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小笠原諸島西方沖地震 (2015年)

2015年に発生した地震 ウィキペディアから

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小笠原諸島西方沖地震(おがさわらしょとうせいほうおきじしん)は、2015年5月30日20時23分に発生したM8.1の大地震である。震源の深さは682kmと非常に深く[3]、日本付近で発生した深発地震としては観測史上最大の規模である。

概要 小笠原諸島西方沖地震, 本震 ...

小笠原諸島神奈川県の一部で最大震度5強の揺れを観測したほか、深発地震に伴う異常震域によって日本47都道府県すべて震度1以上の揺れを観測した[5]

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概要

要約
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この地震は、2015年5月30日20時23分02.2秒に小笠原諸島西方沖(北緯27度51.6分 東経140度40.9分)の深さ682 kmを震源として発生した[6]。地震の規模を示すマグニチュードは、気象庁マグニチュードでMj8.1、モーメントマグニチュードでMw7.9であった[1]津波は発生しなかった。発震機構は東西方向に張力軸を持つ型であり[7][8][9]、地震を起こした断層の大きさは40km×40kmで、最大のずれは約6mである[10]

小笠原諸島西方沖では太平洋プレート伊豆・小笠原海溝からマントル深部にほぼ垂直方向に沈み込んでおり、そのプレート(スラブ[注 1])が深いところで破断したことにより発生した深発地震であった[11]。発生場所は、上部マントル下部マントルの境界付近と推定されている[12]国立研究開発法人海洋研究開発機構は、本地震について「上部マントルの底付近で横たわるスラブが下部マントルへ突き抜ける前兆」であったと発表している[13][14]

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USGSによる震度分布図

深発地震であったことから明瞭な異常震域が出現し、地盤が弱いとされている地域で強い揺れを観測した。小笠原諸島の母島と神奈川県二宮町で震度5強を観測したほか、埼玉県の鴻巣市春日部市宮代町で震度5弱を、関東地方の広い範囲で震度4を観測し、北海道から沖縄県にかけての47都道府県全てで震度1以上の揺れを観測した[15][16][17]。全国47都道府県全てで震度1以上が観測されたのは、気象庁が1885年に震度の観測を開始して以来、初めてのことである[18][19][20][21]。但し、1996年以降の計測震度とそれ以前の体感震度による観測を同列の連続した統計としては扱えないこと、更に、1996年以降は震度観測点が大きく増加していること[22][23]に留意する必要がある。

また日本以外では、台湾花蓮県台東県基隆市彰化県雲林県韓国南部の全羅南道でも揺れを観測している[24]

本地震は、フィリピン海プレートの下に沈み込む太平洋プレートの内部で発生した[7][8][25]。震源から出た揺れは、太平洋プレートおよびフィリピン海プレートを伝って減衰しないまま広範囲に伝搬し、その影響で日本列島全域で有感となったものと考えられている[5][25]。このあたりの地震は逆断層型である場合が多いが、この地震は珍しく正断層型であった[10]

地震発生当初の速報値では、規模はM8.5で震源の深さは590kmと発表されていたが[注 2]、剛性の高いプレート内を地震波が伝播したためにいわゆる異常震域となって過大評価されていたため、翌日に精査した暫定値ではM8.1、震源の深さ682kmと更新された。2016年3月22日公開の地震月報(カタログ編)による確定値は、M8.1で震源の深さ681kmとなっている[3]

この地震の震源の深さは、日本の地震観測史上最深、また1900年以降発生のM7.8以上の世界中の地震の中でも最深と、極めて稀な例であった[11][29][30]。ただし、Mw 8.0以上の場合はコロンビア地震の644.8kmが最深であり、300km以上の深さの地震としては、1906年以降5番目の大きさであった[20]。この深さでM8クラスの巨大な地震が発生するのは非常に珍しいことである[10]

断層破断が原因で発生することが多い通常の地震とは違い、超高圧・超高温で断層の破壊は起きにくいとされる超深部で本件のような大規模な地震が発生したメカニズムは、2017年の東北大学大学院の調査では、沈下・断裂による太平洋プレートの歪みの蓄積、プレート内部での鉱物の状態・構造変化(相転移)、マントルによるプレート加熱など、複合的な要因によるものと推測された[11]

なお、5月30日21時46分には、この地震の余震とみられるM3.6の地震が発生している。この余震は、震源の深さが698kmと本震よりもさらに深く、気象庁震源カタログによれば、日本で発生した地震としては観測史上最も震源が深い地震となった[31]。通常、深い地震の場合は余震があまり発生しないことが多いが、この地震は深発地震にしては珍しく多数の余震を伴った[10]最大余震は、6月3日6時4分に発生したM5.6の地震(最大震度1)である[8]

2021年6月26日に学術誌「Geophysical Research Letters」に掲載された論文では、防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net)によって観測されたデータの解析により、この地震の余震のひとつが深さ751kmで発生し、さらなる研究が必要なものの観測史上世界最深の地震が発生した可能性があることが発表されている[32]

ちなみに、世界で過去に発生した深発地震の中で最も震源が深い地震は、地震カタログによっても異なるが、USGSのカタログではフィジー付近で深さ700kmを超える地震が記録されている[33]

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各地の震度

要約
視点

震度4以上の揺れを観測した地点は以下の通り[6]

さらに見る 震度, 都道府県 ...
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被害

この地震による大きな人的・物的被害はなかったが、震度4から5強を観測した首都圏を中心に、エレベーターの停止や鉄道など公共交通機関のダイヤの乱れなどが相次いだ[19]

揺れによる転倒や火傷などにより、東京・神奈川・埼玉の3都県で計13人がけがをした[12]。東京都足立区や埼玉県ふじみ野市などでは、合わせて約600世帯で一時停電が発生した[12]

国土交通省のまとめでは、首都圏で合わせて1万9千台のエレベーターが地震後に緊急停止し、そのうち14台で利用者の閉じ込めが発生したが、いずれも約1時間で救出された。この結果と、今後首都直下で予想される地震でも閉じ込めが予想されることから、国交省と日本エレベーター協会などは6月2日に会合を行い、復旧作業を担う人材確保や、エレベーター内での飲料水や簡易トイレの備蓄を進める方針とした[34][35]

緊急地震速報

気象庁は、地震波検知から3.4秒後の20時24分26.1秒に緊急地震速報(予報)を発表した[36]。ただし、緊急地震速報(警報)については、深発地震では正確な震度の予測が困難であることから、当時の運用では発表していない[9]

長周期地震動

この地震で長周期地震動を観測した[9][37]

さらに見る 階級, 地域 ...

政府・各省庁等の対応

脚注

外部リンク

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