トップQs
タイムライン
チャット
視点

新語・流行語大賞

自由国民社編集部が選出した中から選考委員会7名が選定する「新語・流行語」に関する日本の賞 ウィキペディアから

Remove ads

新語・流行語大賞(しんご・りゅうこうごたいしょう)は、自由国民社がその年1年間に発生した「ことば」のなかから選考し、その「ことば」に関わった人物、団体を顕彰するとされている2004年平成16年)より、ユーキャン新語・流行語大賞に改称している。

概要 新語・流行語大賞, 受賞対象 ...
Remove ads

概要

要約
視点

1984年昭和59年)に創始した。毎年12月1日に発表する。なお、同日が土曜日・日曜日の場合は次の平日に発表となる。

候補となる言葉は『現代用語の基礎知識』(自由国民社・刊)の読者アンケートの結果から編集部が選出した30語から50語が候補としてノミネートされ、その中から新語・流行語大賞選考委員会(選考委員7名)によってトップテンと年間大賞を選定する。

創始当初は、新語部門と流行語部門に分かれて、それぞれ金賞を筆頭として各賞を選定していたが、8回目の1991年平成3年)からは年間大賞を設け、11回目の1994年(平成6年)からは両部門を合わせて選定するようになった。

創始以来、実際に授与される賞で流行語大賞は存在した事がないが【あくまでも、表彰式イベントを指す名称である】、各種報道などにより「流行語大賞が発表される」という表現で記述されるため、【発表されているものがすべて流行語大賞として授与される】と誤解し、【トップテンや年間大賞で分かれていることを認識していない】人も少なくない。ただ、これはトップテンに選ばれた言葉も授賞式で紹介されるため、【授賞式で紹介される言語=流行語大賞】という誤解を生む一因もある。その他にも「流行語大賞が発表される」という表現から【表彰式イベントの名称の一部である『新語』を除外して記述している】、その年に新しく生まれた『新語』のノミネート候補入りを(流行っていないから)との理由で批判する人も少なからずいる[独自研究?]

2003年(平成15年)には通信教育大手の株式会社ユーキャンと提携し、翌2004年(平成16年)より現代用語の基礎知識選「ユーキャン新語・流行語大賞」に改称した。受賞式典の司会は元TBSアナウンサーの生島ヒロシが担当していた。2017年は元NHKアナウンサーの宮本隆治が担当した。

日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」、第一生命の「サラリーマン川柳」、住友生命の「創作四字熟語」、東洋大学の「現代学生百人一首」と並んで、現代の世相を反映する一つの指標として取り上げられている。

だが、詳細は後述の項目に譲るものの、ノミネートされる流行語のなかには、選考委員の恣意的な判断で選ばれた文言(例:2019年)、2014年の選定を筆頭に、時の選考委員の思想や嗜好などの偏見が反映されたことを示唆する言葉(政権批判や選考委員の思想に基づいた政治的プロパガンダなど)、世論の流行語と選考された流行語の乖離(例:2015年)など、選考方法や中立性について問われること[1] や「新語・流行語大賞」という目的との乖離が起きたと思われる年(例:2016年)は激しい批判にさらされることも少なくない。 また、(多忙などを理由にしたケースもあるが)受賞対象者が辞退するなど影響力の低下が指摘されている[2]

Remove ads

歴代の受賞語

要約
視点

受賞者の役職は当時のもの。

年間大賞選定以前

1984年(昭和59年)から1990年(平成2年)までの受賞者一覧[3]

金賞

さらに見る 回, 年度 ...

金賞以外の各賞

さらに見る 回, 年度 ...

年間大賞選定以後

1991年(平成3年)以降の受賞者一覧[3]

年間大賞

さらに見る 回, 年度 ...

