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ドルビーアトモス

オブジェクトオーディオに基づくサラウンド音声規格 ウィキペディアから

ドルビーアトモス
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ドルビーアトモスDolby Atmos)とは、ドルビーラボラトリーズが開発したオブジェクトオーディオに基づくサラウンド記録再生方式である。[1]

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ドルビーアトモスのロゴ

概要

オブジェクトオーディオでは、予めチャンネル毎に割り付けられた音声トラックを用意するのではなく、音声トラックを位置情報と組み合わせたオブジェクトとして扱い、スピーカーの出力を音声の位置情報を元にリアルタイム演算して求める方式に変化している。従って、これまでよりも自由なスピーカー配置が実現できると共に、正確な定位感を実現することも可能になる。また、従来のドルビー規格もドルビーアトモスのシステムで処理することが可能で、サラウンド効果をより良く引き出すことが出来るようになる。従って、ドルビープロロジックIIzなどのチャンネル拡張技術を置き換える技術としても機能する。2012年に発表された『メリダとおそろしの森』は「ドルビーアトモス」を初めて導入した作品となった。同年6月にロサンゼルスにある世界最高峰の劇場であるドルビー・シアターに設置され、『メリダとおそろしの森』のワールドプレミア上映で初披露した。その後は同様に多くのドルビーアトモス対応映画が制作され、多くのシネマコンプレックスで体験できるようになっている。2014年からは家庭用の再生システムも販売されており、趣味層が導入するホームシアターの他、暗黙の内にスマートフォンにも搭載され普及している(意図して使われる事は少ない。例としては、iPhoneではApple MusicApple TVなどの一部コンテンツでのみ対応)。オブジェクトオーディオの理論としては、演算性能が確保できる限りスピーカーの個数を増やす事ができるが、ドルビーアトモスでは仕様上の上限が設けられている(演算性能を考慮して実用可能な最大数)。

ゲーム機では2013年に発売されたXbox Oneでアップデートにより初めてドルビーアトモスが対応し、のちにPlayStation 5も2023年でドルビーアトモスに対応した。

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再生環境毎に分けられた規格

ハイエンドからローエンドまで様々なデバイス向けに規格が用意されている。映画館用の規格は、従来の制作時にミキシングを行う方式ではなく、ミキシング前の三次元位置情報(パン情報)が含まれたマルチトラック(128本)を再生側でミックスして出力する方式である。アクースモニウムと同様に再生環境に多くのスピーカーを配置する。家庭用の規格は利用環境に制約が多い事を考慮して、映画館用の規格のサブセットとして仕様が簡略化されている。例えば、スピーカーの本数の上限が少なかったり、音声が完全にオブジェクト化されていなかったりする。家庭用のハイエンドであるホームシアター規格は機材の高価格や住環境の制約から広範な普及には至っていないが、ヘッドホン規格はWindows 10やスマートフォンにも広く搭載されるなど、用途の幅を拡げ、2021年5月に発売されたiMacも対応するに至った。特に、各家庭で人気となったゲームやVRやARなどの体験型デジタルコンテンツは元々オブジェクトベースで音声を演算しているため親和性が高く、ドルビーアトモスの採用も積極的に進められている最中にある。テレビ用の規格はHDMIケーブルが必須であり、一度ドルビーアトモスを再生機側で有効にすると他の音源の同時出力は強制的に不可能になる。アトモス出力時にステレオなどの別音源が混入した場合、混入時のみ音源のオブジェクト化が一時的にオフになる。また、ドルビーアトモス用の信号はドルビーデジタルプラスかドルビーTrueHDと互換性がある。

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後方互換

ドルビーアトモスの規格で作成されたコンテンツであれば最高のサラウンド効果を得られるが、7.1ch,5.1ch,2chなどの従来型の音声規格であっても、従来の規格通りに再生するより高いサラウンド効果が得られるように設計されている。逆に言えば、DTS:Xは下位互換の音源の拡張ができず、強制的に元の音源をそのまま出力する仕様である。そのため、DTSDTS Virtual:Xと呼ばれるこの仕組みによく似た規格を別で開発した。

つまりは単なる新規格であるだけでなく、ドルビーの過去のサラウンド規格や最も普及しているステレオ音声規格もチャンネル拡張により改善して利活用できる規格である。こうした複数のサラウンド規格をオブジェクトオーディオで統合して扱うデジタル信号処理は、2000年代までであれば消費者にとってはサラウンドへの理解が追いついていないことや、発展途上の半導体技術の問題で高価なハードウェアが必要になるため商業展開自体が難しかったが、2010年代にはコストダウンが進んでシネコンで当たり前に見られるようになった他、2,000円程度の安価なプラグインを購入すれば、PCにおけるソフトウェア処理で簡易版を実行することも可能になった。そしてあらゆるステレオ音声から気軽にサラウンド体験が得られるようになった。

