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常磐自動車道

埼玉県から宮城県に至る高速道路 ウィキペディアから

常磐自動車道
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常磐自動車道(じょうばんじどうしゃどう、英語: JOBAN EXPWY[1])は、埼玉県三郷市三郷ジャンクション (JCT) から、千葉県茨城県福島県を経由し宮城県亘理町亘理インターチェンジ (IC) に至る高速道路高速自動車国道)である。略称常磐道(じょうばんどう)[2]

概要 高速自動車国道(有料), 路線延長 ...

高速道路ナンバリングによる路線番号は、仙台東部道路仙台北部道路三陸自動車道仙台港北IC - 利府JCT間とともに「E6」が割り振られている[3]

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概要

要約
視点

埼玉県三郷市を起点とし、千葉県、茨城県、福島県を経由し、宮城県亘理郡亘理町へ至る延長300.4キロメートル (km) の路線である。東北自動車道関越自動車道日本海東北自動車道と並んで首都圏と東北地方を結ぶ東日本の大動脈の1つである。終点の亘理ICでは仙台東部道路に直結しており、首都圏と三陸地方を結ぶ最短経路の重要ルートである。

全体的には関東平野から太平洋側に沿って南北に貫くルートである。茨城県土浦市から宮城県にかけては大部分の区間で国道6号および常磐線とほぼ並走するルートを辿るが、土浦市以南は西に大きく離れ、国道6号・常磐線の経由しない埼玉県を通過する(2005年開業のつくばエクスプレスは概ね常磐自動車道に沿うルートで建設されている)。

広域的に見れば、首都圏 - 仙台間で東北道のバイパス路線として機能することが期待されており、途中で仙台南部道路東北中央自動車道磐越自動車道北関東自動車道首都圏中央連絡自動車道など数本の道路を介して連絡する。これにより東北自動車道の利用交通量を常磐自動車道に分散させ、高速道路が本来持つ定時性と安定的な輸送体制の確保に寄与している。

また、東北自動車道は那須高原国見峠といった積雪地帯を通過する一方、太平洋側を結ぶ常磐自動車道は全線にわたり降雪が少なく、雪の影響を受けにくい。さらに、関東方面と東北方面を奥羽山脈に沿って縦断する東北自動車道と比べ、常磐自動車道は関東平野から福島県の浜通りなど、太平洋沿いの平地が続く区間を走ることもあって、山間の急勾配やカーブの区間が少ないのも特徴である。これらの関係性は、鉄道でいう東北本線と常磐線と同じである。加えて、東京日本橋 - 仙台市役所間では、東北自動車道経由より約20 km短く[注釈 1]、首都圏と仙台市を結ぶ高速自動車道としては最短経路である。同様に富谷JCTより北の盛岡方面であっても常磐自動車道ルートの方が短くなる。

このように、常磐自動車道は東京 - 仙台間において東北自動車道とともに、一方に何らかの交通障害が発生した場合でももう一方が広域的な迂回路として機能するリダンダンシー(代替手段)の役割を担うと期待されている。しかしながら、東北自動車道が仙台まで4車線以上である一方、常磐自動車道は福島県双葉郡広野町以北は暫定2車線区間となっている。

常磐自動車道の当初の終点はいわき市とされていたが、1987年昭和62年)の国土開発幹線自動車道建設法改正により仙台市まで延伸された。いわき中央IC - 亘理ICを高速自動車国道で整備、亘理IC - 富谷JCTについては仙台東部道路・仙台北部道路を常磐自動車道に並行する一般国道自動車専用道路として供用することとなった。

常磐自動車道の全線開通は2015年平成27年)3月1日で、経緯は#東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を参照。これに先立つ2010年(平成22年)3月には、仙台北部道路が富谷JCT経由で東北自動車道と直結したことで仙台都市圏自動車専用道路ネットワークが完成しており、当路線全線開通後は仙台以北からいわき・水戸方面へのアクセスが飛躍的に改善した。

国土開発幹線自動車道常磐自動車道は、以下のとおりとされている。

さらに見る 起点, 主たる経過地 ...

