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べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜
2025年放送のNHK大河ドラマ第64作 ウィキペディアから
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(べらぼう つたじゅうえいがのゆめばなし)は、2025年(令和7年)1月5日から放送されているNHK大河ドラマ第64作[1]。
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![]() | この記事はプロジェクト:大河ドラマの編集方針を採用しています。編集される方はご一読下さい。 |
江戸時代中期の田沼時代から寛政の改革にかけて活躍し、板元として喜多川歌麿や東洲斎写楽らを見出した江戸のメディア王・蔦重(つたじゅう)こと蔦屋重三郎の波瀾万丈な生涯を描く。
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制作
2023年4月27日に制作発表が行われた。主演を横浜流星、脚本を森下佳子が担当し2024年夏にクランクイン予定であることが発表された。なお、横浜はNHKドラマおよび大河ドラマ初出演となる[1]。
本作では大きな戦が全くなかった18世紀後半を舞台としており、この時代が描かれるのは大河史上初である[2]。
出演者発表は第一弾が2023年10月5日に[3]、第二弾が2024年2月19日に[4]、第三弾が2月21日に[5]、第四弾が4月15日と4月16日に[6][7]、第五弾が4月30日に[8]、第六弾が6月10日に[9]、第七弾が7月15日に[10]、第八弾が8月27日に[11]、第九弾が9月19日に[12]、第十弾が9月27日に[13]、第十一弾が2025年1月11日に[14]、第十二弾が4月15日に[15]、第十三弾が6月28日に[16]、第十四弾が9月15日[17]に行われた。
2024年6月7日、題字が発表された[18]。10月26日、音楽・指揮者の発表と、グローバルVer.のビジュアルならびに特報動画が公開された[19]。11月12日、「放送100年企画」と冠したメインビジュアルが公開された[20][21]。
2024年12月12日、劇中の語りをかつて吉原遊廓内に存在した九郎助稲荷という設定で綾瀬はるかが担当することが発表された[22]。
タイトルの『べらぼう』とは「たわけ者」「バカ者」、転じて「甚だしい」「桁外れな」という意味[23]。制作統括の藤並英樹は「蔦屋重三郎はきっと『べらぼう
国際放送での英語タイトルは、「とらわれない」「縛られない」などを意味する『UNBOUND(アンバウンド)』。なお、Unboundには「未製本」の意味もあり、出版に携わる蔦重を暗喩している[19]。
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あらすじ
要約
視点
第一章(第1回 - 第16回)
安永の初め、江戸・吉原。蔦屋重三郎は、義兄の次郎兵衛、大火の中で救った少年唐丸とともに、茶屋「蔦屋」を切り盛りしつつ、幼馴染の花の井ら女郎に貸本を行うことで生計を立てていた。しかし非公認の岡場所や宿場の隆盛により、吉原は閑古鳥が鳴くようになっており、場末では多くの女郎が病や飢えに苦しんでいた。思い悩んだ重三郎は、 老中・田沼意次に面会し、岡場所の取締り(警動)を求める。しかし意次は岡場所の存在意義を説いた上で、吉原を栄えさせるために何かしているのかと逆に重三郎に問い、重三郎は目が覚めたような思いをする。勝手な行動を取ったことで養父の駿河屋市右衛門や女郎屋の経営者たち(忘八[注釈 2])に桶伏せの罰を与えられつつも、重三郎は吉原のガイドブックである『吉原細見』の質を上げることで客を呼ぼうと思いつく。そして、吉原細見の板元である地本問屋・鱗形屋孫兵衛に話をつけると、評判の文人・平賀源内に自腹を切って序を依頼しある程度の評判を得る。続いて絵師・北尾重政とともに女郎たちを花に見立てた『一目千本』を制作し、本作りの面白さに目覚める。さらに重三郎は地本問屋・西村屋与八と組んで『雛形若菜初模様』の制作に取り組み、平賀源内に「耕書堂」の堂号を貰って本格的に出版事業に参入しようとする。しかし、西村屋が重三郎に接近してきたのは鱗形屋の罠であり、彼らと結託した地本問屋のまとめ役・鶴屋喜右衛門により『雛形若菜初模様』の出版権は西村屋単独のものとされてしまう。唐丸は重三郎を手伝う中で非凡な絵の才能を発揮し、重三郎は「当代一の絵師にする」と約束するが、何らかの過去を持つ唐丸はその露見を恐れて姿を消してしまう。
唐丸の生存を信じる重三郎は、彼が戻ってきたときのためにも板元になりたいという思いを新たにする。源内の紹介で知り合った江戸出版界の長老・須原屋市兵衛にまずは奉公するように助言されていたこともあり、重三郎は鱗形屋で働き始める。しかし、偽板作りに手を出していた鱗形屋には奉行所の捜査が入り、孫兵衛は逮捕されてしまう。鱗形屋の代わりに自身を仲間に入れるように地本問屋たちと交渉した重三郎は、「倍売れる細見を作ったら認める」という言質を取る。重三郎が内容や割付を工夫したことと、花の井が話題作りのために瀬川の名跡をついだことで、重三郎の細見『籬の花』は飛ぶように売れ、条件を達成する。しかし、鱗形屋の罪が軽く済んで復帰したことで、地本問屋たちは約束を反故にする。その際に鶴屋が吉原を侮辱したことで駿河屋たちは激怒し、地本問屋たちに吉原出禁を言い渡す。これにより重三郎は地本問屋仲間に入る道を断たれ、独自の路線を歩むことになるが、勝川春章や朋誠堂喜三二、北尾政演(山東京伝)らと知り合い、次々に作品を世に出していく。
その頃瀬川には高利貸しで財を成した富豪・鳥山検校から身請け話が持ち上がる。それをきっかけに重三郎は幼い頃から瀬川に惹かれていたことに気がつき告白する。瀬川は身請けを断って年季明けに重三郎と一緒になる約束をするが、二人は女郎屋の主人・松葉屋半左衛門と女将・いねからそれでは誰も幸せになれない現実を突きつけられる。瀬川は身請けに同意し、重三郎は吉原を挙げての盛大な花魁道中を仕掛けて瀬川を送り出す。
一方、幕府では将軍・徳川家治の信任を受けた意次が、日々悪化する幕府財政への対処に取り組んでいたが、旧来の秩序を重視する老中筆頭松平武元や将軍世子徳川家基らと対立する。さらに御三卿田安家出身の賢丸(松平定信)も強引に他家に養子入りさせられたことで意次を恨むようになる。しかし幕臣たちの困窮はなおも強まり、その一因が検校をトップとする当道座による悪質な貸し付けにあると判明する。意次の訴えにより家治・家基は当道座に対する対処を決断し、手入れが始まる。鳥山検校も摘発を受け、瀬川に累を及ぼさないよう離縁する。吉原に戻った瀬川は、書肆として独立しようとしていた重三郎から一緒に店をやろうと求婚されるが、悪名高い検校の妻だった自分では重三郎の障害になってしまうと考えて吉原を出て行く。
その頃、平賀源内はエレキテルの複製に成功し医療器具として売り出すが、やがて行き詰る。新たに蝦夷地に目をつけた源内は、親交のある意次に蝦夷地開発を進言する。しかし当時の幕府は家基の急死により揺れており、意次はまずその真相を調査するよう源内に依頼する。源内は家基が手袋に仕込まれた毒により何者かに殺害されたことを突き止め、松平武元も同じことに気が付く。意次と武元は犯人を突き止めるために協力することになるが、その直後に武元も謎の死を遂げてしまう。調査を続行すれば新たな被害が出ると考えた意次は事件の幕引きをはかろうとするが、源内は手を引くことを拒否する。一連の変死事件の裏で怪しい動きを見せる一橋治済に目をつけられた源内は、治済が放った手先たちにより殺人の濡れ衣を着せられて獄死する。重三郎と意次は、源内を救えなかった後悔を胸に、それぞれの道で邁進していくことになる。
第二章(第17回 - 第33回)
蔦屋の近くに独立店舗を持つも瀬川に去られた重三郎は、周囲の助けを借りつつ一人で店を切り盛りしていた。ある日、北川豊章という絵師の絵を見た重三郎は、それが唐丸の絵だと確信する。豊章は全くの別人であったが、捨吉と名乗る男が代筆していることが判明する。捨吉は重三郎の度重なる訪問を受けて自身が唐丸であることを渋々認め、貧困と虐待の中で生まれ育った悲惨な過去を語る。幼い頃から売春を強要されるなど母に苦しめられ、大火の中で母を見捨てて一人逃げ、重三郎に拾われて「唐丸」として吉原で生きようとしたが、母のヒモだった男に見つかり脅されたことで思い詰め、男を道連れに心中をはかり自分だけ生き残ったのだと言う。捨吉は母とそのヒモを死なせた罪悪感に苦しみ、破滅的に生きていたが、自分を丸ごと受け入れてくれる重三郎の言葉に応え、彼の元に戻ることにする。こうして捨吉あらため喜多川歌麿は、耕書堂を手伝いつつ絵師として活動していくことになる。
一方、偽板騒動を発端として落ちぶれていた鱗形屋は店じまいすることになる。孫兵衛は店の看板作家だった恋川春町を鶴屋に託すが、喜右衛門との相性が悪く春町は潰れかかる。見かねた孫兵衛は重三郎に助けを求め、密かに協力した二人は春町を耕書堂に移籍させることに成功する。孫兵衛は重三郎にそれまでことを詫びて和解し、日本橋を去る。同じ頃、耕書堂から出版された『見徳一炊夢』が、高名な狂歌師で文人の大田南畝に高く評価される。これを機に南畝ら狂歌師たちと知り合った重三郎は天明の狂歌ブームに乗り、江戸での名声を高める。耕書堂をさらに発展させ、吉原者への差別を打ち破るためにも重三郎は日本橋への進出を決意し、身代の潰れた地本問屋の丸屋を買い取る。丸屋の女将・ていと丸屋の向かいに店を構える喜右衛門はこれに反発するが、浅間山の噴火により日本橋が降灰に見舞われた際の対応を見て重三郎の手腕を認め、日本橋に受け入れる。ていと重三郎は結婚して共に店を切り盛りすることになり、喜右衛門は暖簾を贈って婚礼を祝い、駿河屋とも和解する。当初、重三郎とていの夫婦関係は形式的なものであったが、確かな絆が芽生えて名実ともに夫婦となり、商人として世のためにできることを模索しつつ協力して店を盛り立てていく。
その頃幕府では田沼一派が要職を身内で固め、政治の主導権を握っていた。意次は依然として厳しい幕府財政の解決策として、源内最後の進言でもあった「蝦夷地開発」を考え始め、意次の嫡男・意知は松前家から蝦夷地を上知する口実はないか探り出す。意知は吉原で元松前藩士と密談し、松前藩が抜荷に手を染めているとの証言を得るが、大文字屋の花魁・誰袖に話を聞かれてしまう。誰袖は吉原での情報収集と引き換えに自身を身請けするように意知に求め、彼の意を受けて働くことになる。二人は松前藩主の松前道廣とその弟・松前廣年を罠にかけて抜荷の証拠を掴もうとするが、その中で心を通わせ想い合うようになる。しかし、冷夏と浅間山の噴火による不作で米価は高騰し、商人たちの米の買占めも相まって深刻な米不足に陥り、江戸市中には流民が溢れる(天明の大飢饉)。田沼親子はその対応に追われるも米価を下げることができず、責任を厳しく追及される。また、意知と誰袖に嵌められたことに気が付いた松前兄弟が治済に助けを求める。治済は手先を使って旗本・佐野政言の意知への猜疑心を煽り、政言は殿中で意知殺害に及ぶ。意知を失った誰袖は悲しみに打ちひしがれるが、重三郎が「仇気屋艶二郎」という政言に風貌の似た男を笑い者にする『江戸生艶気樺焼』を出版し誰袖に読み聞かせたことで、笑顔を取り戻し立ち直る。
一方、重三郎の友人で源内の助手的存在でもあった小田新之助は、かつて吉原の女郎うつせみ(ふく)と足抜けし源内の伝手で浅間山の麓で百姓をしていたが、噴火の影響で村を追い出されて重三郎を頼ってくる。新之助は重三郎の援助により深川の長屋に落ち着き、ふくとの間に子どもも生まれる。しかし食い詰めた近所の男が家に押し入ったことで、ふくと子は命を落とす。新之助は民衆の窮状を訴えるために長屋仲間たちと立ち上がり、打ちこわしをおこなう。治済の手先の扇動により打ちこわしは暴徒化しそうになるが、意次と連携した重三郎の働きにより事態は収束に向かう。治済の手先は重三郎を始末しようと襲い掛かり、新之助が身を挺して庇い死去する。
その頃幕府では治済が暗躍し、毒を盛られた将軍・家治が倒れる。後ろ盾を失った意次は老中辞職に追い込まれる一方、治済の後押しで幕政に関わり出した松平定信が頭角を現していく。家治は死去して治済の子・徳川家斉が将軍職を継ぎ、治済はその実父として幕政への影響力を強めていく。
第三章(第34回 - )
意次は老中辞職後も再起を図っていたが、打ちこわしを鎮静化させた手柄を定信に奪われ、完全に失脚する。一方で定信は異例の出世を遂げて老中首座に就任し、田沼時代の奢侈を改める質素倹約令を推し進める(寛政の改革)。民衆は悪政を正す救世主として定信を歓迎するが重三郎は反発し、定信を暗に皮肉る黄表紙を抱えの戯作者たちに書かせて出版していく。
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登場人物
耕書堂
- 蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)
- (柯理 → 蔦屋重三郎)
- 演:横浜流星(幼少期:高木波瑠)
- 主人公。地本問屋「耕書堂」の主人。元は吉原五十間道にある義兄の茶屋「蔦屋」を事実上経営しつつ貸本業を営んでいたが、やがて自ら出版に乗り出して事業を拡大していき、書肆(しょし)として独立、その後日本橋の大店に発展させる。通称は蔦重(つたじゅう)・重三(じゅうざ)。狂名は蔦唐丸(つたのからまる)。幼名は柯理(からまる)。「ありがた山の寒がらす」「これしか中橋」などの地口を好み、面会時に口にした地口から田沼意次には「ありがた山」と呼ばれる。またかをり(誰袖)からは「兄さん」、ていからは「旦那様」、北尾政演からは「蔦重さん」と呼ばれる。
- 曲がった事が嫌いな熱血漢。聡明で勘が鋭く、発想力と行動力に優れる。成功のための努力を惜しまず、多少の挫折にも挫けない気性で、養父・市右衛門や鱗形屋孫兵衛からその才覚を評価されている。商人としての抜け目のなさも持ち合わせるが、自らの儲けには興味がない。端整な風貌の持ち主で、男色の平賀源内に「相当いい男」と評されたり、かをりから熱烈に惚れられたりする。実母・つよには愛憎相半ばする複雑な感情を抱くが、社交的で人たらしな所はつよの気性を受け継いでいる。
- 吉原で生まれ、7歳の頃に両親に捨てられ駿河屋に拾われるが、両親が存命ということで他の孤児たちにいじめられる。その頃に寄り添ってくれた朝顔に恩義を感じており、彼女の死をきっかけに女郎たちを飢えさせないよう吉原に客を呼び戻そうと奔走するようになる。その中で本づくりの楽しさに目覚めたことで、出版の力で吉原を盛り上げ、魅力を発信しようと出版事業を始める。その才覚と人柄で吉原の人びとだけでなく、高名な絵師や文人たち、商売敵であった地本問屋たちや幕府要人の田沼親子をも魅了し、徐々に人脈を広げて成り上がる。そして吉原者への差別を打ち破るため、また周囲からの奨めもあって日本橋へ進出する。
- 「吉原者は女郎に惚れるな」という教育を受けてきたため色恋には疎く、瀬川(花の井)から想いを寄せられていたことにも長年気付かなかったが、彼女の身請けの話を知って自分も惚れている事に気付く。一時は瀬川との足抜けも考えるが結局断念し、吉原を挙げての盛大な花魁道中の仕掛け人として彼女を送り出す。当道座の摘発によって瀬川が鳥山検校から離縁されると身柄を引き取り、一緒に店を切り盛りする事を夢見るが、自分が居ては足手纏いになると配慮した彼女に去られてしまう。その後は長年独り身であったが、日本橋進出を機にていと結婚する。
- 平賀源内と親しく交流していたが、心身共に不安定となり失墜していく源内を救えず彼の死を見送り、須原屋と共にその遺志を継いでいく事を誓う。源内や瀬川を救えなかった事への反省から歌麿や鱗形屋孫兵衛、恋川春町ら苦境に陥っている人物へ積極的な助力を行い、自身への評価も高めていく。生前の源内から「書をもって世を耕す」の願いを込め「耕書堂」の堂号をもらったことから、より広い視野で世のために出版活動を行うようになっていくが、日本橋に進出したのちも「吉原あっての耕書堂」という考えを変わらずに持ち続ける。田沼意次の政策を支持し陰に陽に助力したため反田沼感情の強い江戸の町民たちから反発を買うが、それでも失脚し窮地に立たされた意次を支える。定信が意次の手柄を横取りする形で老中首座に就任すると反感を持ち、書を以てこれに抗うと決意をすると、定信の倹約令に反発して豪華な狂歌絵本や定信を暗に皮肉る黄表紙本を出版する。
- てい
- 演:橋本愛
- 丸屋の元女将で小兵衛の一人娘。後に重三郎の妻となり「耕書堂」の女将となる。重三郎からは「おていさん」と呼ばれる。
- 父の影響で漢籍に親しみ、博学多識な才媛。ただし謹厳実直で不器用であり、人付き合いも得意ではない。視力が悪く、常に眼鏡を掛けている。慎ましく分もわきまえているが、言うべきことははっきりと言う気性の持ち主。しばしば漢籍を引用しながら説教めいたことを言い、自身は欠点と認識していたものの重三郎には面白がられている。
- 前夫の吉原通いと耕書堂の往来物により丸屋が傾いたことから吉原や重三郎に嫌悪感を抱き、さらに重三郎が初対面で「一緒に本屋をやりませんか」と求婚してきたことでかつての前夫を思い出して拒絶する。しかし、のちに重三郎の手腕を認め、店への未練もあったことから重三郎と形式上結婚し、耕書堂の女将となることを了承する。重三郎に大店の主としての振る舞いを教え、ともに店を切り盛りするが、そのうち重三郎に惹かれてしまったことと、彼の華々しい才能や人脈を目の当たりにして劣等感を抱いたことで、一度は出家して重三郎の元を去ろうと考える。しかし重三郎に止められ、「この先をともに歩んでいきたいと目利きした、たった一人の女房」と重三郎から告白されて店に戻り、名実ともに夫婦となる。重三郎が忘れがちな店の経営収支などについて冷静に意見し、ビジネスパートナー的な立ち位置で重三郎を支える。定信の倹約令については、正論であり世間に歓迎されている以上その流れに逆らうべきではないと主張し、二度と店を潰したくないという思いから定信を皮肉る黄表紙本の出版には反対する。
- つよ
- 演:高岡早紀[25]
- 重三郎の母。髪結いを生業とする。重三郎からは「ばばあ」と呼ばれる。
- 社交的な性格で処世術に長けており、特に人の懐に取り入るのが巧みで、ふじからは「人たらし」と評される。
- 重三郎が7歳の頃に彼を捨てて吉原を去り、下野で暮らしていた。しかし、浅間山の噴火により生活が成り立たなくなり、日本橋に進出したばかりの耕書堂に身を寄せる。最初は強引に店に居つくものの、ていを味方につけ、また髪結いの腕を利用して客引きができることを示したため、居候を受け入れられる。
- みの吉(みのきち)
- 演:中川翼[26]
