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日本のテレビドラマ ウィキペディアから
『江戸川乱歩の美女シリーズ』(えどがわらんぽのびじょシリーズ)は、1977年から1994年までテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で17年間放送されたテレビドラマシリーズ。
江戸川乱歩の美女シリーズ | |
---|---|
ジャンル | テレビドラマ |
原作 | 江戸川乱歩 |
出演者 |
明智小五郎 役 天知茂 北大路欣也 西郷輝彦 |
製作 | |
制作 | テレビ朝日 |
放送 | |
放送国・地域 | 日本 |
天知茂版 | |
オープニング | 歴代オープニングを参照 |
放送期間 | 1977年8月20日 - 1985年8月3日 |
放送時間 | 土曜 21:02 - 22:24(第7話以前) 土曜 21:02 - 22:51(第8話以降) (但し、特別版として第6話、第20話は各30分、第17話は60分延長) |
放送枠 | 土曜ワイド劇場 |
回数 | 25 |
北大路欣也版 | |
オープニング | 歴代オープニングを参照 |
放送期間 | 1986年7月5日 - 1990年4月14日 |
放送時間 | 土曜 21:02 - 22:51 |
放送枠 | 土曜ワイド劇場 |
放送分 | 109分 |
回数 | 6 |
西郷輝彦版 | |
オープニング | 歴代オープニングを参照 |
放送期間 | 1992年7月4日 - 1994年1月8日 |
放送時間 | 土曜 21:02 - 22:51 |
放送枠 | 土曜ワイド劇場 |
放送分 | 109分 |
回数 | 2 |
本作は、大人の視聴者をターゲットに据え、江戸川乱歩の作品を現代風にアレンジしたテレビドラマのシリーズである。
本作は名探偵・明智小五郎を主役としているが、原作となる作品の中には、「魅せられた美女」(原作:『十字路』)のように、明智シリーズとは無関係の作品を基にしている場合もある[1]。
本作では、トップ女優の官能的な演技とヌード[注 1]、中盤でのカーチェイス、物語終盤に死亡したかと思われていた名探偵・明智小五郎が、別人物に成りすまして登場し、犯人の前で変装を解く場面[注 2]、悲劇的なラストシーンが恒例となっている。
天知茂が明智に扮して1977年から死去する1985年まで25作品が制作され、その後、北大路欣也[2]が2代目明智に扮し1986年から1990年まで6作品、西郷輝彦が3代目明智に扮し1992年と1994年に2作品が制作されており、作品数は全33作を数える[3]。天知主演25作品と北大路主演の6作品はフィルム撮影のテロップ打ち込み式(第6作はフィルム撮影のVTR編集)[注 3]だが、西郷主演の2作品のうち、1作目がVTR撮影である。
なお、本シリーズ以前に、天知茂は1968年の舞台『黒蜥蜴』(黒蜥蜴役・丸山明宏)[4]で、北大路欣也は1984年の舞台『黒蜥蜴』(黒蜥蜴役・坂東玉三郎)[5]で、それぞれ明智小五郎を演じている。
天知茂主演の25作品が「江戸川乱歩シリーズ」としてDVD化されているほか、2009年1月7日には北大路欣也主演、西郷輝彦主演の8作品をまとめたDVDボックスが発売された。
2015年6月24日に「江戸川乱歩の美女シリーズ」のうち天知茂主演の全25作品を収録したBlu-ray BOXが、江戸川乱歩没後50年、天知茂没後30年企画として発売されることが松竹より発表された[6][7](発売元はキングレコード)。
ベテラン監督・井上梅次が大部分を手がけ、明智にカメラへ向けて語らせる、エンディングクレジットを中断してエピローグを挿入する、登場人物がBGMを指図する、ラストシーンを完全無音のままエンディングタイトルを流し始めるなど、自由奔放な演出を特徴とする。また、音楽は全作品とも鏑木創が担当しているが、有名なテーマ曲は第6作の「妖精の美女」より使用されている[8]。
製作は松竹だが、初期脚本を担当した宮川一郎をあわせ、監督、明智役、第一作主演女優が新東宝出身者であり、同社末期のモダニズムとキッチュ感が混合したような独自の雰囲気も再現されている。
うち文代役には『ムー』に出演していた天知プロ所属の五十嵐めぐみが起用された[9]。『ムー』の続編『ムー一族』の撮影に当たり、同作の演出を手掛けた久世光彦の指示で髪を短くしたため、その影響でキャラクターの容姿も変化した[9]。五十嵐はBlu-ray版発売記念インタビューの中で、多忙でキャリアも精神的な余裕もなかったため、この当時のことはあまり覚えておらず、番組をリアルタイムで見たこともなかったと振り返っている[9]。のちに当時の映像を見た際、探偵事務所の場面ではきっちりした服を着ていたのに対し、外出する場面では動きやすい服を選んでいたのではないかと五十嵐は話している[9]。スタジオドラマの場合はリハーサルがある分、共演者の演技を参考にしながら調整することができた一方、本作のようなフィルムを用いたテレビ映画ではわずかなテストの後すぐに本番に移行するため、独特の緊張感があったが、井上の丁寧な演出によって、彼の言われるままに演じていたのではないかと五十嵐は振り返っている[9]。
