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紅葉

広葉樹の葉が落ちる前に色が変わる現象 ウィキペディアから

紅葉
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紅葉(こうよう)、もみじ(紅葉、黄葉)は、主に落葉広葉樹落葉の前にが変わる現象のこと。狭義には、黄色に変わるのを黄葉(こうよう、おうよう)、赤色に変わるのを紅葉(こうよう)、褐色に変わるのを褐葉(かつよう)と呼ぶが、これらを厳密に区別するのが困難な場合も多く、いずれも「紅葉」として扱われることが多い。

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北大イチョウ並木の黄葉

概要

一般に落葉樹のものが有名であり、に一斉に紅葉する様は観光の対象ともされる。カエデ科の数種を特にモミジと呼ぶことが多いが、実際に紅葉が鮮やかな木の代表種である。また、になると低木の葉も紅葉し、それらを総称して草紅葉(くさもみじ)ということがある[1]

同じ種類の木でも、生育条件や個体差によって、赤くなったり黄色くなったりすることがある。葉が何のために色づくのかについては、植物学的には葉の老化反応の一部と考えられている。

なお、常緑樹も紅葉するものがあるが、緑のと一緒の時期であったり、時期がそろわなかったりするため、目立たない。ホルトノキは、常に少数の葉が赤く色づくのが見分けの目安になっている。常緑針葉樹であるスギコノテガシワは冬には茶色に変色する。

日本における紅葉は、9月頃から北海道大雪山を手始めに始まり、徐々に南下する。紅葉の見頃の推移を桜前線と対比して紅葉前線(こうようぜんせん)と呼ぶ。紅葉が始まってから完了するまでは約1か月かかる。見頃は開始後20 - 25日程度で、時期は北海道から北陸では10月上旬から11月上旬、関東から九州では11月中旬から12月中旬まで。

ただし、山間部や内陸では朝晩の冷え込みが起こりやすいために、通常これより早い。

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紅葉のメカニズム

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赤は主にナナカマド・黄色は主にダケカンバ穂高連峰涸沢岳
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サトウカエデの紅葉の各段階

葉が緑色に見えるのは光合成の装置にクロロフィルが含まれるからである。夏の間、光を吸収して活発に光合成を行い、栄養を生む。

落葉樹の葉では、秋になり日照時間が短くなるとクロロフィルが分解される。これは植物学的には葉の老化反応の過程と見なされ[2]、気象条件が光合成に適さない冬を迎える前に起こる。この過程では光合成の装置などが分解され、葉に蓄えられた栄養も合わせて幹へと回収される。翌年の春にこれらは再利用される。この過程中に生じる働きが紅葉、黄葉、褐葉を生む原因となる。

なおこれらが十分に回収された後、葉柄の付け根に植物ホルモンの1つエチレンの働きによって離層ができ、枝から切り離される。これによって、無駄な水分やエネルギーが冬の間に消費されることを防ぐ。

植物の葉は「カロテノイド」色素などを使って光の害から自分自身を守る仕組みを備えているが、葉の老化過程ではこれらも分解されるため、対処として葉を守る働きが必要となる。

なおこれは離層ができる前の過程である。また「葉柄の付け根に離層ができ、葉で作られた糖類やアミノ酸類が葉に蓄積し、その糖から新たな色素が作られる」とする俗説は誤りである。

紅葉、黄葉、褐葉の違いは、植物によってそれぞれの色素を作り出す能力の違いと、気温、水湿、紫外線などの自然条件の作用による酵素作用発現の違いが、複雑にからみあって起こる現象とされる。

紅葉の原理

葉の赤色は色素「アントシアン」に由来する。アントシアンはからにかけての葉には存在せず、老化の過程で新たに作られる。アントシアニンは光の害から植物の体を守る働きを持っているため、老化の過程にある葉でクロロフィルやカロテノイドを分解する際に、葉を守るために働くと考えられている[2]

黄葉の原理

葉の黄色は色素「カロテノイド」による。カロテノイド色素系のキサントフィル類は若葉の頃から葉に含まれるが、春から夏にかけては葉緑素の影響により視認はできない。秋に葉のクロロフィルが分解することにより、目につくようになる。カロテノイド色素も光による害から植物を守るために機能している。

褐葉の原理

  • 黄葉と同じ原理であるが、タンニン性の物質(主にカテコール系タンニン、クロロゲン酸)や、それが複雑に酸化重合したフロバフェンと総称される褐色物質の蓄積が目立つためとされる。
  • 黄葉や褐葉の色素成分は、量の多少はあるがいずれも紅葉する葉にも含まれており、本来は紅葉するものが、アントシアンの生成が少なかったりすると褐葉になることがある。
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紅葉と進化

紅葉の至近要因については知られているが、そもそもなぜ紅葉があるのか、紅葉の進化的要因、進化的機能については長らく研究対象となってこなかった[3]

1999年平成11年)に北半球の262の紅葉植物とそれに寄生するアブラムシ類の関係が調べられ、紅葉色が鮮やかであるほどアブラムシの寄生が少ないことが発見された。

紅葉の原因となるアントシアンやカロテノイドはそれを合成するのに大きなコストが掛かるが、直接害虫への耐性を高めるわけではない。またアブラムシは樹木の選り好みが強く、一部の種は色の好みもあるとわかっている。そのため、紅葉は自分の免疫力を誇示するハンディキャップ信号として進化した、つまり「十分なアントシアンやカロテノイドを合成できる自分は耐性が強いのだから寄生しても成功できないぞ」と呼びかけているとみなせる[4]

アブラムシ以外の寄生者に対するハンディキャップ効果はまだ調べられていない。紅葉の進化的機能についてはまだ議論が続いている。

紅葉する植物

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紅葉にまつわる文化

要約
視点

もみじ(紅葉、黄葉)

