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第44回世界遺産委員会

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第44回世界遺産委員会
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第44回世界遺産委員会(だい44かいせかいいさんいいんかい)は、2020年6月29日から7月9日中国福建省福州市で開催予定だった世界遺産委員会である。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で中止され、2021年7月16日から7月31日拡大第44回世界遺産委員会として、オンライン・ミーティングの形式で開催された。

本委員会では、新たに34件の登録と1件の登録抹消があり、世界遺産の総数は1154件(文化遺産897、自然遺産218、複合遺産39)となった。

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第44回世界遺産委員会
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開会式(福州海峡文化芸術センター)
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委員会の様子
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当初会場予定地だった海峡国際展示場は閉会式に使われた

日程・会場の予定と変更

要約
視点

第44回世界遺産委員会は、2020年6月に中国・福建省の福州市で開催予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により開催中止となった。これまでにも蘇州市で開催予定だった2003年の第27回世界遺産委員会がSARSの影響で、マナーマバーレーン)で開催予定だった2011年の第35回世界遺産委員会バーレーン騒乱により中止となり、フランスパリ国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)本部で開催されたことはあったが[注 1]、今回はCOVID-19のパンデミックヨーロッパ遷移したため、ユネスコ本部での開催も行われないこととなった[hp 1][注 2][注 3]

その後、9月30日と10月16日に委員国によるオンライン会合を開催して当初の予定通り福州で開催する方針を固め[hp 2][hp 3]、11月2-3日(日本時間)に開催した臨時セッションで正式に決定(開催日時は2021年6〜7月を予定し詳細な日取りは未決)[hp 4]。また、2021年にウガンダで実施予定だった次回委員会については同時に開く案や期間を空けて21年中(秋〜冬頃)に開催する案が出され[注 4]、結局21年分もまとめて開催する方向となり[hp 3][hp 4]、ユネスコでは第44回拡大委員会(extended 44th session)という扱いにした[hp 1][注 5]

2021年3月29日に再度委員国によるオンライン会合を開催し、世界的に新型コロナウイルスの変異株による再流行が顕著になっていること、中国への国際線就航便が限られていること、中国では入国後2週間の隔離措置を採っており委員会全日程を含めると約1ヶ月に及ぶ長期拘束になること(外国人参加者は母国の制度次第で帰国後さらに隔離される)、委員会に参加する委員・ユネスコ職員・関係諸団体・報道陣などは総勢500名にもなり滞在中の検疫確保が困難であることなどから、委員会としては初となるオンラインで実施することとなり、会期を7月16〜31日(20日は休日[注 6])とし、時差がある地域からの参加者に配慮して連日パリ時間11時半〜15時半(開催地現地時間の17時半〜21時半)まで休憩なしで4時間の集中審議とすることにした。また、前述のように2020年と2021年分の新規登録審査をまとめて行うことになった(新規登録審査は24〜28日)[hp 1][報 1][注 7]

オンラインでの開催となったため大人数収容の必要がなくなった一方で大量のコンピューター端末パソコン)と周辺機器および通信プロトコルが必要なため、複数の副会場を設けてテーマ別の議事進行を行うことにした。副会場には昨年来よりユネスコのオンライン博物館に協賛している福建博物院オンライン授業を実施した福州大学設備(機材)が充実しており利用される[注 8](副会場については下記「順延開催決定をうけ〔オンライン開催変更後〕」の節参照)。

オンライン対応の副会場
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福建博物院
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閩越王城博物館
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福州海のシルクロード展示館
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福州大学
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委員国

委員国は以下の通りである[hp 1]。地域区分はユネスコ執行委員会委員国のグループ区分に準じている。国名の太文字は議長・副議長国。

なお、2020年の委員会終了時点で一部の委員国の任期交替が行われる予定であったが、2021年の拡大委員会まで同一国が継続することになった。

議長国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 議長 田学軍中国語版中華人民共和国教育部副部長[注 9]、中国ユネスコ全国委員会[注 10]主席
ヨーロッパ北アメリカ
(グループⅠ・Ⅱ)
 ハンガリー 副議長国
スペインの旗 スペイン 副議長国
ボスニア・ヘルツェゴビナの旗 ボスニア・ヘルツェゴビナ
 ノルウェー
ロシアの旗 ロシア
カリブラテンアメリカ
(グループⅢ)
グアテマラの旗 グアテマラ 副議長国
セントクリストファー・ネイビスの旗 セントクリストファー・ネイビス
ブラジルの旗 ブラジル
アジア太平洋
(グループⅣ)
オーストラリアの旗 オーストラリア
キルギスの旗 キルギス
タイ王国の旗 タイ
アフリカ
(グループⅤ-a)
ウガンダの旗 ウガンダ 副議長国
エチオピアの旗 エチオピア
マリ共和国の旗 マリ
ナイジェリアの旗 ナイジェリア
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国
アラブ諸国
(グループⅤ-b)
バーレーンの旗 バーレーン 副議長国 兼 報告担当。報告担当者はMiray Hasaltun Wosinski[注 11]
 エジプト
サウジアラビアの旗 サウジアラビア
オマーンの旗 オマーン
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審議対象の推薦物件一覧

要約
視点

今回の審議で新規に保有国となる国はない。世界遺産条約を締約している国は、2020年にソマリアが加わったことで194か国になったため、そのうち、世界遺産を保有していない国は27か国となった。

2020年分

2020年分として審議対象になったのは、以下のとおりである[文 1][hp 5]。物件名に * 印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録などを示す。太字は正式登録(既存物件の拡大などについては申請要件が承認)された物件。英語名とフランス語名は諮問機関の勧告文書に基づいており、登録時に名称が変更された場合にはその名称を説明文中で太字で示してある。

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2021年分

2021年に開催予定だった第45回世界遺産委員会での審議を前提に、期日(2020年2月1日)までに推薦書が提出された資産のうち、今回審議対象になるのは以下の資産である[文 25][hp 5]。物件名に * 印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録などを示す。

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登録抹消

要約
視点

今回の委員会では3例目となる抹消された世界遺産が発生した[hp 15]

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登録抹消審査

今委員会では海商都市リヴァプールとセルース猟獣保護区の登録抹消の議論が行われる勧告が事前に発表されていた。

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リヴァプールの審査の様子
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オンラインで反論する英ダインネージ文化相

7月18日(日本時間21時40分頃~)にまずリヴァプールの審議から始まり、ジョアン・アンダーソン英語版リヴァプール市長と市議会による意見書が世界遺産センター事務局によって読み上げられた後、文化遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が登録抹消を勧告した理由を15分にわたり説明。その後、委員国への発言へと移り、今後開発が盛んになる途上国からは「開発の余地を残してほしい」との声が多かった一方、ヨーロッパの委員国は「世界遺産の価値を維持するためにも厳格な運用は必要」とする意見が多かった。南アフリカの委員からは開発が及んでいない範囲に絞り込む縮小案も提案された。反論の場を与えられたイギリスは、文化相のキャロライン・ダインネージ英語版が直接説明をし、「リヴァプールは現在も使われている稼働遺産であり、リビングヘリテージである。その存在は英国と取り引きする多くの国に利益をもたらしている」という経済効果を上げ、「委員会開催地の中国であれば、上海外灘の形成には我が国も関わり、その歴史的港湾景観は世界遺産級であるが、その背景には高層ビルが建ち並び独自の景観を形成し(上海#建築を参照)、新たな価値観を提示している」ともした。途中で感極まり、議長が落ち着くよう促す場面もあり、与えられた所定の発言時間を上回った。これに対しICOMOSは、「世界遺産では保全に際して地域住民・地域コミュニティの参加協力を求めているが、リヴァプールの再開発はジェントリフィケーションを引き起こしており、新住民に今後地元を愛する気持ちが芽生えるか不確定」と指摘。結局、1時間を超える議論は予定の終了時間を過ぎたこともあり、翌日への持ち越しとなった[hp 16]

2日目の審議は冒頭に議長が「一国の世界遺産を取り消すということは政治的にもデリケートでセンシティブな問題であり、慎重な検討を求める」としたが、議論は平行線となった。ハンガリーとマリは現地訪問による再調査をすべきとしたが、中国・バーレーン・ノルウェーは可否に関わらず速やかな決定判断を下すべきとした。世界遺産センターは「再開発に関する計画の事前報告が不完全であった」と不信感をあらわにし、議長は異例の措置でユネスコ文化局副長のエルネスト・オットーネ英語版にも意見を求めた。委員国の一部は前日の代表委員(基本的には各国のユネスコ大使)に加え自国の専門家を参加させたことで、学術的判断としては登録抹消へと傾倒した。ノルウェーが「この場で決議を取るのは困難であり、非公開で投票(発言としてはsecret ballot=秘密投票)すべき」と提案し、グアテマラとウガンダが賛同したところ(開始から40分程経過)でシステム障害が発生し、20分程議事が中断した。システム復旧後にスケジュールも押していることから、議長裁量としてノルウェー案を起用し、21日の本会議前(20日は委員会休催日のため)に決議を取ることとした。なお、決議は議長国を除く20の委員国の内の2/3、すなわち13国以上が賛成しなければ可決されない[hp 17]