技術

要約
視点

ドルビーアトモスには劇場からモバイルまで幅広い環境に向けた規格が用意されている。家庭用の規格は劇場用の規格と同等ではなく性能は大きく劣るが、サラウンド音響としては高い効果を発揮する。

Dolby Atmos for Theater
劇場の広さと設備に応じ最大128個の音響素材を元にリアルタイムレンダリングを実施し、最大64chのスピーカー音響となる。ドルビーアトモスは既存のサラウンドとは異なり、3次元空間を独立した動きのあるサウンド(またはオブジェクト)を、よりクリアでより正確に配置することが可能(音声情報として128個のトラックがあり、それぞれに三次元空間をパンできる位置情報が含まれている。それを再生環境側で合成して、適切なスピーカーへ出力している。)。
Dolby Atmos for Home
従来のチャンネルベース(5.1ch,7.1ch)のミキシング方式と、オブジェクトベースのダイナミックなオーディオミキシングを組み合わせ、精密な音の定位や移動を表現できることが特徴。スピーカーの配置は5.1.2ch(5.1chにオーバーヘッド(天井)又はトップスピーカー:OHSP×2ch),5.1.4ch,7.1.2ch,7.1.4ch,9.1.6chまで可能。(出力されるスピーカーの数はAVアンプ側による。)また天井スピーカーの設置が困難な環境の場合、「ドルビーイネーブルドスピーカー」(ユニットが斜め上の天井を向いたスピーカー)を既存の5.1chのフロントスピーカーの上に設置することで、ユニットから天井に向けて音を出し、反射させることで天井から聴こえるようにする事が可能。
規格媒体はBlu-ray Disc, Ultra HD Blu-ray, Kindle Fire HD, Windows 10,Windows 11,Xbox One, Xbox Series X/S, Netflix, Apple TV+, Amazonプライム・ビデオ, Disney+,Max,Paramount+,Peacock,Vudu(Fandango at Home),PlayStation 5,U-NEXTであり、ドルビーTrueHDまたはドルビーデジタルプラスの拡張規格として記録が可能。ドルビーアトモス非対応の再生機器ではドルビーアトモスの拡張機能は無視され、基本部分のドルビーTrueHD(7.1ch)、ドルビーデジタルプラス(7.1ch)、ドルビーデジタル(5.1ch, 2ch)のみが再生される。Fire TV Stick使用時はドルビーデジタルプラス経由のDolby Atmosしか出力できない。
Xbox One以降のXboxシリーズ、またはWindowsに"Dolby Access"を導入した場合、下位音源のアトモス化の可否が選択可能になるが、ドルビーアトモスの常時出力を設定する場合はドルビーTrueHDに対応したアンプが必要。YouTubeではドルビーアトモスに対応せず、最大5.1chまでであり、ドルビーアトモス対応を謳った動画は非対応である(2025年現在)。
Dolby Atmos for Headphone
据え置き型スピーカーを利用出来ない環境のための規格である。PCやスマートフォンなどを主な対象としている(利用にはOS及びアプリケーションが対応している必要がある。)。また、対応したAVアンプでも利用できる。ありふれた機器に搭載でき、処理能力が低いデバイスでも十分な効果が得られるように設計されている。FPSで用いると高精度な音の定位により敵の位置検出が高速化できるため、ゲーマーが多用するサラウンド規格にもなっている。Xbox One以降の全シリーズのXBOXではこの機能に対応させるためのアプリケーションである「Dolby Access」が無料配信されている(アプリケーション内の機能の購入には約1700円必要)。プラグインの購入後は、イコライザーと2ch音源のサラウンドの可否が選択可能。
Dolby Atmos Height Virtualizer
ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していない2.0chステレオや3.1ch、および5.1ch、7.1chなどの環境のための規格である。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを追加しなくても高さ方向を含むあらゆる方向からのサウンドに包み込まれる立体音響を実現可能。
Dolby Head Tracking
ヘッドホンやイヤホンに内蔵されている加速度センサーを利用して頭を動かす際に音の方向を特定し、映像コンテンツ視聴時に没入感のあるサウンドを実現可能。
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ドルビーアトモスが導入されている劇場