五十嵐は事務所の代表である天知に対して最初期は気軽に話しかけられる間柄ではなかったが、共演を重ねるうちに会話ができるような間柄になった[9]。とはいえ、五十嵐は波越警部役の荒井注を交えて3人で話すことが多かったとBlu-ray版発売記念インタビューの中で振り返っている[9]。
また、デビュー前の宅麻伸が端役で出ており、最初に天知と共演した際は手が震えたと後年のインタビューの中で振り返っている[10]。また、二度目の出演となった「悪魔のような美女」では、衣装部からバタフライショーツを渡されてショックだったとも話している[10]。
本作のエピソードの中には、明智シリーズとは無関係の作品を映像化したものや、原作から何らかのアレンジが加えられたものもある。
その一つである「魅せられた美女」の場合、原作である『十字路』では倒叙ミステリである都合上探偵役が中盤まで登場しないため、「魅せられた美女」においてはその探偵役に明智を据え、かつ事件と並行して彼らが釣りを楽しむ場面が追加された[1]。
また、美女役が犯人である回も多く、主犯格の場合もあれば、周囲の復讐に付き合わされている場合もある [11]。
後期のエピソードは一ひねり加えた作品がいくつかあり、うち「妖しい傷あとの美女」(原作:『陰獣』)ではBDSMや明智の恋が描かれた[12]。
第1作『氷柱の美女』の脚本において、シリーズのお約束である、クライマックスで明智が変装を解いて謎ときをする描写はなかった。
脚本の段階では単に明智が犯人の前に現れてなぞ解きに移るだけだったが、それでは面白くないと思った井上は、現場で思いついて演出したのが「犯人が鏡に向って仮面をとると、その鏡の中に脱いだはずの吸血鬼の仮面が映る。びっくりして振向くと、もう一人の吸血鬼がゆっくり仮面をとり、明智探偵の顔が現れる」というシーンだった。この趣向は井上も大いに自信をもち、以降は明智が変装を解いて謎ときをするシーンがシリーズにおける定番として決まって取り入れられるようになった[13]。服装については、片手で全てを脱ぎ捨てて下に着込んでいたものへ替わるらしき描写が多いが、全身タイツの下にしわ一つない背広姿が現れるといったシュールな場面もあり、ほぼリアリティは放棄している。
シリーズの中で定着していった変装を解くパターンは次のような順である。
となる。
文代役の五十嵐は、変装を解く場面は衆人環視の中での撮影だったため緊張感があり、一発勝負ゆえに準備も入念に行われたとBlu-ray版発売記念インタビューの中で振り返っている[9]。
また、井上梅次監督はシリーズ名物の入浴シーンについて以下のように述懐している。
(2時間ドラマを演出する際には)五十五分から1時間05分までの間にはコマーシャルを入れずに、面白いシーンをここにはめるように計算する。(裏番組の)1時間番組では55分ごろにドラマが終わりコマーシャルが始まる。そのドラマを見ていた視聴者は、チャンネルをひねって他局の面白い番組を捜すのだ。2時間番組ではここで集まってくる視聴者を逃さないように、興味しんしんのシーンをぶつける。たとえば浴室の美女に忍び寄る謎の影……といった映像が出てくると、いっきに視聴率が高まってくる。[13]
こうした二時間ドラマにおける時間の変わり目で視聴者をつなぎとめる手段として井上監督は、「ヒッチコックの『サイコ』の浴室惨殺シーンからヒントを得て、必ずヌードを出すことにした。」と語っている[13]。
しかし女優のヌードを撮影するに際しては、女優のほとんど全員はそう簡単にヌードを了承することはなく、説得から撮影に至るまで監督は常に多大な苦労と恐怖にさいなまれた。以下は「美女シリーズ」を始めとした映画・テレビドラマにおけるヌードの撮影に関する井上梅次監督の述懐である。
(ヌード・シーンの撮影は)監督が望んでいるという口実でプロデューサーが交渉し、後は監督と女優の直談判に任されてしまうから、監督にとっては大変苦労の多い仕事である。(中略)
女優は半分肯定し、半分否定しながら現場に臨むのだから、ちょっとしたことで心証を害して、
「いや!……」
と言われればそれで終わりになってしまう。
(中略)
監督は脱がすまでに熱っぽく状況説明をして、なぜこのシーンが必要であるか、ここに賭けた意気込みを女優に感じさせるテクニックが必要である。そして芸術的な雰囲気をさらに高揚させて少しずつ、芝居の中で脱がしてゆくのだ。こうして有名女優が乳房を見せても、スタッフは好奇のまなざしを隠し、無関心をよそおって黙々と仕事を続けなければならない。
