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ロボット

人の代わりに何等かの作業を自律的に行う装置や機械 ウィキペディアから

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ロボットフランス語: robot, : robot(英語版))は生き物のように複雑な動作ができる機械のことである[注釈 1]

また、やや侮蔑的な用法として、「機械的」な人、自分で判断をしないように見える人、あるいは普通の感覚や感情を欠いている人[1]、他者の意のままに動く人のことを指すこともある[注釈 2]

語源

この言葉が初めて用いられたのは、1920年にチェコスロバキア(当時)の小説家カレル・チャペックが発表した戯曲R.U.R.(ロッサム万能ロボット商会)』においてであるが、この作品のロボットは人間とは異なる組成の肉体と人間そっくりの外見を持つものを、化学的合成で原形質を使って製作したものであった。現在のSFで言うバイオノイド(人工生命体)である[注釈 3]

チェコ語強制労働(もともとは古代教会スラブ語での「隷属」の意)を意味するrobota(ロボッタ)と[5]スロバキア語で労働者を意味するrobotnik(ロボトニーク)から創られた造語[6]である。

日本では同作品の翻訳本が1923年に出版された(宇賀伊津緒訳、春秋社)が、翻訳者の宇賀はrobotを「人造人間」と訳し、タイトルも『人造人間』とした。原典のままカタカナ表記した「ロボット」が普及したのは、第二次世界大戦以降であった。

語義の多様化

起源とされる上記作品においては「ロボット」は「人の代わりに作業(労働)をさせることを目的に」、「人(の姿と自律行動)を模して」作られたものであるとされ、同作品が広範囲に流布したことにより当初はその意味で使われたが、その後次第に、各分野においてやや違う意味でも使われるようになった。

ヨーロッパでは1930年代中頃から『自動化』という意味で、高度に自動化されていれば人の形をしていないものでもロボットと呼ぶようになった。ドイツのカメラメーカーであるオットー・ベルニングは1934年に発売したモータードライブ内蔵カメラを『ROBOT』と命名した。

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定義

要約
視点

ロボットの定義

2006年(平成18年)のロボット政策研究会報告書では「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義された[7]。これは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDOロボット白書2014」(2014年3月)[8][9][10]でも同様である[11]

(1)ロボットの定義 ~知能化した機械システム~

(中略)従来からのロボットアニメ等の影響に加え、官民から相次いでヒューマノイド型ロボットが発表されてきたこともあり、ヒューマノイド型ロボットのイメージが強い。

しかしながら、本研究会においては、ロボットを市場の側から捉えることに主眼を置いているため、ロボットを形状ではなく、「市場で必要とされる機能を発揮するために要素技術を統合したもの」という視点から定義することが適当である。さらに、RT(ロボット技術)と IT の関係も、明確にすべきと考えた。このため、本研究会では、「ロボット」を、「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」として、広く定義することとする。

このため、上記の「検索ロボット」は、RT の一部ではあっても、「ロボット」の定義から外れる一方、自動車や情報家電でも、上記3要素を持つものは、ロボットの範疇に入りうることとなる。出典: ロボット政策研究会報告書 2006年5月 ロボット政策研究会(p.7)[7]

 

産業用ロボットとサービスロボット

工業分野では明確に定義が定められている。

たとえばJISの「JIS B 0134」(1998年)では[12]産業用ロボット」の定義を「自動制御によるマニピュレーション機能又は移動機能をもち,各種の作業をプログラムによって実行できる,産業に使用される機械」とした。同じく2015年版の改訂[13][注釈 4]を経て、2024年10月に改正された[14][15][注釈 5]

協働ロボットの定義

前節で示した3つ目の「協働ロボット」という新区分が加わった今回の改訂は、ロボットの用途が多様化し、伝統的な「産業用 vs サービス用」の二分法(特殊環境用を加えれば三分法)だけでは十分でないこと[注釈 6]を示唆している。