年間大賞以外の受賞語

トップテン選出以前
さらに見る 回, 年度 ...
トップテン選出以後
さらに見る 回, 年度 ...
Remove ads

選考委員

現在

過去

  • 箭内道彦(クリエイティブ・ディレクター)
  • 鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
  • 清水均(元『現代用語の基礎知識』編集部長)
  • 姜尚中(東京大学名誉教授)
  • 俵万智(歌人)

選定をめぐる問題

要約
視点

世論と選考委員の認識の乖離

流行語大賞は、その年に流行った言葉などから選ばれるが、世間を騒がせた事件・事故などの事案や著名人の不祥事・スキャンダルに絡んだ言葉が選ばれることもあり、マイナス面で流行った言葉を選定・受賞対象にすることは不適切であるとする批判が在る(後述の例のように、除外される場合も多い)。[要出典]ただし、今年の漢字でも2007年の『偽』のような縁起の悪い言葉が選ばれたり、トップ20という全体で見れば、マイナス面のある言葉も候補入りするため[19]、流行語大賞特有の問題というわけではない。ただ、今年の漢字や東洋大学現代学生百人一首などは、一般公募なため、広く意見が集まることや候補の漢字が得票数に左右されるという要因がある。それに対し、こちらは#概要の項目にも書かれているように読者アンケートに基づく選出という点では他と大きな差があるわけではないが、こちらは選考委員会が話し合いなどで絞り込むという仕組みとなっており、後述の2014年の「ありのまま」の一件のようにそのアンケート内に世間が認識する流行語の有無次第で結果が変わることや最終決定が得票数より選考委員の議論の結果で判断されるため、世論と選考委員の認識の乖離が発生することがある。

それに対する第三者からのコメントとしては、プチ鹿島は、流行語大賞がインターネットを中心に「そんなの流行ったのか?」というツッコミの対象になっているものの、スポーツ新聞にとっては重要なイベントであるとしている。鹿島は「流行語大賞とは『今年はこんな言葉が流行ったよね』という、おじさんによるおじさんのためのプレゼンだと思えばいい。で、そのあと『そんなの流行ってねーよ』とSNSからツッコミが発生するまでが流行語大賞なのである。そう考えると流行語大賞は『紙媒体』と『ネット』の温度差を確認できる貴重なセレモニーだともいえる」と述べている[20]。また、伊集院光も自身のラジオ番組にて「もはやさ、炎上商法。しかも高度なテクニックを使った炎上商法にちょっと近いぞ」と論評している[21]能町みね子はノミネートを見ると「毎年『現政権に反対し、スポーツ観戦(特にプロ野球)が大好きで、若者の流行に疎い50代くらいのおじさん』の像が浮かんでくる」と述べている[22]斎藤美奈子は「新語・流行語大賞とは表彰式のためにある賞であって主催者である自由国民社は言葉の風俗的資料価値などには何の興味もない(のだろう)」(要約)としている[23]

室井佑月が2009年の授賞式後に述べた「きっと、表彰式に出て来れる人の中から、大賞を選んでいるに違いない」[24]は、後に鳥越が事実上認める発言をするに至った(後述)。

2024年度に年間大賞を受賞した「ふてほど」も聞いたことがない、Googleトレンドにおいても流行語大賞発表までに流行った形跡がないといったデータが示され、『不適切にもほどがある!』の主演を務めた阿部サダヲも授賞式で「自分たちでは一度も言ったことがない。周りからも聞いたことはない」とコメントしている[25][26][27][注釈 20]。その後ニコニコ動画上で「ふてほど=『不適切報道』の略称ではないか?」という意見が寄せられ、SNS上で多くの賛同を得て本来の意味と違った意味で広がるという異例の事態となった[28][25][29]。また、同年にトップテン入りした「界隈」についても、風呂キャンセル界隈の記事を書いた毎日新聞記者の稲垣衆史も授賞式で指摘したように、この言葉自体は2024年以前からSNS等で使われている用語であり、こちらに関しても世間の認識とのズレが生じていると指摘されている[30][27]

追加ノミネート、追加受賞を認めない姿勢

本賞は、最初の審査会が毎年10月上旬に行われ、そこに選考委員が持ち寄った言葉のみが選考の対象となる関係上、審査会開催以後に流行した言葉はノミネートすら出来ない、議論にも上がることのないまま流行が終わってしまう(2023年時点)[31]