7月21日の委員会開催前に無記名での電子投票が行われ、リヴァプールの登録抹消が可決された。委員会は定刻通り現地時間17時半から始まったが、リヴァプールの件については触れられることがなかった。委員会開始から30分が経過したフランス時間の正午、パリのユネスコ本部において記者クラブへの会見が開かれ投票結果が公表された。これをうけイギリスのメディアが一斉に速報で報じた。登録抹消賛成票が13、反対5、無効票2という内容であった[報 14]

一方、セルース猟獣保護区の審査は7月19日に行われた。会議は前日から持ち越したリヴァプールの登録抹消に関する審議の再開から始まり(結局その場での結論は出ず)、途中でシステム障害もあり、開始から1時間程して議論が始められた。まず、IUCNが登録抹消を勧告した理由を説明。セルース保護区は密猟が原因で2014年に危機遺産リスト入りした。しかし、保護区には現在でもなお人が踏み込まない原生林があり、道路や観光施設の建設を認めてこなかった保護政策が評価され世界遺産に登録された経緯もあったが、近年になり観光開発の手が及びはじめていた。さらに、保護区を流れるルフィジ川に建設中の水力発電ダムJulius nyerere Hydropower Station)が2022年に完成することで上流で浸水、下流で渇水が確実となり、緩衝地帯に工業団地の誘致計画も進行しているため、野生生物に甚大な被害をもたらすことが明確であると、IUCNから現地調査を依頼されたEnvironmental Investigation Agencyが報告(ルフィジ川上流部には1970年代に2つのダムが建設されている)。このダム建設については第42回世界遺産委員会で稼働を開始したならば登録抹消もあり得る旨の警告がされていた(この段階で既に躯体は完成し発電機器の取り付けや送電線工事中だった)。

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陣容を固めて臨んだタンザニア

世界遺産センターはコロナ禍にあって監視の目が行き届かず、各国で密猟が横行していることを認めた上で、密猟の流通経路が隣国に及んでいることを踏まえ、取り締まりの国際協力強化を求め、委員国で隣接するウガンダや別件(サロンガ国立公園の危機遺産指定解除審議)のためネットワーク上に待機していたコンゴ民主共和国にもオブザーバー参加で意見聴取を行った。密猟に関しては概ね委員国の理解が得られたが、発電所の問題については各国から厳しい意見が出された。しかし、タイがメコン川上流で中国によるダム建設が相次ぎ、下流域では水辺環境の変化が起こっていることを紹介するなど、議長国に対しての外交的牽制を行うなどし、途上国から発展する権利の主張が寄せられた。

タンザニア政府は観光天然資源省英語版の官僚や研究者などを集結させ、委員国からの問いかけにその都度協議しながら慎重に回答。密猟対策に関してはを導入して監視強化し、ダムについても浸水域は保護区全体の1.8%に抑え、一定の放水量を約束するなどの妥協案を示し、環境アセスメントを2022年2月1日までに提出することとダム完成後の環境への影響を再調査することで今委員会での登録抹消処分は見送られた。こちらも2時間を超す討論であった[hp 17]

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危機遺産

要約
視点

ユネスコ世界遺産センターが危機遺産審議対象として勧告したものは以下のとおりである[報 15]。審議日程は委員会休暇日となる20日を挟んだ7月18~21日。事前に勧告が出されていたものについては危機遺産指定を回避したが、ルーマニアのロシア・モンタナの鉱山景観が新規登録と同時に危機遺産にも指定された。

  1. ヴェネツィアとその潟イタリア)⇒状況観察を継続し2023年(第46回世界遺産委員会)に再審査
  2. ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通りハンガリー)…ブダ城の根拠なき改修や市街地の交通量増加による⇒状況観察を継続し2022年(第45回世界遺産委員会)に再審査
  3. カトマンズの谷ネパール)…ネパール地震 (2015年)の復興に伴う不正確な再建⇒インドが修復のノウハウを提供し管理することで合意
  4. オフリド地域の自然・文化遺産アルバニア側)…オフリド湖沿岸での都市化廃水流入による水質汚染と生態系への影響、同様のことは北マケドニア側に対しても注意勧告が出されている⇒状況観察を継続し2023年(第46回世界遺産委員会)に再審査
  5. グレートバリアリーフオーストラリア)⇒状況観察を継続し2023年(第46回世界遺産委員会)に再審査
  6. W・アルリ・パンジャリ自然公園群ニジェールブルキナファソベナン)…以前からあった地域紛争に加えサヘル以南に勢力を伸ばしつつあるISIL駐屯による環境破壊⇒危機遺産審議終了後の7月29日に行われた「アフリカにおける行動計画」協議の中で、急遽持続可能な管理のためのインシアチブをまとめ、専属のタスクチームを編成支援することとなった[hp 18]
  7. カムチャツカの火山群ロシア)…急増した観光客を噴火から守るためのシェルター避難路を許可なく多数設置(環境・景観破壊)⇒状況観察を継続し2022年(第45回世界遺産委員会)に再審査[注 13]

ヴェネツィアの危機遺産化に関して、ユネスコは水没と観光客による負荷と人口流出による荒廃を指摘するが、イタリア政府は「水没は地球規模での温暖化によるもので抗えない、観光負荷はコロナで一変したが観光客がもたらす収益がなければ維持できない、荒廃対策は空き家を民泊のような宿泊施設に転用を始めている」とし、「市中にホテルが少ないこともあり宿泊滞在者が少ないことから日帰り税も導入した」と努力していることを主張[報 16]。さらに6月にはクルーズ船の寄港を禁止し観光客数のコントロールを始めたことが一定の評価をうけたが、地元の監視団体は委員会でオブザーバー発言の場を与えられ「船の寄航禁止は一時しのぎに過ぎず、極端に観光客(特にクルーズで来る富裕層消費)が減れば保全費用の財源となる税収も減る」として保存と活用の両立の重要性を説いた[報 17]

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オンラインで反論する豪リー環境相

グレートバリアリーフの危機遺産化に関しては、サンゴ白化現象が数年来深刻化していることに加え、沿岸での開発に伴う土砂流入や外洋からの諸要因侵入なども懸念され、オーストラリア政府は「海洋問題は一国の責任ではない」と反発。近年の豪中関係の悪化から、委員会を開催する中国による意趣返しだとする陰謀論まで噴出。一方で、ユネスコ海洋局の責任者で海洋特別行動計画英語版を推進するFanny Douvereは「サンゴ礁生態系の危機は人類への警鐘で、所有国は積極的に国際社会へ訴え出なければならない」とし、世界自然保護基金(WWF)の海洋部門責任者Richard Leckも「ユネスコ勧告は、豪政府が最も偉大な自然遺産を守るために十分な努力をしていないことを明確かつ明白に表している」と話した[報 18]。国内からもAustralian Marine Conservation Societyなどは「政府の姿勢は危機遺産による風評被害を気にしているだけで、本気さが感じられない」との痛烈な批判をした[報 19]。当の豪政府は危機遺産審査勧告が出されてからの1ヶ月間に回避キャンペーンのロビー活動を展開し、各国のユネスコ大使を招きグレートバリアリーフでシュノーケリングをしたり、スーザン・リー英語版環境相が政府専用機で委員国へ外交交渉に乗り出し、委員会にもオンライン出演して保全取り組みをアピールした[報 20]。危機遺産指定されなかったことに関し、環境保護団体のグリーンピースは「近年稀に見る最悪のロビー活動で、ユネスコは悪魔に魂を売った」と断罪し、直前の7月22日にオーストラリアも参加したG20環境相会合海洋汚染防止強化を採択したばかりでありながら「早速約束不履行」と糾弾した[報 21]

リストからの除去

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リストへの新規掲載

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保全措置報告

定期的(問題がなければ6年毎)な登録遺産の保全措置報告(SOC)が2年分ということで255の遺産が対象となるため、諮問機関からの注視答申があった危機遺産化の可能性がある物件などを優先的に委員会本会議で取り扱い、事務的確認作業で済ませられる残りは複数の副会場を駆使し手分けして実施する。日程は7月21~24日。上掲の「危機遺産」も登録抹消審査を除き、このプログラムの一環として行われる。

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指摘をうけた産業遺産情報センター(東京新宿)
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名称変更

以下の名称が変更された。いずれも当該国の要請による[文 51]。なお、これらは先住民族の権利に関する国際連合宣言による2019年の国際先住民族言語年をうけ、2022年から国連国際の十年の「先住民言語の国際の10年」が始まり、ユネスコが主導した「現地語の使用可能性に関する専門家会議」による提言に基づき、当該地現地語発音や先住民による呼称を優先し外名撤廃(併記)する方針を反映したものになる[資 4][注 14]