  1. 日本の行政では、長年にわたりロボットを「産業用ロボット」(製造業)と「サービスロボット」(その他)に分類してきた。この分類は、特許庁[16]や総務省[11]の報告書で確認できる。(歴史的経緯)
  2. 産業用ロボットの普及が進みつつあった1980年代、次にロボットが進出するべき分野として、原子力発電所、海洋(深海底)、宇宙での使用を目的とした「極限作業ロボット」の開発を目指す「極限作業ロボットプロジェクト」(1983年度~1992年度)を推進。
  3. 技術の進展により、これまで工場などある程度管理された空間に設置、使用されていた産業用ロボットが、建設業(溶接ロボット塗装ロボット)や農業(搬送ロボット)などの分野でも使用されるようになり、さらに加わった「家庭用ロボット」という新しいカテゴリの存在は、ロボットの用途が多様化し、伝統的な分類では不十分となったこと[注釈 6]を示唆。(近年の動向)
  4. 2024年10月に発行された「JIS B 0134:2024」[15][注釈 5]は、サービスロボット(一般家庭や商業施設に言及)や協働ロボット(新区分)に関する定義や用語が追加され、分類がより包括的になったことを反映している。(最新の規格)

ロボットとロボットでない機械の線引き

基本的に、ある程度の工程なり手順なりを自動的かつ連続的に行うものであり、単一の動作のみを行う装置(ベルトコンベアーエスカレーターなど)や、絶えず人間が操作をする必要がある装置(リフト装置エレベーター)、操縦者が搭乗する必要性があるもの(ブルドーザーショベルカーなど)はロボットに含めないことが多い。

その一方で、人の形を模した(もしくは類似した)外観である機械装置であれば、まったくの手動操作・操縦であっても、範疇に含む場合があり、パワードスーツなどを含めた「人の形をした乗り物または作業用機械」についても同様に、一般的にはロボットと呼ばれている。

モーター等の動力が内蔵され機械的または電気的に人間の操作を伝達して動作するマスタースレイブ型のマニピュレーターも一種と見なされ、ロボットアームと呼ばれるが、これらは厳密な定義による分類ではなく、多分に慣用句的用法である。国際宇宙ステーションに設置されたカナダアーム2などの貨物移動用や、手術に使われるダ・ヴィンチなどのロボット支援手術機器が実用化している。

人間ではなく生物の動きを模した機械もロボットに含まれる[17]

物体としては存在しないが、「人の代わりになんらかの作業を、ある程度の工程なり手順なりを自動的かつ連続的に(かつ効率的に)行うもの」という定義から、コンピュータ言語によるプログラムやソフトウェアも範疇に含まれる場合もある。例としてインターネットの情報を自動検索するソフトウエア「検索エンジン」などはロボット検索(命令(検索ワードの入力)するだけで、さまざまな結果・情報の取得まで自動で行なう)と呼ぶ。これらは機械的ロボットとの区別のために短縮形のボット(Bot)と呼ばれる(インターネットボットボットネットなど)こともある。

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ロボットを題材とした作品

要約
視点

ギリシア神話には青銅で出来た自動人形タロース』が登場する。これは自然発生したものではなく、鍛冶の神であるヘーパイストス(あるいはダイダロス)によってクレタ島を警備するために作り出されたとされ、現代の定義では警備ロボット軍事用ロボットに該当する。

複雑な機械装置が登場すると、工学的に精巧な装置を組み合わせていけば最終的には人間に限りなく近い物ができあがるだろうという予測から、古今東西・様々な架空のロボットが想像され、ロボットアニメロボット漫画などジャンルが形成されている。またロボット工学三原則スーパーロボットリアルロボットなどの用語も登場している。

生物に外見や機能が似ている機械

この意味の「ロボット」は、フィクション作品、特にSFではアンドロイドや人造人間として登場し、日本のアニメでは『鉄腕アトム』『鉄人28号』『マジンガーZ』などに登場した。

現実に製作・製造されたロボットとしては、研究用ロボット、広報目的のロボット(テーマパークやパビリオンなどで案内係を務めるロボット)が1970年代から作られた他、メカ好きの間では関節部にサーボモータを組み込んで、数十センチ程度大きさのロボットを作りコンピュータ制御で動かしたり[18]、ヒットには及ばないもののTVゲームの新機軸としてプレイ内容と連動するロボットが登場するなどした[19]。1999年にはSONYAIBOを発売し愛玩用のペットロボットという分野が広まりはじめ、2000年にはHONDA二足歩行ロボットASIMOを発表した。

なお、人や動物に通常以上の力を発揮させるために、身体の一部を人工物や装置で置き換えたり追加で埋め込んだ状態は「サイボーグ」とされ、ロボットとは区別されている。

自律性

要約
視点

自律制御の機械という意味のロボットである。コンピュータ制御で自律的に判断して動く。センサおよびアクチュエータおよびコンピュータとそのソフトウェアで(また機種によってはAIも搭載して)「自律性」を実現している。センサとしてはLIDAR(ロボット技術を構成する要素技術のうち部分構造に関するもの)、測位技術(同じく知能化技術のうち自律移動制御に関するもの)としては、GPSを必要としない測位やマッピングを可能としたSLAMの研究開発も進んでおり、いずれもロボットの自律制御に欠かせない技術となっている[20]