年間大賞・トップテンの選定が始まる以前の1989年平成元年)にベルリンの壁崩壊を意味する「『壁』解放」が特別賞を授与された例はある[注釈 21]が、1990年代以降、ノミネート公表とほぼ同時期に流行していた言葉は登場しなくなった。2010年代より後だけでも2011年10月期の日テレ水曜ドラマ家政婦のミタ』(「承知しました」や「それは業務命令でしょうか」等)[31]、2016年10月期のTBS系火曜ドラマ逃げるは恥だが役に立つ』(略称・『逃げ恥』や恋ダンス)、2022年のサッカーワールドカップカタール大会に関連した言葉(「ドーハの歓喜」「ブラボー!」「三苫の1ミリ」など)[注釈 22][32][33]などがノミネートに挙がらなかった。自由国民社はそれらノミネートから洩れた言葉を救済する機会を与えない姿勢を貫いており、翌年に改めてノミネートされたり、新聞協会賞のように追加ノミネート、追加受賞が認められたりしたケースは1990年代以降一度もない。

やくは「10月以降の言葉を選ぶ猶予がなかった」と弁明したことがあるものの[31]、あいまいな選考基準や追加枠を一切設けない姿勢については疑念を残す形となっている。

やくみつるの言動を巡る論議

選考委員の一人であるやくみつるはその発言や姿勢が批判の対象になることが多い。

例えば、2019年のノミネートが発表された際に、惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに作った「おむすびころりんクレーター」を「はやぶさ2の話題は偉業としてもてはやされたが、その後の言葉が定着してない。ここに入れることによって、そういう言葉もあったんだねと認知してもらう効果もある」と、流行した言葉でないのを分かった上で「新語」として自らが候補に「ねじこんだ」ことを明かした[34][35] 際、「全く流行っていない言葉」「やくによる私物化」と、選考基準を疑問視する声ややくを始め選考委員への批判が起きている[36]。2020年のノミネートに関しても、「うちで流行った」という理由でぼる塾のネタ「まぁねぇ〜」をねじ込んだことを明かしている[37]

2022年のノミネートではプロ野球関連の言葉が全体(30語)の2割となる6語も占めていたことから、大のプロ野球ファンとしても知られているやくが野球用語をねじ込んだのではという指摘もインターネット上において上がったが、やくはノミネート発表後に出演したTBSラジオナイツのちゃきちゃき大放送』において、「野球用語が多すぎる。もっといろんなジャンルから選んだ方がいいんじゃないか?」と寧ろ野球関連の用語を削減しようと選考委員に提案していたとして、反論している[38]

候補の除外

一般的に流行した用語が賞の候補から削除される例として代表的なものを挙げる。

  • 2009年、元財務大臣で衆議院議員だった中川昭一の釈明の言葉「ゴックンしてない」をノミネート候補に『ねじ込む』予定であったが、中川が死去したため見送られた[40]
  • 2012年(平成24年)の「ナマポ」(生活保護を意味する俗称)は、ノミネート候補に選ばれたが、その後生活保護受給者から差別や悪意の助長のおそれが指摘され、受賞は差別を肯定したという解釈につながると判断し、後に受賞対象外となった[41]
  • 2014年の『ありのままで』は、「同曲が主題歌として使われたアニメ映画『アナと雪の女王』を見た選考委員が誰もいなかったため、年間大賞候補から外されトップテンにとどまった」とやくが『週刊朝日』の座談会で明かしている[42]
  • 2016年に放送されたテレビ番組で、2015年まで選考委員で2015年は選考委員長だった鳥越俊太郎が大賞受賞者について言及した。鳥越によると表彰式で発表される「トップ10」のうち「年間大賞」受賞者は式への出席が必須で出席できない場合は表彰式が盛り上がらないので大賞から外れるという。2015年の選考では「五郎丸」が年間大賞だったが本人が用事で出席できないということで急きょ「トリプルスリー」に変わったと語った[43][44]。ただし、2014年の「集団的自衛権」については受賞者辞退にもかかわらず大賞に選定し、後述の批判を招いている。
  • 2019年には国政政党に躍進したNHKから国民を守る党および党首立花孝志のキャッチフレーズ『NHKをぶっ壊す』が子供たちの間で流行したが[49]、候補に選ばれることはなかった。この事に対して、同党所属の衆議院議員丸山穂高は「流行語大賞候補に「れいわ旋風」は入れつつ、小学生まで真似してる「NHKを〜ぶっ壊す!」を入れないところが、まさに政治的に偏っている流行語大賞らしい。過去にも「保育園落ちた日本死ね」「アベ政治を許さない」とか。まあ審査員メンバー見ればお察しですが、ノミネート基準が不明確すぎるでしょ」と批判した[50]
  • 2023年のノミネートから、第101代内閣総理大臣岸田文雄に対するネットスラングである「増税メガネ」が外されたことに対してSNS上で忖度ではないかと話題になったが、やくは「ルッキズムに依拠するアダ名を全否定するものではないが、『増税メガネ』は首相のアダ名を超えて一人歩きしてしまっている。弱視等の理由でメガネを着用されている知人や子供たちを思ったとき、これを尻馬に乗っかって推すべきではないと選考委員の一人として考えます」と除外理由を述べている[51]