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軽微な変更

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その他の議題・話題

要約
視点

議題

  • オーストリアハンガリーに跨る世界遺産として登録されているフェルテー湖/ノイジードル湖の文化的景観の内、ハンガリー側で進められているリゾート開発について、「多様な民族が出入りしながら生物多様性が維持され、湖畔での牧畜ブドウ栽培に基づく土地利用の秀逸な形態が失われてしまう」とし、世界遺産センターとICOMOSが即時中止することを求め、世界遺産委員会での回答を要望した。これまで湖岸には別荘が建ち並んでいたが、ハンガリー政府によって土地が国有化され家屋が撤去されており、その状態で留め置くことが望ましいとしている[報 30]
  • 2021年6月11~13日にイギリスで開催されたG7サミットで話し合われた気候変動に関する議題で、「海の使用の粗さと乱獲が深刻で、経済的利益が生態学的利益より優先されている」とした科学分野アドバイザリーボードの委員がIUCN委員でもあり、世界遺産委員会でも取り上げるとした[hp 20]
  • 委員会3日目となる7月18日、本格的審議が始まる前に委員会主催者による記者会見が開かれ、「世界遺産保護のための国際協力の強化、アフリカや島嶼国への支援の増強、世界遺産教育の推進、情報の共有、ハイテクの積極的導入による保護強化」など確認した『福州宣言』を採択した[報 31]
  • 委員会開催中の7月24日に生物多様性条約の事務局が生態系保全のため国際的に取り組む2030年までの草案が発表され、世界の陸海域の30%を生物・生態系保護区にするという目標が盛り込まれ(2010年制定の愛知目標では陸域の17%、海域の10%と設定)、各国の制度下で国立公園や国営保護区を積極的に設けるよう求める方向性が示されたことをうけ[報 32]、世界遺産としても登録枠を設けることができないか検討することになった。
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グダニスク造船所の審査の様子
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コメントを述べるSantiago Villalpandoユネスコ法律顧問
  • ポーランドが推薦したグダニスク造船所の登録審査において、ICOMOSは「自主管理労組連帯が引き起こしたムーブメントはまだ新しい歴史であり、顕彰するのは時期尚早」とし、これを支持したのがロシアや中国の社会主義陣営(ロシアは元)で、対してボスニア・ヘルツェゴビナやハンガリーといった東欧の旧社会主義衛星国は登録を強く支持した。世界遺産センターは「連帯の流れを汲む政党が複数あり、それぞれが連帯の業績を自身のものとする政治利用にされかねない」と警戒し、ユネスコの法律顧問を務める国連のSantiago Villalpandoに意見を求めるなどした。結論は新規登録審査の日程を越えた7月30日に先送りした[hp 21]
  • 世界遺産保全に気候変動対策を盛り込むことが決定し(第41回世界遺産委員会で議題化)、全ての世界遺産条約締結国に対して個々の登録物件について遺産影響評価(HIA)して報告することと、今後の新規の推薦の際に被害想定と対策案を盛り込むことを義務付けた。[報 33]
  • 正式推薦に先立ち「潜在的顕著な普遍的価値(POUV)」などを書面審査する「事前評価」(preliminary assessment)制度を導入することが決まった。正式推薦は委員会での本審査をうける前年の2月1日が締め切りだが、事前評価に必要な文書はそのさらに5ヶ月前の9月を提出期限とする。これは2024年審査対象から実施されるが、2027年までは事前評価を受けなくても推薦可能とした。但し、事前評価をうけることで、諮問機関による現地調査に要する時間の短縮(費用負担削減にもなる)や、諮問機関勧告が情報照会や登録延期だった場合にOUV面での追加情報を委員会本審査前に提出できる[資 5]
  • 次回第45回世界遺産委員会は2022年6月19~30日(25日は休み)にロシアのカザンにおいて、ロシア科学アカデミーの教授で数学者アレクサンダー・クズネツォフ英語版が議長を務める[注 15]

話題

  • 委員会開催前にパレスチナの世界遺産イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路が登録抹消されるという報道があり、パレスチナでは一時暴動にまで発展し国連機関などが襲撃を受けるに至ったが、誤報であることが判明し沈静化した[報 34]
  • 中国メディアの単独インタビューに応じたオードレ・アズレユネスコ事務局長は、「G7サミットでは中国に対する批判が相次いだが、政治とは別に中国がユネスコに対して果たす役割に期待し、まずは世界遺産委員会を成功に導くことに期待する」とした[報 35][注 16]
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オープニングセレモニー
  • 7月16日の開幕に際して、まず4Kで撮影された中国の世界遺産を紹介する映像を流し、関係者の挨拶の後には30分にも及ぶオープニングセレモニーとして越劇琵琶による伝統音楽雑技コンテンポラリー・ダンスオーケストラ演奏中国語オペラなどを披露した[hp 22][報 36]
  • 開会式は孫春蘭国務院副総理の挨拶に始まり、オードレ・アズレユネスコ事務局長、王寧福建省長(知事に相当)らが続き、田学軍世界遺産委員会議長によって開会が宣言された。
  • 今委員会で気候変動と世界遺産について協議されたが、会期中の7月21~22日にかけて河南省集中豪雨2021年河南洪水)に見舞われ、嵩山「天地の中央」にある登封の史跡群)や龍門石窟などの世界遺産も被災したことをうけ[報 37]、委員会での発言の際にお見舞いを申し出る委員国が相次いだ。
  • オードレ・アズレ事務局長は、7月30日にイタリアで開催されたG20文化相会合に出席するため、委員会の閉幕を待たずに帰国の途へついた。ローマ入りした事務局長はイタリア政府からパドウァ・ウルブス・ピクタやヨーロッパの大温泉保養都市群、ボローニャのポルチコ群を新規登録できたことに加え、ヴェネツィアの危機遺産化を回避できたことに感謝の念が示された[報 38]
  • 委員会最終日の総括として、議長から「今年は多くの魅力的な新たな世界遺産が誕生したが、コロナの猛威はまだまだ続いている。楽観バイアスに流されず、訪問する際には細心の注意を払うように」と呼び掛け、「人数制限をした事前予約制や接触の機会を減らせるタッチレスソリューションの導入、そしてワクチン接種者を優先するワクチンパスポートの提示は有効措置だ」とした。
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エンディングセレモニー
  • 開幕の際に中国の世界遺産を紹介する映像を流したが、閉幕では中国の暫定リスト掲載物件を紹介して今後のPRとした。
  • 閉幕に際して福州市から次回開催地のカザンへの引継式が行われ、「上海協力機構間で引き継げて良かった」とした。また、中国は次回の委員会での新規登録審査物件として、2021年2月1日の締め切りまでに「景迈山プーアール茶の生産景観」を推薦したことを明らかにした[報 39]。これは第40回世界遺産委員会において、茶の生産景観(文化的景観)の世界遺産への可能性に関する研究が決まったことをうけてのことになる。なお、中国は自然遺産候補としてバダインジャラン砂漠(巴丹吉林)も推薦。2020年から審査を受けられるのは一国一件になったが、推薦枠の制限はなく(受付上限は35件まで)、諮問機関の現地調査を受けることまでは可能で、その結果から登録の可能性が低い方の推薦を取り下げる方策を採る。

サイドイベント

これまでもユネスコ世界遺産センター主催以外に、開催国によるプロモーションや諮問機関・協賛NGOなどによるフォーラムが併催されてきたが、今回からそれらをサイドイベントとして公式に扱うことになった。

  • ユネスコによる「歴史的都市景観への提言」[hp 23]に基づき、「都市の歴史的景観保護と持続可能な開発」をテーマに、暫定リストに掲載される北京中軸線(既登録の天壇故宮天安門広場永定門中国語版・先農壇・太廟・社稷壇・南鑼鼓巷・景山公園北海公園などを加え一つの世界遺産を目指す)を紹介する展示が始まった。福州では開会式会場内で実際のパネル展示が行われたほか、中国による世界遺産委員会の公式サイト内では映像も公開され、永定門をくぐり歩行者を排除した無人の前門大街を進み天安門広場から紫禁城へと入るドローン撮影による壮大な映像で、天安門広場では人民大会堂なども映し(世界遺産候補ではない)、全国人民代表大会の様子を、天安門では毛沢東による中華人民共和国建国宣言の映像もスーパーインポーズしたりと中国共産党の宣伝を兼ねたような内容であった[報 40]