- 日本橋進出後の耕書堂の手代。元は丸屋の手代で、丸屋が耕書堂に買い取られた際にていの希望もあって引き継がれた。
- 当初は重三郎の事を警戒していたがすぐに打ち解け、重三郎の本作りの才能に感心する。その後は店頭での接客などの実務をこなしながら、重三郎の補佐役を担うなど耕書堂を支える。
- たか
- 演:島本須美[27]
- 耕書堂の女中。炊事と接客を担当する中年女性。
吉原
駿河屋と蔦屋
- 駿河屋市右衛門(するがや いちえもん)
- 演:高橋克実
- 引手茶屋「駿河屋」の主人。重三郎の養父。重三郎からは「親父様(おやじさま)」と呼ばれる。店二階の大広間で大店の主人たちを招いて寄合を開く、吉原における最有力者の一人。
- 海千山千のしたたかな商売人だが、立腹すると暴力を振うなど粗野な一面も持つ。本質的には情誼に厚い人情家だが、その面をあまり表には出さない。右肩に入れ墨を入れている。
- 吉原の孤児を拾っては丁稚として厳しく躾け、成長すると他所に奉公に出すなどしているが、重三郎は手元に残し蔦屋で働かせている。重三郎が本づくりを始めると激怒し、たびたび暴行を加えたり階段から落としたりするが、それは重三郎の商才を誰よりも買い、駿河屋を継がせることも考えていたためであり、扇屋宇右衛門にその真意を指摘される。さらに、『一目千本』に込められた重三郎の吉原への想いを理解したことで、重三郎の本づくりに反対しなくなる。
- その後は憎まれ口を叩きながらも重三郎を常に気にかけ、多額の資金が必要だと知ると五十両の大金を迷わず貸し付けたり、重三郎が書肆として独立した際は保証人となるなど陰ながら支援する。重三郎の瀬川との結婚話や歌麿を引き取る話については、重三郎を心配するが故に反対するが、最終的にふじにより了承させられている。重三郎が日本橋進出を申し出た際も心配のあまり猛反対するが、重三郎の懸命の説得を受けて了承する。
- 吉原を侮辱した鶴屋に暴行を加えて地本問屋たちを出禁にし、長年に渡り吉原と地本問屋仲間との確執をもたらしていたが、重三郎とていの婚礼の際に和解を申し出た鶴屋に対しこれまでの非礼を詫び、和解する。重三郎が大店の主となってからはある程度尊重するようになり、「重三郎」と名前を略さずに呼ぶようになる。
- ふじ
- 演:飯島直子
- 駿河屋の女将。重三郎の養母。実子と分け隔てなく重三郎を慈しみ、彼の名前を略さずに「重三郎」と呼ぶ。
- 店の二階で寄合が開かれている時は、一階でお菓子を食べながら帳簿を確認していることが多い。夫・市右衛門は気性が激しく多弁であるのと正反対に、穏やかで無口であるが、いざという時に有無を言わさずに主張を通す迫力を持つ。重三郎の瀬川との結婚話や歌麿を引き取る話に対しては、重三郎の強い思いを理解して市右衛門に了承させる。重三郎が書肆として独立すると五十間道の店舗に時々顔を出して営業を手伝う。
- 次郎兵衛(じろべえ)
- 演:中村蒼
- 駿河屋市右衛門とふじの実子。重三郎の義兄。
- 蔦屋の主人で駿河屋の跡取り息子とも見なされているが仕事熱心ではなく、蔦屋の経営を事実上重三郎に任せ、自身は挿花や三味線などの趣味に勤しんでいる。仕事嫌いで店番を任されるたびに疲労困憊するが、瀬川身請けの道中や吉原俄祭りでは普段見せないやる気を見せ、大いに張り切る。また、おしゃれと流行には敏感で、青本や富本節が流行るといち早く取り入れている。
- 頼りないが義弟想いで、駿河屋が重三郎の本づくりに反対し暴行を加えていたときもたびたび庇っていた。重三郎からも怠け癖を呆れられながらも兄として慕われており、義兄弟の仲は良好である。また、意外と観察眼が鋭いという一面があり、何気ない一言で重三郎にひらめきを与えている。狂歌が流行すると重三郎と共に狂歌の会に参加し、その後の酒宴で大田南畝よりお伴のやかましという狂名を授かる。
- 耕書堂が日本橋に進出して以降も何かと耕書堂に顔を出す。重三郎による幕府から銀が配られることの宣伝に斎宮太夫と共に協力し、打ちこわしの鎮静化に貢献する。
- とく
- 演:丸山礼
- 次郎兵衛の妻。次郎兵衛との間に一男二女(忠吉、のぶ、こう)を儲けている。
- 留四郎(とめしろう)
- 演:水沢林太郎
- 蔦屋の奉公人。
- 唐丸出奔後に蔦屋で働き始める。次郎兵衛と重三郎のフォローを欠かさない有能な男。重三郎が日本橋に移ってからは顔を見せなくなる。
松葉屋
- 花の井(はなのい)
- (あざみ → 花の井 → 瀬川 → 瀬以)
- 演:小芝風花(幼少期:前田花)
- 女郎屋「松葉屋」の元呼出花魁。重三郎とは幼馴染で、幼少期の名乗りはあざみ。源氏名は花の井、のちに瀬川(せがわ)。鳥山検校に嫁いでからは瀬以(せい)と呼ばれる。花魁時代の店内での序列は松の井に次ぐ二番手であったが、瀬川を襲名してからは一番の売れっ子となる。
- 高い教養と聡明さを持ち合わせ、踊りの名手でもある。勝ち気で言うべき事ははっきり言う気性だが、自分が「籠の鳥」である事もわきまえている。また職業柄、人の心の機微に聡く機転もきき、本音を隠してうまく立ち回る処世術を持ち合わせるが、重三郎には素の姿を見せる。吉原の闇を達観して見ているが、そこで花魁として生きる覚悟と矜持を持つ。趣味は読書で『青楼美人合姿鏡』では本を読む姿が描かれている。
- 元は農民の娘で年貢を払いきれなくなった両親により売られる。幼い頃は朝顔付きの禿であり、朝顔が見世を去った後も慕い続け、食事や薬を重三郎に届けさせるなど気にかける。朝顔が死ぬと重三郎と同じように悲しみ、吉原のために奮闘する重三郎に協力するようになる。そして重三郎の作る吉原細見の売上げのために話題を作ろうと、いわくつきの名跡である瀬川を襲名する。
- 重三郎に長年秘かに想いを寄せ、幼い頃にもらった『塩売文太物語』を大切に持っているが、想いが成就することはないと弁えており表に出すことはなかった。しかし、自身の鳥山検校への身請話をきっかけに両想いとなり、身請を断って年季明けまで待とうとするが、それでは誰も幸せにならないことをいねに諭される。重三郎から足抜けも打診されるが断り、身請けを了承する。しかし、足抜けに誘われたことを「一生忘れない思い出」と言い、重三郎からもらった吉原大門の通行手形の切れ端をその後も肌身離さず持ち続ける。
- 吉原を挙げての盛大な花魁道中によって送り出され、鳥山のもとに嫁ぐ。鳥山からは高価な品々を惜しみなく買い与えられるなど溺愛されるが、重三郎への想いを捨てきれずその心の内を鳥山に読み取られる事を怖れ、客と女郎のように表面的な間柄を続ける。幕府の当道座への処分がおこなわれた際には松葉屋預かりとなり、その後鳥山の配慮により離縁される。これにより重三郎と結ばれ、本屋を共に切り盛りする約束をするが、自分は重三郎の夢の障害になってしまうと考え、重三郎から贈られた書籍と彼への置手紙を残して吉原を去る。
- 松葉屋半左衛門(まつばや はんざえもん)
- 演:正名僕蔵
- 松葉屋の主人。駿河屋で開かれる寄合における中心人物の一人。重三郎からは「松葉の親父様(まつばのおやじさま)」と呼ばれる。
- のらりくらりとした物腰の人物。瀬川が重三郎と想いを通わせて身請け話を断ろうとした際には、仕事中の瀬川の姿を重三郎に見せ、年季明けまできつい仕事を続けさせるのかと問いかける。しかし、瀬川への餞別の『青楼美人合姿鏡』は直接渡すように重三郎に言い、最後に二人きりで会えるようにするという粋な計らいをする。
- いね
- 演:水野美紀
- 松葉屋の女将。瀬川ら女郎からは「女将さん(おかさん)」と呼ばれる。
- 気が強く夫の半左衛門を尻に敷き、見世を切り盛りしている。元は花魁で半左衛門に見初められて松葉屋の女将となっており[28]、先代の瀬川を始め数多くの女郎たちを見てきた経験から、女郎の生き方について達観した視点を持つ。
- 吉原の掟を厳格に守るが情が無いわけではなく、女郎と見世にとって最善の道を模索し行動しており、足抜けしようとしたうつせみや、身請話を断ろうとした瀬川に対して厳しい対応をしつつも、それでは幸せにはなれないことを理路整然と諭す。再び足抜けしたうつせみを追って源内宅に押しかけ、身代金代わりとしてエレキテルを奪うが、のちに効き目がなかったと述べている。重三郎が書肆として独立すると五十間道の店舗に時々顔を出して営業を手伝う。
- 松の井(まつのい)
- (松の井 → ちよ)
- 演:久保田紗友
- 松葉屋の呼出花魁。松葉屋では一番の売れっ子。
- 花の井以上に気が強くドライな性格で、重三郎に対してずけずけとした物言いをする。気位は高いが仲間想いでもあり、また周囲を常に冷静に観察している。空き時間には、客へ出す手紙の下書きをしたためている。
- 花の井が瀬川を襲名し持てはやされるようになると複雑な感情を抱くが、身請けされた花の井の送別の花魁道中に参加し花を添える。俄祭では新之助を見付けたうつせみの背中を押し、「祭りには神隠しが付き物」と足抜けを促す。朋誠堂喜三二が吉原で居続けをしながら『見徳一炊夢』を執筆した際には敵娼をつとめていた。
- 年季明けに手習いの師匠と結婚して自らも手習いの女師匠となり、吉原を去っていたが、吉原での喜三二の送別会に顔を出し、『見徳一炊夢』の執筆時のことを懐かしんでサインを求める。
- とよしま
- 演:珠城りょう
- 松葉屋の番頭新造。
- まさ
- 演:山下容莉枝
- 松葉屋のやり手[29]。
- 瀬川が身請け話を断ろうとすると、重三郎との関係を察したいねの指示で瀬川の監視も行う。
- さくら、あやめ
- 演:金子莉彩(さくら)、吉田帆乃華(あやめ)
- 花の井付きの禿。
- はなぞの、はなさと
- 演:平尾菜々花(はなぞの)、齋藤さくら(はなさと)
- 花の井付きの振袖新造[30]。
- 松崎(まつざき)
- (さえ → 松崎)
- 演:新井美羽
- 松葉屋の女郎。
- 元は旗本の娘だったが、鳥山検校とは別の検校の取り立てにより両親が自害したために行き場所を失い、吉原に売られてくる。堕胎により体調を崩し、寮での療養中に検校の妻である瀬川を逆恨みして包丁で襲い、怪我を負わせる。その際に検校の所業により吉原に売られた恨みを述べたため、瀬川に「百姓出身の自分は武家による年貢の取り立てのせいで吉原に売られたが、それを恨んでも仕方ない」と諭される。その後は回復し、大晦日の狐舞では女郎として元気に振る舞う姿を見せる。
- はつ
- 演:長野里美
- 松葉屋の寮の管理人。療養中の女郎たちの面倒を見ており、鳥山検校の摘発時に松葉屋に身を寄せた瀬川のことも引き受ける。
大文字屋
- 大文字屋市兵衛(だいもんじや いちべえ)
- 演:伊藤淳史
- 女郎屋「大文字屋」の主人。駿河屋で開かれる寄合における中心人物の一人。市右衛門以上に短気で粗暴であり、重三郎をしばしば殴りつけるなど、「忘八」の典型例のような人物。重三郎からは「カボチャの親父様」、市右衛門ら楼主たちからは「カボチャ」、誰袖からは「おっ父さん(おっとさん)」と呼ばれる。
- 安いカボチャを女郎に食べさせる倹約経営で河岸見世から中見世に一代で成り上がった[28]。自身もカボチャを好み、カボチャ色の派手な着物を着る。女郎を商売道具としか考えていない拝金主義者だが、重三郎の試みが金になりそうだとみなすとまっさきに賛意を示す。
- 将軍家治の日光社参の行列を見物して感銘を受け、吉原俄を盛大な祭りとして開催することを思いつき、企画に賛同した重三郎と共に祭りの実行役として奮闘する。若木屋がこの発案を横取りする形で世話人として名乗りを上げ、しかも同じ雀踊を出し物として選んだため、憤慨し大いに張り合うが、1ヶ月に渡り雀踊で勝負をした末に心を通じ合わせ、和解する。重三郎の出版事業が軌道にのると書肆としての独立を勧める一方で、自身は神田にある空き屋敷の購入を目論む。しかし町名主の妨害に遭い、町奉行に訴訟を提起するも退けられるのみならず「吉原者は四民の外」と差別的な扱いを受けてしまう。
- 発作を起こして倒れ、安永9年(1780年)に亡くなる。死の間際、「誰袖を重三郎に五百両で身請けさせる」という遺言を誰袖により強引に書かされている。
- 二代目 大文字屋市兵衛(にだいめ だいもんじや いちべえ)[注釈 3]
- 演:伊藤淳史[注釈 4]
- 女郎屋「大文字屋」の二代目主人。
- 先代に瓜二つの容貌だが、先代とは違い基本的に穏やかでおっとりとしている。しかし本質的には先代のように欲深く短気で、感情が昂った際にその一面を見せることがある。
- 誰袖の自由な振る舞いや重三郎に身請けを迫っていることについては「親父の遺言だから」と問題視していない。さらに誰袖が松前の抜荷問題に関わるようになると、またとない商機として積極的に協力する。
- 誰袖(たがそで)
- (かをり → 誰袖)
- 演:福原遥(幼少期:稲垣来泉)
- 大文字屋の花魁。振袖新造時代の名はかをり。
- おおらかで自由奔放な気性で、見世を勝手に抜けだすなどして志げに叱られても意に介さず振り回し、上手く手懐けてさえいる。また、愛らしい見た目と仕草によらず計算高く強かな面を持つ。笑う時に「んふっ」という含み笑いをする癖がある。
- 振袖新造時代、重三郎の発案で富本豊志太夫を歓待する出張宴席に参加し、太夫の吉原俄祭り出演の承諾に貢献する。その頃から重三郎に一方的な好意を寄せ、お座敷で聞き覚えた芝居がかったセリフとともに迫っていた。大文字屋の秘蔵っ子として育成されやがて花魁になるが、重三郎に身請けを迫り、初代大文字屋市兵衛の死の間際には自身を重三郎に身請けさせるという遺言を書かせる。しかし、重三郎には相手にされず、「大奥で毒を盛るような類の女」と評されたこともある。
- その後は馴染客の土山宗次郎が連れてきた田沼意知に一目惚れし、彼が松前の上知を考えていることを知ると、吉原での情報収集と引き換えに自身を身請けするように迫る。偶然大文字屋にやって来た松前廣年に目を付けると、手練手管を用いて誑し込み、自身のために直接オロシャと取引をして琥珀を安く大量に求めてほしいと唆す。意知の手先となって働く中で本気で意知を慕うようになり、両想いとなる。意知の体面のために表向きは土山宗次郎に身請けされるも、実際には意知の妾として幸せになるはずであったが、意知が政言に殺害されたことで状況は一変する。意知の後を追おうとするが死にきれず、それからは佐野一族への呪詛に明け暮れるが、『江戸生艶気樺焼』を読み聞かせてもらい笑顔を取り戻す。
- 意次の失脚後に土山が斬首となると妾として連座し、押込になったことが語られる。
- 志げ(しげ)
- 演:山村紅葉
- 大文字屋のやり手。かをりの見張り役。重三郎からは「お志げさん」と呼ばれる。
- 自由奔放なかをり(誰袖)に手を焼き、お仕置き棒を持って追い回しつつも、その魅力に誑し込まれている。誰袖が呼出花魁に出世してからはその側近として近侍する。
- 誰袖が土山宗次郎に身請けされると同行し土山邸で暮らすが、誰袖が意知の死により変わり果て、呪詛に明け暮れるようになったことで重三郎に助けを求める。
二文字屋
- きく
- 演:かたせ梨乃
- 浄念河岸の女郎屋「二文字屋(にもんじや)」の女将。
- 行き場所がなくなった女郎たちの居場所であろうと女郎屋を経営してきたが経営難に陥り、一度は見世を畳む決心をするが、花の井が平蔵に入銀の名目で払わせた五十両を重三郎が横流ししたことにより救われる。重三郎が一時的に蔦屋を追い出されると見世に住まわせ、『一目千本』や吉原細見『籬の花』の製本作業を見世の女郎たちとともに手伝う。恋川春町が『廓𦽳費字盡』を書く際には見世の女郎たちと共に取材に応じる。
- 朝顔(あさがお)
- 演:愛希れいか
- 二文字屋の女郎。重三郎と花の井にとっては幼い頃世話になった恩人で、「朝顔姐さん」と呼ばれ慕われる。
- 元は松葉屋の花魁であったが、優しい性格が災いし、きつい客を引き受けたり食事を周囲に分け与えたりしていた結果、体を壊して二文字屋に行きつく。重三郎の見舞いを楽しみにし、彼の前では気丈に振る舞っていたが実際には飢えと胸の病に身体を蝕まれており、花の井からもらった弁当をちどりに譲った直後に亡くなってしまう。死後、身ぐるみを剥がされて他の死んだ女郎たち(演:吉高寧々、藤かんな、与田りん[31])と共に投げ込み寺に打ち捨てられた姿は重三郎に衝撃を与え、彼が吉原に客を呼び戻そうと動く動機付けとなる。また、「分からないことに関しては思い切り楽しい想像をする」という教えは、その後も重三郎や花の井の生きる指針となっている。
- ちどり
- (ちどり → はま)
- 演:中島瑠菜
- 二文字屋の女郎。
- 空腹にあえいでいた時に朝顔に弁当を譲られて食べ、その後まもなく朝顔が死去してしまったことを気に病み、重三郎と花の井に朝顔の死を伝える。
- 春風(はるかぜ)、音羽(おとわ)、歌浦(うたうら)
- 演:青山美郷(春風)、大田路(音羽)、馬渡綾(歌浦)
- 二文字屋の女郎たち。
- 見世の経営難のため、音羽は新潟の古町に売られ吉原を去る。
その他の吉原の住人
- りつ
- 演:安達祐実
- 女郎屋のちに芸者の見番「大黒屋」の女将。駿河屋での寄合の紅一点で、中心人物の一人。
- 「ひんむきゃみんな、人なんて同じ」という信念を持ち、謂れなき差別への怒りを隠さない。楼主たちの中では重三郎に対して最も理解があり、積極的に協力する。
- 富本豊志太夫の熱烈なひいき客であり、太夫を吉原俄祭りに参加させる事を提案、大文字屋や重三郎と共に実現に奔走する。大文字屋が奉行所から差別的な扱いを受けた際には激怒するも、この件を機に女郎屋を廃業し見番所へ業態を転換し、芸者たちの待遇を改善することで吉原を変えていこうとする。重三郎が書肆として独立すると頻繁に店舗に顔を出して営業を手伝い、五十間道時代の耕書堂の参謀格のような役割を果たす。
- 扇屋宇右衛門(おうぎや うえもん)
- 演:山路和弘
- 女郎屋「扇屋」の主人。駿河屋での寄合における中心人物の一人で、駿河屋とともに上座に着く。
- 理知的な性格で、重三郎が本屋になった事に激怒する市右衛門を宥め、重三郎の考えを商売に活かすように説得する。寄合においても出席者同士が揉めた際の宥め役を務める。重三郎とていの婚礼の際は仲人を務め、鶴屋が和解を申し出た事に感激する。
- 若木屋与八(わかぎや よはち)
- 演:本宮泰風
- 女郎屋「若木屋」の主人。
- 駿河屋たちが市中の地本問屋たちを吉原出禁にしたことに納得せず、地本問屋と交流を続ける派閥を結成して吉原を二分する。大文字屋から俄祭りの構想を聞くと、その場では懐疑的な反応を示すが、彼を出し抜く形で世話人として名乗りを上げる。出し物も大文字屋と同じ雀踊りを選んで大いに張り合うが、それをきっかけにして和解し、以後は駿河屋の寄合にも顔を出すようになる。大文字屋が奉行所から差別的な扱いを受けた際には同情し慰めた。大文字屋が亡くなると彼を偲ぶ言葉をたびたび発し、後を継いだ二代目を激励する。
- 丁子屋長十郎(ちょうじや ちょうじゅうろう)
- 演:島英臣
- 女郎屋「丁子屋」の主人。駿河屋での寄合の出席者。左頬に切り傷があるのが特徴。
- 長崎屋小平治(ながさきや こへいじ)
- 演:千葉清次郎