受賞者

2000年代後半頃からでは「流行語」を最初に広めた人物・団体が表彰されず、その言葉を象徴する(と判断された)人物・団体が表彰されるケースが多く見られるようになってきた。

  • 受賞者と「最初に広めた人物」との乖離がある例として、斎藤美奈子は2000年(平成12年)の「おっはー」は表彰式で受賞者の香取慎吾本人が「パクリだ」と言ったように、テレビ東京系列の番組『おはスタ』で以前から用いられていた挨拶が元であり、「IT革命」は森喜朗(当時第85代内閣総理大臣)が流行らせた言葉だろう、「めっちゃ」も田島寧子が使う以前から関西では若者言葉として一般的に使われていたと指摘している[23]
  • 2001年(平成13年)トップテンの「抵抗勢力」(小泉内閣の改革に反対する自民党内勢力を指す言葉)では候補者が全員辞退した[52]
  • 2004年(平成16年)の「自己責任」(イラク人質事件の被害者に対して向けられた言葉)では、受賞に値する人々に配慮して「該当者なし」となった。[要出典]
  • 2007年(平成19年)の「消えた年金」は、この問題を指摘した民主党長妻昭ではなく、年金の不備に責任がある立場の第9代厚生労働大臣舛添要一に贈られた。報道によると、長妻に授賞式出席の要請が来て、「その日は出られない」と答えたところ、いつの間にか対象者が舛添に変わっていたという。その舛添は授賞式では困惑した表情で終始うつむき加減だった[53][54][55]
  • 2008年(平成20年)の「あなたとは違うんです」は、対象者の第91代内閣総理大臣福田康夫が辞退したため「該当者なし」となった[要出典]
  • 2018年(平成30年)の「スーパーボランティア」は、対象者の尾畠春夫が辞退したため「該当者なし」となった[56][57]

政治的偏向に対する批判

2013年「アホノミクス」

2013年、経済評論家の浜矩子が安倍政権の経済政策「アベノミクス」を揶揄したネガティブな造語「アホノミクス」がノミネートされたが、11月8日に浜矩子が日本外国特派員協会での記者会見で「アベノミクスはアホノミクスである」と痛烈に批判したこと以外にメディアなどで使用された形跡がなく、「政治関連が多すぎる」「政治的に偏りがあるのではないか」などの問い合わせを受けた[58]。このころから、選考委員会(姜尚中俵万智鳥越俊太郎室井滋やくみつる箭内道彦清水均)の政治的嗜好(安倍政権批判)による選定が指摘されるようになった[59]

2014年「集団的自衛権」「ダメよ〜ダメダメ」

2014年度の年間大賞に選ばれた「集団的自衛権」と「ダメよ〜ダメダメ」は「集団的自衛権(は)ダメよ〜ダメダメ」とつなげることで、集団的自衛権、ひいては安倍政権に反対する姿勢を示すという左派系で構成される選考委員たちの政治的な思惑が働いたのではないかとの疑念が一部メディアにより指摘され、同月に行われる衆議院選挙の直前の時期でもあったことから物議を醸した[60][61]

授賞式にて、大賞の「集団的自衛権」については「集団的自衛権という用語は30数年前の『現代用語の基礎知識』からすでに収録されており、ずっとそれは現憲法下では『違憲』だと紹介されてきた。それが今年、安倍政権の下でいきなり解釈を変更されて、限定容認だが、その行使が可能となったのだから、これは大事件だ」などと紹介され、同じく大賞の日本エレキテル連合の「ダメよ〜ダメダメ」の受賞理由コメントでも「『壊憲』と言われる7月の閣議決定。『ダメよ〜ダメダメ』と高まる声を前にして、『いいじゃ〜ないの〜』とするすると受け流して、気がついたら憲法が解釈だけで変更されてしまったのだが、この国では、争点をしっかり掲げて投票でハッキリさせようなんて決定方法がありえないんじゃないかと思えて、こりゃあ『号泣』もしたくなる。そんな日本の不条理な現実を、最高にシュールなコントで『大爆笑』に変えてくれたのが『細貝さんと朱美ちゃん』こと、今年一番の人気コンビ、日本エレキテル連合であった」と紹介された[62]

