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関西電力

大阪府大阪市にある電力会社 ウィキペディアから

関西電力
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関西電力株式会社(かんさいでんりょく、: The Kansai Electric Power Company, Incorporated)は、大阪府大阪市北区中之島本店を置く電力会社である。電気の販売量で東京電力エナジーパートナーに次ぐ日本国内第2位[4]。略称として関電(かんでん)や、KEPCOKansai Electric Power Co., Inc.=ケプコ)が使われる。

概要 種類, 機関設計 ...

日経平均株価およびJPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ[5][6]

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概要

近畿地方関東地方などで電力小売事業や、発電事業を行っている。

太平洋戦争後、日本が占領下にあった1951年5月1日に設立された。松永安左エ門(電気事業再編成審議会委員長)がGHQを説得し、国会決議より効力が強いGHQポツダム政令である電気事業再編成令を元に、戦時における企業統廃合などによって発足した関西配電日本発送電を再編した(このため、現在も一部の年配者には関西電力を「関配(カンパイ)」と呼ぶ人もいる)。後述のとおり、戦前まで近畿地方を拠点に全国展開していた大同電力宇治川電気日本電力東邦電力の流れを組み、資産を継承している関係上[注 1]、近畿地方以外の発電所などの設備を多く持つ。社章は電流を示す「アンペア(A)」と電圧を表す「ボルト(V)」を組み合わせるとともに前身の日本発送電と関西配電の融和への思いを込めたものとしている[7]

発電能力と比べ、実際の発電所は原子力発電による比率が約55%となっている(他社からの買電、融通、揚水発電を除いた発電量における、設備別比重)。その一方、本来の電力供給エリア外である富山県黒部川流域などに、最大出力30万kW超の大型の水力発電所も所有する。

2001年以降、高経年で効率の低い小容量火力発電所の廃止を進めている[8]春日出発電所大阪発電所高砂発電所など計7箇所の発電所が全廃されたほか、複数の発電設備が長期計画停止となり、2013年時点も停止中の火力発電所が存在する。これらはほとんどが石油火力である。

関西財界を構成する主要企業の一つである。関西電力の社長会長はたびたび関西経済連合会会長に就任している。しかし、競争市場で勝ち残ってきた企業ではなく、自然独占を前提とした公共料金規制を受ける企業である。にもかかわらず元会長が10億円の退職金を受けとっていたことが報道され、話題となった[9]

設立65周年の2016年5月1日より、ブランドステートメントとして「power with heart」が制定されたことに伴い(制定は同年3月)[10]、イメージキャラクターに俳優の佐々木蔵之介が起用されている[11]

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沿革

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関西配電に出資した電力会社の供給エリア、関西配電社史より
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社史・記念誌

関西電力では、以下の5冊を発行している。

  • 関西電力の10年(関西電力株式会社10年史編集委員会・編集) 1961年発行、286ページ。
  • 関西電力の20年(関西電力株式会社・編) 1972年11月発行、456ページ。
  • 関西電力二十五年史(二十五年史編集委員会・編集) 1978年3月発行、621ページ。
  • 関西電力五十年史(関西電力五十年史編纂事務局・編纂) 2002年3月発行、1275ページ。
  • 関西電力五十年史 統計・資料編(関西電力五十年史編纂事務局・編纂) 2002年3月発行、466ページ。

発電施設

要約
視点

合計 170箇所、3657万kW(2016年3月31日現在)[41]

  • 総出力には長期計画停止中、定期点検中の号機を含む。廃止された号機、建設中の号機は含まない。

水力発電所

152箇所、約823万kW(22%) - 近畿地方各府県(大阪府を除く)、富山県、福井県、長野県、岐阜県に発電所を有する。

  • 主な水力発電所(10万kW以上の発電所)
さらに見る 発電所名, 水系名 ...