- 引手茶屋「長崎屋」の主人。駿河屋での寄合の出席者。白髪交じりの男。
- 桐屋伊助(きりや いすけ)
- 演:キンタカオ
- 引手茶屋「桐屋」の主人。駿河屋での寄合の出席者。大柄な体格の男。
- 若木屋が反主流派を形成した際には伊勢屋、玉屋、井筒屋らと若木屋派についたが、俄祭を経て他の店主たちともども寄合に復帰した。
- 伊勢屋九平治(いせや くへいじ)、玉屋庄兵衛(たまや しょうべえ)、万字屋半四郎(まんじや はんしろう)、泉屋与市(いずみや よいち)、井筒屋孫兵衛(いづつや まごべえ)、山口巴屋半助(やまぐちともえや はんすけ)
- 演:会田泰弘(伊勢屋)、岡山和之(玉屋)、岡けんじ(万字屋)、車邦秀(泉屋)、佐藤政之(井筒屋)、真木仁(山口巴屋)
- 駿河屋での寄合の出席者たち。いずれも女郎屋・引手茶屋の大店の主人。
- 志津山(しづやま)
- 演:東野絢香
- 玉屋の座敷持ち花魁。花の井を「床下手」とけなすなど気が強く口が悪い。『一目千本』では葛花に見立てられる。
- 亀菊(かめぎく)
- 演:大塚萌香
- 桐菱屋の座敷持ち花魁。気高くツンとした性格から、『一目千本』では山葵の花に見立てられる。
- 勝山(かつやま)
- 演:平館真生
- 四ツ目屋の座敷持ち花魁。非常に無口で、『一目千本』ではくちなしの花に見立てられる。
- 常磐木(ときわぎ)
- 演:椛島光
- 角か那屋の呼出花魁。何人もの客を腹上死させた魔性の女で、『一目千本』では鳥兜に見立てられる。
- 玉川(たまかわ)
- 演:木下晴香
- 角たま屋の呼出花魁。美声の女郎で、『一目千本』では蒲公英の花に見立てられる。
- 嬉野(うれしの)
- 演:染谷知里
- 扇屋の呼出花魁。陽気な性格で、『一目千本』では丈菊の花に見立てられる。
- わかなみ
- 演:玉田志織
- 女郎。花雲助の偽名で吉原に通っていた意知に言い寄ったため、誰袖を怒らせ、取っ組み合いの喧嘩に発展するが、それが意知と誰袖の仲を深めるきっかけとなる。
- 菊園(きくぞの)
- 演:望海風斗[32]
- 扇屋の座敷持花魁。北尾政演の馴染。
- 半次郎(はんじろう)
- 演:六平直政
- 蔦屋の向かいにあるそば屋「つるべ蕎麦」の店主。とぼけた性格で下世話な話をすることも多いが、重三郎の理解者であり、吉原時代の重三郎の相談によくのっていた。
出版人とその関係者
地本問屋
- 鱗形屋孫兵衛(うろこがたや まごべえ)
- 演:片岡愛之助
- 須原屋と並ぶ江戸最古参の書肆である地本問屋「鱗形屋」の主人。書肆としての堂号は「鶴鱗堂(かくりんどう)」。吉原細見の大手板元。重三郎からは「鱗の旦那様(うろこのだんなさま)」と呼ばれる。
- 重三郎とは元から知り合いであり、重三郎が提案する吉原細見の改善案を飲むが、金は出さずに利用だけしようとする。重三郎の才覚を評価しつつも自分の手元に置き、さらには吉原の取り込みをも目論む。鶴屋とともに『雛形若菜初模様』の版権を重三郎から奪う西村屋の企みに協力し、密かに西村屋から分け前を受け取る。
- 本づくりへの情熱は本物で、かつて自身の曾祖父が生み出した青本を時代に合わせて改良しようと意気込み、目を輝かせて重三郎とネタ作りに取り組む。しかし、明和の大火により店の経営は厳しくなっており、密かに丸屋源六の名で偽板作りに手を染め、逮捕される。逮捕の原因を重三郎による密告と思い込み、さらに自身の拘留中に取って代ろうとされたとして、重三郎を激しく憎むようになる。須原屋の口添えを得て軽い処分で釈放されると、重三郎と温めたネタを元に恋川春町に『金々先生栄花夢』を書かせて一大ブームを巻き起こす。しかしなおも莫大な借金に苦しみ、富本豊前太夫や朋誠堂喜三二が重三郎に協力することになったことに焦りを覚える。さらに債権の一部が当道座にわたったことで厳しい取り立てを受けるようになり、手代の徳兵衛が再び偽板作りに手を染めたことで罰金刑を課せられ、信用を失い落ちぶれて行く。それでも支援を申し出てきた重三郎をきっぱり拒絶する矜持を持ち、「うちから奪った商いを返せ」と怒りを露わにする。
- 最終的に店じまいを決意するが、その引継ぎ作業をする中で重三郎が自身を助けるために須原屋経由で吉原細見を大量に購入していたことを知る。さらに、鶴屋に引き継いだ恋川春町が喜右衛門と上手くいかずに潰れかかっていることを知ると、春町を鶴屋から搔っ攫うように重三郎に頼み、春町が心惹かれそうな案思をともに考えて、春町に耕書堂への移籍を決意させることに成功する。重三郎にそれまでのことを詫びて和解し、大火で焼け残った『塩売文太物語』の板木を贈るが、その本が重三郎の少年時代の思い出の本であることを聞いて涙する。そして新天地で小売をやると言って日本橋を去る。
- りん
- 演:蜂谷眞未
- 鱗形屋孫兵衛の妻。
- 長兵衛(ちょうべえ)
- 演:三浦獠太
- 鱗形屋孫兵衛の長男。鱗形屋の跡取り息子として父の仕事を手伝う。
- 店じまいの際には、体調を崩した孫兵衛に代わって店の整理をおこなう。また、恋川春町を耕書堂に移籍させるために重三郎と孫兵衛が案思を考えることになると、吉原と日本橋を何度も往復して両者の連絡役を担う。
- 万次郎(まんじろう)
- 演:野林万稔
- 鱗形屋孫兵衛の次男。
- 父・孫兵衛を助けるために利益率のよい書物問屋になろうと漢字の勉強に励む孝行息子。孫兵衛が逮捕された後、板木を高値で買い取ると持ち掛けてきた西村屋をきっぱりと拒絶する。
- 鱗形屋の店じまいの際には孫兵衛について行かずに西村屋の奉公人となる。
- 藤八(とうはち)
- 演:徳井優
- 鱗形屋の番頭。
- 店の経営状態悪化により多くの従業員に暇を出してしまったため、番頭ながら雑用をこなす。鱗形屋の一度目の偽板づくりに関与し、共に逮捕される。
- 徳兵衛(とくべえ)
- 演:山本圭祐
- 鱗形屋の手代。
- 店の資金難を見かね、孫兵衛に無断で二度目の偽板作りをおこない摘発される。
- 西村屋与八(にしむらや よはち)
- 演:西村まさ彦
- 錦絵で有名な地本問屋「西村屋」の主人。書肆としての堂号は「永壽堂(えいじゅどう)」。「松泉堂(しょうせんどう)」の戯号を持ち、自ら青本の執筆もおこなう。
- 口八丁手八丁の策士で、吉原者を軽蔑しつつも吉原での一儲けを企んだり、入獄した鱗形屋の板木買取りを家族に持ちかけるなど商魂たくましい人物。
- 『雛形若菜初模様』制作時に重三郎に協力を申し出て、呉服屋からの入銀や江戸市中での販売を実現させるが、手配をすべて重三郎にさせた上で騙し、版権を自分だけのものとする。鱗形屋が逮捕されると吉原細見の出版に参入し、重三郎と売り上げを競う。鱗形屋、鶴屋と共に市右衛門らから吉原への出入り禁止を申し渡されるが、若木屋と結託して巻き返しを図り、俄祭りに合わせて『青樓俄狂言』を出版する。重三郎には強い対抗意識を持ち、忠五郎と忠七を吉原に送り込み重三郎の動向を監視させる。
- 錦絵作りには強い自信とプライドを持つ一方で、吉原細見を軽視する傾向があり、重三郎の企みによって吉原から偽の情報を掴まされて吉原細見が刊行できなくなるという事態に陥っている。
- 忠七(ちゅうしち)
- 演:斉木テツ
- 西村屋の手代で与八の身の回りの世話も行う。
- 忠五郎とともに吉原に出入りし、そこで入手した重三郎の動向に関する情報を主人に報告している。
- 鶴屋喜右衛門(つるや きえもん)
- 演:風間俊介
- 日本橋通油町の地本問屋「鶴屋」の主人。書肆としての堂号は「仙鶴堂(せんかくどう)」。地本問屋仲間および通油町の寄合のまとめ役。童顔で駿河屋市右衛門からは「赤子面(あかごづら)」と言われる。
- 慇懃な口調と物腰だが、重三郎ら吉原者に対して露骨な差別意識を持つ。一方で出版に対しては怜悧な分析力の持ち主でもあり、青本では芝全交らに流行に乗った洒落た作品を書かせて好調な売り上げを誇る。また、絵師・北尾政演の才能を見抜いて戯作を書かせ、的確な指図をしてヒットさせている。
- 鱗形屋、西村屋と組み、重三郎の板元としての新規参入を阻む。吉原の楼主たちの寄合に乗り込み嫌味な口調で吉原者を侮蔑する言辞を並べ立て、激怒した市右衛門に階段から突き落とされ吉原への出入り禁止を申し渡される。その後も鱗形屋や西村屋らに陰から助言を送りつつ重三郎に対抗し続け、重三郎が自店の向かいの丸屋を買い取ろうとすると激しく拒絶する。しかし、日本橋が降灰に見舞われた際に重三郎の働きを見て彼を認めて通油町に受け入れ、市右衛門たちとも和解する。天明の飢饉で流民たちが為すすべなく餓死していく状況に義憤を感じ、重三郎と組んで幕府に対策を求めていく。その一方で重三郎が意次に肩入れして政治に深入りすることに対しては危険性を説き、通油町が巻き込まれないために一線を引いている。
- 岩戸屋源八(いわとや げんぱち)
- 演:中井和哉
- 地本問屋。
- 重三郎が作った細見や青本が売れそうだと見込むとまっさきに飛びつき、大量に仕入れる。鶴屋たちが重三郎の本を江戸市中から締め出すことを決めると、表向きは従いつつも、耕書堂の勢いを感じ取り、鶴屋の方針に疑問を抱くようになる。耕書堂から出版された『見徳一炊夢』が青本の番付で最上位に選ばれると、「今年一番の本なら仕入れる言い訳が立つ」と言って大量に注文する。重三郎と事前に示し合わせ、重三郎の企みにより西村屋から吉原細見が刊行できなくなったタイミングで他の地本問屋たちと徒党を組み、耕書堂との取引を認めるように鶴屋たちに迫ってあっさりと認めさせる。
- 村田屋治郎兵衛(むらたや じろべえ)、松村屋弥兵衛(まつむらや やへえ)
- 演:松田洋治(村田屋)、高木渉(松村屋)
- 日本橋通油町の地本問屋。通油町の寄合の出席者。
- 鶴屋たちに同調し、重三郎のことを吉原者として蔑む。鶴屋が重三郎を認めると通油町に受け入れるが、利益度外視で流民を救済しようとしたり、意次に肩入れしようとしたりする重三郎の意見には反対する。
- 奥村屋源六(おかむらや げんろく)
- 演:関智一
- 日本橋の地本問屋。
- 鶴屋たちに同調し、重三郎のことを吉原者として蔑む。
- 丸屋小兵衛(まるや こへえ)
- 演:たかお鷹
- 日本橋通油町の地本問屋「丸屋」の先代主人。通称は「丸小(まるこ)」。
- 耕書堂が往来物を出版するようになったために、上得意だった手習いの師匠たちを耕書堂に取られ、意気消沈して地本問屋仲間に報告する。このことと婿養子の吉原通いによって店が傾き、閉店して重三郎に店が買い取られることになるが、その頃にはすでに故人となっている。
- 生前は漢籍を好み、娘のていにも習わせてそれを周囲に自慢しており、ていの眼が悪くなると本を読み続けられるように眼鏡を何度も作り直させるなど娘を大切にしていた。また、書肆としての強い誇りを持ち、それを娘に伝えていた。
- ていの前夫[注釈 5]
- 演:新名基浩
- ていの最初の夫で、丸屋の元婿。
- ていを熱心に口説いて丸屋の婿となるが、結婚直後から吉原に通って莫大な借金を作った上に出奔する。
- 吉兵衛(きちべえ)
- 演:内野謙太
- 地本問屋。
- 大和田安兵衛(おおわだ やすべえ)
- 演:川西賢志郎[33]
- 上方の地本問屋。
その他の出版人
- 須原屋市兵衛(すわらや いちべえ)
- 演:里見浩太朗
- 鱗形屋と並ぶ江戸最古参の書肆である書物問屋「須原屋」の主人。書肆としての堂号は「申椒堂(しんしょうどう)」。
- 江戸の出版業界の長老で、重厚だが気さくな人物。大坂の板元にも顔が利く。
- 平賀源内の紹介で重三郎と知り合う。板元になるにはどうすべきか相談に乗り、自身の経験からのれん分けを目指して本屋へ奉公に出ることを提案する。重三郎ら吉原者への差別意識を持たず、重三郎を見どころのある若者と認めて何かと目をかける。重三郎の日本橋進出も後押しし、吉原者の彼が丸屋を購入できるように意知に掛け合う。
- ともに江戸の出版黎明期から書肆を続けてきたよしみで鱗形屋に対して温情を見せ、一度目の偽板事件の際には柏原屋に掛け合い、穏便に済ませてもらっている。鱗形屋が落ちぶれると重三郎の依頼を受けて鱗形屋の吉原細見を大量に購入するが、後にその事実を鱗形屋に打ち明けて重三郎への誤解を解き、両者の和解の一助となる。
- また、源内とは親交が深く著書も出版しており、源内に殺人の容疑がかかったときには重三郎や杉田玄白と共に意次に潔白を訴えに行く。その思いもむなしく源内が獄死すると、源内の著書を出し続けることを誓う。
- 小泉忠五郎(こいずみ ちゅうごろう)
- 演:芹澤興人
- 浅草の摺物屋。西村屋のちに耕書堂の吉原細見の改(あらため)を務め、細見に載せる女郎たちの情報収集と編集作業を担う。
- もともと独自の吉原細見を発行していたが、西村屋が細見作りに参入するとその改となる。重三郎とは元から知り合いで、西村屋の下で共に細見を作ろうと誘うが、きっぱりと断られると敵意を燃やす。それからは西村屋とともに行動し、忠七とともに吉原に出入りして重三郎の動向を探る。しかし、重三郎の企みにより吉原の女郎屋たちから偽の情報を掴まされて細見が発行できない事態に陥り、その後重三郎の誘いに応じて耕書堂の改に鞍替えする。
- 柏原屋(かしわばらや)
- 演:川畑泰史
- 大坂の書物問屋。名は与左衛門(よざえもん)。
- 自身が発行する『増補早引節用集』の偽板が『新増早引節用集』として出回っているのを尾張・熱田の古書店で見つけ、江戸に来て板元を探し回り、奉行所にも訴え出る。通油町の丸屋が売りに出された際、店を買い取り江戸進出を考えるが、江戸での米価高騰を察知すると断念し、重三郎に店を売る。その際、鶴屋からの依頼で丸屋買い取りに応じたが、元来はそれほど乗り気ではなかったと明かす。
彫師・摺師・板木屋
絵師・戯作者とその関係者
- 喜多川歌麿(きたがわ うたまろ)
- (唐丸 → 捨吉 → 喜多川歌麿)
- 演:染谷将太(幼少期:渡邉斗翔)
- 浮世絵師、元「蔦屋」の小僧。人別上での名前は「勇助(ゆうすけ)」。重三郎からは「歌(うた)」、ていからは「歌さん」と呼ばれる。また絵の師匠である鳥山石燕からは「三つ目」というあだ名を付けられている[注釈 6]。
- 過酷な環境で育ったせいもあってか本音を中々語ろうとせず、また過去の行動への罪悪感から一種の破滅願望を抱えるが、重三郎の事は信頼し彼のために献身的に働く。天才的な画才の持ち主で本人も絵の才能には強い自信を持つ。
- 少年時代、明和の大火にて炎上する建物の方へ一人で歩いているところを重三郎に保護される。火事のショックで記憶を失い自分の名前も覚えていないと言ったため、重三郎の幼名である「からまる(唐丸)」と命名され、蔦屋に引き取られ重三郎の仕事を手伝う。礒田湖龍斎の絵を本物そっくりに再現するほどの絵の才能を持っており、重三郎は「当代一の絵師」にすると約束していたが、ある日行方不明となる。
- 行方不明になった約6年後の安永9年(1780年)、捨吉(すてきち)と名乗り、絵師・北川豊章の代わりに錦絵を描いていたところを重三郎に見つけられる。その時に語られた過去によると、貧しい夜鷹の子として生まれて母からは虐待を受け、7歳から売春させられるなど悲惨な生活を送る中、偶然出会った鳥山石燕に絵の才能を見出されたが、母に弟子入りを阻まれていた。そのような折に大火が起き、母を見捨てて逃げ出すも罪悪感に苛まれて火に飛び込もうとしたところを重三郎に保護されたというのが重三郎と出会った経緯であった。そして記憶がない振りをして吉原で生き直そうとするも、母のヒモだった浪人に見つかって全てをばらすと脅され、蔦屋の金を盗むことを強要されて思い詰め、浪人を道連れに心中を図るも、自分だけが生き延びてしまったというのが行方不明になった経緯であった。
- 重三郎との再会時には絵の代筆だけでなく男女ともに春を売って危ない目にも遭いながらも、自身を連れ戻そうとする重三郎のことを拒んでいたが、説得されて重三郎の元に戻る。そして絵師「歌麿」として、絵を描きながら耕書堂を手伝うことになる。昔出奔した駿河屋の養子・勇助が戻ったということにしたため、駿河屋の養子で重三郎の義弟ということになる。重三郎と二人で店を切り盛りしていた際は、重三郎の唯一無二の相棒と自負していたものの、重三郎がていと所帯を持ち、奉公人を多く抱える大店の主になると自身の存在意義に悩み、てい達への嫉妬を見せる。しかし、最終的に重三郎の幸せを思って受け入れ、「生まれ変わったら女がいい」と述べて架空の女絵師「歌麿門人 千代女」として絵を出す。
- 幼い頃から実母に存在を否定され続けてきたトラウマから、絵で自身の個性を表現することに恐怖心を抱き、他の絵師の画風を真似続け「人まね歌麿」として一定の評価を得る。しかし、重三郎から枕絵を描くことを提案されたことを機に自身の過去と向き合い、ちょうど自身を訪ねて来た鳥山石燕の元で自分独自の絵を追求することになる。そして石燕の家の庭に咲いていた牡丹に心を惹かれ、植物や虫などの小動物をつぶさに観察して活き活きとした絵を描き上げる。その絵は定信の倹約令に反発する重三郎の方針により、贅を尽くした狂歌絵本『画本虫撰』として出版される。
- 偶然出会ったきよをモデルとし、日常の姿をスケッチするうちに心を通じ合わせ、過去のトラウマを克服し枕絵を描き上げる。石燕が亡くなったことを機にきよと結婚し、石燕の仕事場を引き継いで独立する。
- きよ
- (女 → きよ)
- 演:藤間爽子
- 歌麿の妻。元は洗濯女で、洗濯だけでは生計を立てられないため身体も売っていた。聴覚障害者であり話すこともできないが、表情豊かであり、身振り手振りを用いて意思疎通を行う。
- 廃寺で客を取っていたが、それを目撃した歌麿がヤスと母親の幻影を見て混乱し、客に暴行を加えてしまったことで歌麿と出会う。その後、歌麿と偶然再会し絵のモデルとなる中で想いを通じ合わせて結婚する。
- 菊麿(きくまろ)
- 演:久保田武人
- 歌麿の弟子。
- 唐丸の母
- (母 → 唐丸の母)
- 演:向里祐香
- 夜鷹。
- 堕胎に失敗して為すすべなく唐丸(歌麿)を産み、貧しい酒浸りの生活を送る中で唐丸を「鬼の子」と呼び辛く当たる。唐丸が7歳になると自分で食い扶持を稼ぐように言って売春させ、金を稼いできたときは可愛がる一方で、普段は理不尽な暴行や暴言を浴びせていた。明和の大火の際に瓦礫の下敷きになり、唐丸の足を掴んで自身を助けるように迫るが、手を振りほどかれて逃げられる。
- 結果的に彼女を死なせてしまったことは唐丸の大きなトラウマになっており、のちにその幻影に悩まされることになる。
- 朋誠堂喜三二(ほうせいどう きさんじ)
- (平沢常富 → 朋誠堂喜三二)
- 演:尾美としのり
- 佐竹家江戸留守居役にして売れっ子の戯作者。朋誠堂喜三二は戯号であり、本名は平沢常富(ひらさわ つねまさ)。吉原に長年通い、「宝暦の色男(ほうれきのいろおとこ)」の異名を持つ。道陀楼麻阿(どうだろう まあ)などの別号も用い、重三郎からは「まあさん」と呼ばれる。
- 好奇心旺盛で享楽的な性格で、藩重役の身分が露見しないよう気を使いつつ活発な創作活動を展開し、始めは鱗形屋から、その後は耕書堂から多数の著書を出版する。鱗形屋で活動していた頃から恋川春町とは親交が深く、共に耕書堂に移ってからも行動を共にし、不器用で拗らせやすい春町をよく気にかけている。別号の由来となった「どうだろう、まぁ」が口癖。