選考委員の鳥越俊太郎は「特定秘密保護法から始まってアベノミクス、集団的自衛権、原発再稼働も、国民が反対しているにもかかわらず政府は少しずつ推し進めた。それに対して国民の気持ちを最もよく表すのが『ダメよ〜ダメダメ』」とコメントしている[63]。また、選考委員のやくみつるは、授賞式の挨拶で「審査は中立的な立場で行ったが、大賞となった2つの言葉が並ぶと一定の意味をなす。興味深い」[64] と述べていたが、選考委員会では集団的自衛権に反対する政治的な立場から「ダメよ〜ダメダメ」と「集団的自衛権」が見出しで並ぶことを意識して大賞に選んだことを後日談で明かしている[42]

この政治的な思惑に応じる形で集団的自衛権に反対する立場の政治家たちはTwitterで流行語大賞に賞賛を行った。社民党福島瑞穂Twitterで「今年の流行語大賞に『ダメよ〜ダメダメ』『集団的自衛権』。これを合わせて『ダメよ〜ダメダメ、集団的自衛権』。どう考えてもダメです。ダメなものはダメ」とツイートし、民主党有田芳生も「(ニュース番組で新語・流行語大賞を報じた)NHK。この並べ方がサイコー!『集団的自衛権』『ダメよ〜ダメダメ』が大賞」などと書き込んだ。しかし、自民党佐藤正久は「一部のメディアや政治家が意図を持って、その2つの言葉を並べたり、くっつけた見出しを使うと思われ、特に選挙戦での利用の可能性も否定できない。その場合、エレキテル連合が『政治利用』されて気の毒だ。皆さん、どう思いますか?」とツイートし、流行語大賞の政治利用を批判した。ネットでも「左翼がやりたい放題で政治的な言葉を選んでいると、賞のイメージが悪くなる」などの苦言が相次いだ[60]

また、2014年12月の時点で選考委員のやくみつるは、2015年の流行語大賞に『総選挙で安倍政権が大勝して、いろいろな分野でむちゃな政策が始まる。それを、総括する言葉を定義付けして「アベハラスメント」。通称「アベハラ」を流行らせようと画策している』と『週刊朝日』の座談会で明かしている[65]

2015年「アベ政治を許さない」

2015年度の新語・流行語大賞では、ノミネートされた50語中15語が政権与党批判の言葉で占められていた。その中でも「自民党、感じ悪いよね」「とりま、廃案」「戦争法案」「アベ政治を許さない」「早く質問しろよ」「I am not ABE」「SEALDs」「国民の理解が深まっていない」などの政治用語について、ネット上からは「流行」という位置づけにふさわしいのか疑問をもつ声や、政治色への強い傾向を指摘する声が相次いだ[66]。大賞事務局にも「政治関連が多い」などの意見が約10件寄せられたという[67]

トップテンには、選考委員長である鳥越俊太郎自身が参加した安保反対運動から生まれたスローガンである「アベ政治を許さない」が選定された。鳥越は選定理由について、「新語・流行語大賞は日本の社会の現実を映す鏡。日本の社会がトップ10の中から見えてくる。選考委員は、歪みのない現実を映す鏡を作ったつもりだ」と説明した。その一方で「『アベ政治を許さない!』国民の一斉行動デー」と題した平和安全法制抗議運動を呼びかけた一人であり、賞を主催している『現代用語の基礎知識2016』のインタビュー記事の中でも運動の経緯などを説明しつつ、安倍政権の対応を批判しており、賞を私物化しているという指摘や政治批判を意識した言葉を選んだのではという疑念を抱かせる一因となった。

