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陸上自衛隊冬季戦技教育隊
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陸上自衛隊冬季戦技教育隊(りくじょうじえいたいとうきせんぎきょういくたい、JGSDF Cold Weather Combat Training Unit)は、陸上自衛隊真駒内駐屯地(北海道札幌市南区)に所在する北部方面混成団隷下[1]の教育隊であり、日本唯一の冬季戦専門部隊である。
概要
通称CWCTまたは冬季レンジャー。隊長は、1等陸佐(三)が充てられる。
部隊内にあった特別体育課程教育室からは、冬季オリンピックのバイアスロンなどの競技で毎回、日本代表選手を送り込んでいた(2015年(平成27年)度末に自衛隊体育学校隷下へ編成替[2])。

陸上自衛隊では、1956年(昭和31年)に富士学校にレンジャー研究課程を設置、1958年(昭和33年)には研究課程から正規の課程に昇格させて、体制を拡充した。そして、1960年(昭和35年)2月には倶知安駐屯地において普通科レンジャーによる冬季訓練が行われたが、零下30度の厳寒での訓練は、陸曹クラスの大ベテランが男泣きするほどの過酷さであった。この経験を踏まえて、同年5月15日、北部方面総監部第三部に特別戦技訓練隊準備室(室長村田1佐)が設置された。そして1961年(昭和36年)2月28日、倶知安駐屯地において、正安1佐のもと、特別戦技訓練隊が発足した。幹部10名・陸曹19名の体制で[3]、遊撃班とスキー班が設置されていた[4]。
1962年(昭和37年)4月16日には名寄駐屯地に移駐し、1964年(昭和39年)8月15日には北部方面隊特別戦技訓練隊(北方特戦隊)として隷属替えされた[3]。1967年(昭和42年)には、旭川市で行われた第2師団の創立記念パレードで、"Ranger"と染め抜かれた隊旗を先頭に、黒いベレー帽を被った隊員が行進に参加し、物議を醸した[5]。1970年(昭和45年)には真駒内駐屯地に移駐し[3]、1971年(昭和46年)7月、札幌駐屯地にあった北部方面スキー訓練隊を統合して、冬季戦技教育隊と改称した[4][6]。その後、2011年(平成23年)4月22日には、北部方面混成団新編に伴う処置で北部方面直轄部隊から北部方面混成団隷下へと編成替えが行われた。
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沿革
特別戦技訓練隊準備室
特別戦技訓練隊
- 1961年(昭和36年)2月28日:倶知安駐屯地において特別戦技訓練隊が発足。
冬季戦技教育隊
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編制
要約
視点

主に冬季レンジャー課程の指導を行う戦闘戦技教育室、冬季戦闘時の部隊運用の研究を行う調査研究室、バイアスロンやスキーの教育訓練を行う特別体育課程教育室からなっていた。これらのうち、オリンピック特別強化選手らからなる特別体育課程教育室には、現在40人弱の男女隊員が所属しており、将来の自衛隊体育指導者としての教育訓練を積みつつ、冬季オリンピックでのメダル獲得を目指し日々訓練を重ねていたが、2016年(平成28年)3月、自衛隊体育学校隷下に編成替えとなった。現在は戦闘戦技教育室、調査研究室からなる。
他にも全日本スキー連盟デモンストレーターの資格を持つ隊員が所属しており、スキー技術の指導にあたる指導者の技術の向上および新しい技術の習得を狙いとして、毎年、全日本スキー技術選手権大会に参加している。部隊全体としても他の部隊に教育訓練等の指導を行いながら、「特殊部隊」としての練度維持のため過酷な訓練を行っている。高度なスキー技術を組み合わせた国内でも屈指の戦闘技術を誇る部隊である。