委員会終了後の動向

  • 委員会のセレモニーにおいて開催地である福州の文化遺産について紹介し、高い評価を得たことから、福州船政に関する場所(船政学堂福州船政局など)が世界遺産登録を目指すことになり[報 41]、専属の財団を設立した[報 42]
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開催予定地カザンを象徴する世界遺産のカザン・クレムリン
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ユネスコが設置を急ぐブルーシールド
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ウクライナの文化遺産は守られるのか?
  • 2022年の第45回世界遺産委員会の開催国はロシアとなったが、2022年になりロシアによるウクライナ侵攻が勃発したことをうけ、「野蛮な非文明国に開催する権限はない」との意見が出始めた[報 43]
    • ウクライナのオレクサンダー・トカチェンコ文化情報大臣がユネスコに対しロシアを加盟国から罷免して世界遺産委員会の開催国を変更するよう求め[報 44]、具体的な代替地としてウクライナの世界遺産都市リヴィウの名を上げ委員会開催によって攻撃を阻止する意義を唱えた[報 45]
    • イギリスのナディーン・ドリーズ英語版文化長官(上掲「リバプール登録抹消審査」にオンラインで出席したダインネージ文化相とは別職)は開催国が変更されなければイギリスは委員会をボイコットするとした[報 46]
    • ドイツのユネスコ国内委員会がロシアでの開催中止を求めた[報 47]
    • かつてソビエト連邦を構成していたリトアニアはロシアで開催される委員会に出席する意味がないとし、ロシアが推薦したゴロホヴェツの登録審査も取り止めるべきとした。また、リトアニアもカウナスの登録審査を控えており、ここはソ連に併合されるまで抵抗拠点となった暫定首都だった経緯があり、カウナスが登録されたならロシアへの抵抗の象徴としてウクライナへの応援になるともした[報 48]
    • ポーランドのアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館がロシアの蛮行をナチス・ドイツになぞらえ、ロシアでの委員会開催を中止するよう求めた[報 49]
    • ユネスコのアソシエイトパートナーで、現在ユネスコを脱退中のイスラエルにとって代弁者的立場であるユダヤ人組織ユダヤロビー団体)のサイモン・ウィーゼンタール・センターがロシアでの委員会開催を取りやめ、パリのユネスコ本部での開催を求めた[報 50]
    • ヨーロッパにおける文化遺産保護連盟のヨーロッパ・ノストラ英語版が、開催地の変更と議長役の更迭を求めた[報 51]
    • 一方、ロシアは侵攻を開始した翌日の2月25日に公式ツイッターで改めて世界遺産委員会を開催する旨を呟いた。なお、このツイートに対しては「既にウクライナの世界遺産が破壊されています」「(ユネスコが何の対応も示さないことに対し)いくら払ってユネスコを抱き込んだの」「今回の出来事こそ即登録[注 17]」「他の委員国は欠席を(日本も2021年秋から委員国に就任)」「チェルノブイリ原子力発電所を占拠して自ら負の遺産として申請してくれるのですか(チェルノブイリ原発はウクライナが世界遺産への推薦準備を進めており、ロシアが不快感を示していた)」といったリプライが寄せられている[hp 24]
    • 3月2日に開催された第11回国際連合緊急特別総会での決議をうけ、ユネスコもロシア批判の声明と武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)に基づく文化遺産の保護を求める見解を示し、同条約に基づくブルーシールドの明示を急ぐことにした[hp 25]。また、第44回世界遺産委員会終了後に新たに世界遺産センターの所長に就任したラザレ・エルンドゥ・アソモ英語版は、2015年の国連安全保障理事会で演説したイリナ・ボコヴァ前ユネスコ事務局長の発言を引用し、今回の出来事は明らかな文化浄化であるとした[報 52]。3月15・16日にはユネスコ執行委員会の特別会合が開催され、出席国間ではロシア非難で一致し、第45回世界遺産委員会で緊急案件として議題とすることを決め、「ユネスコ発足以来最も暗い時期」と総括したものの、委員会開催の可否についての言及はなかった[hp 26]。そうした状況下で委員会開催地についての問い合わせが殺到したことをうけ、ユネスコが世界遺産センターの公式サイトで委員会の開催地や日程の変更に必要な手続きとして、第45回世界遺産委員会での21の委員国の3分の2すなわち14ヶ国以上の要請により臨時会合を招集し、委員国間の合意あるいは多数決によって変更が可能となることを紹介した[hp 27]

委員会の運営と様子

要約
視点

委員会の様子は例年通りユネスコ世界遺産センターの公式サイトにてYouTubeを介してライブ中継され、オンライン会議であっても自由にアクセス閲覧することが可能であった(発言などの参加行為はユネスコからアカウントを発給されログインIDを登録した者に限る)。以下の記述の内、出典明記がないものは、その閲覧による。現実問題として、オンラインによる国際会議の難しさが露見した。

  • オンライン会議のシステムとしてはZoomを使用したが、オーストラリア・インド・ドイツなどは政府機関としてZoomの使用を禁じており(Zoom (アプリケーション)#Zoomの使用禁止などの措置をとる機関や企業参照)、これらの国では例外的措置となった。[注 18]
  • 委員国の代表(主としてユネスコ大使)は赴任地であるパリの自国大使館か自宅やその庭・車内からの参加もあり、本国から参加した他の委員や助言のため同席した専門家は概ね自国の文化環境分野担当省庁内からの参加となった。そのため背景の騒音を拾う場面があったり、途上国を中心に通信事情から時折フリーズし、議事が一時的に中断したり、進捗インジケータスプラッシュスクリーン)が表示される場面が見られた。
  • 従来より委員会では英語フランス語の同時通訳が行われているが、回線状況によるタイムラグ音途切れにより議長や委員国・諮問機関の発言を聞き取れず、通訳が遅れる場面があった(今回議長は終始英語で議事進行したが中国の委員は中国語を使用)。
  • 時差で昼夜逆転となる対蹠地からの出席者の中には、自身が関わる議事を終えたところで通信を遮断ログアウト)して退席し、参加者が写る分割画面(画面共有)がブラックアウトした状態で次の議題へ進む場面が見られた。
  • 1日4時間の集中審議となった今委員会だが、大きな議事を終えると議長判断で5分の小休止を挟むことがあったが、休憩明けにそのまま委員が戻らない場面が見られた。
  • 世界遺産の持続可能性の検討など、委員国だけで決めにくい議題については、オブザーバー参加している国の発言も認められたが、システムエラーで「手を上げる」機能が作動せず、音声で発言をリクエストするも指名されない場面が見られた。
  • 7月19日の回で開始から40分程経過したところで、通信障害が発生し、会議が一時中断したばかりか、20分間程ユネスコ公式ホームページまでエラーHTTP 503)する誘発となった。障害は10分程で復旧したが、委員個々人が使用する端末のスペックによってはビットレート不足から再起動するなどしたため、時間を要した。会議は2日目に跨った海商都市リヴァプールの登録取り消しをするかの審議中であった[注 19]
  • 取り扱い件数が多かった保全措置報告(SOC)は複数の副会場を用いて手分けして実施。全ての議事進行を中国が賄う予定でいたが、一部で専門分野を牽引できる人員が確保できなかったため、座長権限を副議長国に委譲した部会があった。この様子はユネスコ公式サイトでは配信されず、中国が準備した別の専用サイトで一部が公開された。
  • 新規登録審査2日目となる7月25日は1件目の審査が中国の泉州:宋朝・元朝における世界のエンポリウムであったため、議長国の中国が公正を期すため議長役を離れ、副議長国のグアテマラに議長役を委任して開幕した。
  • 諮問機関による情報照会・登録延期の勧告が出されていた物件の登録が相次いだ。これは勧告が委員会開催の6週間前までに発表されるため、通常は追加情報の準備が間に合わなかったり、従来の会場入りして行われる委員会では委員と同席できる人員に限りがあるため反論できなかったものが、オンライン形式では研究者などの専門家による発言の機会があり、質問に対して口頭で即答しながら反証できたこと(上掲「審議対象の推薦物件一覧」参照)が大きく影響している。世界遺産センターとしても後日追加情報を文書化して提出することを求め了承した。このことに関して、並行開催中の東京オリンピックになぞらえ「全ての出場選手に金メダルを与えたようなもの」という論調を示したメディアもある[報 53]

2020年中止段階での動向

要約
視点
Thumb
2020年2月時点の福建省での新型コロナウイルス発生分布
(多発地区を示す茶色表示中「福清」が委員会開催地である福州市の一画)

中止決定の経緯

ユネスコは中国における新型コロナウイルス流行の最初のピークを迎えた2020年の春節頃から推移を見守ってきたが、委員会に出席する各国へアウトブレイクしたことから、3月に入って以降、中国の沈阳ユネスコ大使や中国本国とのウェブ会議で委員会開催の有無について協議を重ね、中国では感染拡大が抑制され小康状態になったとして、委員会開催の中止は文化的自殺行為に等しいとの主張もあったが[報 54]社会的距離社会距離拡大戦略)が確保できず公衆衛生の観点から最終的に世界保健機関(WHO)のエビデンス国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)に従い中国の合意を取り付け世界遺産センターメヒティルド・ロスラードイツ語版所長が中止を判断した[hp 1][hp 28]

なお、中止が決定した4月14日時点で福州市の封鎖措置は解除されていなかった[注 20]繁体字中国語版Wikipedia2019冠狀病毒病中國大陸疫區封鎖措施」および「2019冠状病毒病福建省疫情」による)。

ユネスコの状況

3月になりユネスコ職員に新型コロナウイルスによる疾患症状がある感染者が出たことをうけ[報 55]、パリ本部で予定していた3月16~18日予定の「無形文化遺産の保護に関する会議」、3月18~20日予定の「持続可能な開発のための国連海洋科学10年の計画会議2021-2030」(公海の世界遺産も検討議題だった)、3月20日および24日予定の「世界水開発レポート2020のプレゼンテーションと報告書発表」(ユネスコが支援する世界水システム遺産についても言及予定だった)、3月23~25日予定の「世界の記憶(記憶遺産)の枠組みに関する協議会」、3月27日予定の「女性と創造性」(世界遺産と相互補完する遺産と創造性における女性の地位向上を検討)、4月6・7日予定の「無形文化遺産保護委員会」、4月16日予定の「世界遺産専門家会議」、5月12・13日予定の「世界の記憶グローバルポリシーフォーラム」(日本信託基金が支援)、6月22~26日予定の「MAB計画人間と生物圏国際調整協議会」等、各種遺産関連事業の中止・延期を3月1日時点で決めていた[hp 29]

また、4月3~17日に予定していた年2回開催する定例のユネスコ執行委員会も中止となった[hp 30]