選考委員を務めるやくみつるは選評文で「そりゃ選考委員のそれぞれには、日頃の政治的スタンスというものがある。しかし、流行語の選考はそれに立脚したものではない」と賞の私有化を否定した上で、「(選ばれた言葉が)己れ(原文のまま)の意にそぐわぬからといって、それに目クジラ立てているようじゃあ、自由主義国家の名が廃る。『アベ政治を許さない』にしたって、解釈を変えれば『アベ政治をゆるしてやってもよくね?』ともとれる。それくらいの遊び心がなくてどうするよ」と反論[68]。 他にも新語・流行語大賞の世間の認識について、話題になることは期待しつつも、「それが転じて、これはけしからん、あれはけしからんと主催者側におっしゃる方がいると伺いました。そういうのはややもすると圧力になったり、狂気にもなりかねない世知辛い世の中です。皆さんの中でわいわいやっていただく分には結構なんですが、直接持ってこないでねと申し上げたい」[69] と呼びかけた。

なお、選考委による「アベ政治を許さない」の紹介コメントでは、「このフレーズは、要求ではない、追求でもない、つぶやきだ。強要しないつぶやきが、これまでのイデオロギー対立では現れてこない層に共有された」と紹介され、表彰式に登場した反安保運動の中心人物である澤地久枝は「『アベ政治を許さない』(に関する活動)を毎月3日にやる。皆さんもご参加ください」などと報道陣に向かって呼びかけた[70]産経新聞は、“身内びいき”“自画自賛”と受け止められかねない受賞結果になったと評した[71]

ちなみに、2016年リクルートR25が行った新語・流行語大賞に関する調査で、全国の20〜30代221人を対象に、過去5年(2011年〜2016年)にトップテンに選ばれた50語のうち「あまりピンとこない」言葉は何かを尋ねたところ、『アベ政治を許さない』が2位にランクインした[72]。また、独自の政治的信条を語ることもある太田光(爆笑問題)が、ノミネート内容が発表された日にラジオ放送を行っていた際、「安倍さん関連が多すぎるんだよ、安保関連とか。『早く質問しろよ』なんて別に流行語にしなくていい」とコメント[59]し苦言を呈した。

2016年「保育園落ちた日本死ね」

2016年は、この年鳥越が東京都知事選挙に出馬(結果は落選)したことに伴い選考委員から外れたせいか、政治的な言葉のノミネートが少なくなり、東京都内の30代とされる女性が待機児童問題についてブログに投稿した記事「保育園落ちた日本死ね」[73] が国政関係で唯一トップ10に入った[74]。この言葉が選出された理由は「待機児童問題の深刻さを投げかけ、世の中を動かした。」というものである。

当該ブログ記事は深刻な待機児童問題に対し東京都在住の女性が執筆したとされるものだが、駒崎弘樹が投稿の2日後に取り上げ[75]民進党山尾志桜里衆院議員も国会で取り上げた[76]。授賞式には当該ブログの筆者ではなく山尾が受賞者として出席し、「年の締めにもう1度スポットライトが当たり、うれしい」「今は新語・流行語でも、早く『死語』にできるよう頑張りたい」と述べた。翌日、タレントつるの剛士が、「きっともっと選ばれるべき言葉や、神ってる流行あったよね。皆さんは如何ですか?」「こんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としてもとしても僕はとても悲しい気持ちになりました」とTwitterで発言したことが、[77][78] 前年に流行語大賞を受賞したSEALDsなどから激しく非難され、つるのは謝罪に追い込まれた[79][80]

この言葉を選出したことについても批判があがり、賞を主催しているユーキャンウィキペディア日本語版のページが「株式会社ユーキャン死ね」と書き換えられ、ページが半保護状態になるまで編集合戦が繰り返されるなどネットの各地で炎上した[81]。さらに、選考委員の詩人俵万智のTwitterにも批判が寄せられた[82][83]

