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重要伝統的建造物群保存地区

伝統的建造物群保存地区のうち重要なものとして国が選定した地区 ウィキペディアから

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重要伝統的建造物群保存地区(じゅうようでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)は、日本文化財保護法に規定する文化財種別のひとつ。日本の市町村条例などにより決定した伝統的建造物群保存地区のうち、文化財保護法第144条の規定に基づき、特に価値が高いものとして国(文部科学大臣)が選定したものを指す。略称は重伝建地区(じゅうでんけんちく)、重伝建(じゅうでんけん)。

概要

文化財保護法でいう伝統的建造物群保存地区とは、城下町宿場町門前町寺内町港町農村漁村などの伝統的建造物群およびこれと一体をなして歴史的風致を形成している環境を保存するために市町村が定める地区を指す。この制度は、文化財としての建造物を「点」(単体)ではなく「面」(群)で保存しようとするもので、保存地区内では社寺民家などの「建築物」はもちろん、土塀石垣水路・石塔・石仏・燈籠などの「工作物」、庭園生垣樹木・水路などの「環境物件」を特定し保存措置を図ることとされている。

市町村都市計画法に基づく都市計画または条例により伝統的建造物群保存地区を定め、文部科学大臣は市町村の申し出に基づき、その価値が特に高いものを重要伝統的建造物群保存地区として選定することとされ、広報普及を担う全国伝統的建造物群保存地区協議会を置く[注釈 1]。2015年は伝統的建造物群保存地区制度が法制化されて40年に当たり[1]、累計109件を認めた[1][2]

2024年8月時点で前回から2件増やし、山形、東京、神奈川、熊本を除く43道府県、106市町村の129地区が選定されており[注釈 2]、合計面積は4066.1ha、約30,680件の伝統的建造物及び環境物件が特定され保護されている[4]

選定基準

「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」(昭和50年文部省告示第157号[5][6])では、選定する保存地区の基準[10]を次のように定めている。

  • 伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
  • 伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの
  • 伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの
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一覧

概要 "Category:重要伝統的建造物群保存地区"の全ての座標を示した地図 - OSM ...
  • 2024年8月現在の選定地を示す。
  • 市町村合併に伴い保存地区の名称が改称されたものについては、改称後の名称を表示した。
  • 「重要伝統的建造物群保存地区一覧[11]」の示す指定地区名称は「○○市/町/村△△(町)」であるが、本表では市区町村名の「○○市/町/村」と「△△(町)」の部分を分けて記載する。
  • 種別は上記の「重要伝統的建造物群保存地区一覧」による[11]
さらに見る 都道府県, 市区町村 ...
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課題

重伝建に選定される地域の道路形態は、自動車交通に対応していないところが多い。これはインフラ整備などによる開発から取り残されたり、元々交通の不便な島嶼や山村であったりしたために、結果的に伝統的な建造物が残ったケースが多いからであるが、重伝建選定時の伝統的建造物と都市計画決定済みの道路との関係や観光客の増加に伴う自動車交通への対応などが課題になることが多い。その他にも、歴史的風致に関わる建造物の外観・外構について増改築に制約が掛かるほか、観光客のマナー問題(騒音やごみ、私有地への無断立ち入りなど)によって、そこで生活する住民にとってマイナス要素となることがある。

その一方で、制約がかかる部分の修理には8割前後の市町村補助が有り、ほとんどが伝統木造建築であることから防災事業が行われることが多い。国は市町村補助・事業の5割(場合によってはそれ以上)を負担する。また、伝統的建造物及びその土地については、相続税と固定資産税に一定の優遇措置がとられる。したがって、伝統的な町並みや建物を活かしたいと考える自治体・住民にとっては、プラス要素が大きい制度である。

参考文献

要約
視点

脚注に使用。主な執筆者の順。

文化材保護法研究会
  • 文化財保護法研究会 監修『文化財保護関係法令集』(第3次改訂)ぎょうせい、2009年。国立国会図書館書誌ID:000010269466全国書誌番号:21617379ISBN 978-4-324-08773-2(第2次改訂版は2006年刊)
    • 「重要文化的景観選定基準(平成17年文部科学省告示第47号)2240頁。
    • 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157号)2240頁。
    • 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」
文化庁
  • 文化庁文化財部 監修『文化財保護関係法令集』文化庁、2008年。国立国会図書館書誌ID:000010023909全国書誌番号:21547633
    • 「重要文化的景観選定基準(平成17年文部科学省告示第47号)」2480頁。
    • 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157号)」2480頁。
    • 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」
  • 文化庁文化財部参事官(建造物担当)『伝統的建造物群保存地区制度関係法令集』文化庁、2008年。国立国会図書館書誌ID:000010269466全国書誌番号:21617379
    • 「伝統的建造物群保存地区保存計画(作成例)」27頁。
    • 2省令「(4)伝統的建造物群保存地区に関する条例の制定等の場合の報告に関する規則(昭和50年文部省令31号)」196頁。
    • 2省令「(6)重要伝統的建造物群保存地区の選定の申出に関する規則(昭和50年文部省令第32号)」198頁。
    • 告示「○重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157)」224頁。
  • 文化庁文化財部参事官(建造物担当)『歴史を活かしたまちづくり : 重要伝統的建造物群保存地区109』文化庁、2015年。国立国会図書館書誌ID:026643392全国書誌番号:22625544。伝統的建造物群保存地区制度40周年。
    • 「重要伝統的建造物群保存地区一覧」6頁。
    • 「伝建制度の40年(文化庁文化財部参事官伝統的建造物群部門)」11頁。
    • 「II 重要伝統的建造物群保存地区の概要」
      • 「1 函館市元町末広町(港町 北海道)」(18頁)から「109 竹富町竹富島(島の農村集落 沖縄)」(234頁)。
    • 「III 資料編」
      • 「重要伝統的建造物群保存地区一覧(選定順)」245頁。
      • 「重要伝統的建造物群保存地区選定数の推移」249頁。
      • 「文化庁予算の推移(伝統的建造物群)」249頁。
      • 「伝統的建造物群保存地区制度フローチャート」262頁。
      • 「文化財保護法(抄)」263頁。
      • 「文化財保護法施行令(抄)」266頁。
      • 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」267頁。
      • 「伝統的建造物群保存地区の現状変更規制の概要」268頁。
      • 「年表」269頁。
文部科学省
  • 盛山正仁(文部科学大臣)「文部科学省告示第137:伝統的建造物群保存地区を重要伝統的建造物群保存地区として選定する件」『官報』第1124号、令和5年12月15日、6頁。
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脚注

関連資料

関連項目

外部リンク

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