無人の航空機や潜水機(ドローン)を自律制御で活用するための実証試験も行われている[21][22]

自動運転車は、かつては「SFの世界」だったが、現在ではすでに「レベル3」(条件付自動運転)や「レベル4」(高度自動運転)が登場している[23]。たとえば2021年3月5日にはHonda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)搭載ホンダ・レジェンドとして登場。これは(高速道路で渋滞した時に限りではあるが)レベル3自動運転を実現し、車の周囲を2基の単眼カメラ、5基のミリ波レーダー、5基のLiDAR(ライダー)によって監視しハンドル・アクセル・ブレーキ類を自律的に操作するものである。そして2022年5月にはメルセデス・ベンツから、DRIVE PILOT(ドライブ・パイロット)を搭載した「Sクラス」「EQSクラス」が発売された。

また、2025年から米ウェイモ社の自動運転タクシーサービス(Waymo One)のテストが東京で開始されたが、これは大規模言語モデル(LLM)や推論能力を、自動運転に特化したAI技術(Waymo Driver)と組み合わせることで可能となったものであり、AIとの融合も進みつつある[24][25]

人間の動作の援助装置、自立援助装置

通常「ロボット」と呼ばれるものとは異なり、単体での動作はなく、人間が装着することで機能を強化する装置もある。筋力を補う装置は「パワードスーツ」「強化外骨格」などと呼ぶ。カテゴリーとしてはロボットではなく、「人間の身体に装着する装置」である。
医療・福祉関係のほかに、物流関係、工事現場など広く民生用への応用が期待される。軍事用に米軍がマサチューセッツ工科大学と共同で強化外骨格の研究をしているといわれる。
また、人間の力を拡大するのではなく、手術などの微細な作業の際に人間の動きを縮小するマイクロサージャリー用の装置も医療用に開発されている。
「ロボット」といっても自律的に動くのではなく、あくまで人間の動作ひとつひとつに反応して動く動作補助用の装置である。

  • サイバーダイン社のHAL - 筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海嘉之教授が中心となりロボットベンチャーサイバーダインが設立され、「HAL」を製造しているが、これは現在の医療での回復が見込まれない、脊髄損傷により歩行ができない人や、それ以外に病気などで歩行が困難な人を対象に、歩く動作を補助する目的の装置である[26]。イメージとしては小説「宇宙の戦士」などに登場する架空の兵器であるパワードスーツといったらわかりやすいかもしれない。福島第一原子力発電所事故後、「HAL」を原発作業員のために改良したロボットスーツを公開している[27]
  • i-footトヨタ)は、歩行障害者の使用する車いすの代替をめざし開発された、人の下半身のみを模倣した二足歩行装置(パーソナルモビリティ)であり、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)で実際に使われた。高さは2.36mと、動歩行の二足歩行ロボットとしては最大級のサイズを実現し、階段の昇降も可能という[28]
  • 松下電器産業神戸学院大学総合リハビリテーション学部の中川昭夫教授らのチームと共同開発した半身麻痺患者のリハビリテーション用ロボットスーツは、健常な半身の筋肉の動きをセンサーで検知し、麻痺した側に装着した人工筋に伝えることで左右同じ動きを実現するもので、2008年の実用化が計画された[29][30]

BMI(ブレイン・マシン・インタフェース)の分野では、人間の動作ではなく思考(脳波や筋肉が発する電磁パルス)を読取ってコンピュータやマシンの動作につなげる研究も進められている[31][32][33]

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範囲

上述の通りロボットの概念は広範で、捉え方も多様である。例えば産業界では外観が生物型であることにこだわらない一方で「検索ロボット」を含めていないが、近年人工知能技術ディープラーニング大規模言語モデル群ロボットといった知能化技術の発展もあり、研究分野や一般の認識とはやや異なる上、ロボットの可能性の広がりとともに従来の概念も変わりうる状況である[34][35]。フィクション作品上の架空物からの影響も大きいが、以降では基本的に実在するもののみを扱い、SFやアニメなどのフィクション作品については含めないこととする。

