳場貴子(武蔵伝説の旅)
  • 時代考証:二木謙一
  • 建築考証:平井聖
  • 衣裳考証:小泉清子
  • 題字:吉川壽一
  • 殺陣・武術指導:林邦史朗(本編にも出演)、荒木章博(野田派二天一流第二十一代師範)
  • 所作指導:橘芳慧
  • 馬術指導:田中光法
  • 邦楽指導:清元栄吉
  • 絵画指導:イ・サンヒョウユ・ヨンゴ
  • 古楽指導:松本雅隆
  • 笛指導:福原百七
  • 琵琶指導:須田誠舟
  • ろくろ指導:山本實
  • 副音声解説:佐久田脩
  • 撮影協力:茨城県、八郷町、伊奈町、水海道市、日立市、常陸太田市、岡山県、中和村、湯原町、勝山町、八束村、兵庫県姫路市熊本県、本渡市、牛深市、福井県福井市、三国町、山梨県小淵沢町静岡県御殿場市
  • 制作統括:一井久司古川法一郎
  • 制作:岩谷可奈子
  • 美術:岸聡光、荒井敬、近藤智
  • 技術:川邨亮、川崎和彦
  • 音響効果:林幸夫、原大輔、吉田直矢
  • 編集:阿部格
  • 撮影:熊木良次、宮路信広、中村忍、岡田裕
  • 照明:新藤利夫、久慈和好
  • 音声:小林健一、奥山操、谷田洋一、藤善雄、中本一男
  • 映像技術:釣木沢淳、田淵英明、近藤寿紀、横田幹次、片岡啓太
  • 美術進行:松谷尚文、高橋秀樹、峯岸伸行
  • 演出:尾崎充信、木村隆文、後藤高久野田雄介椰川善郎櫻井賢大原拓

放送

放送日程

平均視聴率 16.7%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)[2]

さらに見る 放送回, 放送日 ...

総集編

12月28日一括放送。

  • 第一部「俺は強い!」(19:20–20:45)
  • 第二部「決闘!巌流島」(21:00–22:25)
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メディア

2000年以降に放送された大河ドラマで唯一、DVDなどのソフト化が長らく全くされていない作品であったが、2023年に完全版・総集編のDVDソフトが発売された。NHKアーカイブスでは2019年12月より総集編の視聴が可能となっている。

著作権訴訟

第1回の山場となる夜盗襲撃シーンは、茨城県にロケセット「伊吹山の庄屋の家」を製作した力の入った撮影であったが黒澤明監督の映画『七人の侍』(1954年)に類似している部分があった。放映後に週刊誌などからも指摘され、イメージダウンになっている。黒澤プロ側はオマージュとしては解せず、放送終了後の2004年1月に、NHKと脚本家に対し、著作権翻案権)侵害などを理由に訴訟を起こしたが、2004年東京地方裁判所により請求は棄却された。2005年に知的財産高等裁判所も一審を支持。同年、最高裁も上告を棄却した[4]。「芸術的完成度がまったく違う」という判決であった。

2011年9月書道作家である上坂祥元[5] が同作品並びに『龍馬伝』のタイトルロゴが自らの構図と酷似し、著作権侵害しているなどとして、NHKを相手取り、約1,100万円の損害賠償を求める訴訟京都地裁に起こした[6]。ただし、京都地裁・大阪高等裁判所とも創作性を認めず、原告の訴えを退けている[7]

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評価

2016年2月19日にTBSラジオの番組『荻上チキ・Session-22』内で「今夜決定!最高の大河ドラマ」という特集が放送され、同番組リスナーや出演者が1人1票で投票した順位の結果が発表された。この時点まで発表された全ての大河ドラマ作品が対象で総投票数1,000票以上の大規模なものであったが[8]、本作は『春の坂道』と共に1票も投票されずワースト作品となった。番組に出演した時代劇研究家・春日太一は本作について前述の巌流島の決闘が物語の中盤で終わってなお話が続く件にも触れ「驚くぐらいつまらなかった」とコメントした[注釈 3][9]

脚注

関連項目

外部リンク

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