- 留守居役の仕事で吉原を使うだけでなく自腹でも通う吉原マニアで、重三郎の作った『青楼美人合姿鏡』を絶賛したことで重三郎と知り合う。ただしそれ以前から頻繁に吉原を訪れ、重三郎の周囲で起きる様々な事象の傍観者になっていた[注釈 7]。重三郎から俄祭りの開催を聞いて面白がり、大文字屋陣営の参謀を自ら買って出る。祭りの準備を共にする中で重三郎を気に入り、鱗形屋との板挟みになりつつも重三郎とも仕事をすることを選び、『明月余情』の序を担当する。本職での収入があることから本の売上げには興味がなく、「江戸市中で本は売れなくとも重三郎と組むのは楽しく吉原での接待も受けられる」という理由でその後も耕書堂から本を出版する。吉原に居続けで執筆していたところ遊びが過ぎて腎虚になってしまい、その時処方された眠り薬を服用して悪夢を見るが、その悪夢にヒントを得て『見徳一炊夢』を書き上げる。
- 重三郎が定信を皮肉る黄表紙を出版していくことに決めると、『文武二道万石通』を執筆し大ヒットさせるが、翌年に絶版処分となり、主君の佐竹義和にも叱責され断筆を決意する。
- 恋川春町(こいかわ はるまち)
- (倉橋格 → 恋川春町)
- 演:岡山天音
- 江戸定府の小島藩士(初登場時は内用人)にして絵師・戯作者。武士としての本名は倉橋格(くらはし いたる)。狂歌師としては酒上不埒(さけのうえ の ふらち)と名乗る。松平定信が作品の愛読者であり、秘かにではあるが神の如く熱烈に尊敬されている。
- 華麗な戯号を名乗るも、本人は至って生真面目で義理堅く、所作もいちいち武士らしい人物。作品づくりにおいても「どのように戯けるか」を真面目に考えている。また、オリジナリティへのこだわりが強く、些末なことも自身が納得するまで考え込んで執筆することから、板元の要望に柔軟に応えるのは不得手である。
- 歳が離れた喜三二と親しく付き合っており、共著も出している。
- 団扇絵を描いていたところを鱗形屋に見いだされて『金々先生栄花夢』を書き、青本ブームを巻き起こす。自藩の家老が偽板作りの件で迷惑をかけたことから、経営が傾いた鱗形屋からほぼ謝礼を受け取れないにもかかわらず専属作家として『辞闘戦新根』などの本を出す。
- 鱗形屋の店じまいに伴い鶴屋へ移籍することになるが、喜右衛門とは考え方が相容れずに悩み、見かねた鱗形屋が重三郎に頼んで耕書堂に移籍させようとすることになる。当初は鱗形屋からかつて聞いた話から重三郎に悪印象をもっていたが、重三郎が持ってきた「百年後の江戸を描く」という案思に心惹かれ、鱗形屋と鶴屋に頭をさげて耕書堂に移籍し、案思を元に『無益委記』を執筆する。その案思は鱗形屋が重三郎と手を組んで作り出したものということには気が付いていない。
- 拗らせやすい性格で、自身の『辞闘戦新根』を下地にしながらもそれより面白い作品を書き上げた北尾政演に嫉妬する。自身の真面目過ぎる性分と才能に限界を感じていたこともあり、うた麿大明神の会後の宴席で負の感情を爆発させ、政演らを皮肉った狂歌を詠んで暴れ、周囲を一時唖然とさせる。しかし、それが契機となり「皮肉屋」としての才を見出される。その後開かれた宴会では用意してきた放屁芸で周囲を大いに盛り上げ、政演とも和解する。政演が新著の執筆に苦労していた際には、飄々と振る舞う政演が実は自分同様に生真面目で不器用な努力家であると見抜き、筆が進まない政演を𠮟咤激励する。
- 重三郎が定信を暗に皮肉る黄表紙を出版していくことに決めると、『悦贔屓蝦夷押領』、続いて『鸚鵡返文武二道』を執筆する。後者は大ヒットするが絶版処分となり、定信からの呼出しも受ける。一時は死を装い別人として生きることを決め、病を理由に出頭を延ばして準備時間を稼ごうとするも、小島松平家や耕書堂に累が及ぶことを恐れて断念し、自死を決意する。そして武士としても戯作者としても本分を貫き通すため、どのように死ぬか真剣に考えた末、介錯なしで切腹した上であらかじめ用意した豆腐に頭を突っ込み、「豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ」という道を選ぶ。
- しず
- 演:谷村美月[36]
- 春町の妻。春町の死後、弔問に訪れた重三郎たちに対応する。
- 北尾政演(きたお まさのぶ)
- 演:古川雄大
- 重政の弟子の絵師。山東京伝(さんとう きょうでん)として戯作も手掛ける。狂名は身軽折助(みがる の おりすけ)。
- 社交的で人懐っこい性格で、要領が良い。女好きで「絵はモテるために描くもの」と断言する。一見すると軽薄で不真面目な男で、本人もそう見えるよう振る舞っているものの、実は真面目な努力家。重三郎には「政演」と呼ばれて可愛がられ、自身も重三郎のことを「蔦重さん」と呼び慕っている。
- 多くの仕事を抱える売れっ子だが、筆が早いために早々に他の仕事をこなし、吉原での接待を目当てに耕書堂の仕事をやりたがる。重三郎を通じて知り合った朋誠堂喜三二とは同じ吉原好きとして意気投合する。
- 絵師として鶴屋にも出入りし、喜右衛門に勧められて戯作を書くようになり、最初に書き上げた『御存商売物』がその年の大田南畝の番付でいきなり最上位に評価されている。これにより名が上がったことから、耕書堂では自身初の錦絵になる『青楼名君自筆集』の作画を任される。これ以降、戯作者としては鶴屋で、絵師としては耕書堂で活動していたものの、「二代目金々先生の物語を書きヒットさせること」を条件に耕書堂からも戯作を出すことを鶴屋に認められ、苦労しながらも春町らに励まされて『江戸生艶気樺焼』を書き上げる。
- 北尾重政(きたお しげまさ)
- 演:橋本淳
- 板本の挿絵を数多く手掛ける人気絵師。面倒見がよく、政演ら弟子だけでなく歌麿のことも気にかけて世話を焼く。
- 重三郎が初めて作った入銀本の作画を依頼される。その際に単色の版画では大勢の人物を描き分けるのは困難だと重三郎に教えたことが、女郎を花に見立てる『一目千本』のアイデアにつながる。その後も重三郎と交流を持ち、友人の勝川春章や弟子の北尾政演を紹介して『青楼美人合姿鏡』の作画を春章とともに手掛けたり、戯作や往来物の挿絵を担当したりする。歌麿の秘められた画才を見抜き、これを売り出すように重三郎に強く勧める。
- 北尾政美(きたお まさよし)
- 演:高島豪志
- 重政の弟子の絵師。重政の紹介で耕書堂の仕事を請け負うようになる。
- 勝川春章(かつかわ しゅんしょう)
- 演:前野朋哉
- 役者絵で有名な絵師。名前や画風を真似た浮世絵が市中に多く出回るほど人気を集める。
- 北尾重政の紹介で『青楼美人合姿鏡』の作画をともに請け負うことになり、女郎たちの普段の姿を興味津々に観察して描く。重政とともに俄祭りの見物に訪れ、その盛り上がりを体感したことと、礒田湖龍斎の『青樓俄狂言』に対抗心を燃やしたことから、祭りの風景を速報する墨摺絵を急遽描くことになり、耕書堂から『明月余情』として出版される。
- 鳥山石燕(とりやま せきえん)
- 演:片岡鶴太郎
- 妖怪画で有名な絵師。
- ざんばら髪で白髭を蓄えた、浮世離れした老人。飄々と振る舞うが洞察力に優れ、その指摘は物事の核心を突く。
- 妖怪を見ることができ、唐丸が母と住んでいた家の近くに妖怪を観察しに来ていたところ、唐丸と出会う。唐丸の絵の才能を見抜き、自分の元で絵を本格的に勉強することを提案する。
- 結局自身の元へは来なかった唐丸のことを長年気にかけ、歌麿が「人まね歌麿」として有名になると唐丸の絵だと見抜いて耕書堂を訪ねてくる。そして歌麿を自宅に引き取って改めて絵を教えることになり、「自身にしか見えないものを絵に現すことは絵師の使命」と説く。ある雷の夜、庭に謎の人影を見つけてその着物の図柄を元に雷獣の絵を描き、描き終えると筆を持ったまま亡くなる。
- 志水燕十(しみず えんじゅう)
- (北川豊章 → 志水燕十)
- 演:加藤虎ノ介
- 御家人にして戯作者。博打が好きで金に困っており、吉原を去った捨吉こと唐丸に北川豊章(きたがわ とよあき)名義で絵を描かせたり、春を売らせたりしていた。唐丸が重三郎のもとへ戻ると、その代わりにと戯作執筆の仕事を求め、重三郎の協力者となる。その後も唐丸改め歌麿からは気安く話せる存在である。
- 利根川決壊の後に顔を見せないことを重三郎に心配されており、それ以降は姿を見せなくなる。
- 唐来三和(とうらい さんな)
- 演:山口森広
- 戯作者。うた麿大明神の会に参加し、続く宴席では酒に酔って、初対面の重三郎に「俺も義兄弟にしてくれよ」と迫る。その後、耕書堂に出入りするようになる。多弁で陽気な性格で、黄表紙本のアイデアなどを面白おかしく周囲に話していることが多い。
- 礒田湖龍斎(いそだ こりゅうさい)
- 演:鉄拳
- 美人画で有名な絵師。西村屋の斡旋により『雛形若菜初模様』の作画を請け負う。その絵は次郎兵衛の不用意な行動により水に濡れてにじんでしまうが、唐丸が元の絵そっくりに再現し、支障なく板木が作られたためそれに気が付くことはなかった。
- その後も西村屋の『青樓俄狂言』の作画を請け負う。また、『雛形若菜初模様』はシリーズ化され、長年刊行され続けるが、絵師は後に鳥居清長に交代している。
- 芝全交(しば ぜんこう)
- 演:亀田佳明[27]
- 戯作者。
- 鶴屋から多くの戯作を出版しているが、政演の誘いで耕書堂にも出入りするようになる。
狂歌師
- 大田南畝(おおた なんぽ)
- 演:桐谷健太
- 御家人にして狂歌師。南畝は号で、他にも「四方山人(よも さんじん)」、「寝惚先生(ねぼけせんせい)」、「四方赤良(よもの あから)」などの別号や狂名を持つ。通称は「直次郎(なおじろう)」。
- かつて平賀源内に才を激賞されたことで天才少年として有名になった文人。狂歌師として活動する他、毎年青本を全て読んで番付を出しており、天明元年(1781年)の番付『菊寿草』にて耕書堂の『見徳一炊夢』を最上位と評価する。それがきっかけで重三郎と出会い、すぐに打ち解けて狂歌の会に誘う。御家人ではあるが家禄は高くなく、当時は幼い息子・定吉を抱え貧乏暮らしをしていたものの、「なんでも了見一つでめでたくなる」と底抜けの明るさを見せる。
- 狂歌ブームが到来すると、盟友の菅江と共にその牽引役として活躍する。重三郎が日本橋に移っても交際を続け、耕書堂のブレーン的存在となる。狂歌ブームの到来以降は土山宗次郎の援助もあって羽振りがよくなり、吉原の女郎・みほざきを身請けするなど派手な生活を送るが、土山が失脚すると巻き添えになることを恐れる。その懸念通り、定信を揶揄する狂歌を詠んだ疑いで呼び出しを受けて身の危険を感じるが、重三郎や狂歌仲間に乗せられて狂歌を続けることを決意する。
- 朱楽菅江(あけら かんこう)
- 演:浜中文一
- 狂歌師。木網連で重三郎と知り合い、耕書堂に出入りするようになる。大田南畝の盟友であり、狂歌ブームが到来すると南畝と共にその牽引役として活躍する。
- 元木網(もとの もくあみ)
- (湯屋の主人 → 元木網)
- 演:ジェームス小野田
- 湯屋の主人にして狂歌師。木網連の主催者。「元木網」は狂名。
- 初登場時は髷を結っていたが、狂歌師として再登場した際には剃髪して坊主頭になっている。
- 湯屋の主人としては重三郎が『一目千本』を作成した際に配っていた見本を受け取っており、その時から重三郎の活動に着目していたと後に語る。重三郎が木網連を見学して以降、狂歌師として耕書堂に出入りするようになり、重三郎に奨められて狂歌の指南書を刊行する[37]。
- 智恵内子(ちえの ないし)
- 演:水樹奈々
- 女流狂歌師、木網の妻。木網連の副主催者。
- 宿屋飯盛(やどやの めしもり)
- 演:又吉直樹[25]
- 狂歌師。大田南畝の誘いで共著『歳旦狂歌集』を耕書堂から出版し、その後も耕書堂に出入りする。
芸人とその関係者
- 富本豊前太夫(とみもと ぶぜんだゆう)
- (富本豊志太夫 → 富本豊前太夫)
- 演:寛一郎
- 富本節の太夫。初名は富本午之助(とみもと うまのすけ)。
- 「馬面太夫(うまづらだゆう)」とあだ名されるほどの面長な顔立ちだが、美声と男ぶりの良さで絶大な人気を博す。11歳のときに父・初代富本豊前太夫を亡くしたため後ろ盾がなく、襲名がなかなか認められずに豊志太夫(とよしだゆう)を名乗っていたものの、のちに重三郎の働きかけにより当道座の鳥山検校が動き、豊前太夫襲名が実現する。
- かつて門之助とともに素性を隠して吉原に行っていたものの、門之助が役者と露見して酷い扱いを受けた経験から吉原を嫌っており、吉原俄への出演の打診を一度は断る。しかし、重三郎らに向島へ招かれて謝罪を受け、彼が連れて来た女郎たちに接待され、余興として軽く披露した富本節に女郎たちが涙を流したのを見て心を動かされる。芝居などの芸能の本物を見ることなく、遊里の中で一生を終える女郎が多いという話を聞いて吉原俄で富本節を披露することを了承し、さらに耕書堂から直伝正本を出版することを認める。その後も重三郎と親しく付き合い、源内が縁起の悪い屋敷に引っ越して様子がおかしくなった事を重三郎に伝える。
- 市川門之助(いちかわ もんのすけ)
- 演:濱尾ノリタカ
- 歌舞伎役者。午之助とは兄弟同然の仲。役者には禁じられている吉原へ行ったところ若木屋に正体を悟られ、午之助ともども下帯姿で大門から放り出されたことがある。豊志太夫(午之助)と共に女郎らの接待を受け、吉原俄への協力を約束する。北尾政演の黄表紙本『江戸生艶気樺焼』の主人公・艶二郎のモデルの一人として使われる。
- 名見崎徳治(なみざき とくじ)
- 演:中野英樹
- 富本節の三味線方。
- 初代豊前太夫に代わって豊志太夫を指導し、人気の太夫にまで育て上げるもなかなか襲名が認められないことに悩む。襲名が叶った後も太夫を支える。
- 富本斎宮太夫(とみもと いつきだゆう)
- 演:新浜レオン[38]
- 富本節の太夫。打ちこわしの際、重三郎の頼みで幕府から銀が配られることの宣伝に協力し、打ちこわしの鎮静化に貢献する。
- 瀬川菊之丞(せがわ きくのじょう)
- 演:花柳寿楽[注釈 8]
- 歌舞伎の女形。源内の亡き恋人。
- 源内の家でよく舞の稽古をしていた姿は源内の思い出となっている。かつて路考髷や路考結びなどの流行を作り出して呉服屋が大儲しており、それを源内が重三郎に話したことが、呉服屋の入銀による『雛形若菜初模様』の制作に繋がる。
- 烏亭焉馬(うてい えんば)
- 演:柳亭左龍[注釈 9]
- 大工の棟梁にして浄瑠璃作家。りつの夫の知り合い。
- 浄瑠璃で吉原の場面を書くために、吉原について教えてほしいと重三郎に頼む。代わりに耕書堂の名前を織り込むように頼まれ、重三郎をモデルとした本重という人物を登場させる。
- 座元
- 演:本村健太郎
- 芝居小屋の座元。
- 重三郎とりつが見物にいった芝居で口上を述べる。重三郎がその軽妙さと面白さに感心したことが、のちに『伊達模様 見立蓬莱』の巻末広告につながる。
- 本重(ほんじゅう)
- 演:花柳忠彦
- 浄瑠璃『碁太平記白石噺』の登場人物で重三郎をモデルとする。
市井の人々
- 平賀源内(ひらが げんない)
- (厠の男 → 平賀源内)
- 演:安田顕
- 鉱山技師、本草学者、蘭学者、浄瑠璃作者、戯作者などさまざまな顔を持ち[注釈 10]、漱石香の宣伝文句を考えてヒットさせる、解体新書の挿絵師に絵を教えるほど絵の心得があるなど、多才な人物。頭の回転が早く、早口で話す。
- 元の仕官先から奉公構を出されているため、決まった仕官先を持たずに心のままに生き、一山当てようと巨額の資金を集めて事業を興しては失敗するものの、口の上手さで乗り切っている。その仕事内容と生き様から「山師」と呼ばれるが、自身はそれを誇りとしている。福内鬼外(ふくうち きがい)など様々な戯号を持ち、重三郎と出会った当初は貧家銭内(ひんか ぜにない)と名乗る。
- 重三郎が岡場所の警動をしない奉行所に文句を言っていたのを偶然聞き、田沼意次に訴え出ることを提案したことで重三郎と知り合う。正体を知った重三郎に吉原細見の序の執筆を依頼されるが、男色家であり、過去に書いた序の出来も悪かったと、一度は断る。しかし重三郎と花の井の働きにより了承し、吉原を自ら見て回った上で、福内鬼外の筆名で序を提供する。その後は重三郎と親交を深め、困ったときは頼り合う間柄となる。重三郎が板元を志すと堂号を依頼され、「書をもって世を耕す」の願いを込め「耕書堂」と付ける。
- 中津川鉱山の開発を主導する傍ら、副産物である炭を細々と売っていたが、鉱山事業が頓挫すると本格的に炭焼き事業に乗り出す。その後はエレキテルの復元に成功して医療器具として売り出し、評判を得る。しかし、エレキテルの製法を弥七に盗まれて模倣品が出回ったことと、エレキテル自体に医療効果はないという評判が広まったことで行き詰る。常に明るく振る舞ってはいるが、内心では学者として大成しなかったことを気に病んでおり、エレキテルの事業にも失敗したことで、自身が何の成果を上げられていないと思い悩み、憔悴していく。
- 田沼意次には才覚を評価されて親交を深め、千賀道有を通じて裏から資金援助を受けている他、意次の依頼で八代将軍吉宗の書を改竄するなど汚れ仕事にも関わる。家基急死の際には意次の頼みで調査をおこない、手袋に仕込まれた毒で殺されたことを突き止める。意次からは手を引くように忠告されるが、意次に疑惑の目が向けられていると知ると、意次と自身をモデルとした戯作に真相を書くことで意次の潔白を世に示そうとしたために、近づいてきた「丈右衛門」を名乗る治済の手先と久五郎に陥れられ、殺人の濡れ衣を着せられた挙句不審な獄死を遂げる。罪人ゆえに遺骸は引き渡されず、ただ墓だけが作られた。
- 小田新之助(おだ しんのすけ)
- 演:井之脇海[注釈 11]
- 源内とともに行動する浪人。元は貧乏な武家の三男であったが、出奔して源内に弟子入りしており、源内の元で吉宗の書の改竄やエレキテル製作の手伝いなどもする。
- 生真面目で実直な青年で、湯島の長屋に住み、源内が江戸にいる際には居候させていた。重三郎からは「新さん」と呼ばれ親しく付き合い、細見製作などを手伝う。教養がある一方で腕力沙汰は不得手で、剣術の腕前もからっきしである。
- 源内にしたがって吉原を訪れた際、座敷に出たうつせみに一目惚れし、吉原に通うようになる。やがて相思相愛の仲となり「新さま」と呼ばれるようになる。しかし、うつせみが自分との逢瀬のために変な客をとってまで自ら揚げ代を稼ごうとする様子を見て自身の不甲斐なさに苛まれ、足抜けをさせようとするが失敗してうつせみと引き離される。彼女が罰として殺されるのではないかと思い詰め、居宅で切腹を図るが重三郎に止められる。