高速自動車国道の路線を指定する政令では高速自動車国道常磐自動車道は、以下のとおりとされている。

さらに見る 起点, 重要な経過地 ...

東京都練馬区 - 埼玉県川口市の区間について東北縦貫自動車道と、東京都練馬区 - 埼玉県三郷市の区間について東関東自動車道と重複している。

本稿では、東日本高速道路(NEXCO東日本)が管理している高速自動車国道の道路名および事業名としての常磐自動車道について述べる。

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インターチェンジなど

さらに見る IC 番号, 施設名 ...
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歴史

要約
視点

常磐自動車道は、起点側の三郷ICより先に柏IC以北について工事が進められた。これは、柏市や流山市で住宅密集地を通過するため、住民の道路建設に対する反対運動が激しかったためである[8]1981年(昭和56年)4月に柏IC - 谷田部ICの初開通を皮切りに、順次開通区間が延伸された。1984年(昭和59年)までに柏IC - 那珂ICがすでに開通していたが、国際科学技術博覧会(科学万博-つくば '85)の開催を控え、柏IC - 千代田石岡ICを6車線化。

三郷IC - 柏ICについては、千葉県庁の後押しもあり、日本道路公団がこの区間を半地下化し環境対策をすることで住民を説得し、1985年(昭和60年)1月24日の開通にこぎつけた[8]。この日、首都高速6号線の小菅IC - 三郷ICを延伸同時開通したことにより常磐道と首都高速が初めて直結され、供用開始前日の23日に、開通を祝って三郷料金所と首都高速八潮料金所で開通式が盛大に執り行われた[9]

科学万博開催の1985年(昭和60年)は、突貫工事で那珂IC - 日立南太田IC、難所とされた日立南太田IC - 日立北ICと立て続けに開通し、特に日立南太田IC - 日立北ICは、上下合わせて連続する26本のトンネルと34本の橋梁によって結ばれた[10]。そして1988年(昭和63年)3月24日に、当初予定されたいわき中央ICまで全線開通した。

その後、流入交通量は年々増え続け、1987年(昭和62年)は3000万台だったが1990年(平成2年)には1.5倍以上に当たる4850万台まで伸びた[11]。供用開始後に流山市と日立市でのインターチェンジ設置要望の高まりを受けて、地元自治体の負担でICを設置できる開発インターチェンジ制度が始まり、流山ICと日立中央ICがそれぞれ追加された[12]

第四次全国総合開発計画が1987年(昭和62年)6月30日に閣議決定され、多極分散型国土形成のための交通ネットワークとして、高規格幹線道路網14,000 kmの整備が位置づけられると、1991年(平成3年)12月に開かれた国土開発幹線自動車道建設審議会(国幹審)で、未開通のいわき - 富岡間が整備計画路線に、相馬 - 亘理間が基本計画路線に指定され、全線開通に向けて再び動き出した[11]

年表

全通まで

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建設中の谷田部仮出口(1984年)。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
各年ごとの開通区間
1981(4月)柏IC - 谷田部IC
1982(3月)谷田部IC - 千代田石岡IC
1983
1984(3月)千代田石岡IC - 那珂IC
1985(1月)三郷IC/JCT - 柏IC
(2月)那珂IC - 日立南太田IC
(7月)日立南太田IC - 日立北IC
1986
1987
1988(3月)日立北IC - いわき中央IC
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999(3月)いわき中央IC - いわき四倉IC
2000
2001
2002(3月)いわき四倉IC - 広野IC
2003
2004(4月)広野IC - 常磐富岡IC
2005
2006
2007
2008
2009(9月)山元IC - 亘理IC
2010
2011
2012(4月)南相馬IC - 相馬IC
2013
2014(12月)浪江IC - 南相馬IC・相馬IC - 山元IC
2015(3月)常磐富岡IC - 浪江IC