車との関係

ロボット技術の進展を、構造や要素技術の一つである移動型ロボットの観点(モビリティ)から捉えれば、車やオートバイ、自転車、車椅子などの従来の移動手段との競合が生れる。移動支援ロボットの規制は、カテゴリごとに異なる官庁が関与する。

呼称や形態も搭乗型移動支援ロボット[36](例:セグウェイ電動車椅子WHILL)、シニアカー(電動カート、スズキでは「セニアカー」))や、高齢者や障害者の移動を支援する機器として移動支援介護ロボット[37](例:シルバーカー、シニアカー)、さらにマイクロモビリティ[38]電動歩行アシストカー[39][40]など様々である。

これらのロボットは主に歩道や自転車道を走行し、車の交通流に直接影響を与えないよう設計されている。しかし、交差点や横断歩道での安全確保、歩行者との共存が課題であり、政府が推進する「スマートモビリティ」や「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」により、自動運転車との連携、シームレスな移動サービスの整備が期待されている。

法改正により、移動支援ロボットは交通ルールを守りつつ、公道や歩道での運用が可能となった[41]

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歴史

古代~19世紀

20世紀

Thumb
テレヴォックスとR・J・ウェンズリー(1928年)

21世紀(00年代)

21世紀(10年代)

21世紀(20年代)

2025年

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分類

要約
視点

ロボットは長い間フィクションの中だけに登場する存在であったが、主に工場などの生産ラインにおける腕力の必要な作業などで、自律的に人間の代行ができる機械(自動車組み立てロボットなど)が産業用ロボットと呼ばれ活躍している[注釈 7][16]

すでに一部では、自動的に建物内を巡回・警備するロボットのレンタル事業が開始されており、病院内の物資運搬におけるロボットカートの採用、また既に述べた通り、自動運転タクシーの試験運用や[92][93][182]、自動車製造工場へのヒューマノイドの試験的導入など[144][145][146][147]、さまざまな形態の自動機械が人間社会の中で活動を始めている。

福島第一原子力発電所事故の発災後に日本製の原発ロボット(調査ロボット)の投入が遅れたことや、その後、投入されたものの目覚しい活躍を示していない現状[196][197]や、掃除用ロボットなどの分野で日本企業が主役から外れていることなどを背景に、実用性の高いロボットの研究開発の重要性が指摘されている。

用途別と構造別による分類が行える[注釈 8][16]

用途別による分類(応用技術)

Thumb
産業用ロボット

産業用ロボット分野

サービスロボット分野

構造による分類(要素技術)

人型

Thumb
二足歩行型「トヨタ・パートナーロボット」

1980年代後半以降、ASIMO(本田技研工業)・HRP-2/HRP-3川田工業産業技術総合研究所川崎重工業)・SDR-4X/QRIO(ソニー)・PALRO富士ソフト)等の二足歩行可能な人型ロボットが開発・発表されており、ROBO-ONEのような企画向けに個人で製作されるものにも高度なものが現れ、オーケストラ指揮したり[402]TPRトヨタ)等の実際に楽器演奏ができるものも登場している。 2018年10月11日には、ボストン・ダイナミクス社の最新型アトラスが「パルクール」を軽々とやってのける動作を撮影した新映像が公開された[403][404]

いずれもこれら人の形をした(もしくは目指した)ロボット開発は、古くからのSF作品で描かれた「人間社会に溶け込み、人間との共同作業や共に生活するロボット」というイメージに沿ったものでもあり、日本においては『鉄腕アトム』の影響が少なからず二足歩行ロボット開発者の発言に示されている一方、若い世代では一連の巨大ロボットもののアニメーション(→ロボットアニメ)が言及される。たとえば、ASIMOでは前述の『鉄腕アトム』を、HRP-2/HRP-3開発者の一部は『機動警察パトレイバー』の影響を受けていることを公言しており、同シリーズは実動機のデザインをアニメのメカデザインで活躍する出渕裕に依頼[注釈 16]したことでも知られる。

動物型

映画などで動物に似せたロボットを使ったアニマトロニクスがある。また、その技術を流用して、野生動物の観察も行われる。BBCのドキュメンタリー『潜入!スパイカメラ英語版』、海洋生物向けの『BBC Earth スパイ・オーシャン英語版』などに利用される。