- その後もうつせみを諦めきれず、俄祭りの際に吉原に紛れ込みうつせみと二度目の足抜けを決行する。それからしばらく消息不明だったが、源内の弔いのために重三郎の元を密かに訪ね、源内の手引きでうつせみと共にとある農村に辿り着き、百姓をしながら子供たちに読み書きを教えていることを明かす。しかし浅間山噴火で田畑が大きな被害を受けたことから、降灰の片付けが済んだ翌年に村を追い出され、ふく(うつせみ)とともに流民として江戸に戻る。命からがら耕書堂を頼ってその筆耕となり、重三郎に深川の長屋を斡旋してもらい暮らし始める。
- ふくとの間に男児・とよ坊を授かるが、自身の留守中に近所の男(演:梅林亮太[40])が強盗に入って二人を殺されてしまい、貧しい境遇の犯人を恨むこともできず「ふくととよ坊は世に殺された」と考えるに至る。予告されたお救い米が出なかったことを契機として長屋仲間とともに決起するが、あくまでも「抗議活動」として暴行や窃盗に依らず打ちこわしを展開する。打ちこわしに紛れ込んだ治済の手先が重三郎を殺害しようとしたのを見て庇い、傷は浅かったものの刃に塗られていた毒が回り、「重三郎を守れたことが自分の生まれてきた意味であった」と満足して笑顔で逝く。
- ふく
- (うつせみ → ふく)
- 演:小野花梨
- 小田新之助の妻。松葉屋の元座敷持花魁で、源氏名はうつせみ。女郎時代の店内での序列は松の井、花の井に次ぐ三番手。本名は「ふく」で足抜け後はふくと名乗る。
- 上位の二人とは違い内気でおとなしい性格。新之助と相思相愛になり、懐事情のよくない彼に代わって自ら揚げ代を払ってでも会いたいと望むほど入れ込む。金を稼ぐために、女郎の肌に刃物で客自身の名を彫り、痛がらせることを喜ぶような変な客をとるようになる。疲弊した様子を見かねた新之助の提案で足抜けを敢行するも失敗して連れ戻され、いねに折檻されながら考えの甘さを指摘される。
- その後も新之助への想いは変わらず、俄祭りを訪れた彼との再会を果たすと、そのまま雑踏に紛れて足抜けする。松葉屋では神隠しにあったということにして処理されるが、新之助が源内の弔いに重三郎の元を訪れた際に、源内の伝手で新之助と共にとある農村に辿り着き、百姓になっていたことが明かされる。百姓としての生活が性に合い平穏に暮らしていたものの、浅間山の噴火のために村を追い出され、新之助とともに江戸に戻る。そして深川の長屋に落ち着いた後、新之助との間に男児・とよ坊を授かる。飢死寸前の思いをした経験から、意次ら為政者に悪感情を持ち、意次贔屓の重三郎に対してたびたび厳しい意見を口にする。
- 利根川決壊により被害を受けるも重三郎の援助により飢えを免れ、それゆえに自身もできる限り周囲の助けになろうと、母乳の出ない近所の女たちに代わってその乳児たちに母乳を分け与える。しかし、女の一人(演:立川茜[41])が「家に米がある」と感付いてそれを夫に話したことから、強盗に入られてとよ坊とともに殺されてしまう。
- とよ坊
- 新之助・ふく夫妻の子。家に入った強盗により母・ふくとともに殺されてしまう。
- 平秩東作(へづつ とうさく)
- 演:木村了
- 内藤新宿の煙草商。源内の仕事仲間の山師。
- 源内とともに秩父で鉱山開発をおこなうも失敗して出資者に詰め寄られ人質に取られるが、炭焼き事業への転換の目途が立ったため解放される。その後別件で借金取りに追われながらも、蝦夷の砂金に目を付け源内に勧める。意次が源内に家基急死の調査を依頼した際には源内と共に調査を行う。
- 松前の上知問題に関しても意次らに協力し、抜荷の証拠を掴むために上方に調査に行ったり、口八丁手八丁で廣年に琥珀の取引を持ち掛けたりする。また、意知の命で湊とともに松前に行き、善吉の協力を得て表帳簿と裏帳簿を手に入れるが、松前藩側に企みが露見して追われる身となり、店が燃やされ湊と善吉を殺されながらも命からがら意次の屋敷にたどり着く。土山が逐電した際は、その手引きをしている。
- 狂歌師としての顔も持ち、木網連に参加している。耕書堂が絶版処分で揺れている頃、病に倒れる。見舞いに来た重三郎が持ってきた狂歌絵本『画本虫撰』に感心し、最近源内が夢枕に立つので話しておくと語り、それからしばらくして亡くなる。
当道座
- 鳥山検校(とりやま けんぎょう)
- 演:市原隼人
- 当道座の検校。瀬川の上客、のちに夫。名は玉一(たまいち)。
- 盲目だが他の感覚が鋭く、まるで見ているかのように人の動きを察したり、声色から他人の感情をも読み取ることができる。女郎たちに細かい気遣いができ、仮名手本忠臣蔵の台詞を用いた会話をするなど洒落っ気もある人物。一方で高利貸しで巨万の富を築いてもおり、重三郎からは「ヒル」と評されている。
- 瀬川を1400両という大金で身請けし、「瀬以」と名付けて高価な装飾品を惜しみなく買い与え、「望むことは何でもかなえてやる」と述べるなど溺愛する。しかし数年たっても瀬以が打ち解けず女郎と客のような関係性が続く一方で、彼女が重三郎と会った際の声色から彼女の秘めた想いを察知して嫉妬を覚え、不義密通を疑う。
- 重三郎を呼び寄せ、瀬以とともに斬ろうとするが、幕府によるお調べが入ったために重三郎と会うことはなかった。お白州では瀬以に累を及ぼさないため、離縁を申し出る。
- 座頭
- 演:ドンペイ
- 当道座の座頭。
- 高利貸しを生業とし、借り手から厳しく取り立てるのみならず、返済の目途が立たない武家から跡目を奪うことにも手を染めている。森忠右衛門に過酷な取り立てを行い、摘発のきっかけを作ってしまう。
商人
- 和泉屋(いずみや)
- 演:田山涼成
- 日本橋の干鰯問屋。花の井の馴染客。名は三郎兵衛(さぶろべえ)。
- 田沼屋敷に出入りし、肥やしと称して金銭を賄賂として渡す。その際に重三郎が荷物持ちとして強引に付き添い、意次に岡場所の警動を訴えたため、結果的に二人を引き合わせるきっかけを作った。
- その後も吉原に通い続けて丁子屋の馴染客となっている。土山邸で久しぶりに再会した重三郎に日本橋進出を薦めていたが、間もなく亡くなる。
- 和泉屋番頭
- 演:岡村雄三
- 先代主人の葬儀の場において、吉原の楼主たちが事前に喪主に確認した上で参列していたにもかかわらず、他の参列者から文句を言われたことで座敷から蓆を敷いた中庭へ移るように求める。
- 薪炭問屋主人
- 演:綾田俊樹
- 薪炭問屋「山崎屋」の主人。
- 店じまいを考えており、株と店を源内に売る。
- 豪商
- 演:林家三平
- 日本橋の商人。松葉屋の馴染客。
- 俄祭りの際には、松葉屋の二階から松の井、うつせみとともに見物していたものの、興奮して二人を見世の外に連れ出したことがうつせみの足抜けにつながる。重三郎が日本橋に進出しようとした際には松葉屋から口利きを頼まれるも、吉原者に市中の家屋敷購入を禁じたお触れを理由に断っている。日本橋に進出した耕書堂にも足を運んでおり、熊野屋と談笑する。
- 熊野屋(くまのや)
- 演:峰竜太
- 信濃の豪商。吉原の座敷で重三郎に商売往来の修正を任され「わしにお任せ?」と驚いている[42]。自分の意見が反映された商売往来が耕書堂から出版されると感激し、知り合いに勧める。その後も重三郎と交流を続けており、贔屓の関取たちを紹介する。耕書堂の日本橋進出以降も店に足を運んでいる。
- 尾張屋彦次郎(おわりや ひこじろう)
- 演:大谷廣松
- 呉服屋の若旦那。吉原の常連客。
- 重三郎が呉服屋から入銀を募り錦絵を作ろうとした際は相手にしなかったが、西村屋が関わるようになると中丸屋佐兵衛らとともに入銀に応じる。その後も西村屋の『雛形若菜初模様』に入銀を続けていたが、西村屋が値上げをすると難色を示し、重三郎が半値で似たものを作れると話を持ち掛けるとそれに乗る。
- 白木屋彦太郎(しろきや ひこたろう)
- 演:堀内正美
- 日本橋の呉服屋「白木屋」の主人。
- 耕書堂の『青楼名君自筆集』より西村屋の『雛形若菜初模様』を推すという呉服屋仲間の意向を伝え、吉原にも協力を要請する。抗議する重三郎に対して、江戸の外にも商品を広く流通させるには日本橋に店を構えることは不可欠という現実を教え、それが重三郎に日本橋進出を決意させる一因となる。
- 釘屋四郎兵衛(くぎや しろべえ)
- 演:木津誠之
- 日本橋通油町の釘屋の主人。通油町の寄合の出席者。
- 重三郎が丸屋を購入しようとした際、勢いのある耕書堂が通油町に来ることは悪い話ではないという考えを述べるが、鶴屋に退けられる。
- マツ
- 演:伊藤かずえ[43]
- 日本橋で桶屋を営む女性。友人のタケ、ウメと常に3人一組で行動しており、そのリーダー格。
- タケ、ウメ
- 演:ベッキー(タケ)、福田麻貴(ウメ)[43]
- 日本橋で店を営む女将たち。近頃評判の吉原耕書堂を訪れたことがある。市中で出会った重三郎をマツとともに呼び止め、日本橋への進出を応援すると声を掛けた。
- 大引赤蔵(おおびき の あかぞう)
- 演:林家たい平[25]
- 札差。吉原の客。
- 冷夏と浅間山の噴火による米不足の際、駿河屋の紹介で重三郎と大田南畝に引き合わされる。南畝直筆の狂歌扇を贈られて、その見返りに米を安く売ってもらえないか重三郎から交渉され、一昨年の米なら米価高騰前より安く提供できると言って耕書堂に売る。
- 釜屋伊兵衛(かまや いへえ)
- 演:益子卓郎[44]
- 栃木の豪商。
医師・僧侶・尼
- 杉田玄白(すぎた げんぱく)
- 演:山中聡
- 『解体新書』で有名な蘭方医。
- 元は源内の弟子のような存在であったが、当代一の蘭方医として名声を博しており、立場が逆転している。源内のエレキテルに関しては、「イカサマでないとは言い切れない」と評する。源内が殺人の容疑で捕らえられた際には、須原屋と重三郎とともに源内の潔白を意次に訴える。
- 医者
- 演:福澤重文[45]
- 腎虚になったと言う朋誠堂喜三二を診察するが、ただの色疲れであり休養が必要と判断し、腎虚に効く薬との名目で眠り薬を処方する。
- 寂蓮(じゃくれん)
- 演:岩井志麻子
- 尼。歌麿が捨吉として春を売っていたときの馴染み客。
- 覚圓(かくえん)
- 演:マキタスポーツ[43]
- ていに漢籍を教えた僧。店の売却を決めた彼女から、手習い用の書物を譲り受ける。その際にていの相談にのり、亡父が大切にしていた店を潰してしまった苦悩を明かされる。
その他の市井の人々
- 船頭
- 演:佐々木健介
- 秩父・中津川の船頭。
- 中津川鉱山から鉄を運び出す船を用意していたため、鉱山事業が頓挫しそうになると憤るが、炭焼き事業の目途が立ち、それに転用できると聞いて納得する。
- 去る客、懲りない客
- (去る客、懲りない客 → 客 → 町の男1、2)
- 演:児玉智洋(去る客)、赤羽健壱(懲りない客)
- 勝手な噂話をする二人組。瀬川の襲名時にはその話題に釣られて吉原に来て、「瀬川は自分に首ったけ」などと法螺を吹く。天明期の米不足の際は、政言が意知を切ったおかげで上方からの安い下り米が出回り出したと噂する。定信の老中就任後には、耕書堂の前を通り過ぎながら「田沼の手先の店」と噂する。
- ひさ
- 演:東雲うみ
- 新之助と源内が住む長屋に住む町娘。玉菊灯籠の見物に訪れるが、大門の外から仲之町通りの様子を眺めただけで帰ったことで、本来彼女のために発行された通行切手が新之助とうつせみとの足抜け計画に利用される。その後は源内のエレキテル製作を手伝う。
- 弥七(やしち)
- 演:片桐仁
- エレキテルの製作を手伝う町人。
- 飲み込みの早さを源内に評価され気に入られていたが、エレキテルの図面を盗んで模倣品を作り、源内の商売を行き詰まらせる一因となる。
- 吾作(ごさく)
- 演:芋洗坂係長
- 徳川家基が行った鷹狩で勢子を務めた百姓のひとり。家基が倒れる際の一部始終を目撃し、手袋をはめた手の指先を噛んだ直後に倒れたことを源内に話す。
- 久五郎(きゅうごろう)
- 演:齊藤友暁
- 大工。長屋を追い出されそうになっていた源内に近づき、神山検校が住んでいた空き家に無料で住まわせる。気前よく煙草を振る舞うが、煙草には何らかの薬物を仕込んでおり、源内に幻覚症状を見せる。「丈右衛門」を名乗る治済の手先と通じ、源内を自害に見せかけて殺す計画であったが、実は源内とともに処分されることになっており、自らも斬り殺される。
- ヤス
- (向こう傷の男 → ヤス)
- 演:高木勝也
- 浪人。左頬に大きな傷跡がある。
- 唐丸を強請り、蔦屋の金を盗ませる。しかし、それ以上の害を重三郎や蔦屋に及ぼすことを恐れた唐丸が道連れに死のうとしたしたため、川に落とされ、水死体となって発見される。実は唐丸の母のヒモであり、唐丸が明和の大火の中で母を見捨てたことを出しに唐丸を脅していたことが後に判明する。
- 結果的に彼を死なせてしまったことは歌麿(唐丸)の大きなトラウマになっており、のちに歌麿はその幻影に悩まされることになる。
- 餅をつく人、餅をこねる人
- 演:小野まじめ(餅をつく人)、せんちゃん(餅をこねる人)[46]
- 師走の吉原で正月用の餅をつく。
- 関取
- 演:遠藤、若元春、錦木
- 熊野屋の紹介で重三郎と会い、江戸一の利者と評判になっていた重三郎と知り合ったことを喜ぶ。
- ナベ
- 演:中村映里子[47]
- 新之助とふくの長屋仲間。米不足の中、政言が意知を切ったため米価が下がったと政言を崇める。利根川決壊によっても被害を受け、新之助や長七とともに意次ら為政者に反発し、打ちこわしに参加して男たちに檄を飛ばす。
- 長屋の女
- 演:雪見みと
- 新之助とふくの長屋仲間。政言のおかげで米価が下がったとナベと噂する。
- 長七(ちょうしち)
- 演:甲斐翔真[48]
- 新之助とふくの長屋仲間の大工。喧嘩っ早い性格で、何かと意次贔屓の発言をする重三郎に突っかかり、予告されたお救い米がでなかった際に意次を庇う発言をした重三郎に暴行を加える。その後新之助や米次らとともに立ち上がり打ちこわしをおこなう。
- 米次(よねじ)
- 演:䋝田圭亮[48]
- 新之助とふくの長屋仲間。意次に反感を持ち、長七と同じく重三郎に反発する。そして新之助や長七らとともに立ち上がり打ちこわしをおこなう。
- つや
- 演:国分佐智子[49]
- 政演を家に居候させている三味線の女師匠。
- 貧乏侍
- 演:竹内まなぶ[50]
- 吉原の場末を訪れ、廃止された中洲新地から流れてきた女郎たちに誘われる。
江戸幕府
徳川将軍家とその関係者
- 徳川家治(とくがわ いえはる)
- 演:眞島秀和
- 江戸幕府第10代将軍。
- 政務には直接関わらないが聡明で将軍としての度量も備えている。自己評価は高くないが、強い責任感の持ち主。
- 田沼意次を信任し政務を任せており、周囲から何を言われても意次の忠心を信じて重用し続ける。一部からは意次の傀儡と見なされているが、意次が日光社参を止めさせようと動いていた際に意次を諭して受け入れさせるなど、実際には意次の手綱を握っている。将棋を好み、意次と指すこともある。
- 嫡男・家基を含む子ども全員に先立たれ、新たに世継ぎを儲けるために励むことを意次に勧められる。仲睦まじかった亡き御台所に瓜二つである鶴子を紹介されて一時は乗り気になるが、知保の方の自殺未遂が契機となって考え直す。家基の急死に加えて、御三家や田安家、清水家が男児に恵まれないことを訝しみ、その背後に一橋治済の暗躍があると察しつつも、一橋家から敢えて養子を取ることで新たな犠牲者が出ることを防ぐことにする。その際に自身の血筋の継承を諦めてでも、父から受け継いだ「知恵」である意次たちを守り、次代に繋げていくと語り、意次を感激させる。また意知の才覚を評価して若年寄に抜擢する。
- 利根川決壊後の洪水被害により幕府が揺れる中、大崎の勧めにより知保の方が作った醍醐を食べて体調を崩し、死の床につく。治済の企みにより毒が混入されたことを察し、錯乱した振りをして治済に詰め寄り「これからは天の一部となり全てを見ている」と釘を刺して息絶える。
- 知保の方(ちほのかた)
- 演:高梨臨
- 家治の側室で家基の母。
- 感情の起伏が激しく、思いつめるとしばしば過剰な行動を取る。
- 低い身分の出身で意次の助力を得て大奥入りしたものの、現在は反田沼の立場をとり、意次からは「欲張り」と評されている。息子・家基と同じ爪を噛む癖があり、家基の死を聞いた際には生爪を嚙みちぎるほど取り乱し、意次が毒をもったと騒ぎ立てる。同じく意次を憎む宝蓮院と連携し、意次に対抗する。家基の死後、家治とは疎遠になり寂しい生活を送る中で大崎を重用するようになる。鶴子が新たに家治の寵愛を受けていると大崎から聞くと、自殺未遂事件を起こすが、実のところは大崎が調合した毒を使った狂言であったことを宝蓮院に述べている。豊千代が将軍世子となることが決まると西の丸を追われることになり、激しく抵抗するものの連れ出される。
- 家治とはのちに和解し、時々将棋を指す間柄になる。家治が体調を崩すと、大崎の勧めに従って醍醐を手作りして贈るが、その後家治の体調が悪化し死去してしまう。
- 徳川家基(とくがわ いえもと)
- 演:奥智哉
- 家治の嫡男。将軍の世子として「西の丸様」と呼ばれる。
- 文武に優れた人物ではあるが、財政問題より旧来の秩序や幕府の権威を重視しており、膨大な経費のかかる日光社参の実施を主張する。そのため意次を「成り上がりの奸賊」と嫌っており、父・家治に対しても憚ることなく意次への不信感を口にし、田安賢丸や松平武元と組んで意次の追い落としを図る。
- 当道座の一件で幕臣が経済的に困窮していることを痛感し、経済の勉強を始める。そして意次に頼らず自ら政治をおこなうためにも徳川吉宗に倣って文武に励むという決意を述べて武元を感心させるが、その一環として出かけた鷹狩の最中に急死してしまう。考え込むときや意に沿わないことが起きた際に指の爪を噛むという、母譲りの癖を持っており、それを利用されて毒殺されたことが後に判明する。
- 鶴子(つるこ)
- 演:川添野愛
- 家治の中臈。
- 高岳の紹介で家治の傍に上がるが、亡き御台所(家治正室)の遠縁で瓜二つであったことから一時期寵愛を受ける。
- 徳川家斉(とくがわ いえなり)
- 演:城桧吏[51](幼少期:長尾翼)
- 第11代将軍。治済の長男。幼名は「豊千代(とよちよ)」。
- 家基の死後、将軍家の世子に選ばれて家治の養子となり、西の丸に入る。家治死去の翌年、将軍宣下を受け将軍に就任する。年若く、政治に興味もないことから政務を定信に任せる。学問にも興味がなく、柴野栗山の講義をたびたびさぼって大奥に入り浸り、茂姫との婚儀の前に大奥の女中に手を付けて子を儲ける。
- 茂姫 (しげひめ)
- 薩摩藩主・島津重豪の娘。豊千代の許嫁。
- 豊千代が将軍世子に選ばれると、御台所となるには家格が足りないという理由から、側室になるということで一度は話がまとまりかける。しかし、浄岸院の遺言による縁組ということで島津側が拒んでいると治済が主張したことと、もう一人の御台所候補である種姫の背後には松平定信がいることを危惧した意次の思惑が重なったことで、豊千代の将来の御台所と決まる。
- 高岳(たかおか)
- 演:冨永愛
- 大奥老女。大奥上臈御年寄として実権を握る。
- 将軍・家治に話を通すことのできる力を持ち、田沼意次や松平武元も一目置く実力者。自分に利のある側につき、賄賂などを贈られるとあっさりと態度を変えることがある。大崎からは「女狐(めぎつね)」と評される。