要約
視点

国内

2025年4月現在、日本国内では47劇場61スクリーン(ドルビーシネマ含む)に展開しており、営業終了するスクリーンもある一方で年々増加傾向にある。詳しい設備については各映画館チェーンの項目を参照。

北海道・東北

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東京都

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南関東(東京除く)

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中部地方

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近畿地方

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中国地方

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九州・沖縄地方

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かつて存在したドルビーアトモスの対応劇場

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ドルビーアトモスが搭載されたAV機器

要約
視点
サウンドバー・ホームシアターシステム

2014年の家庭版ドルビーアトモス規格の発表時に最初に制作されたのは、Trinnov製業務用アンプのAltitude 32である。

スマートスピーカー
ヘッドフォン・イヤフォン
  • Apple
  • Jabra
    • Jabra Elite 10(Dolby Head Tracking搭載・専用アプリから設定可能)
  • サムスン電子
    • Galaxy Buds Pro(Dolby Head Tracking搭載・One UI 3.1以上を搭載したGalaxyスマートフォン及びGalaxy Tabシリーズのみ対応)
    • Galaxy Buds2(Dolby Head Tracking搭載・One UI 3.1以上を搭載したGalaxyスマートフォン及びGalaxy Tabシリーズのみ対応)
    • Galaxy Buds2 Pro(Dolby Head Tracking搭載・One UI 3.1以上を搭載したGalaxyスマートフォン及びGalaxy Tabシリーズのみ対応)
  • Technics(パナソニック)
    • EAH-AZ100(Dolby Head Tracking搭載・専用アプリから設定可能)
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ドルビーアトモスに対応した機器

ドルビーアトモスを使うには、ドルビーアトモスに対応したバージョン1.3以上のHDMIケーブル、テレビ(またはサウンドバーやホームシアター)、および音声を出力するためのこれらの機種などが必要である。[19]

ドルビーアトモスが搭載されたスマートフォン

要約
視点
ファーウェイ
FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)[20]
  • arrows N
  • arrows NX9
  • arrows 5G
  • arrows we2 plus
  • arrows Alpha
サムスン電子

サムスン製スマートフォンは2018年以降すべての機種でドルビーアトモスが利用できる。なお、スピーカーでドルビーアトモスを聴く際にはステレオスピーカー搭載の機種のみとなる[21]

Xiaomi
  • POCO F6 Pro
  • POCO F4 GT
  • 14 Ultra
  • 13 T Pro
  • 13 T
  • 12 Pro
  • 11 Pro
  • Redmi Note 13 Pro+ 5G
  • Redmi Note 13 Pro 5G
  • Redmi Note 11 Pro 5G
  • Xiaomi 15
  • xiaomi 15 Ultra
  • Xiaomi 14T | 14T Pro
ソニー(旧ソニーモバイルコミュニケーションズ)[22]
Apple

iPad全シリーズ、iPhone SEの二代目・三代目はAirPodsなどを使用しなければドルビーアトモスを一部場面下で再生できない。

OPPO

Oppoは2023年以降、ドルビーアトモスを搭載したスマートフォンは発売されていない。

シャープ
AQUOS
  • AQUOS R2(2018年)
  • AQUOS zero(2018年)
  • AQUOS R2 compact(2019年)
  • AQUOS R3(2019年)
  • AQUOS sense3 plus(2019年)
  • AQUOS zero2(2020年)
  • AQUOS R5G(2020年)
  • AQUOS R8 | R8 Pro
  • AQUOS R9
  • AQUOS LEITZ PHONE 3
ZTE
  • M(Z-01K)
Motorola

motorolaは2023年以降日本で発売されている機種すべてでドルビーアトモスが利用できる。

  • razr 40
  • razr 40 ultra
  • razr 50
  • razr 50 ultra
  • edge 40
  • edge 50 pro
  • moto g53j 5G
  • moto g64 5G
  • moto g24
  • edge 60 pro
  • moto g66j 5G
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ドルビーアトモスが導入されたスタジオ

国内

ドルビーアトモスが導入された動画配信サービス

ドルビーアトモスが導入された音楽配信サービス

ドルビーアトモスが採用された作品

要約
視点

洋画

1980年以前

1980年代前半

1980年代後半

1990年代前半

1990年代後半

2000年代前半

2000年代後半

2010年以降

邦画

下記では作品単体で記事のない一部作品を掲載。その他の対応作品に関してはドルビーアトモスに関するカテゴリ欄を参照。

海外TV
国内TV

OVA

海外ストリーミング配信
国内ストリーミング配信
コンピュータゲーム
音楽作品

脚注

関連項目

外部リンク

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