評論家らによる批判や、それに対する選考委員たちからの反論も相次いだ。

批判は以下のとおり。

  • 評論家石平Twitterで「普通の日本人の間では、『日本死ね』のような言葉が流行った気配はないし、流行るはずもないのであろう、わざと流行らせたい人がいる」と批判した[84]
  • 外交官佐藤優は、「自民党の保育所に対する政策はとんでもないが、公共圏で使っていい言葉といけない言葉がある。憲政史上、『死ね』と言う言葉が政策に関連するところで出てきたのは初」と疑義を呈した[85]マラソン選手の有森裕子も「この言葉が全国的に流行ったのでしょうか。そもそも『死ね』という言葉が流行語として認定されることが健全といえるのでしょうか」と疑問を述べ、選考委員のやくみつるが「流行語を選ぶにあたって、過激だとか穏当だとか、選ぶ時に何の尺度にもならない」と発言したことに対して「流行語として見た子どもたちが、どんな思いを抱くでしょう。授賞式で笑顔を浮かべていた国会議員や、選考基準の理解に苦しみます」と批判した[86]
  • 漫画家江川達也も「汚く過激かつ破滅的な言葉が世の中を動かしたかに見えたら評価する。というなら、やはり、言葉はどんどん、汚く過激かつ破滅的な方向に走ってしまわないだろうか」と疑義を呈し、「思ってたようにならなかった誰々死ね。が世の中に影響があると思い込んだ人が真似始めることになるだろう。いや、もう既に、昔から、思い通りにならないと、誰々死ね、という子どもが増えて問題になっていた。その子どもがそのままお母さんになっただけだ。もはや、日常的に死ねと使う人がいる」「存在を否定したら終わってしまう。現状のうまくやれない状況を認識させてどうすればうまくいかせられるか教育した方がいい」と述べた[87]

反論は以下のとおり。

  • 選考委員のやくみつる情報番組インタビューで「私も当時は嫌悪感を示した方」だったとしたが、「それとこれとは話が別」と個人的感情を抑えるコメントに留まる。「流行語を選ぶにあたって、過激だとか穏当だとか、選ぶ時に何の尺度にもならない。むしろ、こういう言葉は流行語大賞でなければ拾い得ない」と、必要であれば『死ね』など過激な言葉が選ばれることもあるとした。そもそも流行語という位置づけにふさわしくないという声に対しても「口の端に上るという意味での流行語もあるが、その言葉が物議を醸すなり、そこから議論が巻き起こるのも広い意味での流行語である」との認識を示した[88]。ほかにも同年12月には、賞が世間とずれているのではと批判されている事を受けメディアの取材に応じたが「難しい専門用語が入っているわけでもありません。『ニュースぐらい見ろ』と言いたいですよ」と答えた。また来年(2017年)以降、選考基準を見直すことも「まったくありません」と否定している[89]
  • 元選考委員の鳥越俊太郎も情報番組に生出演し、『日本死ね』がショッキングな言葉ではあると認めながらも「それ(待機児童問題)に対するいち母親の怒りの言葉が、『死ね』という表現になっているわけです」「だから、『死ね』という言葉だけに引っかかってしまっちゃ、その全体を見誤ってしまう」と指摘。カンニング竹山が受賞者が政治家であることに「すごく違和感がある」と表明したところ、鳥越は「山尾さんが国会でこれを取り上げたことによって、一躍全国的な問題になったんです。ブログはブログでその前からあったんだけども、問題にならなかった」と応じ、自身も審査委員長にとどまった場合、『日本死ね』を選出していただろうと語った[90]
  • 選考委員の俵万智は「『死ね』が、いい言葉だなんて私も思わない。でも、そのが、ハチの一刺しのように効いて、待機児童問題の深刻さを投げかけた。世の中を動かした。そこには言葉の力がありました。お母さんが、こんな言葉を遣わなくていい社会になってほしいし、日本という国も日本語も、心から愛しています」とツイートした[91]
  • 社会学者古市憲寿もTwitterで「言葉は文脈をともなって初めて意味を持つ。『保育園落ちた日本死ね』が話題になった時、『日本死ねなんてけしからん』という批判よりも、共感が多かったのは、『日本死ね』という言葉ではなく、あのブログが多くの人に読まれたから」と分析。「あのブログも読まずに『日本死ねなんてけしからん』と言われても。ちなみに僕が知る限り、あのブログが騒がれていた当時、『日本死ねなんてけしからん』と言っていたのは、おじさん政治家たちです。いま怒っている人との共通点は、ちゃんとブログ本文を読んでいないこと」と異論を唱えた。また、『死ね』という表現については、「人格攻撃でもなく、あくまでも比喩としての『死ね』と、具体的な他者や人格をおとしめるために使う『死ね』は全然違うよ。しかも、他にどうしようもなく、そうするしかない悲痛な叫びとしての『日本死ね』でしょ」との見解を示した[92]
  • 保守系雑誌の『月刊日本』も、『日本死ね』騒動にはアメリカ大統領選のトランプ現象と類似しているとして、ドナルド・トランプの過激な発言がポリティカル・コレクトネスに反していたからこそ不満を抱えている人々の共感を得たように、『日本死ね』という怒りの言葉も一般的な常識倫理に反していたからこそ注目を集めたのではないかと分析。「軽く見てはならない」と指摘した[93]