火力発電所

11箇所(計画中1箇所)、1456万6400kW(関連会社経営の発電所を除く)[42](53%)

さらに見る 発電所名, 使用燃料 ...

関連会社運営

さらに見る 発電所名, 使用燃料 ...

* 和歌山共同発電所は出力の半分を新日鐵住金和歌山製鐵所へ供給。

原子力発電所

3箇所、658万kW(24%)

さらに見る 発電所名, 原子炉型式 ...

新エネルギー

3箇所、1万kW(関連会社経営の発電所を除く)[43]

さらに見る 発電所名, 方式 ...

関連会社運営

さらに見る 発電所名, 方式 ...

過去および建設中止された発電施設

火力発電所

さらに見る 発電所名, 使用燃料 ...

原子力発電所

さらに見る 発電所名, 原子炉型式 ...

電源調達入札制度について

  • 1995年(平成7年)の電気事業制度改革において電源調達入札制度が創設され、卸供給事業者(IPP・独立系発電事業者)6社と供給契約を結んでいる[44]

6箇所、191万3800kW

さらに見る 卸供給事業者, 契約電力 ...
  • 事業者名はいずれも契約当時。
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事業所

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関西電力のサービスカー(旧送配電事業部門管轄の過去のデザインのもの。送配電事業は、2020年4月1日より関西電力送配電に分社化済)

2004年6月30日、近畿2府4県で一部の営業所が再編された。

2015年11月30日をもって、カッコ書きの6営業所の窓口閉鎖及び、全営業所窓口においての電気料金支払い・低圧電気工事の申し込み業務が廃止となった。また存続した営業所も全て「配電営業所」に改称した。そして2020年4月1日には、発送電分離の法的措置により、各配電営業所は「関西電力送配電株式会社」の各営業所に分社化・移管された。

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歴代社長

さらに見る 代, 氏名 ...
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発電施設に関する特記事項

要約
視点

関西電力は、水力発電及び原子力発電の領域において、他の電力会社と比較して特殊な点がある。

黒部川流域の電源開発

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黒部ダム

第二次世界大戦前の日本電力(後の日本発送電)は、近畿地方への配電を目的として富山県黒部川水系に多くの水力発電施設を築いた。戦後、日本発送電を解体した際、配電地主義の観点からこれらは関西電力に引き継がれており、さらに、関西電力自身の手によって黒部川第四発電所が建設された。 このような事情から、配電地域外となる同県富山市に北陸支社が置かれているほか、特に黒部川第四発電所及び黒部ダムなどのいわゆる黒四関連施設の管理のため、長野県大町市に黒四管理事務所がある。

これらの発電施設の建設のため、日本電力時代までに、現あいの風とやま鉄道線黒部駅から黒部川沿いに鉄道や専用軌道および歩道(日電歩道)が建設され、加えて黒四関連施設建設の際には、長野県側からの工事用道路(後に大町有料道路及び関電トンネル)も建設された。これらの鉄道・軌道・道路は、本来の発電施設の維持管理目的のほか、地元鉄道会社へ移管されたり、観光目的に活用されたりしている。 現在、関西電力では、扇沢駅から黒部ダム駅までの関電トンネル電気バスを運行しているほか、黒部峡谷鉄道欅平駅から先のいわゆる上部軌道専用鉄道として運行している。なお、下部軌道(宇奈月 - 欅平)は子会社の黒部峡谷鉄道が運営している。

原子力と関西電力

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美浜発電所

関西電力は、電力構成に占める原子力発電の割合が他社よりも高い。同社のCMなどでも、「関西の電気の約半分は原子力」と言うキャッチフレーズが流れていた。

同社の原子力発電所は、福井県の若狭国地域に集中立地している。内訳は美浜町美浜発電所に3基、おおい町大飯発電所高浜町高浜発電所に各4基の、計11基である。すべて加圧水型原子炉(PWR)が採用されている。立地場所はいずれも同社の供給エリアではあるが、同県の越前国地域(敦賀市以東)は北陸電力の管轄である。