そうした中でユネスコは新型コロナウイルス蔓延に伴う社会的逼迫状態を鑑み、3月29日に73ヶ国の科学分野担当大臣・官僚とオープンサイエンステレビ会議を実施[報 56]。その成果から「文化の砦」の役割として緊急対策「COVID-19に対する文化(Culture against Covid-19)」を立ち上げ[hp 31]コロナ禍により疲弊した心を癒す芸術(創作活動)や創造産業への支援[報 57][注 21]、世界中で外出禁止下にある学童に持続可能な教育提供のためオンライン教室としてユネスコが運用するワールド・デジタル・ライブラリーの活用[報 58]インターネットに接続できない環境にある途上国でのデジタル・デバイド情報格差)解消のためにラジオのようなアナログでの情報発信と貧困地域・難民キャンプ等への機材提供[報 59][注 22]、多くの職員を自宅待機としリモートワークで新型コロナウイルスに関する科学的に正確な情報を発信すべくデマフェイクニュースを摘発させることに人員を割く[報 60]、などを当面の運営方針にするとオードレ・アズレ事務局長が決定したことで[注 23]世界遺産委員会開催の余力が削がれることにもなった。

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世界芸術の日のオンライン芸術祭には休館中の世界遺産国立西洋美術館も協賛した

さらに、コロナ禍による影響のため維持存続が危惧される有形無形の文化遺産保護のため、グローバル・ソーシャルメディア・キャンペーン「#ShareOurHeritage」を立ち上げた他(詳細は後述する「新型コロナウイルスと世界遺産」の節参照)[hp 32]、4月15日の世界芸術の日英語版にオンライン芸術祭を開催し、ユネスコ自身もピカソに代表される600点におよぶ美術収蔵品を公開[報 61]、4月18日の記念物と遺跡の国際デー英語版(世界遺産の日)では今年のスローガン「文化の共有、遺産の共有、責任の共有」に従い人類一丸となってウイルスに共闘し文化の存続と共生社会を目指す旨を表明[hp 33]。4月22日には文化分野担当大臣・官僚とのテレビ会議を実施[hp 34](日本からは萩生田光一文部科学大臣が参加して2021年に延期となった東京オリンピックパラリンピックの開催と東京オリ・パラ文化プログラムの実施を改めて決意表明した[報 62])。この他にも、3月3日の世界野生生物の日国連開発計画(UNDP)と野生生物の管理にあたる人材の健康管理[hp 35]、3月22日の世界水の日灌漑など利水施設の保護[hp 36]、4月7日の世界保健デー(奇しくもこの日に日本では緊急事態宣言が発出された)には世界遺産の管理にあたる人材の健康管理[報 63]を呼び掛けている。

加えて、新型コロナウイルスの流行に関する医療社会的・経済的影響など世情経過を公的に記録するよう各国に要請し、「世界の記憶」として保存することを表明した[hp 37]

一方で開催されなかった執行委員会から一時的にユネスコの全運営権を一任されたアズレ事務局長が、封鎖されているパリ市内で外交官ナンバー公用車身辺警護を同乗させず単身で運転している姿が目撃され(ユネスコ服務規程違反で、2020年3月24日に施行されたフランスの衛生緊急事態法や外交官に準じた身分の国際公務員として外交関係に関するウィーン条約にも抵触しかねない)、貸与されている公邸に各国のユネスコ大使やアタッシェを招き非公式会談(密談)をしている疑惑がもたれ(事務局長の言動は当人の記者会見スポークスマンを介して記者クラブに公表される)、事務局長からの弁明もないため、緊急事態歴史的緊急事態)下のこととはいえ組織運営に不信感がもたれ、このような状況を経て再開された世界遺産委員会は公平性や信憑性を欠くものになりかねない可能性も示唆される[報 64]

なお、文化遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)も本部を置くパリが都市封鎖されているため閉所措置をとり機能していない[hp 38][注 24]

中国の準備状況

  • 今回議長を務める予定だった田軍学は、福州での開催が決まった第43回世界遺産委員会の場において、「第44回世界遺産委員会は中国の遺産保護と生態学的保護の新時代を紹介する最高の国際会議となる。世界遺産の取り組みは”中国の時代”に突入する。」とコメントした[hp 39]
  • 開催予定地だった福州がある福建省では、習近平国家主席党総書記)から開催成功を求められたとともに、中国が委員会のみならず世界遺産やユネスコの牽引役になれるよう指示されたことを明らかにした[hp 40]
  • 現在北京中央政府で福建省の党委書記(地方政府の省長より上位)を務める于偉国中国語版が派遣され、現地で委員会成功のために陣頭指揮を執る予定でいた[報 65]
  • 福建省には武夷山福建土楼鼓浪嶼(以上、文化遺産)、中国丹霞自然遺産)、また世界農業遺産に認定されている福州の茉莉花茶生産地やかんがい施設遺産木蘭陂中国語版などがあり、委員会開催に合わせこれらの遺産群へ委員会参加者の視察を計画していたほか、警備体制や新型コロナウイルス対策も検討していた[hp 41]
  • 委員会開催歓迎レセプションを福州市の馬尾区において挙行する計画でいた。ここは中国が将来世界遺産にしたいとする海のシルクロードの拠点であり[注 25]、そのPRも兼ねる予定でいた[報 66]
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福州の英雄林則徐の記念館再整備も早められた(阿片戦争戦趾負の世界遺産にしようという動きもある)

各国・機関の反応・対応

  • 委員会開催予定地であった福建省では、委員会再開の際は福州市で行うよう要請した[報 74]
  • 中国は2020年10月に雲南省昆明市において生物多様性条約締約国会議を開催予定で、世界遺産委員会で採択された生物多様性に関わる事項を反映させる計画でいたこともあり、委員会再開の動向を見守るとした[hp 42]
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世界遺産登録推進のを掲げる奄美空港
  • 登録審査をうける予定であった奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島を推進した鹿児島県は「これまでの取り組みを続けるだけ」、沖縄県は「仕方がない、今は待つだけ。落ち着いたらしっかり審査してもらう」とそれぞれコメントを出し[報 75]環境省は「委員会開催の6週間前までに発表される諮問機関の勧告日程も未定」としながら、小泉進次郎環境大臣は「引き続き関係自治体と緊密に連携して対応したい」と述べた[報 76]。また、自然遺産の諮問機関国際自然保護連合(IUCN)の日本委員会も「勧告が先延ばしになるかもしれない」とした[報 77]
  • 経済制裁などが続くイランは観光業に力を注いでおり、ビザ発給の緩和や宿泊施設の充実を図りつつ、世界遺産を観光資源として位置付けていたため、イランにとっては初となる近代20世紀産業遺産稼働遺産)である 国有鉄道イラン縦貫鉄道が登録審査をうける予定であった今委員会が中止となったことを「残念である」とコメントした[報 78][注 28]
  • 登録審査をうける予定であったイギリス・イタリア・オーストリア・チェコ・ドイツ・ベルギーとの共同推薦「ヨーロッパの大温泉保養地群」の構成資産があるフランスのヴィシーでは、副市長が「引き続き他の地域と共同歩調をとるだけだが、明るい話題が欲しい」とコメントした[報 79]
  • ICOMOSは2020年の活動指針に「無形遺産の強化」を掲げており、特になど芸術的表現の顕彰に力点をおく計画であったことから、新型コロナウイルスにより学校へ通うことができない子供たちに聞かせる学習支援として、世界の記憶に選定されている歴史的な詩を多言語で朗読収録して公開することを委員会開催中止決定前から検討していた[報 80]
  • IUCNは国連生物多様性の10年の最終年を迎えるにあたり、自然生態系における微生物ウイルスを含めた生物圏の見直しと未知の新たな感染を生じさせないための立入禁止区域制定や土地開発の規制策を講じるほか、新型コロナウイルスの宿主探しや流行の発生源と目される武漢華南海鮮卸売市場の調査なども検討している[報 81]
  • 4月22日に設立50周年を迎えるアースデーに向け、国際植物防疫年であることもあり、国連環境計画(UNEP)が上記のIUCN同様に、未知のウイルスや原生生物が潜む可能性がある原始森林への開発規制や、そこにある薬草土壌微生物抗ウイルス薬が作り出せる可能性から乱獲を制限するためにも、世界遺産などによる保護も検討すべきと示唆した[報 82]

日本への影響

↳その後、縄文遺跡は9月4~15日に現地調査が行われ[報 87]、23年候補選定は21年7月に行われることになった。

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再建計画承認を待つ焼失した首里城(3月30日から解体が始まった)

↳軍艦島の保全計画に関してはICOMOSに対して報告[資 7]

↳2020年6月5日にユネスコと日本によるオンライン会議を開催し、概要の承認は得た[hp 43][注 33]

予定していた議題・報告

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深刻化するアックア・アルタ(2019年11月)
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渡り鳥保護区候補の鴨緑江は対岸の北朝鮮との調整も必要
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ブルー・マウンテンズの火災被害(2020年1月)

《オンラインでの拡大委員会として実施されることになったが、新規登録審査が2年分行われるため時間を要することに加え、国連国連各機関に呼び掛けた社会の立て直し対策として[hp 47]、ユネスコ・世界遺産委員会では世界遺産はどのような貢献ができるかを検討するため(下記「終息後を見据えたユネスコの動き」の節も参照)、登録物件の保全措置報告(SOC)と危機遺産関連を除き、事前に予定していた上記の議題の多くが取りやめになる。》