  • エントモプター - 昆虫の羽ばたき飛行の空気力学を使用して飛行する航空機
  • オーニソプター - コウモリのようにを羽ばたかせることによって飛ぶ航空機。
  • ロボットフィッシュ英語版 ‐ 魚などを刺激しないよう魚に似せたロボット。
  • スネークボット英語版 - ヘビのように細長い体で閉所での活動を行えるロボット。
  • タコ型ロボット英語版 - ハーバード大学の機械工学、マイクロ流体工学、3Dプリントをそれぞれ専門とする研究者らが協力して製作。全身が柔らかい素材で作られたソフトロボット英語版で、機械的な装置も電子回路も使わずに、自律的に動く[405]
  • ドブネズミ型ロボット「SQuRo」 - 北京理工大学の研究グループが開発。「SQuRo」は「Small-sized Quadruped Robotic」の略。本物のドブネズミのような能力を活かし、災害現場で生存者を発見することを目的としている[406]
  • クモ型変形ロボット - エストニア、タルトゥ大学の研究チームがクモに着想を得て、加熱されたポリマー溶液を射出するというアイデアによるロボット。自分の体をその場で糸を紡いで作り出し、環境に合わせてボディを変化させるというもので、状況の予測が難しい災害現場の救助作業や、機械と風景がシームレスに融合した適応型建設技術まで、これまでの産業的な発想をくつがえす可能性を秘めている[407]
  • 鳥型ドローン - スパーキークリエイト株式会社は、リアル鳥型ドローン第2弾「MetaBird(メタバード)」の先行販売を国内クラウドファンディングサービス「GREEN FUNDING」にて2021年7月2日に開始した[408]
  • オーシャングライダー - 人工エラ燃料電池システムにより海中でエネルギー源となる酸素を得て、リチウムイオン電池より低コストで長時間の稼働を可能にしたシステム[409]
  • フグ型ソフトロボット(PufferFace Robot、PFR) - フグに着想を得た振動駆動型のソフトロボット。石油・ガス配管、化学プラント、上下水道管などの複雑で狭隘な小口径の配管における点検作業を目的とした点検ロボットで、膨らむ外皮により配管の直径の変化に柔軟に対応して進む[410]

動物の代替

盲導犬番犬軍馬駄獣合鴨農法など生物を利用していた分野においては、育成や維持にコストがかかることからロボットで代替する研究が行われている。

  • 盲導犬ロボット[17]
  • ヤギ型四足歩行ロボット「RHP Bex」(川崎重工業製) - 100kg以上の重量物も運べる。歩行モードのほか、車輪移動モードで地形の状況に応じて移動可能[411]
  • ロボット番犬 - (英国)ジャガーランドローバー(JLR)のEV製造・テスト施設に採用された「ROVER(ローバー)」という四足歩行の犬型ロボット[412]
  • ロボット犬[413] - AIを搭載した四足歩行型の新型兵器(詳細不明)。
  • 動物型ロボット兵器 - 防衛省防衛研究所増田雅之・中国研究室長は「中国は軍民融合で無人機やAI技術を発展させ、米国より進んでいるとの分析もある」と話した[414]
  • 水田用自動抑草ロボットアイガモロボ」 - 農研機構有機米デザイン株式会社(現「NEWGREEN」)、東京農工大学井関農機株式会社が共同で開発し、実証試験を全国36ヵ所で行った[319]。仕組みはロボットが水田を縦横無尽に走り回り水を濁らせることで、雑草の光合成が妨げられ生育を抑制させるというもの。改良型の「アイガモロボ2」が2025年3月に発売となる[415]

家庭用ロボット、個人用ロボット

古くはリモートコントロールや簡単なマイクロコンピュータで制御された物が、博覧会や展示施設で訪れた者の目を楽しませていたが、近年では家庭で使われるロボットも増えている。

2022年時点で一番普及率が高くなっているのは、掃除用ロボットである。家事の中でも比較的「好きでない」「やりたくない」ものである掃除を自動化できるので購入の動機が強く、普及が進んだ。最初は、単純に壁にぶつかってから方向を変更して動き回る装置だったが、やがて高級機種では上部にカメラを備えて天井の形から部屋のマッピング(地図作成)を行うものまで登場した。曜日・日時などを設定しておけば、勤務や授業で自宅にいない時に自動的に掃除して充電ステーションに戻るを繰り返す。

ビタクラフト社のRFIQ自動調理システムは「世界初の調理ロボット」といわれた[416]

Thumb
AIBO

ソニーのAIBOエンターテイメントロボットという分野を開拓し、シリーズ化し、大人気となった。さまざまな意味でかなり「生物的」になっているので、人々はロボットとしてというより最初から「ペット」として購入する傾向が強まっている。Youtubeなどでもアメリカ人YoutuberたちがERS-1000をすっかりペットとして扱っている様子が多数投稿されている。