北海道は寒冷・豪雪地域であり、かつて、ソビエト連邦と対峙する第一線であった。そのため、北方重視の戦略をとっていた陸上自衛隊は兵力・装備を集中させており、冬季の戦闘術の研究は必須であった。そのため、冬季戦技教育隊では、低視認性装備や隊員の体力低下・損害を防ぐ戦技の研究・開発に力を注いできた。それにより、雪中戦においては装備でも運用でもアメリカ陸軍をも凌ぐと言われている。アメリカ軍においても積雪寒冷地部隊の全員がスキー技術を習得していることはなく、自衛隊の雪中戦での戦闘能力の高さは世界屈指であると言われている。
近年においては新型スキー板の研究・開発に力を入れており、現在は従来型の2 m近い長さで直線型のスキー2型を改良した、全長が短く先端部と後部が広がった形状のカービングスキータイプのスキー3型を開発中である。これに合わせて伸縮可能な新型ストックや新型かんじき、新型白色外衣の開発も進められており、雪中での戦闘能力のさらなる向上が図られている。これらは従来型よりも厳しい環境下で効果的なものとなっており、新型かんじきは深雪や斜面にも対応する大型のものになっている。すでに一部の部隊では試験運用が始まっている。
かつては、対ソ連の特殊部隊的な側面が強く、レンジャー課程を優秀な成績で修了した屈強な隊員が各部隊から選抜されて所属し、さらに過酷な訓練を積むという超精鋭部隊であった。現在は、オリンピックの選手の養成機関という側面がクローズアップされがちだが、特殊部隊としての練度も維持しており、陸上総隊直轄の特殊作戦群と活発に合同訓練を行っている。また、警察官に対するレンジャー訓練も実施しているため、各県警SATとも交流が持たれている[7]。
その他にも原子力発電所の警備訓練や自衛隊の装備するあらゆる個人用携帯火器の訓練、潜水訓練、強襲用ゴムボートによる渡河訓練等の夏季の訓練も頻繁に行われている。有事の際には隊員・装備等の編成を教育隊から特殊部隊へと編成換えするものとされているが、詳細は明らかにされていない。
アメリカ陸軍等に所属する積雪寒冷地専門部隊と戦闘技術やサバイバル技術等の技術交流を積極的に行っており[8]、その技術・能力は高く評価されている。その他、東野圭吾の『夢はトリノをかけめぐる』においては特別体育課程教育室について取材が行われている。
- 冬季戦技教育隊本部
- 調査研究室
- 戦闘戦技室[9]
実施されている教育
冬季戦技教育隊でレンジャー教育を受けると、冬季遊撃レンジャーの資格が与えられる。これは通常のレンジャー教育と異なり、修了者には特別なレンジャー徽章が与えられる。
主要幹部
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主な選手等
主要装備
- 1/2tトラック / 73式小型トラック
- 3 1/2tトラック / 73式大型トラック
- 64式7.62mm小銃
- 89式5.56mm小銃
- 62式7.62mm機関銃
- 9mm拳銃
- 5.56mm機関銃MINIMI
- 84mm無反動砲
- 110mm個人携帯対戦車弾
関連作品
- TV番組
- 『1×8いこうよ!』
- 札幌テレビ放送制作、NNS加盟局を中心として関東地方のJAITS加盟局の一部とビデオ・オン・デマンドほかで放送・配信している、木村洋二、大泉洋ら出演のバラエティ番組。冬季五輪企画でたびたび登場。
- アニメ・漫画
- 『OBSOLETE』
- 第3話で日系人のミヤジマ米軍中尉が冬季戦技教育隊の交換将校になりすまし、インド陸軍の山岳部隊のもとに訪れる。
- 『魔法少女特殊戦あすか』
- 特殊作戦群M班の隊員として冬季戦技教育隊の出身者が登場。
- 小説
- 『ゴルゴタ』
- 深見真の小説。登場人物の一人である古馬里香が特別体育過程教室(自衛隊体育学校への編成替え前)の出身。
- 『ミッドナイトイーグル』
- 映画『ミッドナイト・イーグル』の原作小説。日本アルプスに墜落した架空の米軍ステルス爆撃機「B-3Aミッドナイトイーグル」の墜落現場へと派遣されている。主要登場人物の伍島亨一等陸尉も所属している。
- 『黙示の島』
- 元隊員が登場。作中では、冬季戦技教育隊がヴェトナム戦争に極秘で隊員15名を派遣しており、前述の元隊員もヴェトナムに派遣されて実戦を経験した隊員の一人という設定となっている。
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脚注
参考文献
外部リンク
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