この地域は福島県太平洋岸と並んで原子力発電所が集中している地域であり、前述の3発電所に加え、敦賀市には日本原子力発電敦賀発電所日本原子力研究開発機構の有する高速増殖炉もんじゅや、新型転換炉ふげん(現在は運転停止・廃炉作業中)、株式会社原子力発電訓練センター(三菱重工業の関連会社)なども立地しており、別名「原発銀座」とも言われている。

東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の発生により、東京電力福島第一原子力発電所放射能漏れ事故が発生したことを受け、関電は管理下の原子力発電所の非常用ディーゼル発電機以外に、移動可能な電源装置を別途高台等に設置すると各マスコミに向けてアナウンスした[48]

オール電化住宅の促進

東京電力福島第1原発事故以後、オール電化のテレビCMは自粛していたがオール電化住宅の販売促進は継続して行っていた[49]

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全需要家に対する節電協力要請

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の発生により生じた、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、同年6月10日に同社は、原子力発電所の運転停止・定期点検後の再稼動延期に伴う電力の供給不足による停電を回避することを目的として、7月1日から9月22日の平日9時から20時までの間(お盆の期間を除く)、個人・法人の全需要家に対し、前年比15%程度の節電の協力を要請する、との報道発表を行った。そして7月1日から9月22日まで、「でんき予報」の発表(6月29日 - 9月22日)を含めた、同社からの節電への協力要請が実施された。特に個人の需要家に対しては、平日13時から16時までの節電を呼びかけていた。

その後も同社は、同年12月19日から翌2012年3月23日までの期間において、平日9時から21時までの間(年末年始を除く)全需要家に対し、前年比10%程度の節電協力要請を行った。特に個人の需要家に対しては、平日18時から21時までの節電を呼びかけていた。なお「でんき予報」は2011年11月30日より、また「週間でんき予報」は2011年12月16日より、いずれも2012年3月23日まで発表された。

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主なグループ会社

グループ会社は2019年時点で、連結子会社が79社、持分法適用会社が4社で構成されている[50]。詳細は、公式サイトのグループ企業一覧を参照。また、全て株式会社である。

連結子会社
持分法適用会社

関係のある企業

出資先

関西電力が出資する主な企業は以下の通り。

放送事業者は以下の通り(出資比率は2011年3月31日時点[51])。

かつての出資先

なお、電気設備工事会社の関電工は、その名前から関西電力の関係会社と誤解されやすいが、関東地方を地盤とする東京電力系の会社(旧社名:関東電気工事)であり、関西電力グループにおいては、きんでん(旧社名:近畿電気工事)に相当する会社である。

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PR施設

広告活動

要約
視点

提供番組・コーナー

2011年3月11日東北地方太平洋沖地震東日本大震災)・東京電力福島第一原発事故が発生するまでは、他の電力会社同様に、テレビラジオ各局の番組スポンサーとして多くのCMを放送。しかし、上記の事態を受けて、2016年3月までは表立ったスポンサー活動を控えていた。

一社提供の番組・コーナーについては、スポンサーを降板しない代わりに、提供クレジット・提供読みを割愛することで放送を継続。上記の震災・事故が発生した直後には、それまで関西2府4県で放送していたCMを、ACジャパンのCMに差し替えていた。その一方で、前述した節電電力要請の直前および期間中には、「節電のお願い」(社告形式のCM)を放送。要請を実施しなくなった2012年の夏季以降も、電力の供給不足が予想される時期を中心に、節電関連のCMを随時放送している。

2011年9月23日からは、「節電のお願い」を放送する期間を除いて、省エネルギーに関する企業イメージCMを放送。その後は、「はぴeみる電」(インターネット上の専用サイトによるポイント蓄積型・登録制の電気使用量通知・紹介サービス)や、関連会社(関電SOSなど)のCMの放送も徐々に再開した。2016年度からは、コーポレートブランドCM「登場」篇の放送開始や「はぴeみる電」関連サービスの拡充などを背景に、提供番組における提供クレジット・提供読みを復活させている。