家庭用ロボットは、人間とコミュニケーションを取ったり、自由に動き回って目を和ませたり、更には「ロボットの居る生活」という「近未来的な暮らしをしたい」というニーズに応えている。これらは主に、ペットという性格付けが強いことから、動物型の物が多く市場投入される傾向にある。ただし、感情移入のしやすい動物や人の姿などをしていなくても、ロボットをかわいがる人々はおり、中には掃除用ロボットが「かわいい」「健気」と愛着や感情移入している人々もいる[417]

介護ロボットの需要も高まっている。「高齢化社会人手不足」が進展する日本では、介護者の不足も問題になっており、ロボットは有力な解決策のひとつになっている。ベッドから抱き上げて車椅子に乗せる作業や、入浴の介護などの重労働に需要がある。また食事の介護をしたり、高齢者に話しかけたり高齢者が話せば反応して会話するコミュニケーション機能も求められている。

2021年には、トヨタから家事を多種類行うロボットが公開された[418]

富裕層の広い邸宅などでは、人が不在の時に住宅内を巡回し、不審な状況があればネット経由で外にいる主人に連絡したり、自動的に警察に通報してくれるホームセキュリティロボット(留守番ロボット警備ロボット)の需要も一定程度ある[66]

競技・興行用

迷路探索から格闘まで様々な競技が行われている。黎明期には技術の実証など研究的側面が強く、DARPAグランド・チャレンジのように公的機関が資金を拠出する競技も多かったが、現代では見た目のインパクトを重視した興行型や純粋に成績を競うスポーツ型の競技も行われ、相撲ロボットのようなルールに特化したロボットが多数開発されている。将棋に特化した将棋代指しロボットデンソー製、『新電王手さん』)もある[239]

多くは無人機によるものだが、2017年には有人機同士による格闘がイベントとして行われた[419]

LAND WALKERは、すり足のため擬似的なものではあるが、人が乗り込んで操縦する二足歩行ロボットである。

前出のASIMOは、宣伝のためにイベント会場にレンタルされている。

2023年には受注生産であるが、継続して販売される製品として全高4mの搭乗型ロボットの販売が開始された[420]

研究用

動物の動作を制御する仕組みを理解するにあたって、脳や脊髄の動的な相互作用を記録することは困難なため、神経科学の研究道具として動物の動作を模したロボットを作り、理解に役立てることがある[421]

人間に対する反応を調査する心理学の実験において、人間が演じる役を人型ロボットに置き換える例がある[422]。人間にある態度や演技力の揺らぎによるノイズが無いため有用とされる[422]

警備

治安活動やそれに付随する危険物処理などでは、人手不足を減らすための導入や、様々な活動の機械化が進められている。中でも交通違反の取り締まり、証拠収集、顔認識による犯罪者の特定[423][424]、さらに爆弾[425]テーザー銃[426][427][428]などで武装化させて法執行活動に採用する国もあり、2016年中国では非人型の[429][430]2017年にはアラブ首長国連邦ドバイでは人型のロボットの警察への配備が報じられた[431]

兵器

軍事活動やそれに付随する危険物処理などでは、人的被害(→戦死)を減らすための導入や、様々な活動の機械化が進められている。米国では偵察輸送など不意な接触にともない戦闘に巻き込まれやすい分野で、日本では地雷処理など戦後処理の分野での開発が進められている。将来的には高度な人工知能により人間の介在無しに敵味方を識別し攻撃を行う殺人ロボット兵器『自律型致死兵器システム(LAWS)』の登場が予想され、2017年11月から国際連合でLAWSの規制を議論する公式専門家会議が特定通常兵器使用禁止制限条約の枠組みで行われている[432][433]

特殊環境用

原子力事故

日本で2011年に福島第一原子力発電所事故が発生してからは、原子力事故下の発電所内で作業をしてくれるロボットの必要性が非常に高まっている。
過去にも日本国内で原発ロボットの開発や研究が進められていたが、原発事故に対応できるロボットの実用化には至らなかった[434]
アメリカ空軍は開発中だった原子力飛行機の墜落に備え「ビートル」を試作、原子力飛行機の計画が中止された後は放射性物質を含む瓦礫の除去に用途変更された。