順延開催決定をうけ

要約
視点

1年遅れでの開催決定から、オンライン開催への変更と紆余曲折を経たが、開催に漕ぎ着けたことになどに対し、各方面から談話が出されている。

〔開催決定時〕

  • 中国教育部は委員会開催時の世界の感染状況に関わらず、委員会開催に際しては万全の疫学的対策と緊急医療体制を提供することを確約した[hp 48][注 41]
  • 委員会開催地となる福建省にて中国世界遺産観光振興同盟会議が開催され、新型コロナウイルス感染症流行後の外国人による中国の世界遺産観光再開のきっかけを委員会参加者による視察(上掲「中国の準備状況」参照)としたいとし、特に文化遺産に関しては漢詩の世界観を前面に押し出す「詩的旅游(Poetical Tourism)」を推進することを決めた[報 108]
  • 中国文化遺産研究院中国語版の中国世界文化遺産センター主催で中国世界文化遺産年次会議が開催され、各世界遺産所在地の単位までの保護に携わる人員が文化遺産と複合遺産だけで合計で3万6千人もおり、世界最高の管理体制であることを確認し、世界遺産委員会でも報告するとした。また、2012年の世界遺産条約40周年記念会議で採択された「京都ビジョン」[hp 49]で世界遺産保全に地域住民の協力が不可欠とされたことから、人民参加型の保全を促進することも決めた[報 109]
  • 2021年3月5日より、世界遺産委員会をエスコートする市民ボランティアの研修が福建省で始まった[報 110]
  • 2021年3月5日より始まった第13期全人代において、昨年福建省長(知事に相当)に就任した王寧は、福建省に17年勤務した習近平国家主席(総書記)から世界遺産委員会の成功を強く求められ、その後福建入りした習主席から再度念押しされた[報 111][注 42]
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登録審査の目途が立ち盛り上がる縄文遺跡
  • 中国政府により抑圧されているウイグル族の国外を拠点とする反政府活動団体が、「本来であれば世界遺産に推薦すべきカシュガルにおいて文化遺産(主としてモスク)の破壊活動(文化浄化)が行われており、世界遺産委員会を中国で開催すべきでない」と訴えた[報 112]
  • 中国のSNSのWeChat微信)で「武漢華南海鮮卸売市場武漢市中心医院を世界遺産にしたほうがいい」という投稿があると当局が削除している(中国のネット検閲も照会)。
  • 奄美大島徳之島の登録審査を待つ鹿児島県知事が「(学術的評価を下す諮問機関の中間報告が出されていないことをうけ)気を緩めず着実に進める」とコメント、奄美市長は「コロナ禍を克服した上で委員会が開催されることを願う」と期待した[報 113]
  • 縄文遺跡の登録審査が予定通り2021年に行われる可能性が高まったことに関して、青森県知事は「正式な連絡はないがチャンスがあるなら嬉しい」とした[報 114]
  • 2021年1月20日に発足したアメリカのバイデン政権リベラルで国際協調路線を取る姿勢を示していることから、世界遺産委員会が2018年末に脱退したユネスコに復帰するきっかけになるのではとして、オブザーバー参加を呼び掛けるなどの勧誘を模索する[報 115]。また、アメリカのユネスコ不在中に、現在ジュネーブに置かれているユネスコ国際教育局上海へ誘致する動きが活発化するなどしており、文化・外交政策での対中政策の観点から早期のユネスコ復帰を上級顧問主席補佐官から大統領に対して具申されており、世界遺産委員会への参加は良い機会であるとする[報 116]

〔オンライン開催変更後〕

  • オンライン開催について、ブラジルでの第34回世界遺産委員会で開催国(議長国)の委員を務めた文化人類学者のChristoph Brumannは、「近年苛烈さを極めている登録のためのロビー活動が出来なくなり、公正な審査になるであろう」とした[報 117]
  • 結党100周年を迎える中国共産党が新たな人民奉仕政策を掲示し、その中に有形無形の文化遺産の保護も含まれた。上掲「中国の準備状況」にあるように農村家屋・集落景観の世界遺産候補地化を推進するにあたり、農村における貧困撲滅と経済格差の解消やインフラ整備も進めつつ伝統文化が失われないよう最大限配慮するとした。この取り組みを委員会開催中に公開される動画配信の公式サイト内に特設のバナーリンクを貼って公開することも検討[報 118]
  • オンライン開催ということで、回線接続中のハッキングなどを警戒し、インターネットセキュリティを高める必要があるとして、ネット警察による管理と監視を行うとした[報 119]
  • 運営効率化のため、文化遺産と自然遺産のように個別議題の分科会で出席者が重複しない場合は同時開催するとし、輻輳防止のため、メイン会場とは別に拠点を複数設けることとした。
    • 委員会の議長を務める田学軍が、委員会を福州市から200Km以上離れた廈門市廈門大学と共同開催するとした[報 120]
    • 武夷山麓に新設された兴田欢迎您馆(興田歓迎您館)で自然遺産の、城村漢城遺跡に設けられている闽越王城博物馆(閩越王城博物館)で考古学関係の文化遺産に関する議題の一部を主導する副会場とするとした[報 121]
    • 上記以外でも副会場となる福州海上絲綢之路展示館(福州海のシルクロード展示館)・福州辛亥革命紀念館(福州辛亥革命記念館)・福建省科技档案館(福建省科学技術館)などが会場整備のため改修工事に入り、5月1日の労働節から当面休館や時短営業となった[報 122]
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2021年3月時点のノートルダム大聖堂の修復工事の様子
  • 2024年パリオリンピックの開催に合わせた再建を目指すノートルダム大聖堂に関して、前委員会では議題として取り上げられなかったため(第43回世界遺産「委員会に対する批評」の節参照)、再建の責任者である建築家のフィリップ・ビルヌーブフランス語版や世界遺産センターに勤務した経験からアドバイザーを務めるFrancesco Bandarinらが再建案について世界遺産委員会の場で公式な議論と承認を下すよう促した[報 123]
  • 4月18日にコロナ下で二度目となる「世界遺産の日」を迎え(前回に関しては上掲「ユネスコの状況」参照)、ICOMOSはオンラインによる拡大委員会を全面的に支持。また、本年の活動テーマを「複雑な過去と多様な未来」とし、歴史認識の違いから起こる文化摩擦を見つめ(複雑な過去)、その解決策を思案すること(多様な未来)に重きを置き、同時にコロナ禍による混乱もいずれ複雑な過去になるとし、コロナ後の多様な未来を起草する。さらに今年は日曜日になったことから視聴者が多いと踏み、各国のICOMOS組織がウェビナーを実施した(日本や中国はなし)[hp 50]
  • 4月22日にコロナ下で二度目となるアースデーを迎え(前回に関しては上掲「各国・機関の反応・対応」参照)、本年の活動テーマを「地球の回復」とし、さまざまな環境破壊からの回復を目指すとともに、コロナ禍からの回復も目指し、世界遺産委員会でもレジリエンス(回復)について協議するとした[報 124]
  • 2021年11月にイギリスで開催予定の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)において、地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素吸収源として炭素固定作用があり、ボーリング調査によって過去の気温変化のサンプルを回収することもできる泥炭地の保護を議題とすることが決まっており、気候変動枠組条約機構(UNFCCC)が泥炭地の世界遺産登録による保護を世界遺産委員会に打診した[報 125][注 43][注 44]
  • 委員会開催(7月16~31日)に先立ち、7月7~13日に世界遺産管理者(サイトマネージャー)育成のためのウェビナーを中国が開催することになり、委員会の予行演習的な位置付けとなった。上掲本節「開催決定時」にもあるように、中国は充実した管理体制を取っており、人員数に頼らないノウハウを各国に伝授する[hp 51]
  • 福建省の伝統芸能高甲劇の演目『玉珠串』を映像として撮影し、オンライン開催の世界遺産委員会開期中にストリーミング発信することになり、京劇崑劇粤劇中国語版に続く無形文化遺産への登録の足掛かりとする[報 126]
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"福"の字デザインエンブレム
  • 開催地名の福建省・福州と縁起文字としての「福」の字を旧字体篆刻書体であしらった委員会のエンブレムを作成し、オンライン会議での休憩中や議事中断時の待機画面スプラッシュスクリーンとしても使用するほか、市中に貼り出すポスターでは倒福も認める[報 127]
  • 開会式は福州海峡文化艺术中心(福州海峡文化芸術センター)で挙行する[注 45]
  • 一度は会場周辺の誘導や交通整理を担うボランティアを募集したが、オンライン開催になったことから、通訳メディア対応・記録・ネットワークシステム管理など専門知識を専攻する大学生を対象に再募集した[報 128]
  • 在中国海外メディアを対象とした国際メディアレビューを2021年は5月24~28日に実施し、日程の中に福州市訪問を組み込み、「A date in Chine meets Fujian」として福州の史跡や文化に触れつつ、プレスセンターを含む委員会開催の準備状況や当日の取材の仕方に対する注意事項(主として感染対策)のレクチャーを行った[報 129]
  • 6月の第2土曜日を文化・自然遺産の日および無形文化遺産の日と定めている中国は、委員会開催を前に例年にない大規模な記念日として祝うことにした[報 130]
  • 委員会初のオンライン開催となったことに対して、習近平主席(総書記)が「中国のIT技術を世界に喧伝する良い機会であり、成功を収めるように」との談話を出した[hp 52]
  • 初のオンライン開催ということでユネスコが6月15日にオンラインでのオリエンテーションを開催[hp 53]
  • 中国の世界遺産委員会開催準備委員会が6月23日に予行演習となるオンライン形式のデモンストレーションを各副会場とリレーして開催[報 131]