ちなみに若狭国地域は関西電力管内となる福井県内では、県内の若狭国地域にある原子力発電所での安全対策を伝えるなどの趣旨で、関西2府4県とは異なる内容のCMを放送している。しかし、東北地方太平洋沖地震東日本大震災)発生後は一時、関西2府4県と同様にCMの差し替えで対応していた。

テレビ

現在(すべて単独提供
過去

ラジオ

過去
  • 東北地方太平洋沖地震東日本大震災)発生の当日まで、「記念日ええなぁ!」(オープニング直後に放送されていたコーナー)を提供していた。放送枠を平日の夕方に編成していた2016年6月から、「月刊うわトーク」(月に1回のペースで放送される対談企画)のスポンサーとしてコーナー提供を復活。同年10月以降からは、16時台の後半に放送される日替わり企画のスポンサーに名を連ねていた。
  • 2016年10月から一時、「子どもの詩」(7時台の終盤に編成されていたコーナー)を単独で提供していた。

CM出演者

現在

啓発・サービス紹介CM

  • 阿部サダヲ - コーポレートブランドCMで出演。(架空の人物「塩津零」としてゼロカーボン発電を紹介、2022年10月からのCMでは大学教授の役「ゼロカーボン教授」で出演[53]。)
  • 岩田剛典 - オール電化のCMで出演。
  • 海原やすよ ともこ - 「はぴeみる電」、「関電ガス」や引越しキャンペーンのCMで出演。
  • 小坂菜緒日向坂46)- 2022年10月からのCMで大学生役として阿部サダヲと共演[53]
  • 貴島明日香 - 2024年2月からのCMで岩田剛典と共演。

関電グループ企業(オプテージ)の出演者は当該記事参照。

過去

企業イメージキャラクター

その他

企業CMに使用された音楽

不祥事・事件・トラブル

要約
視点

美浜原発事故(2004年8月)

2004年8月9日美浜発電所3号機で発生した配管破損事故。2次冷却系のタービン発電機付近の配管破損により高温高圧の水蒸気が多量に噴出、逃げ遅れた5人が熱傷で死亡した。

なお、1991年2月9日には美浜発電所2号機にて蒸気発生器の伝熱管が破損し、非常用炉心冷却装置(ECCS)が作動する事故が発生しており、INESによる判定でレベル2とされた[56]

所得隠しの発覚

関電が所有する遊休地の取引に絡み、大阪国税局から、2008年3月期までの2年間で約6億円の所得隠しを指摘されていたことが、2009年4月17日の各新聞報道で発覚した。同社が所有権を持たない土地について、売却損益を架空計上したと判断された模様である。申告漏れの総額は約62億円に及ぶとされ、国税当局は重加算税を含め約21億円を追徴課税した[57][58]。なお、同社はこの件に関して、一切公式サイト上でコメントをしていない。

2011年にも、福井県美浜町などでの原子力発電所建設で生じた金属屑を、実勢価格よりも安い価格で地元業者に売却した際に、同国税局から「(課税対象となる)交際費である」とされ、2010年3月期までの5年間で約45億円の申告漏れを指摘された[59]

2024年には、原発へのテロ対策に関する経費の処理を巡り、2021年3月期までの2年間にわたり約12億円の申告漏れを指摘されていたことが判明。経費処理に誤りがあったものと見られる[60]

カラス巣作り訴訟

2008年3月1日、カラスの巣作りが原因で電圧が低下し、化学メーカーステラケミファ工場でフッ化水素ガス漏れ事故が発生。同年10月にステラケミファは「送電トラブルは容易に予見できた」などとして関西電力を相手取って損害賠償約1000万円を求め提訴したが、3年近い係争の後「解決金50万円を支払いその他の賠償義務は負わない」などの条件で和解が成立して終了した。