- 意次が幕政の主導権を握るようになると協力的な姿勢を示す。大奥の代表者として種姫と茂姫のどちらを次期御台所として擁立したいかと意次に問われ茂姫を選択、種姫の背後にある知保の方と宝蓮院の影響力を大奥から排除する。意次の失脚後も意次を支持して謹慎処分を解くために助力し、定信の老中就任を阻もうとする。しかし、家基に死をもたらした手袋を大崎から渡されたことで身の危険を感じて翻意し、定信の老中登用を認める。その後大奥から姿を消す。
- 大崎(おおさき)
- 演:映美くらら
- 豊千代の乳母。その後は大奥で知保の方に仕えるも、治済の意を受けて動いている。
- 鶴子が家治の傍にあがったことや、種姫が御台所から外されたことなど知保の方や田安家の意に沿わないことが起きるたびに、それらが意次の仕業であると知保の方や宝蓮院に吹き込み意次への憎悪を煽る。また、薬の知識に長けており、知保の方の狂言自殺においては効き目を調整した毒を調合している。
- 家治が体調を崩した際は、知保の方に勧めて見舞いの品として醍醐を作らせ、ためらう家治を説得して食べさせる。その後家治の体調が悪化し、「食べ慣れないものを贈ったせいかもしれない」と知保の方がうろたえると、知保の方自身や周囲のためにも黙っているように言い、知保の方を気遣う素振りを見せながらも不敵な笑みを浮かべる。
- 家斉の乳母であったことから彼の将軍就任が近づくにつれて取り入る者も増え、大奥での存在感を強める。定信の老中就任を拒む高岳に対抗するため、治済の案で家基の手袋を渡し、圧をかけることで翻意させることに成功する。高岳失脚後は大奥老女として実権を握る。
幕閣とその関係者
- 田沼意次(たぬま おきつぐ)
- 演:渡辺謙
- 江戸幕府老中、遠江相良藩主。武家官位は主殿頭で通称は「主殿(とのも)」。
- 幕府の財政難や日本の経済状況を憂い、南鐐二朱銀発行や鉱山開発などの改革を積極的に進め、商業の発展により民を潤そうとするが、松平武元や徳川家基には考えが理解されずに対立する。父・田沼意行が足軽上がりの成り上がり者であることから家柄の低さを度々揶揄されているが、成り上がり者であることは事実として意に介していない。しかし、内心では腹を立てている面があり、主家筋の高い家柄であることを理由に引き立てを願い出てきた佐野政言を無下に扱う。一方で一介の町人である重三郎を気に入り目を掛けるが、それゆえに彼が政道に深入りせぬように度々釘を刺している。
- 度々賄賂を受け取る一方で、町人にも気さくに接し、話を広く聞き届ける度量を持つ。面会に訪れた和泉屋に同行した重三郎が不躾に岡場所を警動するよう訴え出てきた際も、その話を聞いた上で吉原だけのために国益を損なわせることはできないと説き、まずは自ら客を呼ぶ工夫をすべきと指摘する。信念のためならば手段を選ばず、治察の死を契機に経費抑制のために田安家の取り潰しを目論み、吉宗が残した書物を改竄して賢丸の田安家復帰を防ぐという際どい策を用いている。自身の追い落としを図る家基を牽制するために当道座の高利貸し一味の調査を始めるが、幕臣たちが想像以上に負債に苦しんでいる事実を知り、家治と家基に対応を強く訴えて当道座を摘発させる。
- 平賀源内の才を評価してパトロンとなっていたが、自身が家基急死の原因調査を依頼したことで源内は何者かに目をつけられて陥れられ、殺人の容疑で投獄されてしまう。密かに牢獄に足を運んで源内を励まし、彼を救うために動こうとするが意知に止められ、源内は獄死してしまう。何者かが暗躍しているのを察し、源内の潔白を訴えてきた重三郎、須原屋、玄白に対しては、源内を意図的に見捨てたかのように装って彼らの深入りを防ごうとする。
- 居城相良城が落成すると検分のためお国入りし、生前の源内の献策によって領内が繁栄している事に満足する。その反面幕政が上手くいかないのは自身の思い描く通りに幕閣が動かないからと考えるに至り、縁者や自身が抜擢した者で要職を固める人事をおこなっていく。また、源内の最後の提案でもある蝦夷地開発に興味を持ち、松前家からの上知を考えるようになる。
- 浅間山の噴火後、市中が米価高騰と米不足に窮すると策を講じるも成果を出せず、元からの悪評も相まって市井からは「悪の権化」のように扱われ、旧主の徳川治貞からも厳しく叱責される。その最中に意知を失い一時は活力を失うも、息子の遺志を継ごうと立ち直り、裏で糸を引いたと思われる治済を牽制する。その後は貸金会所令に活路を見出そうとするが利根川決壊に見舞われ、進めていた蝦夷地開発の計画や印旛沼干拓などが頓挫する。また、洪水被害に喘ぐ人々の間で貸金会所令の話が誤解を伴って広まったことでさらなる悪評が立つ。新たに溜間詰になった定信にも悩まされるようになった上、唯一の後ろ盾であった家治が体調を崩し、自身が毒をもったと城内で噂をたてられて面会が叶わなくなり、老中を辞職するまで追い込まれる。辞職後も治貞ら御三家からの責任追及が止まず、老中就任後に賜った2万石や屋敷が召し上げられた上、謹慎処分となる。しかし康福と忠友、高岳の執り成しで謹慎が解かれると、雁間詰の大名として康福らに進言をする形で実質的に幕政を動かし続け、「裏の老中首座」と呼ばれる。
- 長期化する米価高騰に対してお救い米の配布を進めるが、定信に約束を反故にされたことで米を調達できず、打ちこわしを招いてしまう。重三郎の案でひとまずお救い銀を出し、時を稼いでいる間に田沼派の大名・御家人たちに頭を下げて米を調達し、打ちこわしの鎮静化に成功するが、その手柄を定信に奪われて政治生命を絶たれてしまう。屋敷を訪ねてきた重三郎から「最後の田沼一派」として定信の政に抗うことを宣言され、そのために自身の名を貶めることに許しを乞われると快諾し、重三郎を後押しする言葉をかける。その翌年死去した知らせが重三郎の元にもたらされる。
- 田沼意知(たぬま おきとも)
- 演:宮沢氷魚
- 意次の嫡男。幕府での役職は奏者番のちに若年寄。武家官位は山城守。狂歌師の集まりへの参加時に名乗った狂名は花雲助(はなの くもすけ)で吉原に通う際の偽名としても使用する。誰袖が一目惚れするほどの端整な風貌の持ち主だが、自身の風貌には全く関心が無く「どこがいいのか分からぬ」などと言う。
- 冷静沈着な切れ者で常に穏やかな言動をしているが、吉宗の書物改竄の際には自ら江戸市中に出て意次と源内との連絡役を担うなど大胆な面も持つ。意次の懐刀的存在でもあり、時に情に流されそうになったり気が急いたりするところがある意次を抑える役となっている。ただし情がないわけではなく、来客用の弁当を下女(演:景井ひな[52])にこっそり分け与えるなど心優しい一面も持つ。
- 平賀源内が何者かに陥れられ殺人の容疑で獄に入れられた際は、源内を助けようとする父・意次を止め、自分たちの身を守るために見捨てるように主張する。その後意次が蝦夷地開発を考え始めると、自ら吉原に出向いて元松前藩士の湊と密談し、松前家に抜荷の疑いがあることを突き止める。田沼一派が松前家からの蝦夷地の上知に向けて動くことに決まると、危険を承知でその中心的役割を果たすことになる。そして、誰袖の申し出を受けて手先として使い、松前廣年を唆して抜荷の証拠を得ようとしてたびたび吉原を訪れる。その中で誰袖を女性として愛するようになり、西行の和歌を引用した狂歌に想いをしたためて贈る。かつて源内を見捨てた苦い経験から、誰袖のことは見捨てずに献身に応えようと身請けを決めるが、浅間山噴火後の米価高騰により自家への風当たりが強くなったことから体面を守るために土山宗次郎に名前を借りての身請けとなる。
- 屋敷を訪れて父に意見した重三郎に興味を抱き、のちに直接の接点がほぼなかったにも関わらず蝦夷地をめぐる企みに誘ったり、米価高騰の対応策として商人目線の意見を求めたりする。
- たびたび田沼家に引き立てを頼みにくる佐野政言に応対するが、意次がぞんざいに扱っていることに不安を覚える。若年寄に着任してから自ら政言を引き立てることになり、将軍の狩りのお供として推挙する。しかしその厚意が誤解され、政言に逆恨みされて殿中で切り付けられ、誰袖と蝦夷地のことを意次に託して死去する。生前に講じた策が政言切腹直後になってようやく効果を発揮して米価が下がり、皮肉にも政言が「佐野世直し大明神」として崇められることとなる。
- 田沼意致(たぬま おきむね)
- 演:宮尾俊太郎
- 意次の甥。
- 西の丸で起きた進物窃盗騒ぎの責任をとらされる形で目付を罷免され、意次の取り計らいで一橋家の家老となる。一橋家の豊千代が将軍世子に選ばれるとともに西の丸に入る。従兄弟・意知が襲撃された際は治済の前で深く嘆く。
- 三浦庄司(みうら しょうじ)
- 演:原田泰造
- 田沼家用人。
- 意次の参謀格であり、重要な謀議に参加する。農民出身[53]の成り上がり者で知恵者だがやや品位に欠ける言動をし、意次への落首を面白がって叱られたりしている。
- 工藤平助の『赤蝦夷風説考』に興味を覚え意次に紹介し、蝦夷地上知策のきっかけを作る。また、松前家の宴席において松前廣年が吉原通いをしていることを意図的に暴露し、松前道廣に抜荷に興味を持たせるきっかけを作る。
- 意次の遣いで重三郎の元に行くうちに黄表紙に嵌って耕書堂を頻繁に訪れるようになり、そこで聞いた入銀本の話から「貸金会所令」の構想を思いつく。また、米価高騰に対する意次の腐心が市中に全く伝わっていないことを重三郎から聞くと、お救い米を出す期日の宣伝を重三郎に頼むが、松平定信が意図的に対応を怠ったことによって米を予定通りには調達できなくなり、憤った民衆による打ちこわしの一因となってしまう。重三郎と意次の最後の対面に立ち会い、自身も重三郎と別れの挨拶を交わし意次と共に第一線から去る。
- 楠半七郎(くすのき はんしちろう)
- 演:宮澤寿
- 田沼家家臣。
- 井上伊織(いのうえ いおり)
- 演:小林博
- 相良藩家老。相良城検分のためお国入りした意次を出迎える。
- 松平武元(まつだいら たけちか)
- 演:石坂浩二
- 江戸幕府老中首座。武家官位は右近衛将監。幕閣の長老で賢丸からは「爺(じい)」と呼ばれる。白く長い眉毛が特徴で、意次一派からは密かに「白眉毛(しろまゆげ)」と呼ばれる。
- 保守的な価値観の持ち主で、意次を成り上がり者であると嫌い、意次の政策にはことごとく異を唱え、何かにつけて嫌味を言う。賢丸や家基の気概ある言動に期待をかけ、彼らと結んで意次を牽制する。
- 家基急死の際には、意次とともに調査をおこなうように家治に命じられ、手袋に仕込まれた毒により殺されたことにいち早く気が付く。手袋を作らせた意次を犯人として糾弾することもできたが、意次が犯人とも意次を追い落とす絶好の機会とも端から考えておらず、信条は違えども意次の能力や忠義は評価していることを意次に明かす。そして共に真犯人をあぶり出そうとするが、長引く咳の後に謎の死を遂げ、手元にあった家基の手袋は持ち去られている。
- 松平康福(まつだいら やすよし)
- 演:相島一之
- 江戸幕府老中。
- 日和見主義者で武元が老中首座を務めていた際、老中の会議においては自身の考えを述べずに武元に同調していた。その後家基と武元が相次いで急死した際は意次の仕業ではないかと噂していたが、意次が力を持つと田沼派となる[53]。
- のちに老中首座となるが[54]、浅間山噴火後の米価高騰に対して危機感のない発言をし、対応を意次に任せきりにする。その中で意次が追い込まれていくと、自身が巻き添えになることを恐れて意次を切り捨てにかかり、老中辞職を促す。しかし、意次の辞職後も事態が収束せず、御三家が出張ってくると戦々恐々としながらも対抗し、意次の進言に従って政務をおこなおうとする。しかし意次は完全に失脚してしまい、定信が老中首座となってしばらくすると幕閣からは姿を消す。
- 松平輝高(まつだいら てるたか)
- 演:松下哲
- 江戸幕府老中。
- 康福と同じく政策面において武元に同調し、家基と武元が急死した際は意次の仕業ではないかと噂する。浅間山噴火の頃にはすでに幕閣から姿を消している。
- 水野忠友(みずの ただとも)
- 演:小松和重[27]
- 江戸幕府老中。田沼派の幕閣の一人[53]。武家官位は出羽守。
- 天明期に幕閣に加わるが、康福と同じく浅間山噴火後の米価高騰に対して危機感のない発言をする。康福が意次の切り捨てにかかると、戸惑いながらも康福と行動をともにする。しかし、御三家が出張ってくると康福とともにそれに対抗し、政務復帰を目指す意次に協力する。しかし意次の復帰は果たせず、定信が老中首座となってしばらくすると幕閣からは姿を消す。
- 阿部正倫(あべ まさとも)
- 演:須田邦裕[51]
- 江戸幕府老中。田沼派の一人であり、定信の老中就任を防ぐために意次の策によって老中に就任する。しかし定信の老中就任は阻めず、しばらくすると幕閣から姿を消す。
- 牧野貞長(まきの さだなが)
- 演:大鷹明良[38]
- 江戸幕府老中。定信政権下で幕閣が一新されたあとも老中を続投する。
- 松平定信(まつだいら さだのぶ)
- (田安賢丸 → 松平定信)
- 演:井上祐貴[55](幼少期:寺田心)
- 白河藩世子のちに当主。江戸幕府老中首座。家斉が成人するまでの将軍補佐を兼任する。田安家の出身で治察の異母弟。田安家にいた頃の名は賢丸(まさまる)。白河藩に養子入りした後は、「白河様(しらかわさま)」とも称される。武家官位は越中守。
- 勤勉で高潔、理想が高い完璧主義者。幼い頃から聡明と評判になっており、自身も強く自負している。祖父である徳川吉宗を尊敬し、その血筋であることを誇りとしている。武士は学問・武芸が第一という考えを持ち、生真面目な性格で治済の冗談にも正面から反論する。幕政に関わり始めてからは「吉宗の孫」という自己プロデュースに熱心で、吉宗を意識した木綿の着物を着て初登城したことから、高岳には「木綿小僧(もめんこぞう)」と揶揄される。また、意次らには「癇癪小僧(かんしゃくこぞう)」、重三郎や耕書堂関係者からは田沼派の業績を横取りしたとして「ふんどし」「ふんどしの守」と呼ばれる。「私(わたくし)」という堅苦しい一人称を使う。
- 田安家先代の頃から白河松平家への養子入りの打診があり、難色を示していたが、「兄・治察に万一があれば田安家に戻れること」を条件に受け入れる。しかし治察の急死後、田安家に戻り跡を継ぐことを意次により断念させられ、意次を激しく憎むこととなる。松平武元を味方につけ、嫡母・宝蓮院とともに家基と知保の方に近づき、養子入りのあとも自身が将軍家に対して影響力を維持できるように目論む。そして妹・種姫を家基の御台所とすること前提に家治の養女としてから田安家を去る。家基が急死すると種姫を次代の御台所に留めようと動くが、豊千代が将軍家世子に選ばれたことで許嫁の茂姫が御台所に選ばれ種姫は外される。そして家基と武元の急死を含めこれら全ては意次の陰謀によるものと思い込み恨みを募らせる。
- 白河藩主となってからは天明の大飢饉下でも領内に餓死者を出さなかった手腕が評価され、治済の誘いで幕政に関わることを志す。将来的に田安家を再興することを治済に約束してもらった上で田安家を取り潰し、賄料の10万石を返上することを条件に家格を上げてもらい、溜間詰の大名として政策に意見できる立場になると、意次の政策を事細かに詰問し意次を困らせる。倹約のため黒ごまをまぶした握り飯を弁当として持参しており、これにちなんで反田沼派閥「黒ごまむすびの会」を形成し、その構成員たちとの親交を深める。
- 治済の工作により老中への登用が決まるが、首座でなければ引き受けないと主張したため、若干30歳で老中首座に大抜擢される。その血筋と白河時代の評判に加え、読売や忍びを使っての情報操作をおこなったこともあって民衆からは熱烈に歓迎される。田沼派の幕臣を粛清し、田沼時代の奢侈に憧れる風潮を「田沼病」と糾弾して倹約令や文武奨励を推し進める。しかし、周囲は自身のように勤勉な者ばかりではなく、『鸚鵡言』などを執筆して自身の考えを広めようとしても皆に正しく理解されるわけでもなく、思い通りに改革は進まないという現実に直面する。
- 白河藩世子として家臣らの指導に励んでいた頃、『金々先生栄花夢』を読んでいた家臣を窘めるもそれをきっかけに黄表紙のファンになる。耕書堂の戯作者たちや重三郎を「神」のように信奉しており、『文武二道万石通』は自身の文武奨励を評価してくれていると解釈して喜ぶ。しかし翌年『鸚鵡返文武二道』を読んで自身の文武奨励政策が揶揄されていると理解し、これらを絶版処分にする。さらに自身の蝦夷地政策などが田沼時代のものをそのまま踏襲していることを指摘され、『悦贔屓蝦夷押領』ではそれがネタにされていることを教えられると激怒し、作者の春町を呼び出そうとするが、春町はそれを理由に切腹してしまう。
- 水野為長(みずの ためなが)[注釈 12]
- 演:園田祥太
- 白河藩松平家家臣。
- 定信が白河藩世子であったころ、密かに『金々先生栄花夢』を読んで定信に窘められるが、それが定信を黄表紙好きにするきっかけとなる。定信が幕政に参加し始める頃には腹心として常に近侍しており、江戸の世情や定信の評判を調査したり、文武に優れたものをまとめて報告したりするなど定信を補佐する。
- 服部半蔵(はっとり はんぞう)
- 演:有吉弘行[58]
- 白河藩松平家家臣。白河小峰城の定信に、江戸からの知らせとして打ちこわしが鎮まったことを報告する。
- 松平信明(まつだいら のぶあきら)
- 演:福山翔大
- 江戸幕府老中。吉田藩主。田沼時代に定信が形成した反田沼派閥「黒ごまむすびの会」の構成員の一人。定信の文武奨励を揶揄する狂歌を詠んだ疑いで南畝が呼び出された際、忠籌とともに尋問する。その後老中に出世し、定信の政治を支える。
幕臣とその関係者
- 長谷川平蔵宣以(はせがわ へいぞう のぶため)
- 演:中村隼人
- 旗本。明和の大火の放火犯を検挙した火付盗賊改方・長谷川平蔵宣雄の息子。のちに「鬼平」と称される。端整な容姿をしており、自身でも「男前」と認識している。
- 当主になって間もなく訪れた吉原で、花魁道中をしていた花の井に一目ぼれする。吉原を利用する際は通を装ってわざとシケを垂らし、格好つけてそれを吹く仕草を頻繁にする。遊び人であったが吉原のことは何も知らず、重三郎に「世間知らずのカモ」として利用される。花の井との初会から豪遊し、入銀本のために五十両を支払うなどして家産が尽き、吉原通いを止めざるをえなくなる。
- 御書院番士の役目を得て西の丸の進物番にも選ばれるが性に合わず、奉行所への異動を望んで顔を売るために仕事を手伝っており鱗形屋の逮捕にも関わる。その際に鱗形屋を見殺しにしたことに悩む重三郎の背中を押す言葉をかける。また、意次にも外向きの役目への配置換えを訴え、まずは働きを見せるように要求されたために、座頭金の調査などに関わる。意次には働きを評価されるが結局は異動も出世も果たせず、土山宗次郎を通じて田沼派に取り入ることを目論み狂歌を始める。その甲斐あってか御先手組弓頭の役目を得る。打ちこわしでは死傷者が出るまでに至ったため、暴徒鎮圧のため市中に投入され、重三郎を殺そうとしていた治済の手先を討ち取る。