全線開通後

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開通式
  • 2015年(平成27年)
  • 2016年(平成28年)
    • 3月10日:いわき中央IC - 広野ICおよび山元IC - 岩沼IC(亘理IC - 岩沼ICは仙台東部道路)を4車線化する方針を国土交通省が公表[20]
    • 3月19日:鳥の海SIC供用開始[21]
    • 6月8日:いわき中央IC - 広野ICおよび山元IC - 岩沼IC(亘理IC - 岩沼ICは仙台東部道路)について、国土交通省より4車線化工事の事業許可を受ける[22][23]
  • 2017年(平成29年)
    • 4月1日:山元南SIC供用開始[24]
    • 8月3日:四倉PA下り線にショッピングコーナー・スナックコーナーがオープン[25]
  • 2019年(平成31年/令和元年)
    • 3月21日:ならはSIC供用開始[26]
    • 3月31日:大熊IC供用開始[27]
    • 9月4日:常磐道の暫定2車線区間のうち、浪江IC - 山元ICを10 - 15年後を目処に4車線化する優先整備区間に選定する方針を国土交通省が発表[28][29][30][31]
    • 9月7日:水戸北SIC(いわき方面出入口)供用開始[32]
    • 12月22日:相馬ICで東北中央道と接続[33]
  • 2020年(令和2年)
    • 3月7日:常磐双葉IC供用開始[34]
    • 3月10日:常磐道の4車線化優先整備区間のうち浪江IC - 南相馬ICの一部を、2020年度に新たに4車線化事業に着手する候補箇所として国土交通省が選定[35][36][37]
    • 3月31日:浪江IC - 南相馬ICの一部において、国土交通省より4車線化工事の事業許可を受ける[38]
  • 2021年(令和3年)
    • 2月13日福島県沖地震により、相馬IC - 新地IC間で土砂崩れが発生し通行止めとなる(2月17日復旧)。
    • 2月21日:広野IC - 浪江ICについて、2021年度にも4車線化に向けた事業に着手する方針が示される[39]
    • 3月5日:常磐道の4車線化優先整備区間のうち相馬IC - 新地ICを、2021年度に新たに4車線化事業に着手する候補箇所として国土交通省が選定[40][41][42]
    • 3月6日:山元IC - 亘理ICが4車線化[43]
    • 3月30日:いわき中央IC - いわき四倉ICが4車線化[44]
    • 3月30日:相馬IC - 新地ICにおいて、国土交通省より4車線化工事の事業許可を受ける[45]
    • 6月13日:いわき四倉IC - 広野ICが4車線化[46][47]
  • 2022年(令和4年)
    • 3月4日:常磐道のうち、2022年度に新たに4車線化事業に着手する候補箇所として広野IC - ならはSICを国土交通省が選定[48][49]
    • 3月16日福島県沖地震により被災。新地IC - 山元IC間(上り線)では長さ数十メートル・幅約30センチの亀裂が生じるなどした[50]。南相馬IC - 新地ICなども被災して通行止となったが、同月18日に応急復旧が終了して解除となった[51]
    • 3月30日:広野IC - ならはSICにおいて、国土交通省より4車線化工事の事業許可を受ける[52]
    • 4月29日:南相馬鹿島スマートICの利用可能時間帯が24時間に拡大[53]
  • 2023年(令和5年)3月28日:桜土浦IC - 岩間IC間の最高速度を110 km/hに引き上げ[54]
  • 2024年(令和6年)
    • 3月1日:国土交通省が4車線化優先整備区間のうち、2024年度に新たに4車線化事業に着手する候補箇所として山元南SIC - 山元IC間(延長5.5 km)を選定[55]
    • 3月27日:山元南SIC - 山元IC間(延長5.5 km)において、国土交通省より4車線化工事の事業許可を受ける[56]
  • 2025年(令和7年)
    • 3月22日:三郷料金所SIC(三郷IC/JCT方面出入口)供用開始[57]
    • 8月7日:いわき小名浜IC供用開始[58]

開通予定

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路線状況

要約
視点

三郷IC - 谷田部ICの区間は大都市近郊区間に含まれるため、他の区間に比べて通行料金が割高になっている。

車線・最高速度

さらに見る 区間, 車線 ...