顧客情報の売却

2012年5月から8月にかけ、同社の子会社・かんでんCSフォーラムの女性の契約社員が、同社の顧客情報管理システムに不正アクセスして契約者情報を抜き取り、大阪府茨木市内の探偵業の男性に5000-10,000円で売却していたとして、不正競争防止法違反の容疑で愛知県警に逮捕された[61]

社宅空き室等の維持費の電力料金への転嫁

同社は2012年に電気料金値上げを申請したが、その際、電力料金に社宅の空き部屋等の維持費を電気料金算定の原価に含めるよう経済産業省に対し求めていたことが、2013年6月に判明。同省は、入居率が9割未満の物件についてはコストを減額した上で原価に計上することとしたが、同社が原価に含めようとした物件の中には、廃止され塩漬け状態となっている社宅跡も含まれており、役員報酬が電力料金に含まれていた問題も明らかとなる中、「料金値上げの前に土地を売却すべき」だとの批判の声が多く聞かれる[62][63]

社員の故意の操作による停電

2013年5月31日大阪市天王寺浪速両区で、配電ボックスが開けられて内部の配電装置が操作され、両区内の民家やビルなど計132件が最長約1時間30分に亘り停電した。その後、同社難波営業所の37歳の男性社員が、同年6月4日に自分がやったと名乗り出た上で、大阪府警浪速署に出頭。同署はこの社員を偽計業務妨害容疑で書類送検した[64]

送電線設備をめぐる談合

同社発注の送電線設備の工事について、受注業者との談合に同社社員が多数関わっていたことが明らかになった。2014年1月31日公正取引委員会は、同社に対し談合防止策を申し入れた上、談合に関わった受注業者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)違反で課徴金納付や排除措置命令などを出した[65]。また、この談合について、その後の調査で社員240人が関わっていたことが明らかとなり、同社は、当時の副社長ら執行役員4人を譴責や報酬返上などの処分とした[66]

過労死問題

同社で高浜原子力発電所の運転再開を巡り原子力規制委員会の審査対応にあたっていた40歳代の男性課長が、2016年4月中旬に出張先の東京都内のホテルで自殺。この課長は、3月や4月の残業時間だけでも約100時間に及ぶとされた。敦賀労働基準監督署は同年内に、この男性を労災認定した[67]

関西電力幹部らの金品受領・便宜供与問題

以下、役職名などは当時のもの。

金沢国税局税務調査で、2011年から2018年にかけて、高浜原子力発電所が立地する福井県大飯郡高浜町の元助役森山栄治から、会長の八木誠や、社長の岩根茂樹、副社長の豊松秀己森中郁雄らが、3億2千万円を受け取っていたことが明らかになった[68][69]。なお、関西電力幹部に流れた金品の拠出元となった建設会社の売上高は、無入札による特命発注(随意契約)などによる原発関連工事の受注増により少なくとも6倍増となっていた[70][71][72]

税務調査が開始された翌月の2018年2月に、1億6千万円相当の金品を関西電力側から返却するとともに[73]大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件懲戒処分を受けて退官した元大阪地方検察庁検事正の小林敬を委員長とする社内調査委員会を設置して調査にあたり、八木や岩根ら関係者を社内で処分したが、これらの事実を取締役会に対しては隠蔽した。また、調査にあたって森山から聞き取りをせず、一方当事者の言い分のみを聞いたが、このことを指摘された調査委員会の小林は「そこまでは思いが至らなかった」と振り返った[74][75]

2019年9月26日に配信され共同通信のスクープ記事により明るみに出され[76]、事態を受けた経済産業大臣菅原一秀は、記者会見で「言語道断。ゆゆしき事態だ」と断じた[77]原子力規制委員会委員長更田豊志は、「まだそんなことがあるのか」「憤りを感じた」とし、関西電力の対応を批判した[78]

