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不信任決議

議会で不信任を決議すること ウィキペディアから

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不信任決議(ふしんにんけつぎ)は、議会で不信任を決議することである。本項では、日本の地方自治体や国会における不信任決議について述べる。

日本の地方自治体での首長不信任決議

要約
視点

日本の地方自治体の議会には、地方自治法により普通地方公共団体の長に対する不信任決議が認められている。なお、日本の普通地方公共団体の長の不信任について地方自治法は「決議」ではなく「議決」の文言を用いている[1]

要件

地方自治法第178条の規定により、議員数の3分の2以上が出席する都道府県または市町村の議会の本会議において、4分の3以上の賛成により成立する。地方自治法第281条以下に定められた東京都特別区においても、この規定が適用される。

不信任議決の要件は次の2つである(地方自治法第178条第3項)。

  1. 議員数の3分の2以上の者が出席
  2. 出席議員の4分の3以上の者が賛成

また、非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費を削除又は減額されたため長が再議に付した場合に、なお議会が削除又は減額すれば、首長はその議決を不信任の議決とみなすことができると規定されている(地方自治法第177条第3項)。

普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない(地方自治法第178条第1項前段)。

「不信任の議決」の解釈

地方自治法第178条に定義される「不信任の議決」の解釈については、議会が首長に対する辞職勧告決議問責決議を議員数の3分の2以上の出席で4分の3以上の賛成により可決した場合、首長に対する信任決議案を議員数の3分の2以上の出席で4分の3以上の反対により否決した場合、首長が提案した重要議案を議員数の3分の2以上の出席で4分の3以上の反対により否決した場合、議会が首長を刑事告発する決議をした(この具体的事例については後述)場合、などが含まれるか否か、という点で疑義を生じている。

以下のような判例または裁判例がある。

  • 「不信任の議決」とみなせるものを同法第177条第4項に該当するものに限定する(鹿児島地裁昭和25年11月21日判決)
  • 辞職勧告決議案の可決・信任決議案の否決や客観的に首長に対する不信任の意思を表明すると認められる議決は「不信任の議決」に含まれるとする(和歌山地裁昭和27年3月31日判決)
  • 首長が提案した重要議案を議会が4分の3以上の反対により否決した場合が含まれるとする(松江地裁昭和28年3月25日判決)
  • 辞職勧告決議は「不信任の議決」に含まれるがそれ以外の議決は含まれないとする説(青森地裁昭和33年2月27日判決)

効果

不信任議決があったときは、議長は直ちに首長に通知する。不信任決議を受けた首長は、10日以内に議会を解散することができる(地方自治法第178条第1項後段)。解散しなければ10日が経過した時点で失職する(地方自治法第178条第2項)。また、議会を解散した場合において、選挙後に初めて招集された議会で再び不信任決議案が提出された場合は出席議員の過半数の賛成で成立し、首長は議長から通知があった日において失職する(地方自治法第178条第2項・第3項)。

首長に対する不信任決議は成立要件が非常に厳しく、議員にとっても首長からの解散による失職のリスクを伴う。そのため、政治情勢によっては代わりに拘束力のない辞職勧告決議が決議されることもある。

具体的実例

(肩書きは、いずれも当時のもの)

都道府県知事に対して

さらに見る 可決年月日, 都道府県 ...

市町村長に対して

さらに見る 可決年月日, 自治体名 ...

特別区の区長に対して

(以下○○区とあるのはすべて東京都の特別区である(記載時点では東京都にのみ特別区が存在している))

さらに見る 可決年月日, 特別区 ...

地方自治法上の「不信任の議決」が成立しているか争いがある事例として、東京都千代田区石川雅己区長が行った区議会の解散通知(2020年7月28日)の根拠が挙げられる。区議会は同月27日に、石川区長を地方自治法違反(偽証、証言拒否)の疑いで刑事告発する旨の決議を行ったところ、石川区長がこの決議は区議会の解散根拠となりうる「不信任決議」であるとして、前述の区議会の解散通知を行った。一方区議会の小林孝也議長は、前述の刑事告発決議は、区議会の解散根拠となりうる「不信任決議」にはあたらず、よって前述の区議会の解散通知は無効であるとして解散に応じないとしている[37]。25人の区議全員が解散の無効と執行停止を求め提訴し、 8月7日、東京地方裁判所は議会による刑事告発は不信任議決と同一とはいえないとして、解散通知の効力を停止する決定をした[38]。決定を受け石川は11日に解散通知を取り消し、謝罪した[39]。2021年8月29日、東京地裁は解散通知について「告発は捜査機関に処罰を求めるものにすぎず、不信任には当たらない。解散処分は要件を欠いており、違法」とした上で、石川が既に取り消したことを理由に処分の無効確認の訴えを却下した[40]