高速道路の中でも全体的に線形がよく、勾配も少ない。三郷JCT - 日立南太田ICの設計速度は120 km/hである。

広野ICから山元ICにかけての80 km以上におよぶ暫定2車線区間では、他の高速道路の暫定供用区間と同様に最高速度が70 km/hに規制されている。2015年(平成27年)の全線開通以降、同区間では通行量が増加し渋滞が多発するようになった(実際に、暫定2車線の区間でも4車線化の目安である1万台近くの交通量を記録している)ことから、2016年(平成28年)3月10日、いわき中央IC - 広野IC、および山元IC - 亘理IC - 岩沼IC(仙台東部道路)の4車線化が認可され[20]2021年(令和3年)3月6日には山元IC - 亘理IC - 岩沼IC(仙台東部道路)が4車線化され[59]、同年6月13日にはいわき中央IC - 広野ICの全線が4車線化された[60]

その後、2019年(平成31年)には国土交通省より、全国約1,600 kmの有料高速道路の対面通行区間のうち、およそ半分に当たる約880 kmの4車線化を優先する方針が出され、常磐自動車道の一部がそれに該当した。浪江ICから山元ICの間約56 kmを優先整備区間に選定して、10年から15年で完成を目指す方針が出されたが、広野ICから浪江ICの間約30 kmについては、4車線化を優先する区間に含まれなかった[28][29][31]

だが一転して、国土交通大臣赤羽一嘉2021年(令和3年)2月21日福島県知事内堀雅雄福島県庁で会談後[61]、4車線化優先整備区間の対象外であった広野IC - 浪江ICについて、「4車線化によって災害時の通行止めを防ぎたい」「新年度内の事業化に向けて必要な準備をしっかり進めたい」と述べ[62][61]、2021年(令和3年)度に4車線化の整備に着手すると表明した[61]。これに対し内堀は「第二期復興・創生期間に避難地域の復興、再生を円滑に進める上で非常に大きな前進だ」と期待を寄せた[61]。結果として、広野町以北の常磐自動車道の全区間が4車線化する見通しとなった。

相馬IC - 新地IC間は2021年(令和3年)2月13日福島県沖地震で土砂崩れにより一時寸断されたことを契機に、国交相が早急に4車線化を進める方針を示し[63]、翌3月に先行して同区間の事業許可が行われた。

道路施設

サービスエリア・パーキングエリア

売店は田野パーキングエリア(PA)・湯ノ岳PAならはPA鳥の海PA以外の全てのサービスエリア(SA)・パーキングエリアに設置されている。このうち守谷SA友部SAと、コンビニ化されている千代田PA日立中央PA関本PA(下り線)は24時間営業を行っている。レストランは守谷SA(上り線)・友部SA(下り線)に設置されている。また、ガソリンスタンドは全サービスエリアに設置されており、全て24時間営業である。

トンネル

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三郷トンネル下り線入口
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助川トンネル上り線入口
さらに見る トンネル名称, 延長 ...

※ 広野IC - 山元ICは対面通行(暫定2車線)

トンネルの数
さらに見る 区間, 上り線 ...

広野IC - 山元ICは暫定2車線であるため、トンネルの本数は上下線で1本となっている。流山IC - 柏ICは正確には橋(シェルター)扱いとなっている。これは、当該区間が住宅地の中を通過するので騒音防止や、天然記念物のオオタカ保護のため、地面を掘り下げた半地下化構造の上に延長約1.5 kmにわたりトンネル状に蓋をかけ、蓋の上部に公園を設置しているためである[65]。これは、国内高速道路では初となる道路構造となったほか、海抜マイナス2メートルという建設当時としては最も低い場所を通る高速道路となった。

橋梁

さらに見る 橋梁名称, 延長 ...