また、八木は記者会見で兼務する関西経済連合会副会長職を続投する意向を示したが、これに対し関西経済連合会会長の松本正義は「関係者に疑義をもたれるようなことをしてはいけない」と批判した上で、第三者委員会の報告を待って八木の処遇を判断する意向であることを明らかにした[79][80]。一方、関西経済同友会代表幹事池田博之は「信頼回復に努めるべき」と述べるに留まり、進退についてはノーコメントとしたほか、関西財界の間で関西電力による2025年日本国際博覧会への15億円の寄付に影響が出ないか懸念が生じた[81][82]

こうした批判を受け、関電側は10月2日に改めて記者会見を行い、社内調査委員会報告書を公表。幹部らが元助役からの現金や金貨、スーツ仕立券など総額3億1,845万円相当の金品を受け取っていたことを明らかにすると同時に、弁護士などで構成する第三者委員会を設置して関電社内全部門に対して今般の問題と同様の事例の有無などを改めて調査するなど、年内にも検証報告書を取り纏める方針であることを発表したが[83]、菅原経産相から「悠長な話だ」と批判され「可及的速やかに報告してもらいたい」と求められることとなった[84]

第三者委員会は、委員長を元検事総長但木敬一が務め、元第一東京弁護士会会長の奈良道博らが委員に、特別顧問に元日本弁護士連合会会長の久保井一匡がそれぞれ就いた[85]。その後2020年3月に公表された第三者委員会の報告書では、関西電力から森山側への便宜供与が認定されるとともに、電気料金値上げの条件として引き下げた役員報酬や金品受領に伴う追加納税分を闇補填していたことが明らかにされた[86]。また特に責任が重い関係者として、相談役森詳介、前会長八木、社長岩根が指摘され、いずれも前後して辞職した[87][88]。2019年11月28日に現旧取締役5名に、2020年4月18日に現旧取締役12名に対して、株主から責任追及の提訴請求を受けていた関西電力は、3月30日に取締役責任調査委員会を設置した[89]

4月1日、森山を通じて不当な要求や金品供与があったとして、吉田開発オーイング塩浜工業柳田産業を停止期間は非公表としつつも、指名停止としたと発表[90]

4月23日、福井県高浜町の企業と行った1980年代の土地取引について、森山氏が県に働きかけた事実は確認されなかったとする調査委結果を明らかにした。県へ届け出が必要だが資料は保存期間が過ぎており残っていなかった[91]。2020年5月には八木が関西経済連合会に特別顧問として復帰した[92]

2020年4月28日、中村直人弁護士を委員長とするコンプライアンス委員会を設置[93]。6月16日、取締役責任調査委員会の報告書が善管注意義務違反を認定したため、関西電力は八木前会長、岩根元社長、豊松元副社長、白井元常務、森元会長に対し総額19億3600万円の損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提訴した[94][95][96]。一方、監査役を務めた、土肥孝治検事総長大坪文雄パナソニック社長、槇村久子京都女子大学名誉教授十市勉日本エネルギー経済研究所専務らに関しては、善管注意義務違反が認定されたものの訴訟の提訴は見送られた[97]。また、同年新たに取締役候補とされた佐々木茂夫大阪高等検察庁検事長につき、事前に金品受領問題を認識していなかったと虚偽の説明が株主に対してなされ、のちに訂正された[98][99]。8月17日に提出されたコンプライアンス委員会報告書により役員報酬補填問題で森元会長から指示を受けていた秘書室担当取締役の八嶋康博にも善管注意義務違反が認定され、関西電力は11月17日に追加提訴を行った[100][101]。一方、提訴請求を行っていた株主らは、6月23日、関電の訴えでは不十分として22名の現旧取締役・監査役を被告に92億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を提訴している。