新型コロナウイルスと世界遺産

要約
視点

流行下の世界遺産

武漢肺炎としての出現から、世界への拡散を経て、第44回世界遺産拡大委員会が終了する2021年7月末までの流行状況。2020年4月時点で世界遺産の8割が感染防止対策や都市封鎖に伴い閉鎖されており[hp 54]、閉鎖に関する話題は枚挙に暇ないので掲載しない[注 46]

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復活祭に門戸を閉じたドイツの世界遺産ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館街内にある教会
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ブルーライトアップされた二条城隅櫓
  • コロナ流行が沈静化したとする中国では、コロナに関する記事およびウイグルの文化遺産保護についての記事を発表すると逮捕されるという言論弾圧が行われているとの報道がなされた[報 157]

日本における2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響#世界遺産」も参照。 また、 ウィキメディア・コモンズには、日本の世界遺産における2019年コロナウイルス感染症による影響に関するメディアがあります。

終息後を見据えたユネスコの動き

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予約による制限を課した蘇州古典園林の拙政園はユネスコがモデルケースとする
  • 新型コロナウイルスが完全に終息するには2~3年かかる可能性や毎年変異して襲来する可能性が示唆され、新しい生活様式(ニューノーマル)を考えなければならない時代に際し、多くの観光客が押し寄せる世界遺産でクラスターが発生することを防ぐため、世界遺産への入場枠設定や定時入れ替え、時間指定や事前予約制を積極的に導入することも検討すべきとし、これによりオーバーツーリズムによる環境負荷の軽減になることも期待する[hp 59]
  • 2020年および2021年の5月5日のアフリカ世界遺産の日英語版に実施したオンライン会議で、アフリカ諸国では新型コロナウイルスにより社会崩壊英語版を起こしており、ユネスコとしても社会復興に協力すると約束した。特にいくつかの国から世界遺産におけるエッセンシャルワーカーとしての管理者(サイトマネージャー)が亡くなっていると報告が上がったことから[注 53]、後任人材の育成を最優先で取り組むこととした[報 158][hp 60]
  • 国際金融市場でのコロナ暴落(コロナショック)と続く不況の景気回復に創造経済英語版が有効であるとして創造産業を支援するとともに、第39回世界遺産委員会において持続可能な開発のための文化を採択して以降、創造産業と世界遺産に含まれる文化的財環境財を交えた総合的な文化事業文化産業を広めることで、文化多様性文化的自由を包摂する持続可能な社会の構築を目指しており、委員会が再開された際の議題になりうる[報 57][注 54]
  • ユネスコは上記の「持続可能な社会」とともに、社会的包摂インクルーシブ社会)の普及も目指している。これは「京都ビジョン」[hp 49]の中で、世界遺産の維持にはコミュニティの存在が欠かせず、それを存続させるために社会的結束ソーシャル・キャピタルが重要としており、今回の感染流行は文化的特異点になり得、ポストコロナのパラダイムシフトと合わせた戦略文化として展開するつもりでいる[hp 61]
  • 2017年に設立されたユネスコ嘱託研究機関の遺産未来委員会(UNESCO Chair of Heritage Futures)が、コロナで高まった環境意識を世界遺産に反映させるべく、今後ヨーロッパの文化遺産(建築物)を修繕する際に素材の真正性は尊重しつつも、可能な限り環境に配慮した建材・資材を併用(例えば光起電力ガラスの使用やバックヤードに余剰エネルギー備蓄設備を設置)することを提言した[報 159]
  • 2021年4月7~21日にオンラインで開催した第211回ユネスコ執行委員会(議長国:アラブ首長国連邦)において、「文化芸術教育の枠組み」を採択。本年は国連が「持続可能な開発のための創造経済年」とし、文化が生み出す経済性をコロナ禍からの復興開発に役立てるとしていることもあり、執行委員会は「文化芸術教育の枠組み」を世界遺産にも反映させ、その活用から文化経済としてコロナで疲弊した地域経済に役立てる方策を検討するよう世界遺産委員会へ指示した[報 160]

流行禍からの復興

  • 感染拡大で甚大な被害をうけたヨーロッパの地中海に面した都市の世界遺産に関して世界遺産センター副所長のJyoti Hosagraharが中心となり、都市遺産における再流行時の住居・公共空間や移動の在り方(感染防止のために遺産の改変を認めるべきか)について議論を始め、同時に世界遺産における持続可能な開発を追及すべくグリーンリカバリーを採用することを奨励する[hp 62]
Thumb
宮島へのマスク漂着ごみ(背後は厳島神社
  • 海洋域の世界遺産においてマスクビニール手袋などコロナ由来とみられる漂流・漂着ごみが増えたことをうけ、その回収を急ぐとともに、これを契機にマイクロプラスチックが世界遺産に及ぼす影響についても調査する[報 161]
  • 2020年9月28日にオンラインによる「国際討論:文化観光英語版、コロナからの回復(Global Debate: 'Culture, Tourism and COVID-19: Recovery, Resiliency and Rejuvenation')」を開催し、レジリエント・ツーリズムが提唱された[hp 63]
  • 甚大な被害を被った今回のコロナ禍を教訓とし、ユネスコによる持続可能性を追及すべく、「持続可能な遺産管理」のプログラムを立ち上げた[hp 64]
  • 2020年12月14日、オンライン会議「世界遺産と観光:コロナ危機の課題への取り組み(World Heritage and tourism: Tackling the challenges of the COVID-19 Crisis)」を開催し、都市遺産英語版における都市観光文化的景観といった人口密度が高い場所や人の暮らしがあり接触確率が高い世界遺産での安全確保の方法などについて協議が行われ、オンラインツアーの有用性を確認した[hp 65]
  • ユネスコ加盟87ヶ国104,000の美術館・博物館の90%が平均5ヶ月にわたり休館し、入館者が70%減少した結果、収益が前年比で最大80%減少。43%が充分な公的支援を受けられておらず、閉館廃館に追い込まれたものもあり、遺産の価値英語版を補完する収蔵品の管理が行き届かないばかりか、散逸も発生してる実態があるため、重要性に応じて緊急的な保護措置に乗り出し、文化遺産の書式化英語版を進め流出時の確認に利用できる目録作成も行う[hp 66]
  • ユネスコ文化局が実施した調査によると、2020年は全ての世界遺産への訪問者数が前年比で66%減少し、入場料などの収益が52%減少(宗教施設への寄進は除く)。さらにガイダンス施設などの関連施設を含めた常勤スタッフの40%、非常勤スタッフの53%が休職(継続中)・解雇されたことが明らかになり、ユネスコでは各国へ遺産維持と復興後の訪問者へのカルチュラル・スタディーズのために再雇用を求めた。また、都市や住民の営みがある世界遺産における生活安全確保と遺産維持の両立を実現するための指針を示した[hp 67][報 162]