道路管理者

2005年10月の日本道路公団民営化後は、全区間が東日本高速道路(NEXCO東日本)の営業範囲となっており、いわき勿来ICを境に南側を関東支社が、北側を東北支社がそれぞれ管轄している。

  • NEXCO東日本関東支社
    • 谷和原管理事務所:三郷IC - 岩間IC
    • 水戸管理事務所:岩間IC - いわき勿来IC
  • NEXCO東日本東北支社
    • いわき管理事務所:いわき勿来IC - 新地IC
    • 仙台東管理事務所:新地IC - 亘理IC

ハイウェイラジオ

  • 三郷(三郷JCT - 三郷料金所)
  • 守谷(守谷SA - 谷和原IC)
  • 桜土浦(桜土浦IC - 土浦北IC)
  • 石岡(美野里PA - 岩間IC付近)
  • 水戸(友部JCT - 水戸IC)
  • いわき湯本(いわき勿来IC - いわき湯本IC)
  • 四倉(いわき中央IC - いわき四倉IC)
  • 双葉(大熊IC - 浪江IC)
  • 新地(新地IC - 山元南SIC)

コールサインは関東支社(三郷 - 水戸)、東北支社(いわき湯本 - 新地)ともに全ての局で「ハイウェイラジオ常磐道○○」(例:三郷であれば「ハイウェイラジオ常磐道三郷」)と放送される。

交通量

24時間交通量(台) 道路交通センサス

さらに見る 区間, 平成11(1999)年度 ...

(出典:「平成17年 道路交通センサス 一般交通量調査結果」(関東地方整備局ホームページ)・平成22年度道路交通センサス平成27年度全国道路・街路交通情勢調査令和3年度全国道路・街路交通情勢調査〈国土交通省ウェブサイト〉より一部データを抜粋して作成)

2002年度

  • 区間別日平均交通量
    • 三郷 - 広野IC平均:3万4252台(前年度比92.2%)
    • 最大:三郷 - 流山IC 10万633台(前年度比97.7%)
    • 最小:いわき四倉IC - 広野IC 2,758台(前年度比83.5%)
  • 総交通量
    • 年間:6167万2629台(前年度比98.0%)
    • 日平均:16万8966台
  • 料金収入
    • 年間:7010億729万1000円(前年度比98.3%)
    • 日平均:1億9207万5000円
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東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響

要約
視点

東日本大震災、とりわけ福島第一原発事故の影響により工事区間への立ち入りが厳しく制限された関係で、2011年度(平成23年度)中に開通を予定していた常磐富岡IC - 南相馬IC(延長32.7 km)、および2012年度(平成24年度)の開設を予定していたならはPAは、施工スケジュールの見直しを余儀なくされ、供用開始は2014年度(平成26年度)までずれこんだ。

同原発から半径20 kmの警戒区域外については震災から約3か月後の2011年5月に建設が再開されたものの、警戒区域内においては、浪江IC - 南相馬IC(延長18.4 km)が1年後、常磐富岡IC - 浪江IC(延長14.3 km)については2年後の工事再開となった[67]。震災前に工事中だった箇所の盛土や構造物は、地震の揺れによる損傷に加えて長期間放置されたことによって雨水による斜面の浸食鉄筋などの被害が拡大し、急ピッチで復旧作業が進められた[67]。しかし、この頃には常磐道以外でも被災地の復旧工事が本格化したことで慢性的に作業員が不足し、放射能の影響で作業時間の制限や作業員の離脱も相次いで継続的な作業に支障をきたした[67]。またコンクリートなど建設資材も不足し、同じく放射能の懸念から資材搬入が拒否されることもあった[67]。工事再開が最も遅れた羽黒川橋では、打設予定日の悪天候に備えてエアドームや単管パイプでの架設屋根を設置するなどして乗り切った[67]。道路舗装用の砕石は遠く静岡県三重県から調達し、受け入れ港である相馬港では周辺住民協力のもと稼働時間を延長するなどして対処した[67]