金品受領は特別背任罪、贈収賄罪等に該当するとして市民3200余名が、2019年12月13日に告発状を大阪地検に提出。また、同年6月9日には、役員報酬等の闇補填問題で市民2100余名が業務上横領と特別背任で追加告発を行った。大阪地検は、2020年10月5日に告発状を正式に受理したものの、強制捜査を行わず任意の事情聴取等により2021年11月9日に嫌疑不十分で全員を不起訴処分とした。処分を不服とする告発人約1200名が、2022年1月7日、検察審査会への申立てを行った。代理人の海渡雄一弁護士は「公益性の高い関電がまともな企業に戻るためには、強制起訴で膿を出し切ることが必要」と訴えた[102][103]。同年7月7日付で、大阪第2検察審査会は八木前会長、森元会長、岩根元社長の3人について、起訴相当と議決した[104][105]。議決を受け大阪地検は再捜査を行ったが、12月1日に再び嫌疑不十分で全員を不起訴処分とした[106]。大阪第2検察審査会は2023年3月30日付で3人について「起訴議決するには至らない」とする2回目の議決を出した[107]

電力料金の過大請求

2019年9月分の電力料金について、小規模商店など63法人に対し、過大に請求していたことが、同年11月29日に新聞報道で判明。同社は2018年に料金請求に関する社内システムを変更したが、契約内容データの移行の際にミスがあり、割引をしていない料金を請求していた模様だが、同社は「お詫びと説明をし精査を進めている」との理由で、報道されるまで事実を公表していなかった[108]

電力販売めぐる大手電力4社によるカルテル

2022年、2018年秋頃から電力小売りが全面自由化されているにもかかわらず、主に工場や商業施設、商業ビル向けの電力小売りで、お互いの地盤エリアで営業活動を展開しないように画策するなどカルテルを結んでいたことが明らかとなり、2023年3月30日、 公正取引委員会は、中国電力中部電力とその子会社、九州電力などに総額1000億円あまりの課徴金納付を命じた。しかしカルテルを主導した関電は公正取引委員会にカルテルを「自主申告」したため、処分が免除されたことが報道された。総額1010億円の巨額の課徴金は過去最高額であった[39][40][109]。同年7月14日、経済産業省は関西電力など5社に対し電気事業法に基づく業務改善命令を出した[110][111]

国家資格不正取得

2022年12月20日、関西電力グループ全体で197人が工事施行の国家資格を不正に取得していた事を明らかにした[112]

顧客情報の不正閲覧

2023年1月13日、子会社の関西電力送配電が持つ新電力会社の顧客データが親会社である関西電力社員に不正に閲覧され、営業活動にも利用されていた問題について電力・ガス取引監視等委員会に報告書を提出し、同日、記者会見で謝罪した。

調査した2022年12月12日までの3カ月間で社員ら730人が1万4657件の新電力の契約情報を閲覧し、一部で営業活動に使っていた。閲覧後に新電力から関電に契約を切り替えた事例は3538件あった[113][114]。同月中に電力・ガス取引監視等委員会が関西電力と関西電力送配電に電気事業法に基づく立ち入り検査に入った。2015年の監視委員会設立以来、個別の不正に関する立ち入り検査は初めて[115]。2023年4月17日、経済産業省は関西電力と関西電力送配電など5社に対し電気事業法に基づく業務改善命令を出した[116]

政界との関係

天下り問題

福島第一原子力発電所事故以降、経済産業省と電力会社の天下り問題が監督官庁である経産省の原子力発電所の安全基準のチェックを甘くさせる構造として批判が集まった。

歴代内閣総理大臣への献金

同社において、少なくとも1972年から18年間に亘り、歴代内閣総理大臣に対し、原発推進などの目的で多額の政治献金が行われてきた実態が、2014年に同社元副社長の内藤千百里の証言により明らかになった[117]

関連項目

脚注

外部リンク

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