もみじ旧仮名遣い、もみぢ)は、上代語の「紅葉・黄葉する」という意味の「もみつ(ち)」(自動詞四段活用)が[5]平安時代以降濁音化し上二段活用に転じて「もみづ(ず)」となり[6]、現代はその「もみづ(ず)」の連用形である「もみぢ(じ)」が定着となった言葉である[7]

上代 - もみつ例
「子持山 若かへるての 毛美都(もみつ)まで 寝もと吾は思ふ 汝は何どか思ふ (万葉集)」
「言とはぬ 木すら春咲き 秋づけば 毛美知(もみち)散らくは 常を無みこそ (万葉集)」
「我が衣 色取り染めむ 味酒 三室の山は 黄葉(もみち)しにけり (万葉集)」
平安時代以降 - もみづ例
「雪降りて 年の暮れぬる 時にこそ つひにもみぢぬ 松も見えけれ (古今和歌集)」
「かくばかり もみづる色の 濃ければや 錦たつたの 山といふらむ (後撰和歌集)」
「奥山に 紅葉(もみぢ)踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき(古今和歌集)」

秋口の霜や時雨の冷たさに揉み出されるようにして色づくため、「揉み出るもの」の意味(「揉み出づ」の転訛「もみづ」の名詞形)であるという解釈もある。

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紅葉狩り(京都・常寂光寺

もみじ(紅葉、黄葉)狩り

日本では、紅葉の季節になると紅葉を見物する行楽、紅葉狩りに出かける人が多い。紅葉の名所と言われる場所、例えば奥入瀬青森県)や日光栃木県)、京都の社寺などは、行楽客であふれる。紅葉をめでる習慣は平安の頃から始まったとされ、特に京都市内では多くの落葉樹が植樹されている。また、「草紅葉」の名所としては四万十川尾瀬秋吉台等がある。「狩り」という言葉は「草花を眺めること」の意味をさし、平安時代には実際に紅葉した木の枝を手折り(狩り)、手のひらにのせて鑑賞する、という鑑賞方法があった。

実際に枝を折り取って持ち帰る行為は森林窃盗罪となる。

英語圏では、Leaf peepingと呼ばれ、秋に紅葉を目当ての観光が行われる[8]。またフィンランドでは、ハイキングなどとともに紅葉を楽しむRuskaretki が行われる[9]

もみじの天ぷら

大阪府箕面市では、「もみじの天ぷら」がお菓子として定着している[10]

芸術作品

日本において、古来より紅葉は和歌をはじめ、様々な芸術の題材となっている。関連項目の項を参照。

文様

紅葉紋は、日本では家紋や社寺の紋にも使用されている。上流公家の菊亭家の家紋や一族の由縁の施設の浄土真宗真宗山元派本山證誠寺の寺紋、日蓮宗大本山本圀寺の寺紋が代表格である。同様に三つ紅葉の寺紋の使用例は真言宗醍醐派大本山転法輪寺寺紋真宗興正派勝覚寺寺紋である。歌舞伎一門の瀧乃屋市川家の四つ紅葉紋も存在する。

複数の紅葉の葉が配置された家紋の『三つ紅葉』や『四つ紅葉』の場合は基本、外側に葉の頭がある紋様を指す。一方『頭合わせ三つ紅葉』と呼ばれる葉の頭が内側の紋様は使用例が非常に少ない。

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日本国内の主な紅葉の名所

要約
視点

紅葉や黄葉が色づき始めるのに、日最低気温8℃以下(広葉樹)が必要。さらに5℃以下になると一気に進むとされる。美しい紅葉の条件には「昼夜の気温の差が大きい」「平地より斜面」「空気が汚れていない」「適度な水分」など光合成が行いやすい条件が必要である。紅葉の名所には上記の条件をよく満たす高原渓谷、標高が高い湖沼周辺にみられる。また、広い敷地・整備された庭がある寺社公園にも名所がみられる[11]

社団法人日本観光協会は、約500か所[注釈 1]の紅葉スポットを紹介している[12]。これを基にした日本紅葉の名所100選がある。

北海道地方

東北地方

関東地方

中部地方

近畿地方

中国地方

四国地方

九州地方

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国外の主な紅葉の名所

日本国外にも、紅葉名所が多い[13][14]

アフリカ

南アフリカ

アジア

韓国

台湾

中国

アメリカ・北

カナダ

米国

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バーモント州道100号線沿いのホッグバック山からの秋の眺め

アメリカ・南

アルゼンチン

オセアニア

オーストラリア

シドニー西郊外のグレーター・ブルー・マウンテンズ地域での紅葉、タスマニア島の在来種タングルフットブナの紅葉が見ごたえある。[16]

ニュージーランド

ヨーロッパ

イタリア

ウクライナ

英国

クロアチア

ノルウェー

フランス

ロシア

多国籍

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気象庁による観測

要約
視点

気象庁では、全国の気象官署で統一した基準により、イチョウ・カエデが黄葉・紅葉した日などの植物季節観測(生物季節観測)を行っており、観測する対象の木(標本木)を定めて実施している。

イチョウの黄葉日とは、標本木全体を眺めたときに、大部分の葉が黄色に変わった状態になった最初の日である。

カエデの紅葉日とは、標本木全体を眺めたときに、大部分の葉の色が赤色に変わった状態になった最初の日である。カエデは主としてイロハカエデを標本木としているが、イロハカエデが生育しない北海道では、イタヤカエデオオモミジヤマモミジを観測する。

さらに見る 1961年 - 1990年 平年値, 1991年 - 2020年 平年値 ...
さらに見る 1961年 - 1990年 平年値, 1991年 - 2020年 平年値 ...
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脚注

関連項目

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