脚注

要約
視点

注釈

  1. 蘇州は翌年の第28回、マナーマは2018年に第42回として開催になった。
  2. 今委員会で登録審査予定であったイギリス・イタリア・オーストリア・チェコ・ドイツ・フランス・ベルギーによる共同推薦ヨーロッパのグレートスパの進捗状況を聞かれたチェコで構成資産があるフランティシュコヴィ・ラーズニェの市長が「開催はパリで10月下旬になった」と答えたとする報道(Rozhodnutí o zápisu lázeňských měst na seznam UNESCO se odkládá EuroZpravy 2020.4.10)や11月にパリ本部で開催とする報道(Candidature de Vichy à l'Unesco : la réponse sûrement repoussée, mais jusqu'à quand ? La Montagne 2020.4.16)もあった。
  3. 6月29日から7月10日にユネスコ本部で開催された第209回ユネスコ執行委員会において、開催日時と場所について協議されたが、結論を出せないで終わった。
  4. 2022年に繰り越された第45回世界遺産委員会はウガンダではなく、ロシアカザンで開催される。
  5. 一部の報道では「expansion session」という表記も見られる。
  6. 7月20日はイスラム教祝日である犠牲祭にあたるためイスラム圏へ配慮した。
  7. 中国は委員国委員およびユネスコ職員や諮問機関関係者に対しては事前に中国のシノファーム社シノバック社が開発したワクチンの優先接種提供や、ユネスコ本部があるパリから世界遺産センター職員とパリ在住の各国ユネスコ大使を乗せるチャーター機の運行も提案していた。
  8. 福州大学は夏休み中ということと、学生の多くが委員会サポートボランティアに参加していることもある。
  9. 日本の文部科学省副大臣に相当。
  10. 日本のユネスコ国内委員会に相当。
  11. 2018年に同国マナーマで開催された第42回世界遺産委員会では開催国連絡窓口を担当した。
  12. 2023年には関連都市としてベルギーから「慈悲深い都市ヘールにおける里親養護遺産の保護:地域ベースの養護モデル」が無形文化遺産に選定された。
  13. 第45回世界遺産委員会がロシアで開催されるため、現地視察を誘致して評価を下してもらう。
  14. アメリカなどでは過度な変更はやり過ぎだとするキャンセル・カルチャーの意見もある。
  15. 第45回世界遺産委員会は当初ウガンダが開催誘致に名乗りを上げほぼ内定していたが、新型コロナウイルス対応に追われ辞退し、2023年開催を希望していたロシアを繰り上げることは内定していた。
  16. ユネスコの中国に対する評価として、アフリカ諸国の世界遺産推薦に際して整備や推薦書作成などの無償支援、中国の民間企業が進出する発展途上国でのメセナなど文化貢献実施の指示などを上げている。
  17. 世界遺産は不動産有形構築物が対象のため侵略行為という事象は登録できず、各国のSNSや日本でもYahoo!知恵袋などで「今回の破壊痕跡を世界遺産にして保存できないか」といった疑問や投げかけも散見できるが、近年の紛争(recent conflicts)については保留される傾向にある。
  18. コロナ禍中でユネスコが開催したウェビナーではGoogle Meetが使用されたこともあったが、中国ではGoogleが使えないため委員会では使われなかった(Google Meetでのウェビナーはアフリカ関係で中国は当事者でないこともあり不参加)。
  19. 後日判明したことだが当日はイギリス国内からのアクセスが集中し回線がパンク状態に陥った。ただ、委員会出席者間の回線は別ルートであったため影響がなく、配信公開のみが固まった。また、7月26・27日の日本の候補地審査の際には日本でのアクセス集中があり、一部で一時的に同様の事態が起きていた。
  20. 外出は緩和されたが市外との往来は規制されており、福州長楽国際空港着の国際線の検疫は厳格化され、衛生当局指定国からの入国者は観察処置で一時的に隔離されるため、現況では諸外国からの委員会参加者も同様の扱いとなる。
  21. 世界遺産センター副所長のJyoti Hosagraharが直接任にあたる。
  22. このため世界遺産委員会用の資金を提供することを含めた支援も検討されている。
  23. これら文化・教育・科学分野での活動はUNESCO=国連教育(E)科学(S)文化(C)機関という正式名称を反映したもの。
  24. 同じく世界遺産委員会の諮問機関である文化財の保存及び修復の研究のための国際センター(ICCROM)も本部を置くローマがロックダウンされたため閉所措置をとり機能していない。
  25. 中国で2000年代以降に登録された世界遺産には、安徽南部の古村落-西逓宏村開平楼閣と村落紅河哈尼棚田群の文化的景観などの農村域があり、暫定リスト掲載物件にも山西省陝西省の古民居・チベット族チャン族の碉楼と村落・貴州省南東のミャオ族の村落―苗嶺山脈の雷公山山麓の村落・トン族の村落といった農村域が含まれている。
  26. 中国で2000年代以降に登録された世界遺産には、殷墟上都遺跡シルクロード:長安-天山回廊の交易路網良渚古城遺跡など発掘から明らかになったものが多く、暫定リスト掲載物件にも南越国遺跡・紅山文化遺跡・古蜀遺跡などの考古遺跡が含まれている。
  27. イランでは国内線空港やバス乗り場そして駅などの交通機関における時刻や切符の号車・座席番号表示等が世界で一般的なアラビア数字ではなく、ペルシア文字のみで記載されている場合が多く、外国人旅行者に不評であったため、世界遺産を目指すイラン縦貫鉄道からアラビア数字併記の取り組みも始めた。
  28. 世界遺産国内候補地を選定する文化審議会日本ユネスコ国内委員会が推薦書原案が提出された3月30日時点で一部機能停止中である。
  29. 2020年3月26日にメディア向け内覧会が開かれ、翌27日から公開予定であったが、新型コロナウイルス拡散防止のため当面休館となり、その後緊急事態宣言解除をうけ6月2日から一般公開が決定したが、6月中は事前予約制とし混雑(3密)を避ける対策を講じる。
  30. 2020年3月31日に関係者のみで開所式を行い、翌4月1日から公開予定であったが、新型コロナウイルス拡散防止のため当面休館となり、その後5月25日に東京都の緊急事態宣言が解除、同日都が策定した休業要請緩和に向けたロードマップの第1段階で「博物館の再開」が示され、6月12日に東京アラートも解除されたこともあり6月15日から一般公開する。(東京都における2019年コロナウイルス感染症の流行も参照)
  31. 韓国は第40回世界遺産委員会第42回世界遺産委員会においてガイダンス施設の設置を再三求めてきた。
  32. この協議をうけ政府は「首里城復元のための関係閣僚会議」を、沖縄県も「首里城復興基本計画に関する有識者懇談会」を組織して対応することになった。
  33. ユネスコが注視する防潮堤工事も新型コロナウイルス流行によるロックダウンの影響で中断している。
  34. ガラパゴスのような絶海の孤島へも新型コロナウイルスが到達しており、動物への感染も報告されていることから、ガラパゴスへの旅客航空便は運休されている。
  35. 世界遺産におけるインフラに関しては、昨年の世界遺産委員会において、世界水力発電会議英語版による「世界遺産と水力発電」が報告されている(第43回世界遺産委員会#その他の議題参照)。
  36. 平遥は中国国内では、世界遺産としてより時代劇のロケ地としてフィルムツーリズムの対象として人気で、ユネスコの創造都市ネットワーク映画部門への加盟を目指している。
  37. 食糧生産と自然利用を両立(自然と人間の共生)している陸域・水域における、農業・畜産・牧畜(遊牧)・漁業・養殖・林業・狩猟および塩や燃料など食関連資源の採集地を対象とする。2017年の統計で世界の都市人口が54.82%に達した一方で、人間が生きてゆくために必要な食糧生産を支える農村の後退荒廃が顕著になっていることをうけ、伝統的生産手法と持続可能な開発を実践している生産地景観(生産に関係する建造物含む)の保護を目的とする(食の多様性や食糧供給源としての都市農業植物工場のような工業型農業スマート農業を否定するものではない)。ICOMOSは国連食糧農業機関(FAO)の世界重要農業遺産システム(世界農業遺産)との連携も提案し、その選定地の世界遺産化優遇も思案するが、同遺産制度は保護体制として世界遺産が求める国の法律ではなく、自治体の条例でも構わない違いがある。
  38. ラバトの世界遺産登録正式名称は「近代的首都と歴史的都市をあわせもつ遺産ラバト」で、隣り合わせる古い町並みと現代都市が共存する都市計画が評価されたものであり、ニューアーバンアジェンダ都市文化顕彰の成功例とされており、今回はゾーニングが問題となっている。
  39. リバプールの開発は創造都市ネットワーク音楽部門加盟都市としての発展に必要なものという主張。
  40. 委員会開催決定時点で中国は感染者が増加傾向にある国からの入国を拒否しており、感染者数が世界二位のブラジルと四位のロシアや感染者管理が不完全なアフリカから5ヶ国の委員国を迎えなければならず、委員会参加のための入国者に対してのPCR検査等の実施を検討。
  41. 習近平は2014年3月27日にユネスコ本部で講演を実施、ユネスコにおける国家元首の講演は異例で、以後中国は「文明強国」を標榜し、ユネスコ各種事業にも積極的に関与するようになった(極め付けとして創造都市ネットワークへの影響がある)。
  42. 泥炭地の世界遺産候補としては、イギリスのFlow Countryが暫定リストに記載されている。
  43. 地表に露出していないが、日本の三方五湖の一つ水月湖湖底の泥炭堆積層から確認できる年縞はユネスコによる世界放射性炭素会議で地質学的編年決定での世界標準に認定されており、UNFCCCも重視してる。
  44. 福州海峡文化芸術センターはペッカ・サルミネン英語版の設計で2018年に落成した。
  45. ここに列挙している記事は、ユネスコが採用したリアクティブ・モニタリングを補完するオンライン調査(第42回世界遺産委員会#その他の話題参照)の対象として俎上したものになる。
  46. この企画は最初に創造都市ネットワーク音楽部門に加盟するスペインリリア英語版において市内在住のミュージシャンや音楽教師・生徒らが窓辺やバルコニーからベートーヴェン交響曲第9番を一斉に演奏してロックダウン中の人々を勇気づけ、これに追従する都市が現れ、さらに映画・メディアアート部門の都市も映像情報発信したことをユネスコは「困難な時に必要な貢献と連帯である」とし、慈善文化イニシアチブの世界的な例と評価したことに端を発する。
  47. バーチャルツアーではユネスコに提供しているTBSテレビ番組世界遺産の映像も利用されている。
  48. 世界遺産は不動産有形財構築物が対象であるが、例えば日本であれば世界遺産に登録された寺院に安置される仏像のような可動文化財は、世界遺産としての価値を補完するものと見なされている。
  49. この復元作業は「歴史的経緯・背景がある改修・移築(elapsed repair/dismantle)」の評価と、さらに原初の状態に戻すことの意義について注目される。
  50. 発端はイギリスの国民保健サービスコーポレートカラーが青色であったことに由来する。
  51. ヘリテージツーリズムには雇用創出経済循環の役割も持たせている。World Heritage and Sustainable Tourism Programmeも参照。
  52. 死因として感染予防のマスクや消毒、治療用の薬や機材、そして免疫力を維持するための日常食糧などを多くの国が輸出制限を敷いたことで、アフリカにまで物資が届かなくなったことにあると分析。これはユネスコが2005年に採択した「生命倫理と人権に関する世界宣言」に反する行為であるとし、世界貿易機関(WTO)などと調査に乗り出すこととした。また、今後開発される新型コロナウイルス用ワクチンの公平な流通を世界保健機関と監視する。
  53. ユネスコによる文化分野での持続可能性については、Culture for Sustainable Developmentを参照。

出典

ウェブサイト

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PDF資料

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配信報道

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引用書紙

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※参考文献の全容は下記「参考文献」からアクセス参照

参考文献

関連項目

外部リンク

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