宇宙空間

宇宙開発では、周囲の状況をセンサで感じ取り自律的に判断して行動するロボットの重要性は高まっている。たとえば火星探査では、地球-火星間で通信をしようとしても信号がたった1往復するのにも5分〜20分もかかってしまい[435]、人間が地球から操縦するラジコン方式ではまともな操縦はできないので、自己判断能力をそなえた無人探査機の開発が求められ、無人火星探査車マーズ・エクスプロレーション・ローバーが開発された。これはあらかじめ装置にどこのエリアを探査すべきなのか命令を与えると、そのエリアへ移動する途中は装置自体が各種センサやカメラを駆使して周囲の状況を理解し、岩や穴などを避け、適切な経路を選ぶ。
日本では、自国製ロケットの運搬能力が(生命維持装置を含めた)人間を軌道上に打ち上げるのが難しいこともあり、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送においては、自動的に軌道修正などを行えるロボット宇宙船(無人のスペースシャトル)の構想が、国内での宇宙開発における主要方針となっている。他にも国際宇宙ステーションからの緊急脱出機材として一時アメリカで開発が進められていた乗員帰還機(CRV)のX-38Xプレーンシリーズ)は国際宇宙ステーションからパイロット無しで脱出・地球への帰還ができるよう、完全自動化する構想であった。開発中止になったが、一種のロボット宇宙船といえる。

水中探査

未踏破領域である深海探査には、多くの国が乗り出している。日本には、最大潜航深度7000メートルで世界一の無人潜水船「かいこう7000」が開発されている。また、小型で安価な大量のロボット潜水艦を投入しようという計画もあり、海洋資源開発に期待が持たれている。
深海対応型を含め、水中探査ロボットの研究・開発は多くの企業や研究者が取り組んでおり、東日本大震災時は、東工大などが開発した「Anchor Diver 3」、三井造船の「RTV」、米Seamor Marine「seamor-ROV」、米SeaBotix「SARbot」などが遺体や瓦礫の捜索、地形の調査などのために使われた。

火山探査

千葉工業大学東北大学筑波大学岡山大学情報通信研究機構(NICT),産業技術総合研究所(AIST)が火山探査を目的にクローラ型移動ロボット「Kenaf」を開発している。

人命救助

危険な場所に、人間に代わって導入するロボットをレスキューロボットという。既述の地雷除去ロボット[235]や、災害などにおける被災者の救護活動を担うロボットなどがある。

レスキューロボットは地震噴火津波などによる被災地に投入して、いち早く被災者を発見・保護することで、救命率の向上と二次災害による被害を防ぐことを目的とする。これらのロボットは、センサーや移動能力を持ち倒壊建物に取り残された被災者の発見に役立てるほか、「テムザック」の「援竜シリーズ(英語版)のように従来からある建設機械を改造し、二本のアームを備えたロボットとしたものも登場し、瓦礫撤去を効率よくこなすことが期待される[436]

火災の場合では、特に危険なコンビナート火災の現場など消防隊が突入できない箇所にも進入できる放水銃を備えた無人走行放水車や、危険のともなう火災現場に突入して状況を調べるための偵察ロボット、水中を捜索する水中検索装置・マニピュレーターを備え、要救助者を回収する救出ロボットが、東京消防庁に配備されている[437]。これらはリモートコントロール式の装置であるが、危険個所の消防と被災者の救出に威力を発揮することが期待される。また、2019年には総務省消防庁市原市消防局に消防ロボットシステム「スクラムフォース」を無償貸与した。

2011年3月11日東北地方太平洋沖地震による東日本大震災や福島第一原発事故後には、ロボットを使った人命救助や、原子力災害ロボットの役割の重要性が改めて認識され、研究開発が行われている、多くの研究者や企業が原発災害用ロボットの開発に力を入れている。

瓦礫の隙間に入り被災者を探索するロボットの開発も行われているが、昆虫サイズの場合はロボットよりも実際の昆虫をサイボーグ化[注釈 17]し遠隔制御した方が省エネルギーとされる[438]

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AIとの融合

近年、ロボット工学における人工知能(AI)の導入は急拡大している[439][34][440][441][35]

2025年現在、ロボットの定義は物理的機械を超え、AIによる自律的タスク遂行システムを含むよう拡大している。AIアシスタント(例:Grok 3)や自動運転車の制御技術、知能化技術、認識・コミュニケーション技術(例:Waymo One)などは、従来のロボットと異なり物理的実体が限定されるが、環境認識や意思決定の自律性でロボットとみなされうる。これらは、センサーやアクチュエーターを備えた物理的ロボット(例:AtlasPackBot)のAI技術と融合し、産業、サービス、特殊環境での応用を広げている。例えば、(米)ボストン・ダイナミクス社のSpotはAIによる自律探査を強化し、災害現場で活用されている。AIとの融合は、ロボット技術の新たなフロンティアとして、労働力不足や高齢化社会への対応を加速している[34][35][442][443]