「カット!」の声が掛かると、付き人または監督自らその裸体に衣装を着せて、芝居から解放されたときの羞恥心を少なくする配慮も必要である。
どこでゴネられるか、どこで拒否されるか、こんな恐怖におびえながら、ただただ監督は仕事に没入したフリをしてゆく。細かく気を配りながら執拗に脱がしてゆくテクニックは、なかなか新人監督には難しいことであるが、どんなテクニックよりも、監督のそのシーンに賭けた情熱が一番効果があることは確かである。[13]
ニヒルで渋い天知でしか着こなせないような柄のスーツやジャケット、コート類は、当時天知プロ所属で7作品に出演している岡部征純によれば、それらは皆、天知の私物だったということである。
捜査中と変装を解いた後、また場面に応じてと一話につき数着使用されるのが通例である。
「美女シリーズ」とは別に「土曜ワイド劇場」では江戸川乱歩原作の作品を制作している。
美女役については★で表す。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 原作 | 美女役 | 脚本 | 監督 | 視聴率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1977年 | 8月20日氷柱の美女 | 『吸血鬼』 | 三ツ矢歌子 | 宮川一郎 | 井上梅次 | 12.6% |
2 | 1978年 | 1月 7日浴室の美女 | 『魔術師』 | 夏樹陽子 | 20.7% | ||
3 | 4月 | 8日死刑台の美女 | 『悪魔の紋章』 | 松原智恵子 | 宮川一郎 井上梅次 | 15.6% | |
4 | 7月 | 8日白い人魚の美女 | 『緑衣の鬼』 | 夏純子 | 宮川一郎 | 14.5% | |
5 | 10月14日 | 黒水仙の美女 | 『暗黒星』 | ジュディ・オング | 宮川一郎 井上梅次 | 15.3% | |
6 | 12月30日 | 妖精の美女 | 『黄金仮面』 | 由美かおる | 長谷川公之 | 14.0% | |
7 | 1979年 | 1月 6日宝石の美女 | 『白髪鬼』 | 金沢碧 | 宮川一郎 井上梅次 | 13.0% | |
8 | 4月14日 | 悪魔のような美女 | 『黒蜥蜴』 | 小川真由美 | ジェームス三木 | 15.4% | |
9 | 6月 | 9日赤いさそりの美女 | 『妖虫』 | 宇津宮雅代 | 長谷川公之 | 16.9% | |
10 | 11月 | 3日大時計の美女 | 『幽霊塔』 | 結城しのぶ | 23.4% | ||
11 | 1980年 | 4月12日桜の国の美女 | 『黄金仮面II』 | 古手川祐子 | 櫻井康裕 | 15.9% | |
12 | 10月 | 4日エマニエルの美女 | 『化人幻戯』 | 夏樹陽子 | ジェームス三木 | 19.5% | |
13 | 11月 | 1日魅せられた美女 | 『十字路』 | 岡田奈々 | 成沢昌茂 井上梅次 | 20.0% | |
14 | 1981年 | 1月10日五重塔の美女 | 『幽鬼の塔』 | 片平なぎさ | 櫻井康裕 | 21.6% | |
15 | 4月 | 4日鏡地獄の美女 | 『影男』 | 金沢碧 | 吉田剛 | 19.7% | |
16 | 10月 | 3日白い乳房の美女 | 『地獄の道化師』 | 片桐夕子 | 宮川一郎 | 20.1% | |
17 | 1982年 | 1月 2日天国と地獄の美女 | 『パノラマ島奇談』 | 叶和貴子 | ジェームス三木 | 16.6% | |
18 | 4月 | 3日化粧台の美女 | 『蜘蛛男』 | 萩尾みどり | 宮川一郎 | 17.6% | |
19 | 10月23日 | 湖底の美女 | 『湖畔亭事件』 | 松原千明 | 16.0% | ||
20 | 1983年 | 1月 1日天使と悪魔の美女 | 『白昼夢』(大筋は『猟奇の果て』) | 高田美和 | 篠崎好 | 村川透 | 12.6% |
21 | 4月16日 | 白い素肌の美女 | 『盲獣』(大筋は『一寸法師』) | 叶和貴子 | 長谷和夫 | 13.3% | |
22 | 1984年 | 1月 7日禁断の実の美女 | 『人間椅子』 | 萬田久子 | ジェームス三木 山下六合雄 | 貞永方久 | 18.9% |
23 | 11月10日 | 炎の中の美女 | 『三角館の恐怖』 | 早乙女愛 | 江連卓 | 村川透 | 22.4% |
24 | 1985年 | 3月 9日妖しい傷あとの美女 | 『陰獣』 | 佳那晃子 | 池田雄一 | 永野靖忠 | 24.7% |
25 | 8月 | 3日黒真珠の美女 | 『心理試験』 | 岡江久美子 | 山下六合雄 | 貞永方久 | 26.3% |
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