また、騒動は保坂展人世田谷区長に飛び火し、Twitterで『日本死ね』が受賞したという記事をツイートすると「の対応って仰いますけど、そもそも保育園地方自治体の管轄なんでは?『死ね』って言われるべきは本来は区長だと思うんですけど」「だとしたら一番死ななきゃならないのは『待機児童が1200人を超えてて一向に改善できない保育行政に責任を持つ無能な世田谷区長』っすよね。何他人事かましてんの?」「待機児童全然解消していない世田谷区死ねと言われてるようなもんだぜ。分かってる?」と批判コメントが殺到。ジャーナリスト石井孝明も「山尾衆議院議員に、死ねとののしられるべき1人は保坂さんのような気がします。どう思うのか、罵られたら感想ください」と、東京都の待機児童数で世田谷区が飛び抜けてワースト1位であるを添えたリプライを送って応戦した[94]

さらに、同月12日に発表された日本漢字能力検定協会主催の『今年の漢字』では、『保育園落ちた日本死ね』の『死』はトップ20にすら入っていなかった。しかも、こちらは全国から一般募集され、得票数で大賞が決まるため、ネットでは再びユーキャンへの非難が噴出した[19]

ジャーナリスト井上トシユキはこの騒動について「政治色が強いのは余計な混乱を避けるために選ばないのが常套なのに、ユーキャンの場合はガッツリ選んでくる。『日本死ね』は非常に強い言葉で、ネット右翼左翼で非難の応酬になっている」と指摘。「清水寺の『今年の漢字』(日本漢字能力検定協会)と並んで、年末の風物詩みたいな扱いになっていますが、ユーキャンの流行語大賞は宣伝のための商業的側面があり、ピントがずれ始めてきているところもある。『今年の漢字』で『死』を選びますかという話。選考過程がハッキリしていない点の反発が多く、オープンの場で選んだ方がいいのではないか」と述べた[85]

白熱ライブ ビビット』(TBS)が調査したアンケートでは、『日本死ね』を流行語大賞のトップテンに選んだことに『賛成』23%、『反対』77%[90]J-CASTニュースが行ったネット調査では、『問題提起としては有効だったが、言葉が汚すぎる。受賞は不適切』52.8%、『問題提起としても意味があったとは思えない。単に不愉快になるだけ』31.2%、『この言葉をきっかけに待機児童問題に焦点が当たった。受賞は妥当』15.2%、という結果だった[95]。衆議院議員の足立康史は度重なる暴言騒動の際「『日本死ね』発言を社会が許容している」といった趣旨の釈明を2度行っている[96][97]

また、選考委員に対しては、政治信条の偏り以前に、2015年の大賞に「トリプルスリー」、2016年の大賞に「神ってる」を選出してきたことに対して、「そもそも彼らに現代のことがわかっていると言えるのだろうか。」と疑問を呈されるようになり[98]、2017年以降も政権批判のキャッチコピーが取り上げられているが、それに対する批判は減っていった。

Remove ads

お笑いタレントのジンクス

お笑いタレントは、新語・流行語大賞を受賞すると翌年から人気が落ち、一発屋やテレビメディアへの露出が少なくなるというジンクスがある[99]テツandトモ(2003年年間大賞)[100][101][102]波田陽区(2004年年間トップテン)[100][102]レイザーラモンHG(2005年年間トップテン)[100][101][102]エド・はるみ(2008年年間大賞)[103]楽しんご(2011年年間トップテン)[101]スギちゃん(2012年年間大賞)[104]日本エレキテル連合(2014年年間大賞)[105] などが当てはまる。

しかし、テレビへの出演が減っただけで地方の営業の仕事は増えることもあるため仕事がなくなったというわけではない[106][107]。また、小島よしお(2007年年間トップテン)のように低迷期を経てしばらく後に復活の兆しを見せる[108] ケース、とにかく明るい安村(2015年トップテン)のように海外でのブレイクを経て8年後の2023年に選考委員特別賞で再度受賞を果たす[109][110]ケースもある。

Remove ads

脚注

関連項目

外部リンク

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.

Remove ads