- 磯八(いそはち)、仙太(せんた)
- 演:山口祥行(磯八)、岩男海史(仙太)
- 長谷川平蔵の腰巾着で、岡場所や吉原に同行するが、吉原では平蔵の威を借りて傍若無人に振る舞う。平蔵の指示で座頭金の調査や、利根川決壊後の市中の見回りなどもおこなう。
- 横山(よこやま)、縦川(たてかわ)
- 演:久保勝史(横山)、杉宮匡紀(縦川)
- 長谷川平蔵の同僚。平蔵とともに土山邸の宴会に自分たちを売り込みに行ったことがある。打ちこわしが起きた際は、江戸城内からそれを見て祭りと勘違いする。
- 佐野政言(さの まさこと)
- 演:矢本悠馬
- 旗本。通称は善左衛門(ぜんざえもん)。幼名は源之助(げんのすけ)。番町の桜の木で有名な屋敷に住む。
- 親孝行で誠実な青年だが、不器用で処世術が拙く出世の糸口が掴めず焦っている。
- 9人の姉の後に漸く生まれた男子として父・政豊の期待を一身に受け、佐野家の由緒を聞かされながら育つ。出世を目論んで意知に面会し、かつて田沼家の主家であった佐野家の系図を渡し、田沼家の由緒改竄に利用するよう申し出る。その後も意知を通じて桜の木を贈るなどするが、意次との面会は叶わず、家系図は意次により庭の池に投げ捨てられ、桜の木は寺に寄進されるなど無下に扱われる。
- のちに本丸の新番士の役目を得て、そこで知り合った長谷川平蔵に誘われて自身を土山宗次郎に売り込みにいこうとするも、何もできずに終わる。家では耄碌した父の面倒を献身的に看るが、名門の家に見合う出世ができていないことを咎めるような言葉をかけられ続け疲弊していく。
- 意知の推挙により将軍の狩りのお供を務めるが、矢で射止めたはずの獲物が見つからずに恥をかく。後日屋敷を訪ねてきた男(治済の手先)から自身の矢が刺さった獲物が意知によって隠されていたと告げられ、さらに意知が私腹を肥やして吉原通いをしているという噂を城内で聞いて不信感を募らせる。佐野家自慢の桜が寿命を迎えて花を咲かせなくなったことに怒り狂う父に手をこまねいていたところ、再び屋敷を訪れた男から意知に渡した系図が処分されていたこと、そして贈った桜が寺に寄進され「田沼の桜」として咲き誇り評判になっていることを聞いたことで意知への憎悪をたぎらせ、殿中で意知に切りつける。その傷が元で意知が死去したため切腹に処される。死後まもなくして米価が下がったため庶民から「佐野世直し大明神」と崇められるようになる。
- 佐野政豊(さの まさとよ)
- 演:吉見一豊
- 政言の父。
- 老齢のため耄碌の症状が出ており、政言に面倒を看てもらっている。佐野家の由緒と綱吉公から賜った桜を誇りとしており、一人息子の栄達を望む。耄碌してからもこれらに強い執着を見せ、その言動で意図せず政言を追い込んでいく。
- 土山宗次郎(つちやま そうじろう)
- 演:栁俊太郎
- 勘定組頭にして南畝の贔屓筋。狂名は「軽少ならん(けいしょうならん)」。
- 田沼派官僚の一人で羽振りがよく、木網連の宴会の費用をすべて持ったり、屋敷の酔月楼で大規模な宴会を催したりするなど、350俵取りの組頭という本来の身上に合わない派手な暮らしをしている。蝦夷通で、意知が松前藩からの上知策を考える上での参謀役となる。吉原では誰袖を敵娼としていたが、誰袖が意知の意を受けて働くようになると誰袖の元に通うのを止める。しかしのちに意知の代理で誰袖を身請けすることになる。意次が失脚すると連座してお役替えとなる。さらに田沼時代の不正役人の摘発が決まると逐電するが捕らえられ、公金横領の罪で斬首刑に処される。
- 松本秀持(まつもと ひでもち)
- 演:吉沢悠
- 勘定吟味役。田沼派官僚の一人。土山宗次郎の上役。
- 有能な経済官僚で、意次の側近として活躍するが、意次が失脚すると連座してお役御免となる。土山が斬首刑になると監督不行届として100石を没収の上、逼塞となる。
- 稲葉正明(いなば まさあき)
- 演:木全隆浩
- 御用取次。田沼派官僚の一人。
- 本多忠籌(ほんだ ただかず)
- 演:矢島健一[59]
- 若年寄[60]。定信の文武奨励を揶揄する狂歌を詠んだ疑いで南畝を呼び出し、尋問する。定信の改革を支えるが、家老が賄を受け取ったことで定信に叱責される。その際、余裕のない武士にとって賄はインセンティブとなっている面があるという現実を教え、定信を諫めるために『鸚鵡返文武二道』を読ませる。
- 森忠右衛門(もり ちゅうえもん)
- 演:日野陽仁
- 西の丸小姓組。
- 質素倹約を重んじる真面目な旗本だが、20年間禄が変わらず、息子・震太郎も役目を得られず部屋住みのまま妻子を持ったため、家族を養いきれなくなり、座頭金に手を出す。借金がふくらみ、西の丸で窃盗騒ぎを起こし、切腹しようとするまで追いつめられるが、息子に止められ一家で逐電、出家する。その後意次によって父子ともに身柄を保護され、家治と家基の御前で経緯の説明を行う。
- 森震太郎(もり しんたろう)
- 演:永澤洋
- 森忠右衛門の嫡男。
- 自身のために父が借金し、切腹するまで追いつめられたことを知り、必死になって父を止めて共に逐電、出家する。
- 奉行[注釈 13]
- 演:井上和彦
- 町奉行。
- 神田に屋敷を買おうとして阻まれたことで訴え出てきた大文字屋市兵衛に対し、「吉原者は四民の外」であり今後見附内に土地を買ってはならないという沙汰を下す。鳥山検校と瀬川の裁きも担当し、瀬川には温情な措置を命じる。
- 曲淵景漸(まがりぶち かげつぐ)
- 演:平田広明[38]
- 北町奉行。市中で打ちこわしが起きると幕閣たちに報告し、その対応を命じられる。
- 与力、同心
- 演:水野智則(与力)、実近順次(同心)
- お救い米が予告通りに配布されなかった際に、奉行所の前に押しかけた民衆たちに対応した与力と同心。打ちこわしが起こると取締まりに赴くが、太平の世が続いたため実力行使に慣れておらず、加えて治済の手先による扇動のため乱闘沙汰に発展してしまう。
その他の幕府関係者
大名家とその関係者
御三家・御三卿
- 一橋治済(ひとつばし はるさだ)
- 演:生田斗真
- 一橋家当主。徳川家治の従兄弟。島津重豪や松前道廣など外様大名とは仲が良く、重豪とは子ども同士で縁組もしている。飄々とした人物であるが、実像は権謀術数に長けた野心家で、様々な政局の裏側で陰謀を張り巡らせる。
- 趣味の傀儡を得意とし「傀儡師にでもなろうか」と冗談を飛ばし賢丸(定信)にたしなめられたことがある。のちには能楽に嵌り、倹約令の最中に派手な装束を用い、定信に苦言を呈されるも意に介さず、煙に巻いている。将軍家や御三家、他の御三卿が男児に恵まれない中で唯一の子だくさんで、嫡男の豊千代を筆頭に庸姫、治国、斉隆、斉匡ら多くの子を儲けている。
- 田沼意次とは共に傀儡を披露するなど交流が深く、意次の甥・意致を自家の家老として受け入れており、表向きには親しげに接する。しかし裏では大崎や手先(丈右衛門だった男)を遣って意次の権威失墜を図り、のちにその動きを察知されて「白天狗(しろてんぐ)」と警戒されるようになる。
- 将軍職に興味がない振りをしながらも、嫡男・豊千代(家斉)に将軍職を継がせるため邪魔となる存在を悉く排除したことが示唆されており、家基と武元の死に関わった手袋を保管していた。また平賀源内が家基の急死を調査し「死を呼ぶ手袋」の戯作を執筆しようとすると、手先を使って源内を陥れ獄死させており、現場から消えた戯作の草稿でサツマイモを焼いていた。家治も相次ぐ不審死事件の黒幕であるとみている。
- 豊千代(家斉)が家治の養子に迎えられ将軍家世子となると、実父として幕政にも影響力を行使するようになる。ただし政治信条は皆無であり、「将軍の座をも決する天となり将軍の無価値を嘲笑う」ことが目的だと家治から推察されている。
- 田沼親子に陥れられそうになった松前道廣、廣年兄弟が自身を頼ってくると助力を決め、城内で見かけた佐野政言に目を付けると手先を使って政言の猜疑心を煽り、意知を殺害させる。続いて大崎を使って家治に毒を盛り殺害する。さらに意次に恨みを持つ松平定信を幕政に引き入れると、御三家を味方につけて定信を老中に就任させようとする。しかし、意次が粘り強く再起を図ると、自ら物乞いの恰好をして手先とともに市中に出て、米価高騰に怒る民衆たちを扇動し打ちこわしを引き起こす。
- 丈右衛門だった男(じょうえもんだったおとこ)
- (丈右衛門 → 丈右衛門だった男)
- 演:矢野聖人
- 一橋治済の陰謀の実行役を務める素性不明の男。初登場時に「丈右衛門(じょうえもん)」と名乗るも偽名であり、本名も不詳。凄腕の刺客であり、大工や浪人の風体を装うこともある。
- 旗本の用人を自称して源内の前に現れ、意次からの紹介を装って屋敷普請の設計を依頼する。しかし普請は架空のものであり、久五郎から与えられた煙草で源内が狂人のようになったところで久五郎を殺害してその罪を源内に着せ、彼の竹光と草稿を奪って姿を消す。
- 後に政言の屋敷に現れた時には、自身の名を言えない善意の注進として、狩場で意知が政言の獲物を隠したと伝え、隠されたという獲物と矢を渡す。その後も政言を訪ね、佐野家が綱吉公から賜った桜の木が老齢の為花を咲かせなくなった事を聞くと、「田沼の桜」の話をして政言の憎悪を煽る。意知が政言により殺され政言も切腹を遂げると、意知の葬列に最初に石を投げて見物人たちを煽って石を投げさせ、政言が葬られた寺には「佐野世直し大明神墓所」の幟を立てて参拝を促すことで、世間で意知が貶められ政言が崇められるよう仕向ける。しかしその存在を重三郎に認知され、重三郎からの通告を受けた意次らに警戒されるようになる。
- 米価高騰により民衆の怒りが高まると、治済とともに奉行所の前で芝居を打ち、民衆を扇動して打ちこわしの機運を高める。さらに打ちこわしの混乱に紛れて周囲を唆して盗みを働かせ、現場にやってきた与力や同心を挑発して乱闘を引き起こすが、重三郎がお救い銀の知らせをもたらしたことで打ちこわしは鎮静化されてしまう。重三郎を始末しようと毒を塗った匕首で襲い掛かろうとするが、新之助が割って入ったことにより失敗し、なおも重三郎に迫ろうとして長谷川平蔵が放った矢により死亡する。
- 田安治察(たやす はるあき)
- 演:入江甚儀
- 田安家当主。徳川家治の従兄弟。
- 弟・賢丸の養子縁組が決まった直後、後継ぎを残すことなく、長引く咳の後に謎の死を遂げる。
- 宝蓮院(ほうれんいん)
- 演:花總まり
- 治察の母。賢丸(定信)と種姫の嫡母にあたり、2人を我が子同様に育てる。出身は五摂家の近衛家。
- 意次の策謀で賢丸が白河藩に養子に出された際は激怒し、意次を罵る。その後治察が急死すると田安家が絶えることを恐れ、西の丸に出入りして知保の方や家基に近づき、賢丸とも連携して田安家が影響力を維持できるように図る。しかし、種姫が御台所から外されるなど目論見は外れ、大崎からそれらが全て意次の仕業と聞いたことで意次への恨みを募らせ、「いつか天罰が下る」と吐き捨て西の丸を去る。
- 治察の死後は田安家当主をつとめるが、定信が幕政に乗り出した頃には体調を崩しており、田安家存続の危機にあることが語られている。
- 種姫(たねひめ)
- 演:小田愛結
- 治察の異母妹で賢丸の同母妹。
- 賢丸の策により、将来的に家基に嫁ぐことを前提に家治の養女となり、大奥に入る。家基が急死し家治が新たに子を儲けようとすると宙に浮いた立場となるが、宝蓮院と定信、知保の方の訴えにより、家治は種姫に年が釣り合う養子を取り、種姫を御台所にすることに決める。しかし養子に豊千代が選ばれると、将来の御台所として茂姫が選ばれ、自身は紀州徳川家への嫁入りが決まる。
- 清水重好(しみず しげよし)
- 演:落合モトキ
- 清水家当主。徳川家治の弟。
- 家基が亡くなった後に将軍の世子になる話を打診されるが断る。
- 徳川治貞(とくがわ はるさだ)
- 演:高橋英樹[25]
- 紀州藩主。武家官位は権中納言で、通称は「中納言様(ちゅうなごんさま)」。
- 紀州家は田沼家の旧主にあたり、田沼意次にとっては頭の上がらない存在である。
- 米不足と米価高騰に手をこまねく意次を叱責し、ただちに米値を下げる策を打つように圧をかける。意次の老中辞職後も責任を追及し、後任の老中として松平定信を推挙する。治済とは当初協力関係にあったが、彼の不遜な態度に腹を立てて叱責し、「治済を将軍後見から外し定信を後見とする」という意次の進言に耳を傾ける。
- 定信政権下でもご意見番のような存在となり、蝦夷地をめぐって定信と治済が対立すると定信の肩を持つ。
- 徳川治保(とくがわ はるもり)
- 演:奥野瑛太[51]
- 水戸藩主。治貞とともに意次への追罰を求め、定信を老中に推挙する。その後も御三家として意見を出すなど幕政に影響力を持つ。
- 徳川宗睦(とくがわ むねちか)
- 演:榎木孝明[51]
- 尾張藩主。治貞とともに意次への追罰を求め、定信を老中に推挙する。その後も御三家として意見を出すなど幕政に影響力を持つ。
その他の大名家
- 松平信義(まつだいら のぶのり)
- 演:林家正蔵[59]
- 小島藩主。春町の主君。
- 目立った産品が無い小藩にあって、人気作家である春町のことを密かな自慢としており、職務中に春町が案思を考えていても咎めず優しい言葉をかける。定信の政については志の高さを評価しつつも、それが武士たちには伝わっていないことを懸念する。
- 春町が定信の呼出しを受け、死を装って別人として生きることを決意すると、定信に対応し時間を稼ぐことを快諾する。しかし定信の追及を躱しきれず、自身のことを気にせず逐電するよう春町に勧めるが、春町はこれ以上の迷惑をかけられないと自害してしまう。
- 斎藤茂右衛門(さいとう もえもん)
- 演:蔵本康文
- 小島松平家江戸家老。
- 鱗形屋の偽板づくりに手を貸して藩の資金源としていたものの、捜査の手が及びそうになると手を引き、すべての責任を鱗形屋に押し付ける。
- 島津重豪(しまづ しげひで)
- 演:田中幸太朗
- 薩摩藩主。蘭癖であることを自認し、オランダ語を諳んじたり、治済や意次に葡萄酒を勧める。娘・茂姫の許婚・豊千代の父である治済とは親交が深く、一緒に松前家の宴席にも参加している。
- 豊千代が将軍世子に選ばれ茂姫はその側室になると決まりそうになった際は、本心では全く問題ないと思っていたにも関わらず、治済の案に乗って渋っていることにし、茂姫を将来の御台所として幕府に受け入れさせる。
- 松前道廣(まつまえ みちひろ)
- 演:えなりかずき
- 松前藩主。武家官位は志摩守。
- 武芸に優れ、「遅れてきたもののふ」と評されるが、宴会の余興として、粗相をした家臣の妻を庭木に括りつけてその近くに的を設置し、火縄銃で撃って見せるなど残虐な一面を持つ。湊の証言によると家中を恐怖で従わせ、蝦夷の民には酷い仕打ちをするばかりかオロシャとの抜荷を行っており、湊には「北辺に巣くう鬼」と言われている。
- 廣年が吉原に通いそこで抜荷の打診をされていることを聞いて激昂するが、儲け話とみなして抜荷の話に乗る。しかし抜け目なく「越中屋」の名で取引をおこない、松前家に咎が及ばないように手配する。のちにこの取引が意次らの陰謀で自家から蝦夷地を上知する計画が進んでいると知ると、廣年とともに治済に助けを求める。
- 意次の失脚により上知を免れるが、のちにクナシリ・メナシの戦いが起き、非道な手段を用いて鎮圧したことが幕府に問題視される。その際に定信から上知案が出るが、治済の執り成しにより再び上知を免れている。
- 松前廣年(まつまえ ひろとし)
- 演:ひょうろく
- 松前藩江戸家老。道廣の弟。幼い頃から江戸で育ち、家老をしつつ絵を学ぶ。気が弱く、兄には逆らえない。容姿は意知により『画図百鬼夜行』のぬっぺっぽうに例えられている。
- 家老で藩主の弟でありながら自由に使える金は少なく、遊び慣れてもいない。出入りする商人の接待で吉原に来たところ、誰袖に目を付けられて手玉に取られ、オロシャとの抜荷で安く大量に琥珀を仕入れて欲しいとねだられる。抜荷はご法度でありその術も知らないと断るが、田沼一派の策により吉原通いを兄・道廣にばらされたため、抜荷の話も明かさざるを得なくなる。道廣が抜荷での儲け話に乗ったため抜荷をおこなうことになり、それ以降は大文字屋に強気で接するようになる。しかし、誰袖が夢中なのは自身ではなく花雲助であり、その正体は意知だと知って二人の企みに気が付き、蝦夷地の上知計画を止めるように道廣とともに治済に訴える。その後、国元に帰されて江戸を去る。
- 湊源左衛門(みなと げんざえもん)
- 演:信太昌之
- 松前藩の元勘定奉行。狂歌師の集まりへの参加時に名乗った狂名は「蝦夷の桜(えぞのさくら)」。
- 松前家に仕えていた頃に道廣からひどい目に遭わされており、土山の手引きで意知と接触した際に、松前から蝦夷地を上知するためならどんな労も厭わないと述べる。意知の意を受けて平秩東作とともに松前へ赴き、善吉の協力を得て勘定所から表帳簿と裏帳簿を持ち出すが、企みが松前藩側に露見して追われ、何者かに射殺される。
- 善吉(ぜんきち)
- 演:ガリベンズ矢野[27]
- 松前家の勘定所の下働き。
- 湊に協力し勘定所から表帳簿と裏帳簿を持ち出すが、企みが松前藩側に露見して追われ、何者かに刺殺される。
- 工藤平助(くどう へいすけ)
- 演:おかやまはじめ
- 仙台藩医。あらゆる人が集まる屋敷は「築地の梁山泊」と評されている。湊の助力を得て『赤蝦夷風説考』を著す。これに三浦が着目したことで接触され、さらに意知にも呼び出されて意見を求められる。
- 酒井忠以(さかい ただざね)
- 演:池田倫太朗[62]
- 溜間詰の大名。
- 佐竹義和(さたけ よしまさ)
- 演:二宮慶多
- 秋田藩主。喜三二の主君。
- 喜三二の『文武二道万石通』が絶版処分になった際、定信に呼び出されて叱責を受けたことで、喜三二の執筆活動と吉原での豪遊を知り、喜三二を叱責して断筆を決意させる。
その他
- 九郎助稲荷(くろすけいなり)
- 演:綾瀬はるか
- 本作の語り手。現代的な観点からの解説も交えつつ物語を案内する。第1回、第17回では人間の姿に化けて登場し、スマートフォンを用いて解説や自撮りを行った。
- 吉原内にあった稲荷社のうちの一社で、女郎たちの信仰を集めており、重三郎も事あるごとに願掛けをしている。明和の大火では、重三郎が稲荷社の祠を背負って運び出し、狐像をいったんお歯黒どぶに沈めたことで難を逃れている。また、社は重三郎と花の井の思い出の場所であり、たびたび待ち合わせに使われる。
- 重三郎の話を聞いて返答することがあり、感情豊かに罵倒したり、つっこみを入れたりしたこともあるが、重三郎など人間たちには聞こえていない。
- 八五郎(はちごろう)、熊吉(くまきち)
- 演:阿部亮平(八五郎)、山根和馬(熊吉)
- 重三郎がアイデアを思いついた際の空想に現れる人物。役名は同じだが毎回役柄は異なっている[63][64]。
登場予定の人物
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スタッフ