除染作業は環境省直轄のもと、2012年3月から7月まで先行事業として「常磐自動車道警戒区域内における除染モデル実証事業」が、同年12月3日から2013年(平成25年)6月28日にかけて本格的に「常磐自動車道除染等工事」が実施され[68]、その結果低減率19 - 55%が確認された。この結果について環境省は、2013年度内に開通を目指していた広野IC - 常磐富岡IC(延長16.4 km)については「概ね当初の方針どおり線量を低減」とし、その他の区間についても「一部で線量の高い区間があるものの一定程度低減」としている[69]

その後、除染の達成状況を確認するため、2014年(平成26年)10月に同省がモニタリングカーによる走行サーベイを実施したところ、浪江IC - 南相馬ICでは2014年10月21日測定時点で平均0.6 - 0.7 µSv/h、広野IC - 常磐富岡ICでは2014年10月29日測定時点で平均1.3 - 1.5 µSv/h、常磐富岡IC - 浪江ICでは2014年10月21日測定時点で平均0.5 - 2.4 µSv/hと、同省が常磐道での除染方針の目標で挙げた3.8 µSv/h以下(9.5 µSv/h超の線量の場合は約9.5 µSv/h以下)を下回ることが確認された[70]

  • 2011年(平成23年)
    • 3月11日:東北地方太平洋沖地震の発生により全線通行止め。このうち、那珂IC - 水戸ICの上り線の一部区間で本線が崩壊する被害があった。他の地域でも路肩部分の崩壊や余震による崩壊はあったが、本震により本線部分まで被害が出たのは唯一である。
    • 3月16日:三郷IC/JCT - 水戸IC復旧。
    • 3月21日:水戸IC - いわき中央IC復旧。
    • 3月24日:山元IC - 亘理IC復旧。
    • 4月1日:いわき中央IC - いわき四倉IC復旧。
    • 4月28日:いわき四倉IC - 広野IC復旧。これにより広野IC - 常磐富岡ICを除く開通区間が応急復旧完了。
    • 6月20日:東日本大震災の被災者支援、および福島第一原発事故による避難者や復旧・復興支援を目的に、一部車両を対象として通行料金を無料とする措置を水戸IC - 広野ICおよび山元IC - 亘理ICで開始。
    • 8月31日:中型車以上の車両について、通行料金を無料とする措置を打ち切り。
    • 9月5日:広野IC - 常磐富岡ICを除く開通区間で東日本大震災の本復旧工事を開始。
    • 12月1日:東日本大震災の復興支援として、全車種について無料通行措置を実施開始。
  • 2012年(平成24年)
    • 3月31日:全車種に対する無料通行措置が終了。
    • 4月1日:福島第一原発事故による警戒区域などからの避難者が乗車する車両(ETC車を除く)の無料措置を実施開始。
    • 4月8日:南相馬IC - 相馬ICが開通。同区間は全車無料措置のため2014年12月6日の相馬IC - 山元IC開通まで無料通行となり[71]、最高速度も60 km/hに規制されていた。
    • 12月22日:広野IC - 常磐富岡ICおよび南相馬IC - 相馬ICを除く開通区間の本復旧工事が完了。
  • 2014年(平成26年)
    • 2月22日:東日本大震災以来通行止めとなっていた広野IC - 常磐富岡ICが3年ぶりに再開通(通行再開)[72][73]
    • 12月6日:南相馬IC - 相馬ICの全車無料措置が終了。
  • 2016年(平成28年)3月31日:福島第一原発事故警戒区域などからの避難者が乗車する車両の無料措置が終了[74]
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地理

通過する自治体

接続する高速道路

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脚注

関連項目

外部リンク

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