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国会での不信任決議

要約
視点

国会で不信任決議を行う場合、憲法上規定されている衆議院本会議における出席議員の過半数による内閣不信任決議日本国憲法第56条第2項第69条)とそれ以外の法的拘束力のない不信任決議がある。法的拘束力がない不信任決議の対象は衆参両院の役員(議長・副議長・委員長・事務総長等)及び個々の政治任用職にある者(国務大臣・副大臣等)に対して用いられる。衆参両院の役員に対しては、委員会で不信任決議を行う場合がある。慣例上、法的効果の有無に関わらず先決問題とされ、基本的には最優先で審議される。

政治任用職者への不信任決議

衆議院において内閣全体ではなく個々の閣僚に対して不信任決議がなされることもあるが、法的に辞職を強制するものではなく憲法第69条のような効果も生じない[41][42]。ただし、個々の閣僚に対する不信任決議であっても、内閣はこれを内閣全体の基本政策に対する不信任の意思表示であるとみて衆議院を解散しあるいは総辞職することは可能と解されている[43]。なお、参議院では政治任用職にある者(国務大臣・副大臣等)に対しては問責決議が行われている。

1992年のPKO国会では、PKO法案の採決引き伸ばしを狙う野党が、議事妨害の一環として、先決問題である閣僚不信任案を全員分一件ずつ提出してはその度に討論と記名投票を行わせる構えを見せた。これに対して与党は内閣信任決議案を提出し可決させた。その上で、内閣信任決議が行われた以上は、個別の閣僚に対する不信任案の審議は一事不再議の慣例に抵触するため不要であるとした。

さらに見る 本会議採決日, 対象者 ...
※太字は不信任決議可決例
※役職欄に記載の職名は当該不信任決議案の題名に用いられた表記による(必ずしも法的に正式な表記ではない)。
※これらのほかにも、決議案提出後(撤回、会期終了等により)採決に至らなかったものが多数ある。

国会役職者への不信任決議

議会が自ら選任した役員を解任するには国会法など議会法上に特段の定めがある場合を除き許されない[44]。国会法は常任委員長についてのみ解任規定を置いている(国会法第30条の2)。しかし、議会運営を混乱させて責任を明らかにする必要がある場合や誠実に職務を執行せず議会運営が停滞しているとみられる場合には当該役員に対して自ら職を辞するよう不信任決議をなしうる[45](常任委員長に対しても解任が相当とまではいえない場合には不信任決議をなしうる)。不信任決議によって辞任が強制されたりすることはなく決議に拘束力はないが、当該役員は在任の根拠を失うため自らの進退を決する政治的・道義的責任を負うこととなる[44]。国会役職者に対する不信任決議については法的拘束力があるとみる学説も存在するが、1961年6月8日の「衆議院副議長久保田鶴松君不信任決議案」においてはその可決によっても当然に失職とされたわけではなく、同日午後に久保田副議長から清瀬一郎議長宛に辞職願が提出されたのを受け、国会法第30条に基づいて「副議長久保田鶴松君辞職の件」として記名投票による採決が行われた上で辞職が許可されている[46]

衆議院規則は議員が議長・副議長・仮議長のいずれかの信任又は不信任に関する動議若しくは決議案を発議するときは、理由を附して50人以上の賛成者と連署して議長に提出しなければならないとする(衆議院規則第28条の2第1項・第3項)。発議要件について参議院規則には同旨の規定はないが、同様の重い発議要件を課すべきとされる[44]

役員の不信任に関する議事は一般の議事に対しては優先して扱われる。議長の不信任決議案が発議された場合、国会法上の「議長に事故がある」ものとして扱われる(昭和53年衆議院先例集66)[47]。そして国会法の規定に従って副議長が議長の職務を行い決議案の採決が行われる(国会法第21条)。

なお、常任委員長に対する解任決議は本会議で「その院の決議をもって」行われ(国会法第30条の2)、常任委員会における不信任決議においてこの規定を援用して委員長を解任することはできない[47](法的拘束力のない不信任決議をなしうるにとどまる)。委員長の信任または不信任動議の議事は、慣例では委員長の指名する委員会理事が代行する[注 1]

さらに見る 本会議採決日, 議院 ...
※太字は不信任決議可決例
さらに見る 委員会採決日, 議院 ...
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脚注

関連項目

外部リンク

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