- 脚本:森下佳子、三谷昌登[注釈 1]
- 音楽:ジョン・グラム
- 語り:綾瀬はるか
- テーマ音楽「Glorious Edo」
- 音楽プロデューサー:備耕庸
- タイトルバック:TAKCOM
- 題字:石川九楊
- 副音声解説:宗方脩
- 制作統括:藤並英樹、石村将太
- プロデューサー:松田恭典、藤原敬久、積田有希、美濃里亜
- VFXプロデューサー:角田春奈、本多冬人
- 演出:大原拓、深川貴志、小谷高義、新田真三、大嶋慧介[65]、寺井純玲
- 時代考証:山村竜也
- 版元考証:鈴木俊幸
- 戯作考証:棚橋正博
- 風俗考証:佐多芳彦
- 吉原風俗考証:山田順子
- 近世美術史考証:松嶋雅人
- 古文書考証:大石泰史
- 医事考証:若尾みき
- 建築考証:三浦正幸
- 浮世絵考証:浅野秀剛
- 江戸糸あやつり人形考証:両川船遊
- 衣装デザイン:伊藤佐智子
- 九郎助稲荷メイクデザイン:UDA
- 江戸糸あやつり人形指導:結城孫三郎
- 所作指導:花柳寿楽
- 殺陣武術指導:鎌田栄治
- 馬術指導:田中光法
- 芸能指導:友吉鶴心
- 書道指導:金敷駸房
- 茶道/料理/華道指導:井関脩智
- 医事指導:刈谷育子
- 浮世絵指導:向井大祐、松原亜実
- 版画指導:中山周
- 版本指導:早光照子
- 算盤指導:太田敏幸
- 将棋指導:堀口弘治
- 江戸ことば指導:柳亭左龍
- 秩父ことば指導:千葉誠太郎
- 廓ことば指導:園英子
- 京ことば指導:三谷昌登
- 遠州ことば指導:小杉幸彦
- アクション指導:中村健人
- 太鼓指導:山部泰嗣
- 三味線指導:清元斎寿、吉永真奈
- 鷹狩指導:藤田征宏
- わら細工指導:中島安啓
- オランダ語指導:REBEL
- 呪術指導:高橋圭也
- 鍼灸指導:井田剛人
- 能楽指導:辰巳大二郎
- 裁縫指導:小林操子
- インティマシーコーディネーター:浅田智穂
- 撮影協力:アダチ版画研究所、つくばみらい市、さいたま市、京都市、京丹波町、長岡京市、美濃市、古河市、豊橋市、豊川市、犬山市、水戸市、那珂市、日光市、矢板市、塩谷町、光明寺、円覚寺、随心院、智積院、東本願寺、輪王寺、洲原神社、生駒神社、日本体育大学相撲部、栃木県フィルムコミッション、日本美術刀剣保存協会
- 資料提供:平賀源内記念館、牧之原市史料館、東京都公文書館、相撲博物館、東京大学総合図書館、国立アイヌ民族博物館、浅間縄文ミュージアム、大東急記念文庫、白河市歴史民俗資料館、千葉市美術館、栗山記念館、本居宣長記念館、国際日本文化研究センター、増上寺、浜島典彦、近松誉、井上研一郎、細川晋輔、日暮晃一
出典:[66]
紀行
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放送
放送時間
ダイジェスト
放送日程
- 初回は15分拡大[68]。
- 視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム。
放送時間変更・休止
- 4月27日は休止となり、スペシャル番組を放送[70]。
- 6月22日は東京都議会議員選挙開票速報放送のため、総合のみ19時14分から放送[71]。
- 7月20日は総合にて第27回参議院議員通常選挙開票速報放送のため、休止[72][73]。
- 10月4日(再放送)は総合にて2025年自由民主党総裁選挙放送のため、15時35分からの放送を予定している[74]。
再放送枠以外での再放送
関連番組
テレビ
- 50ボイス べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~「あなたのべらぼうは?」(NHK総合:2025年1月1日)
- 謎解き!ヒミツの至宝さん~蔦屋重三郎の浮世絵~(NHK BS8K:2025年1月1日、NHK総合:同年4月29日)
- 英雄たちの選択(NHK BS)
- スペシャル「大江戸エンタメ革命~実録・蔦屋重三郎~」(2025年1月1日)
- 江戸を駆けたマルチクリエイター 平賀源内(同年2月10日)
- 先人たちの底力 知恵泉 新春スペシャル「出版1300年 文化はかくして生まれた」(NHK Eテレ:2025年1月1日)
- 大河ドラマ「べらぼう」見て頂戴スペシャル(NHK総合:2025年1月3日) - 出演は小芝風花・風間俊介・眞島秀和
- 歴史サミット「大江戸ルネサンスサミット2025~なぜ江戸は世界的な文化都市になったのか?~」(NHK BS:2025年1月3日)
- 浮世絵EDO-LIFE(NHK Eテレ:2025年1月4日から毎週[注釈 16])
- 漫画家イエナガの複雑社会を超定義 大河ドラマSPコラボ!クリエイターエコノミー(NHK総合:2025年1月18日) - ゲスト出演は愛希れいか
- 土スタ(NHK総合)
- 「べらぼう」特集(2025年1月25日) - ゲスト出演は横浜流星
- 「べらぼう」特集(同年3月8日) - ゲスト出演は井之脇海・小野花梨
- 「べらぼう」特集(同年6月28日) - ゲスト出演は伊藤淳史
- 「べらぼう」特集(同年7月26日) - ゲスト出演は橋本愛
- 「べらぼう」特集in千代田区(同年8月30日) - ゲスト出演は生田斗真
- 浮世絵ミステリー 「べらぼう」コラボ 歌麿と蔦屋重三郎“革命”と“抵抗”の謎(NHK BSプレミアム4K:2025年1月25日、NHK BS:同年2月1日・5月18日・6月8日) - ゲスト出演は染谷将太
- べらぼうトークショーin台東区(NHK総合:2025年2月6日) - 出演は横浜流星・小芝風花・愛希れいか・渡邉斗翔・中村蒼
- 将棋フォーカス 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」コラボ(NHK Eテレ:2025年2月9日)
- たたかう蔦屋重三郎 いざ!三本勝負(NHK BSプレミアム4K:2025年2月9日、NHK総合:同年5月4日) - ゲスト出演は高橋克実・山村紅葉・高梨臨
- まだ間に合う!大河ドラマべらぼう(NHK総合:2025年2月11日、NHK BS:同年2月14日)[77]
- プライムふくしま 寺田心の白河紀行(NHK総合(福島県域):2025年2月21日) - 出演は寺田心、ナレーションは花總まり
- 大河ドラマ「べらぼう」スペシャルトークin横浜(NHK総合:2025年3月9日) - ゲスト出演は井之脇海・小野花梨・久保田紗友
- さぬきドキっ!「安田顕とめぐる平賀源内ふるさと旅」(NHK総合(香川県域):2025年3月14日、NHK総合:同年4月14日) - 出演は安田顕、ナレーションは高橋克実
- 歴史探偵(NHK総合)
- べらぼうコラボスペシャル よみがえる大江戸(2025年3月19日) - ゲスト出演は水野美紀・風間俊介
- 江戸の仕事人たち(同年5月7日)
- 江戸グルメ(同年7月2日)
- べらぼうコラボスペシャル 田沼意知vs松平定信(同年8月20日) - ゲスト出演は眞島秀和・井上祐貴・寺田心・中村隼人
- NHKドラマティックトークショー&スペシャルツアー 放送100年in茨城「べらぼう」出演者と語るドラマの世界(NHK総合(茨城県域):2025年3月22日、NHK総合:同年4月10日) - ゲスト出演は愛希れいか・木村了
- べらぼうな花たち 一目千本(NHK Eテレ:2025年3月24日)
- 100カメ×大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合:2025年3月28日)
- 完全版(NHK BS:2025年5月10日・5月24日、NHK総合:同年5月12日・6月1日)
- べらぼうファンミーティング(NHK BSプレミアム4K:2025年3月30日、NHK総合:同年4月12日) - 出演は風間俊介・水野美紀・中村隼人・安田顕・鉄拳
- 大河ドラマべらぼう ありがた山スペシャル(NHK BSプレミアム4K・NHK BS・NHK総合:2025年4月27日) - ゲスト出演は尾美としのり・水野美紀・中村蒼[70]
- 大河べらぼう 安田顕と源内のふるさとで語るトークイベント(NHK総合:2025年4月29日、NHK総合(香川県域):同年5月10日) - ゲスト出演は安田顕・藤並英樹(制作統括)
- イモヅル式に学ぼう!NHKラーニング「まなぼう」江戸を学べるプレイリスト(NHK Eテレ)
- #1 「吉原」(2025年5月8日) - ゲスト出演は中村隼人・山口祥行・岩男海史
- #2 「食」(同年5月10日) - ゲスト出演は林家三平・ジェームス小野田
- #3 「狂歌」(同年5月18日・5月25日) - ゲスト出演は林家三平・ジェームス小野田
- #4 「浮世絵」(同年6月22日) - ゲスト出演は正名僕蔵・前野朋哉
- #5 「江戸の防災」(同年7月20日) - ゲスト出演は正名僕蔵・前野朋哉
- 激突メシあがれ〜自作グルメ頂上決戦〜そば 大河ドラマ「べらぼう」コラボSP(NHK総合:2025年6月11日・8月12日) - ゲスト出演は山路和弘
- 「べらぼう」田沼親子 渡辺謙・宮沢氷魚が牧之原お国入り!(NHK総合(静岡県域):2025年6月20日、NHK総合:同年8月13日) - ゲスト出演は渡辺謙・宮沢氷魚・藤並英樹(制作統括)
- べらぼうな笑い 黄表紙・江戸の奇想天外物語!(NHK総合) - ナレーションは関智一・水樹奈々・山路和弘
- 『金々先生栄花夢』(2025年7月5日)
- 『無題記』(同年7月6日)
- 『御存商売物』(同年7月6日)
- 『江戸生艶気樺焼』(同年8月3日)
- 『文武二道万石通』(同年9月7日)
- 『鸚鵡返文武二道』(同年9月14日)
- 『箱入娘面屋人魚』(同年9月15日)
- 『心学早染草』(同年9月23日)
- 芸能きわみ堂 - 出演は高橋英樹
- 大河ドラマ連動! べらぼうな時代の芸能に迫る(Eテレ:2025年7月25日) - ゲスト出演は安達祐実
- 大河ドラマ連動! べらぼうな時代の浮世絵師たち(Eテレ:2025年10月3日) - ゲスト出演は前野朋哉
- 大河ドラマコンサート「べらぼう」ありがた山のコンサート(NHK総合:2025年8月3日)
- 有吉のお金発見 突撃!カネオくん べらぼう&豪華コラボ!花の都・江戸SP!(NHK総合:2025年8月24日) - ゲスト出演は高橋克実
- とちスペ 染谷将太のべらぼう語り 〜歌麿 栃木で裏噺〜 (NHK総合(栃木県域):2025年9月26日) - ゲスト出演は染谷将太
ラジオ
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ドラマ舞台地の誘致運動・反応
- 蔦重ゆかりの地(東京都台東区)
- 新吉原花園池(弁天池)跡
- 九郎助稲荷神社を合祀する
吉原神社 - 蔦重墓碑(浅草・正法寺)
- 2024年11月17 - 19日、日本橋プラザビルにおいて「べらぼう展」を開催。スチル写真のテイザービジュアルやデジタルサイネージでのダイジェスト映像上映に加え、当会場では撮影に協力する中央区 (東京都)の関連団体による衣装展示や浮世絵重ね刷りの実演と体験などが行われた[78][リンク切れ][79]。
- 2024年3月3日 - 2026年1月末(予定)、日本橋耕書堂跡に近い中央区のユニホームメーカー・ボンマックスが自社ビル1階のロビーを改修し、「蔦重通油町(とおりあぶらちょう)ギャラリー」を開設。江戸料理文化研究家の車浮代による解説パネルや、江戸小物の販売を行う。入場無料、土・日・祝休[80]。
- 2024年3月10日 - 未定まで『べらぼう』に関連する台東区・中央区を盛り上げる「耕書堂プロジェクト」を立ち上げ、蔦重・歌麿・写楽らを現代風のイケメンキャラ化。日本橋エリアでは、そのグッズなどをCOREDO室町1の日本橋案内所の一角に設けた「耕書堂においでなんし」で販売。上野エリアでは松坂屋上野店内の上野案内所でシャンシャン (ジャイアントパンダ)が蔦重の衣装を着たマスコットも販売。いずれも入場無料、営業はテナントビルの休業日に準じる[81]。
- 2024年12月23日 - 2025年1月24日、台東区役所のアートギャラリーにて、「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ パネル展in台東区」を開催[82]。
- 2025年1月6日 - 12月25日、日本橋耕書堂跡に近い中央区で創業200年を超す老舗呉服屋・和装用品の田源が自社ビル内に設けたイチマス田源きものクリニック&呉服問屋ミュージアム(中央区まちかど展示館認定)にて、耕書堂の店頭を原寸大立体再現。入場無料[83]。
- 2025年1月18日 - 2026年1月12日、吉原大門跡と吉原神社の中ほどにある千束四丁目交差点角に、蔦重が吉原で開業した貸本屋の耕書堂を模した観光案内所と土産物屋を兼ねた江戸新吉原耕書堂を開設。入場無料[84]。
- 2025年2月1日 - 2026年1月12日、東京都立産業貿易センター台東館のうち台東区民会館の9階ホールを「べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館」として開設し、土産物販売を行う「たいとう 江戸もの市」を併設している[86]。また、同期間中はドラマ館から法正寺(蔦重墓碑)、平賀源内墓所、江戸新吉原耕書堂、浅草見番を巡回する「蔦重ゆかりの地 循環バス」を運行する。めぐりんとは別車両別系統による20分間隔の運行で、ドラマ館の当日入場券があれば何度でも無料で乗車可能となっている[87]。
- 2025年2月7日 - 28日、東京都立中央図書館で、「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ パネル展at都立中央図書館」を開催。
- 2025年2月10日 - 3月2日、浅草の奥山おまいりまち商店街と浅草西参道商店街で、蔦重が携わった浮世絵などを大型のぼり旗や提灯化あるいは巨大床アートとして飾ったり、江戸のライブパフォーマンスを行う「浮世絵と歌舞伎まつり THE ASAKUSA」を開催[88]。
- 2025年4月22日 - 6月15日、東京国立博物館にて「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を開催。「附章」と題して大河ドラマで使用されたセットや小道具が展示された[90]。
- 2025年7月4日 - 7月6日、日本橋にある福徳の森にて「べらぼうフェスティバルin日本橋」が開催され、ドラマの世界観が体感できる大型展示や撮影用小道具、登場人物のキャストビジュアルバナーなどが展示された[91]。
- べらぼう展 - 衣装展示(主要キャスト以外)
- べらぼう展 - 浮世絵摺実演
- 『べらぼう』の台本(台東区役所にて)
- 耕書堂の店先復元(田源ビルにて)
- 江戸新吉原耕書堂
- 浮世絵と歌舞伎まつり 大提灯
- 浮世絵と歌舞伎まつり 路面アート
- 蔦重通油町ギャラリー
- 耕書堂においでなんし
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関連商品
サウンドトラック
- 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」オリジナル・サウンドトラック(日本コロムビア)
- vol.1(2025年2月5日、COCP-42437、EAN:4549767336558)
- vol.2(2025年6月25日、COCP-42503、EAN:4549767346366)
書籍
- 公式ガイドブック
- NHK大河ドラマ・ガイド べらぼう(NHK出版)
- 前編(2024年12月19日発売、ISBN 978-4149233987)[注釈 17]
- 後編(2025年5月22日発売、ISBN 978-4149233994)
- 完結編(2025年9月30日発売予定)
- NHK大河ドラマ歴史ハンドブック べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 蔦屋重三郎とその時代(NHK出版、2024年11月29日発売、ISBN 978-4149112053)
- NHK大河ドラマ・ガイド べらぼう(NHK出版)
- ガイドブック
- NHK2025年大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」完全読本(NIKKO MOOK)(産経新聞出版、2024年12月19日発売、ISBN 978-4819153317)
- NHK2025年大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」TVガイドMOOK(東京ニュース通信社
- THE BOOK 1(2024年12月19日発売、ISBN 978-4867019443)
- THE BOOK 2(2025年5月22日発売、ISBN 978-4867019955)
- 初めての大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」歴史おもしろBOOK(小学館、2024年12月19日発売、ISBN 978-4098022021)
- 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」蔦屋重三郎とその時代(TJMOOK)(宝島社、2024年12月19日発売、ISBN 978-4299058317)
- ノベライズ
- べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 一(2024年12月19日発売、ISBN 978-4140057506)
- べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 二(2025年3月25日発売、ISBN 978-4140057513)
- べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 三(2025年7月25日発売、ISBN 978-4140057520)
DVD/BD
- NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」完全版 DVD/BD-BOX
- 第壱集(第一回 - 第十六回、2025年8月1日発売)
- 第弐集(第十七回 - 、2025年11月21日発売予定)
- 第参集(2026年3月27日発売予定)
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脚注
参考文献
外部リンク
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