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基礎研究の重要性

要約
視点

基礎研究は、即時の実用化を目的とせず、技術の基盤を構築する研究であり、予期せぬ応用(スピンアウト)を通じて社会課題を解決したり、新たな課題に対して研究開発が進む事例が多い。ロボット工学やAIの基礎研究は、災害対応や産業革新において、本来の目的外で重要な役割を果たしてきた。

災害対応でのロボット活用

エンタメ分野からのスピンアウト

  • アマゾンロボティクス倉庫ロボットは、ロボカップ(自律型ロボット競技)の基礎研究から派生した。ロボカップで培われたマルチエージェント協調や自律ナビゲーションの技術は、Kiva Systems(現アマゾンロボティクス)の搬送ロボットに転用され、2024年時点で75万台以上が倉庫で運用されている[449][450]。ロボカップの研究者(例:Peter Stone)は、協調アルゴリズムの基盤を築き、産業効率化に貢献した。
  • タカラトミーの月面ロボット「SORA-Q」は、おもちゃの変形技術(例:トランスフォーマー)からスピンアウトした。JAXA、ソニー、同志社大学と共同開発され、2024年1月のSLIMミッションで日本初の月面着陸を支援。直径8cm、250gの超小型ロボットは、玩具設計の軽量・変形技術を活用し、月面で撮影任務を遂行した[451]。この技術は、玩具開発の基礎研究が宇宙探査に応用された代表例である。

AI基礎研究のスピンアウト

AIの基礎研究は、深層学習や確率ロボティクスの進展を通じて、新たな応用を生んでいる。

  • Sebastian Thrunの確率ロボティクスは、2005年のDARPAグランドチャレンジでの自動運転車「Stanley」の成功を支え、Waymo One(2025年、複数都市商用化)の基礎となった[68][69]
  • Brian GerkeyのRobot Operating System(ROS)は、ソフトウェアロボットの基盤を提供し、自動運転や災害対応AIを加速[452]
  • Cynthia Breazealのソーシャルロボティクスは、対話型生成AI(例:Grok 3)の基礎となり、災害時の情報提供に応用されている[453]
  • Googleの「RT-X」(Robotics Transformer-X、2023年10月)は、34機関の140万エピソードデータセットを活用し、汎用ロボットの学習を可能にした。産総研との連携で、災害対応や物流に応用されている[454][455]

基礎研究の価値

チェルノブイリや福島では、軍事・海洋ロボットが災害対応に転用され、アマゾンロボティクスやSORA-Qは競技・玩具技術が産業・宇宙に応用された。AI基礎研究は、自動運転や災害対応AIを通じて社会課題を解決している。Peter Stone、Sebastian Thrun、Brian Gerkey、Cynthia Breazealらの貢献は、協調アルゴリズム、ROS、確率ロボティクスなどの基盤技術を通じて、短期的な利益を超えた長期的な価値を生んでいる[458]

広義のロボット代表例

要約
視点

2025年現在、ロボット技術はAIとの統合が進み、ヒューマノイドロボット(例:Optimus)の産業用途、自動運転車(例:Waymo)、生成AIAIアシスタント(例:Grok 3)のサービス用途への拡大が顕著である。災害対応や医療分野でもAI強化ロボット(例:Spotda Vinci サージカルシステム)が進化。労働力不足や高齢化に対応し、持続可能な社会への貢献が期待される[35][24][25]

これらを踏まえたAI技術自動運転車、次世代モビリティを含む広義のロボットの代表例を以下にまとめる。

さらに見る 分類, 代表例 ...
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実在のロボット

要約
視点

実在するもののうち、産業用途への導入が進むヒューマノイド型を中心に、宇宙用無人ローバーや産業用ロボットアーム、装着・搭乗して使用するパワードスーツなど、いわゆるロボットと呼ばれるもの全般を扱う。

さらに見る No., 発表時期 ...
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ロボットの研究者

要約
視点

当初は機械工学制御工学など機械系の研究者が多かったが、認知科学などの分野からのアプローチも増えている。

過去の国家プロジェクト

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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